第58話「乗車」
「伝説を残した、じゃねーよぉぉおお!」
ファーーーック!!
なんだよ!
なんんでいつもこうなるんだよ!!
「ふぁーく」
はいダメ!
「そういう下品なこといわないの!」
旅行きの恰好に買えたライトとヤミーは乗合馬車の待合所にいた。
そこには教会都市から各都市へ向かう人々で溢れており、ごった返している。
さきのネームド討伐の噂以来、街道がようやく整備されたこともあり、流出する人口が多いんだとか。
それが教会都市にいいのか悪いのか知らないけど、まぁ、ここはここで巡礼者なんかで人が途絶えることがない街だしいいことなのだろう。
それよりも────。
「なんでいるんですか?」
「そりゃこっちのセリフ──」
なぜだか知らんけど、乗合馬車で、暴力クソギルド受付ことメリザが──
「暴力クソギルド?」
「とっても優しいナデリコナデリコギルドのメリザさん」
にこっ。
「いや、そこまで言ってませんけど────……なんでライトさんがここにいるんですかぁ?」
いや、だからこっちのセリフ。
「アンタこそ、ギルドの仕事はいいのか?……あ、クビ?」
寿退社は絶対ないし、クビとしか──。
「殺しますよ?……そんなの仕事に決まってるじゃないですか」
はぁ、やれやれとため息をつくメリザ。
よく見ればいつものギルドの恰好に旅装束をつけている。
しかも、手には大きな書類カバンと旅行バッグ──。
「……夜逃げ?」
「だから、なんでそうなるんですか! 出向ですよ出向!──つーか、こういう時はカバン持ちますか? とかないんですか!」
…………ないなー。
「なんでよ! 今までの恩とか仲とかないんですか!」
……………………ないなー。
「だーかーらー! あーもう、そんなんだから伝説を残すんですよ、このロリ──」
ぱんっ!
「それ以上喋ってら口をレーザーで焼きますからね」
「もがー!……ぷはっ! いきなり女性になにするんですか! そういうところやで!」
どういうところだよ!
「ホントにもう……。な~んでせっかく都会に行けそうだと喜んでたらこのクソ冒険者と顔を合わせるんですか」
まったくもー。
「おい、誰がクソ冒険者だ、このクソギルド受付が」
むきー!
むがー!
「あはは、なかよしー」
仲良くねーよ!
「……ったく、俺はこっち行くんで、アンタはそっちどうぞー」
「うるさいわねー。指図される謂れはないっつーの!」
言われんでも行きます、とばかりにズカズカと、王都行きの馬車に乗るメリザさん。
そして、
「……おい、俺もそれに乗りたいんだけど」
「は?……そんなの知りませんよ」
むっ。
「嫌なら別の馬車にしたらどうですか~」
「むぅ……!」
それはそれでムカつく!
だいたい、でかい仕事探すならどうしても王都のギルドの方が都合がいいに決まっている。
他には魔物の被害の覆い大辺境地帯とかもあるけど、さすがにヤミーのことを考えるならそんなとこには行けない。
「ふんっ。知らないね、俺は俺の行きたいとこに行くんで──」
「あ、そーですかー」
あっそうだよー。
ズカズカズカッ!
ずんっ!
「……それじゃそろそろ行きますねー」
はいよ。
チャリン。
ライトは規定料金を払い、メリザはギルドの出している書類を差し出した。
ライトと違ってギルドの後払い照明とかそういう奴だろう。いいねー公務員は。
「公務員ちゃうわ」
「うっせー。給料泥棒」
こっちはネームドのこともアグニールのことも忘れてないからな。
「いや、知らんがな──もー、男のくせにうじうじうっさいわねー。ねー、ヤミーちゃん」
「うっさいー」
こら! そこ!
女どうしで連合組むな!
「ねーヤミーちゃん。こんなロリコンのとこ止めてウチに就職しちゃいなさいよー!」
へいへいへいへーい!
ウチのお姫様に余計なこと言わないでくれるか!
「ぎるどいくー」
「あかんて!」
まったく、ヤミーちゃんときたら。
ギルドは王都着いてから顔出すから、こんな年増ババアのことろに就職したらあっという間に年増になるからね!
「……誰が年増だって」
ぴゅ~るりー♪
「下手な口笛拭いてんじゃないわよ、ったく──ただでさえ面倒な仕事が余計面倒になる予感しかないわねー」
は~あ。
そうしてメリザのため息を乗せながら馬車は王都へ向かう。




