ゴロまき幼女メアリー
「はあ?メアリー?幼女じゃないか?!これが幹部だと、金儲けが上手いってだけだろ?俺がお勤めしている間に幼女が幅を利かせていたのか?!」
ここはトーマス商会の中庭、ロバートさんというトーマス親分の右腕が・・・刑務所から帰って来たので歓迎パーティを開いた。メアリーちゃんが挨拶をしたら怒られた。
罪状は傷害だ。他勢力との小競り合いで捕まったらしい。
そうか、ここは裏組織だった。
「しっかりしてくれよ。親分」
「金儲け上手いネ。これから求められる能力ネ」
「そんなの偶然だろう」
「そうなの~、偶然なの~」
そうだ。偶然の出会いで上手くいったな。
「はん?裏組織は腕っ節が全てだ!」
「そうなの~、紛争解決能力が求められるの~、ロバートさんの言う通りなの~」
「なっ、余裕ぶって!」
メアリーちゃんは当座の金がある。裏組織を引退するのも良いか。
駐車場経営をしたいと前世では思っていた。
この世界なら何だろう。釣り堀も良いか?
なんて思っていたら、急報が来た。
「親分、いえ、商会長!大変です。串焼きストリートに嫌がらせをする集団が来ております」
「何?ロバート行くネ」
「おっと、話題の幼女に行ってもらいましょう。責任者だよな」
ロバートさんはニヤニヤしている。
「ヨサブロウ、マリー、トニー、行くの~」
「了解承知!」
「はい」
「ヒヒ~ン」
とりあえず3人とトニー君で向かう。
いつもメアリーについて来てくれるゴロツキ・・・いや、商会員には声をかけなかった。
後で派閥問題に発展するかもしれない。
串焼きストリートに向かったら・・・
「腹がいてぇ!」
と叫んでいる若い奴がいた。周りには仲間が数人いた。
「ああ、この串焼きを食べたら兄貴が腹痛を起した!」
「何だ!この串焼きは、客に汚い物をだしているのか?」
「責任者だせや!」
皆、叫んでいる。
これは大変だ。
「ポンポン痛いの~?」
「何だ。幼女か。責任者を出せ!」
「責任者なの~」
目を細めて痛がっている男を見る。魔素を見る。吐かせようか?
ジィ~
「何だよ。幼女が真面目な顔をするなよ!」
何だ。どこも悪くないじゃないか?もしかして、魔素が・・・弱いか?暴飲暴食だな。
「メアリービームなの~」
両の手の平を向けて聖魔法を放った。
すると、男はビクンと立ち上がった。
「あれ、元気になった。走り回りたい・・・」
「兄貴!」
「ウオオオオオー!」
男は走り去った。
「姫、これは嫌がらせかもしれません」
「そうなの~、違うかもしれないの~」
だが、事が起こる前に計画を練るべきだ。
情報ギルドで調べてもらったら・・・
「フランク自警団が狙っていますね。自警団の名ですが愚連隊です。勢力は小さいですが武闘派です」
「有難うなの~」
愚連隊、抗争主体のイケイケか。
嫌がらせだとしたら次に来るのは・・・
「串焼き100本配達?貴族街のヘイダー家に入りました・・・こんなの初めてです」
多量注文が入った。
「マリーしゃん。トニー君の馬車に乗って聞いてくるの~、これがメアリーの紹介状なの~」
「はい」
「ヒヒ~ン」
男爵令嬢の身分で貴族にお伺いを立てる。やはり身に覚えがないみたいだ。
いっその事、新規で多量注文は配達禁止にした。
次に来るのは・・・
「はい、お代だ」
「ヒィ、金貨1枚で?」
日本で言えば100円の商品に10万円の手形や記念硬貨を出す感覚だ。
だから、先回りをしていた。
「お釣り担当のメアリーちゃんなの~」
「何だ!」
あらかじめ小銭を用意していた。資金は沢山ある。
ジャラジャラと銅貨で渡す。もちろん袋は渡さない。
「ヒィ、ポケットにはいらねえ」
「職人が作った袋あるの~、銀貨1枚なの~」
「高いよ!」
数回続けたら来なくなった。
数日間静かだ。
さて、次に来るのは暴力だ。
さすがに、ヨサブロウさん1人では荷が重い。
「姫、拙者1人で大丈夫でござる」
「怪我させないようにゴロまき出来るの~」
「ゴロまき・・・」
「しかも、大勢なの~」
これは、トーマス商会に戻り相談をした。
ロバートさんとその一派にお願いをする。
「お願いするの~」
ロバートさんはニヤニヤ笑っている。
「フン、やっぱり幼女には無理だったのだな」
「無理なの~、お願いするの~」
「じゃあ、俺が副会長でいいな?」
「いいの~」
トーマスさんを見る。許可をもらう。
