第37話「そのクエストがこちらです」
「──で、これかよ!」
『『『グルァァァッァアアア!』』』
ビリビリビリビリビリ……!
奇襲に失敗したことを悟ったオーガの群の頭目──……オーガチーフが先頭に躍り出ると、ライトの馬車めがけて突進!
さらには、雄たけびで味方を鼓舞すると、全軍突撃をぶちかましてきやがったッ!
まるで、
舐めるな、人間があぁぁああ──!……そう言わんばかりに、谷間の空気を震わせる大音声とともに、それを突撃ラッパにして一斉に突撃開始ッ!
ついに、木々の間から姿を現してオーガの群れが、その巨大な足音を響かせながら現出し、雄たけびを上げて馬車列に襲い掛かる!
その数────数十ッ!
……こんなもん、Bランククエストなわけないだろうが!
「ちぃぃぃい!」
多いッ、多いッ!
多すぎる……………!!
けど──。
「はっ! 上等だぜ」
……Bランク上等!
これでBランクたぁ、ギルドの基準がバグってるか、クエストがバグってるかのどっちかだろうが──。
「バグり具合ならこっちも負けてねぇよ!」
そう言い切ると、
窮地にあっても口角を吊り上げるライトは、まったく怯まない。
……だってそうだろ?
窮地ってのは……。絶望ってのは……。
「──こんなんもんじゃないぜ」
こんなのは絶望でも、地獄でも、修羅場でもなんでもない────ただのピクニックだ!
だから、ライトはオーガの大群を見ると、むしろ喜色を浮かべていう!
「はっ! ちょうどいい経験値だよ!」
にぃぃ……と、オーガに負けじと劣らずに歯を見せて獰猛に笑うライト。
そして、むしろ、こっちに来いとばかりにオーガを煽る!
「かかってこいよ!」
そう……もっともっと来いとばかりに、さらに煽る煽るッッ!
そして、煽って来た間抜け野郎どもを──。
「──まとめて焼ききってやらぁぁぁ!」
ビシッ!
馬車の幌の上で仁王立つと、オーガに向かって親指で首を刈るジェスチャー。
すると、、
『──グルァァァァアア!!』
その挑発に応じたのは先頭の巨大なオーガ……オーガチーフだ!
そいつは通常種よりも一回り大きく、
武器には、人間から奪った剣を丸太に何本も突き刺しただけの、『巨大な釘バット』のようなものを手にしてライトに襲い掛かる!
ズシンズシンズシンッ!
『ゴルァァァアアアア!!』
「はっははぁ! 来たな、デカぶつ!」
凄まじい勢いの突撃にもひるまないライト!
そして、「かかって来いよぉぉお!」そう啖呵を切った瞬間、
『ゴルァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア?!』
ビリビリビリビリッ!
ものすごい大音声に空気が震える。
まるで舐めんな、クソガキ!! とでも言わんばかり! それには、さすがのライトも足がぐらつくほど────!
だけど、そんな咆哮に今更ライトがビビるはずもない。
だから、笑う。
ニヤリと笑うと、ビシッ! と中指を立てて最大に挑発。
「こいよ、雑魚」
……刹那ッ!
──ブワッッッ!
怒りの波動がオーガの群れ全体に広がったかのように、
オーガチーフだけでなく、全オーガのヘイトが一斉に集中する!……もちろん、ライトに向かって────!
「……ははっ。そうこなくちゃな!」
ニッ。
……その瞬間、オーガどもが一斉に咆哮した!!
『『『ゴァァッァアアアアアアアアアアアアア!』』』
その振動に、森の木々が一斉に葉を落とすと、
それを合図にしたかのように、バラバラに突撃していたオーガたちが、まさに、今! ライトめがけて一斉に森の木々から踊りでると、雄たけびを上げて殺到した!
ズシン……ズシン、ズシン、ズシンズシズシ──……。
……ズシン──ズドドドドドドドドドドドドドドドドッッ!
まさに全軍。
まさに突撃喇叭。
まさにライトを殴殺せんばかりに攻撃を開始するオーガたち。
谷間の木々をかき分け、
森の斜面を転げ落ち、泥にまみれながらも駆けおりるオーガの突進力よ!
──ゴルァァッァアア!!
──ゴガァッァァアアア!!
