#27「魔法? どうなっても知らねーぞ」
ティアは“霧の魔人”を動かしていたモンスターの心核を拾って腰のポーチに入れた。
――――これも「モノいじり」スキルで合成したら面白そうじゃね?
そしてあたりを見回すと、それまでは何もなかった場所に階段が出現していた。
ティアはその階段で下層へと向かう。
階段を降り切ってたどり着いた場所のダンジョン深度は34。
ついにティアは国洞20号の最深記録を更新した。
「新記録だぞー! やったぞー! マジうれしー!」
宙を浮かぶ配信用ドローンに無邪気な笑顔を向けるティアに対し、視聴者は祝福のコメントを送る。
“パチパチパチパチパチパチパチパチパチ”
“888888888”
“おめでとー!!!!!”
“888888”
“888888888”
“本当にすごいです”
“888888”
“ティアっちの笑顔でなんか俺まで嬉しくなってくる”
このフロアは相変わらずの東南アジアの遺跡のような石造りの空間だった。
あきらかに人工物ではあるが誰が作ったのかなんてわからない。
「どこまで潜ろっかなー? 潜るのはいいんだけど帰りがダルいんよね。まあ行けるとこまで頑張るけどー」
まっすぐ進んだティアは遺跡の奥に着いた。
そこにはさらに下へと続く階段があった。
「んっ? んんんーっ?」
しかし、その階段は複雑に絡み合った巨大な木の根によって完全に塞がれていた。
まるで大蛇の群れのような太い根が何本も伸び、苔に覆われた石段の隙間からも細い根が無数に伸びていて下へ続く道がかろうじて見える程度だ。
「何これ? こんなんどうしようもないじゃん! せっかく頑張る気マンマンだったのに! ふざけんなよー! 管理者出てこーい!」
“アックスと斧スキルがあればなんとかなった?”
“手じゃどうしようもないな”
“ブリトニーでチクチク突いて穴あけるとか?”
“生木だから燃やすのも厳しいしなー”
“火炎魔法ならいける!”
“一箇所に火炎魔法当て続ければ穴開けられそう”
“炭化させていけば一人くらい通れる穴は作れる”
“ティアさん火炎魔法持ってますー?”
コメント欄には「火炎魔法」という文字が多く書き込まれた。
ダンジョン内で人間が発動できるのは、あくまでスキルだけだ。
ただ、火炎系、氷結系、稲妻系などの攻撃スキルは見た目が魔法そのものなので、それらはまとめて「魔法」と呼ばれている。
その中でも「火炎魔法」は使い勝手がよく、さらにダンジョン内での野営時に便利な存在なので、シーカーの必須スキルだった。
「火炎魔法? 一応持ってはいるけどさ……」
ティアがはじめてスキルポイントを交換して習得したスキルは火炎魔法だった。
習得してダンジョン庁を出た時の彼女は、かっこよくモンスターを魔法で燃やす自分の姿を想像してニヤニヤしていた。
「他に方法ないっぽいけど……どうなっても、知らねーぞ」
しかし彼女には魔法が使いこなせなかった。
本や動画の「サルでもできる魔法講座」のようなもので使い方を学んでもみたが、猿以下だったのか結局ダメだった。
――――でも、あーしも前とは違うし、バトルの時みたいに自信もって使えばイケんじゃね?
ティアは木から離れて、右腕を前方に伸ばす。
火炎放射器のような炎が自分の手から出てくるイメージをした。
ボワッ!
自分の手のすぐ前にイメージしたものとは全然違う、小さな火の玉が出現した。
その火の玉は木には向かわず、ヒューンと頭上へと飛んでいく。
「えっ、ちょまっ――」
10メートルほどの高さに到達した火の玉は今度は急降下してきた。
そして配信用ドローンに直撃する。
「うぎゃあああ! やっぱ猿以下じゃーん!」
火の玉が当たったドローンはバチバチと放電しながら墜落した。
ティアは慌てて落ちてきたドローンを掴んだ。
「ドロ……ンもう……メっぽいー! あーし、も……帰るー!」
100万人近くが視聴している配信画面は乱れ、音もノイズだらけになる。
そしてプツっと真っ黒な表示に変わった。
『このライブ配信は終了しました』
“どうしたら火球があんな動きになるんだよw”
“ここまで魔法センスのない人間はじめて見た……”
“何で魔法使わないのかなって場面何度かあったけどこれが理由かw”
“オチがひどすぎる……www”
“今回も唐突な終了かよwww”
“まあ、記録は更新できたし……”
“終わり方はアレだけど成し遂げた事は素直にすごい”
“これ誕生日配信だったの忘れてたw”