だけど、
「ロバート、貴方功績があるネ、副会長よ。でも、器はメアリーが上ネ」
「な、何だと!いくらトーマスでも許せねえ」
「とにかく、解決してから物言うネ」
何だか険悪になった。
数日間静かだと思ったら、奴らが来た・・・
数十人だろう。
「串焼きストリートのお客様に避難をお願いするの~」
「「「はい、メアリー様」」」
「誘導が終わったら店主達も避難するの~」
人払いをしたが、現れる第三勢力がいた。
王都最大のオスカー商会か。
情報を調べていたな。
「メアリー嬢、助勢をしましょうか?」
「オスカーしゃん」
ハイエナのようだ。見返りが怖い。
「こちらは有名な冒険者と当商会の警備員を連れて来ました」
「断るの~、メアリーはロバートしゃんにお願いしたの~」
「ほお・・・一端任せたら口を出さないか。ますます欲しい」
「欲しがりおじさんなの~!」
数は五分五分か・・
しかし。
「よお、痛い目に遭いたくなければシマを渡しな」
「貴方がフランクなの~」
リーダーが先頭に出てきた。赤毛の男だ。こいつがフランク自警団のフランクか。
ヒゲダルマではない。偉丈夫だ。
ロバートさんは・・・怯えている。
「ヒィ、赤毛のフランク・・・メアリー、知っていたのか?な、何故教えなかった」
どういう奴か、フランクの取り巻きが叫んだので分かった。
「フランクの兄貴は後もう少しで騎士団長になれたのだ!」
「まあ、そうだ。俺は騎士団長候補だったのだ。無駄な抵抗をやめろ」
ヨサブロウさんを見る。刀に手をかけている。やる気か?
「互角でござる。しかも敵は剣を使う胆力が候」
「待つの~、ロバートしゃんに任せたの~」
とロバートさんを見るが膝が笑っている。
手下はロバートさんの後ろに身を隠している。
「50人殺しのフランクだ・・・」
「いや、半殺しにしたって」
何だ。フランクの二つ名は50人殺しか。
「しょうがないの~」
「「「メアリー様」」」
「みなしゃまはここで待機なの~」
あたしゃ、前に出た。こういった時に逃げたら逃げ場がなくなるのは前世でも同じだ。
また、転生するかな。
フランクの目を見る。これは自暴自棄の目だ・・・
「・・・お嬢ちゃんは帰りな」
「帰りたいの~」
「まあ、良い。その度胸に免じて妥協してやる。毎月金貨100枚渡しな。それで串焼きストリートを守ってやるぜ」
妥協案なんてない。この集団を取り込んだら庇を貸して母屋を取られるだろう。
だから先手を打った。両手を広げて聖魔法を浴びせた。落ち着いてもらおう。
「メアリースピリチュアルケアなの~」
フランク自警団の上に光の粒子を降らせた。
だが、逆効果だった。
「何だ。これは・・・」
「おお、気持が落ち着くぜ。これで集中してゴロまけるぜ!」
いや、逆効果だった。平常心になったら更にやる気だ。
「フランクの兄貴、屋台を壊しましょうぜ!」
「あれ、兄貴?」
フランクは驚愕している。目を見開いている。
「もしや、メアリースチュアート様?」
「メアリーはメアリーなの~」
「何歳でございますか?」
「令嬢に歳を聞くのは失礼なの~」
「どうか、傘下に入れて下さい。私の話を聞いて下さい。私は元騎士団長候補でした・・・」
「はにゃ」
何故、そうなる?
だから・・・断った。
「いらないの~、過去に生きる男の話はいらないの~」
どうせ、自慢話だろう。
「なっ!・・そうか、その通りだ。私はいつの間にか過去の経歴を自慢していた。いつからか・・・」
その時・・・
「「「「メアリー様!」」」」
屋台の店主たちが現れた。
「俺たちの職場だ。守らせろ!」
サムソンさんを筆頭に皆なれない手つきで鍋なんかを持っている。
「命令違反なの~、避難なの~」
「ああ、命令違反だ。罰金なら払うぜ!」
およそ家族をいれて100人くらいか・・・
「姫!」
ヨサブロウさんも来た・・
「もお、皆、命令違反なの~」
正直に言えば嬉しい。さすがにメアリーちゃん一人では荷が重すぎる。過重超過で警察が飛んで来るレベルだ。
さて、どうするか。引いてくれないかと思ったが。
トーマスさんがやってきた。やっぱり見ていたのか。
「フランク、ここは一端引くネ。出直すネ。一生懸命に頑張っている者の屋台を壊そうとする奴の話は聞かないネ」
「ああ・・・一端引く・・ぜ」
もう、夕方か。フランクの背中は寂しそうだった。