「はッはぁッー!!──いいねいいね、面白くなってきた!」
大群を前にして笑うライト。
もちろん、ライトは怯まない。怯むはずがない。
……むしろ、これこそ狙い目にして計算通り!
なんたって、こいつは護衛クエスト──。
こうでもしてヘイトを集中しないと、
「──荷に被害が出て、査定に響くんだよ!」
だから荷馬車には一歩も触れされない。
その完遂のためにもなら、最初っから出し惜しみはなしだッッ!
──だから、いッッく……ぜぇっぇえ!
「ヒァ・ウィ・ゴォ!」
ダンッ!!
馬車の幌上で大きく一歩踏み出し、ジャキンッと指鉄砲を構える。
──全部、射程内だぜッ!
……キュィィィイン!
そして、右手に構えた指鉄砲の筒先に魔力を込めるライト!
ィィィィィィィイイイイイイイイイイイイイン────!!
暴力的なまでに輝く指先に魔力が収束していく。
そして、衝撃に供えて、左手を右手に添えると────!
「──でっかいのを、ぶッッちかましてやるぜっぇえ!」
ステータスオープン!!
──ブゥゥン!
※ ※ ※
L v:56
名 前:ライト
職 業:冒険者(下級)
系 統:魔法使い
属 性:光線
所得魔法:Lv1灯火、Lv2光球、Lv3蜃気楼、Lv4光爆発、Lv5聖光、Lv6安息光、Lv7光学迷彩、Lv8光連鎖、Lv9千夜一夜、Lv10流星群
Lv1:レーザー、
※ ※ ※
●ライトの能力値
体 力: 526
筋 力: 112
防御力: 127
魔 力:21922
敏 捷: 93
抵抗力: 780
残ステータスポイント「+103」
※ ※ ※
【光線】属性
Lv1『レーザー』
備考:科学の力で、全てを貫くレーザーを発射。
魔力の量により、出力の調整可能──。
攻撃力100000~∞
※ ※ ※
「──うらぁぁ!」
叩きつけるように、コマンド選択!
それは、光線魔法使いライトの十八番!
使用魔法は……、
もちろん、光線魔法Lv1『レーザー』だ!!
「──魔力を充填ッッ! チャージ40~50%(……多分)くらい!!」
自らの体内をめぐる魔力の総量から、十二分過ぎるほどチャージで来たことだろう。
全魔力を使うほどでもないし、その時間もない!
……だから、
「こいつで十分! まとめて、ぶっとばしてやるぁぁ!」
キュィィィィィィィ────────………………ィィィイイイン!!!
──カッッッッ……!
「ぅ、レェェザァァァ!!」
──発射ぁぁぁあああ!
ズキューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン♪
一斉にライトめがけて突っ込んでくるオーガの集団目がけて、外しようもない距離で、チャージ多めのレーザー発射!
もちろん真正面から!
ボンッッ!
と、直撃!
『『『ゴァ──
一瞬だけ、奴等が叫んだのも一息にかき消すほどの大出力!!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ズギューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー……!
しかして、レーザーの射出はいまだ止まらず!
むしろ、マシマシの威力で集団を焼き切り両断し──────ここで、横なぎにぶっち切る!!
「らぁっぁああああ!」
ーーーーーーーーーーーーーー……ビュワンッッッ!!
右から左に、大ナタを振るうように、レーザーのギロチンだ!!
その瞬間、太陽が地上に落ちたかのように光が輝き、太めの光線が戦闘を突撃してきたオーガチーフの全身を貫き爆散ッッ!
同時に、そこから伸びるレーザーが車線上にいたオーガと大木を数体と数本まとめて貫き蒸発させて地面を抉りながら爆発するッ!
……さらには、射線上の地面が真っ赤に燃えて一斉に爆散するッ!
ズドォォォオオン!!
『『『ゴァァァアア…………?!』』』
ブシュウ!
「……見たかぁッ!」
会心のポーズを決めるライトの先──。
最後に、「ふっ……」と指先に息を吹きかけ硝煙を消す真似をしたと同時に、大量のオーガの半身が爆散し倒れていく。
──ドサドサドサッ!
レーザーを打ち切ったあとには、何が起こったかも理解できぬまま絶命したのが数体。
そして、中途半端に両断されて寧ろのたうち回るやつが数体。
……まさしく一刀両断!
レーザーの連続射出によるギロチン刃が、敵集団を一気に切り裂いたのだ!!
