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緋色の焔  作者: 萩悠
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揺らぎ

 今日も巡回、確認、そしてまた巡回。

変わりの無い日々。

唯一変化したものは本家へと訪れた後のこの時間だけ。


「よっ、嬢ちゃん。今日も目がこーんなんになってんぞ?」

暗がりからひょっこり顔を覗かせるのはいつか会った男。

「そんな顔してないわよ!」

「いやー、してるしてる。何かあったか?」

 自分の目を指でつり上げて見せるこの男との少しの歓談。

たわいもない時間ではあるけれど、唯一私がただの千尋に戻れる瞬間。

「何時も通り碩人せきと様と少しお話してきただけ。大体私がそんな顔をしているとすれば、それは貴方のせいよ?」

「ひぇー、怖い怖い。しっかしこんなに夜遅くに女一人で歩かせるなんたぁ、本当にその男はなってねぇなぁ…。」

肩をすくめて見せつつ沁々しみじみと呟く男に対して沸き上がるのは少しの罪悪感。

この男とは、私が本家を訪れた後にしか出会わないけれども、確実に私が本家の人間、ひいては碩人せきと様のを好いていると思っている。

実際は嫌悪感しか持っていないのだけれども、何処から噂が漏れ出すか判らないこの御時世。私もそうやって欺くしか結局生きる術は無いのだ。

「良いのよ、碩人せきと様は御多忙な方だから。私のような何の取り柄も無い人間と会って下さる、それだけで十分よ。」

「うーん、嬢ちゃんがそう言うなら構わねぇが、何とも釈然としねぇな…。」

そう呟き男が吐き出した煙管きせるの煙を眺める。

いつの間にか親しげに『嬢ちゃん』呼びに変わってはいるものの、不思議と嫌な気はしない。

恐らく私は退屈な日常が嫌いなのだろう。

だから、こうした少し不思議な男との会話が少し楽しい。

「さて、私も別に暇じゃないの。」

どうしても素直に生きることを良しとされない世界で生きているからか、私の口からついて出るのは何時も憎まれ口。

それでもこの男は笑って何時もこう返すのだ。

「おう、そんじゃまたな。」


 結局何がしたいのか読めない男は、自分のプライベートを一切語らない。

私も別に自分のプライベートは語らない方だから、会った所で話すのは世間話とも言い難い会話ばかり。

出会った時に男がちらつかせたかんざしは、今日も男のふところの中。

私も私でその道さえ通らなければ会うことは無いのに、毎回同じ道を辿ってしまう。

男の事をよくわからないと言った私も大概訳のわからない行動をしているのには失笑しか浮かばない。

それでも、それでも今日ばかりは少し泣き言を聞いてもらおう。

恐らく今日が最後なのだから。


「よっ、嬢ちゃん。今日は何時も以上に仏頂面だなぁ?何かあったか?って俺に話す訳ねぇわな…。」

何時も通りの男の口調。

何時も通りの男の態度。

何時も通りの煙管きせるの匂い。

何もかもが変わらなくて。

「おっ?!ちょい、どうしたんだ嬢ちゃん?!」

頬を温かいものが伝う。

「………え?」

「あー!ちょい待ちちょい待ち!えーっと、俺何か持ってたかな…。」

慌てて袂を探り出す男の様子をただ茫然ぼうぜんと見る。

何をそんなに慌てているの?

何があったの?

私は…私に何が起きている?

「悪りぃ、無かったからちょっと我慢しろよ?触られるの嫌なら蹴り飛ばしてくれて良いからな?」

側へと来た男が着物の袖を濡らした。

「嬢ちゃん、今自分が泣いてる事に気付いてるか?」

頬をしっかりと掴まれて上を向かされた先では、男の顔が歪んで見えた。

ちょっと短めでごめんなさい!

スランプ脱出は出来てないのです…

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