それはもう、無茶苦茶にっっ!!
「ひゅ~♪ 威力は抜群だぜッ!」
人知れず、グッ! とガッツポーズを決めたライト。
それは、一撃で、オーガ一個小隊の半数を壊滅させた瞬間だ。
そして、
「……はっ! 残りも逃がすかよッッ!」
獰猛に叫ぶライトは、幌の上に立ち上がると、今度は二手に指鉄砲を構える!
それを知ってか知らずか、形成不利と悟ったのか、残るオーガのうち勘のいい数体が後ずさる。
……だが、それをを許すライトであるはずがない!
「そこぉ!」
ズキュ-ン!
パキューン♪
『ゴァァア?!』
『グガァ!』
ボォンッ!
レーザーに貫かれた二体が一瞬にして倒れ伏す。
「もういっちょぉぉお!」
パキューン♪
ピキューン♪
森の木々の間を走るレーザーが逃げるオーガの背中を貫く。
『グルゥゥ……!』
──ズズーン!
「あっはっはー!」
次ぃ!
次、次、次々ぃぃい!!
ズキューン! ズキューン♪
まさに二丁拳銃ッ!
その分、倍・倍で、ガンガンに魔力を使用していくが、まだまだ! まだまだ十分、十二分!
なんせ、元光属性のライトだ!
ひかり属性の魔力は元の値が莫大なのだ! そして、生まれついて高魔力保持者のライトと合わさって、ほにゃららに刃物状態!
……だから、連射する!
そして、殲滅する!
「──おらぁっぁああああああああ!」
ズキューーーーーーーーーーーーーーーン♪
ズキューーーーーーーーーーーーーーーーン♪
もはや、チャージの時間も狙う時間も惜しいので、二手にかまえた二丁レーザーを連射連射連射ッ!
まるでマシンガンのように、西部劇のガンマンのように、腰だめに構えて、連射連射連射ぁぁぁ!
ドカーーーン!
ドカーーーン!
『ッッ?!』
『ガッァア?!』
それらがオーガを切り裂き、地面に着弾し、科学の光が大爆発!
チャージショットほどでもなにししても、それでも十二分に過ぎる威力!
立つ続けの着弾に、
あまりの高温が、周囲の土が溶けだし、ガラス化してギラギラと輝くほどだ!
……もはやオーガの群れなどひとたまりもない。
濛々と立ち込める爆炎の中、
あっという間に、オーガの一個小隊を壊滅させるライト。
『『『ゴルァァァァァアアアア!』』』
しかしッ!
それでもオーガの数は数十体──まだまだ後続は唸るほどいるらしい!
「……ハッ! これで難易度Bのクエストだって?」
メリザさんめ、でたらめ言いやがって──。
うまく言いくるめられて指名依頼を受けさせられたことを苦々しく思い出すライト。
(まぁいい。こんなんでも経験値になるし、なによりギルドの評価があがるからな!)
とくに、荷には指一本触れさせないことで、評価は爆上がりだ!
……だから、容赦などしない。
荷は絶対に守るッッ!
「なので、連射に次ぐ連射ぁぁぁああ!」
モグラたたきの要領で、谷間の森の木々を抜け出た矢先に一発ずつ丁寧に焼き潰すようにブチ殺していく!
そうとも。
一歩も近づけないし、
一体にも逃がさない勢いで、連射連射連射ぁぁぁ!
「おらぁ、おらおらおらぁぁあ!」
ズキューーーン♪
ズキューーーンン♪
ズキューーーーーーーーーーーーーーーーン♪
ドカ-ン! ボカーン!
……ドッカーーーーーーン!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
森が……。
谷間の森が焼けていく。
「す、すげぇ」
「たまげたぜ……」
ゴウゴウと地鳴りのように燃え続ける谷間の道。
そこで突然生起した科学と魔法の入り混じる砲撃に呆然としているのは、傭兵たちだ。
彼らは、戦闘する暇もないくらい。
もはや今何が起こってるのか理解するのもやっとで、今も呆気に取られてライトを見上げるのみ。
燃え盛る木々の明かりに照らされてライトのシルエットが何倍にも浮かび上がると、しまいには傭兵たちも護衛されている商人達も、祈らんばかりに、畏怖を込めてこう言う。
それはまさに、それはまさに──。
「「「光の戦士……!」」」




