日常
CuRe
作:うり南
プロローグ
序章
俺は目を覚ました。景色は変わらず青色の空に入道雲、それに風にゆれる田んぼの稲穂に山の木々、そして時々暗くなり自分の姿が見える。
俺はまだ目的地に着いていないこと確認すると、またまぶたを閉じて時がたつのを待つ。
駅に着いた頃には日も暮れて景色も赤く染まっていた。
ここからはまた三十分ほど歩かなければならない、この重い荷物を持ってだ。
俺は中に入っているお茶を飲み干し覚悟を決めて荷物を持ち歩きはじめた。
人は誰もいない、駅員すらいない無人駅である。俺は
改札口をでる、そのとき。
「遅い」
一人の女の子が見えた。
俺は帰ってきてしまった。
たった一つの目標すら達成しないまま。
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八月三十日
そこに待っていたのは高橋 朝鈴だった。
約四年ぶりの再会だったが全然変わっていない、というよりも
「この街って時間流れてる?」
「どういう意味かな?」
本人も理解しているのだろう、最後に会った小六の頃から何も変わっていないのだ。
しかし、さっきの一言で俺たちは昔の仲に戻れた。
「しいていえば髪のびた?」
「あんたは変わりすぎ、何この身長差」
「そういえば夕ちゃんは?てっきり夕ちゃんと二人で家まで行くと思っていたのだが」
「はいはい、そういうの普通姉の前でいわないよ、それにあんた今の夕見たら驚くわよ」
「えっ!?それはどういう・・・」
「あっほら来たよ」
赤く染まった景色の中、それ以上に赤く染まった顔、一瞬の笑顔、そして涙、さらに走って近づくにつれはっきりとわかる磨きのかかったかわいい顔に長い髪。
「かわりすぎだろ、あれ」
「はいはい、私をみて言わない」
「相変わらずなのか?」
俺がそういうと朝鈴は一瞬止まり。
「そうね、過酷よね、あんだけのめにあったのに、でもいじめだけはなくなった、あんた達があんなことしたからね」
予測はしていた。しかし、あまりにも悲しいげんじつである。
そして、長い髪の少女高橋 夕が俺の前にくる。
俺は昔のようにハンカチで涙を拭いてやる。
「あんたまだそのハンカチなの?あきれた」
俺は朝鈴の言葉を無視して夕に見えるように手を構えるそして手を動かす。
『夕ちゃん、久しぶり元気だった?』
そして、夕も手を構えて
『うん、元気だよ、でもすごく寂しかった』
そう、これは手話であり、耳に障害がある人の会話の手段である。
高橋 夕という少女は生まれつき耳がわるく、一時期回復のきざしをみせたが、今はほとんど聞こえない。
そして、夕は姉の朝鈴に向かって
『ずるいよ姉さん、コウ君と二人きりで話すなんてジャンケンに負けるんじゃなかった。』
ちなみに俺の名前は松葉 幸一であり、コウと呼ぶ人物はかぎられている。
「しかたないじゃない、コウいつくるかわかんないんだし、一応あの親父なにかいわないと心配するし」
「おまえ、夕ちゃんにそのまんま話して通じるわけ・・・」
『そりゃそうだけど、私もコウ君とすぐ会いたかったのに』
「なんで通じてるの?」
「あっそういえば、あんた知らなかったんだっけ、なんたってこの夕は私達の高校で頭が一番いいの、だから口の動きを見てどの言葉があてはまるかわかるの」
「そうかそうか、やっぱ姉とは違うな」
そういって俺は昔のように頭をなでる、嫌がられるかと思ったが顔を真っ赤にさせてとても照れている。
こういうのはとてもなごむ。
『じゃちょっとテストね、今から言うことを手話で姉に返してくれる?』
夕はうなずくと横目で俺を見ながら姉のほうに立って構える。そして俺は口パクで
「私、姉さんより美人なの」
『私、姉さんより美人・・・』
そこで動きが止まり夕は朝鈴のほうを見る、その姿は、まるで小動物が肉食動物をみるかの様だった。
俺は夕のてを引っ張り荷物を持ち走りはじめる。
不思議と重みは感じられず、どこまでも笑いながら走れるような気がした。
すぐに朝鈴に蹴られて止まってしまったがみんな笑顔で四年のブランクなどまったく感じなかった。
三十分ぐらいたつと周りはもう真っ暗で、しかし、外灯がなくても月明かりだけで十分で、月が大きく感じられる。
俺が住む祖父母の家と高橋姉妹の家は隣である、とはいっても三十メートルほど離れている。
俺は荷物を置き祖父母にこれからお世話になるため丁重にあいさつした。
しかし、二人とも笑顔で同時に言ってくれた。
「「おかえりなさい」」
と、今の俺にはとても暖かい言葉だった。
「本当は疲れてるから明日のほうがいいっていったんだけどね」
「大丈夫だ、幸一はまだ若いからな、久々に杯でもかわそうじゃないか」
ちなみに今から行われるのは高橋家での歓迎会らしい、俺は祖父母に先にいって挨拶しなさいといわれたのでさきに行くことにした。
田舎なので土地が安いのもあるがそんなこと関係なく異常なほどこの高橋家は大きかった、昔はよく迷子になり大変なことになった記憶がある。
俺はベルを押すとおそらく朝鈴か走ってくる音がした。
しかし、途中でこけたらしい、ドンとおとがした。
しかし、ドアを開けたのは朝鈴だった。
どうやらこけたのは夕らしい
「なんだあんたか」
そういってドアを閉める。
「まてまて、歓迎される人追い出しますか普通」
仕方なく俺は昔使った庭の木を上って二階の当時空き部屋だったところから入ることにした。
昔より多少簡単に上り入ることができた。
すると俺はクラッカーの嵐に遭うことになった。
どうやら最初からここで行うらしかった。
飾り付けもばっちりである。
「遅い」
「おまえにそれをいう資格はない、あっ夕ちゃん大丈夫だった?」
夕は鼻を赤くしていたが笑っていた。
「相変わらず夕には甘いよな」
「まったくだ、せっかく愛の男四人衆がそろったというのに」
「・・・うっ、それ気持ち悪い」
「久しぶり〜コウ〜、元気してた?こんなカッコよくなっちゃって、夕、コウ私にちょうだい」
夕は顔をぶんぶん横に振る、俺は夕の持ち物ではないのだが、
「香だよな?変わんないね」
「それ今の私には微妙に悪口と感じるんだけど」
「僕たち無視ですか」
「まったくだせっかく愛の男四人衆がそろったというのに」
「・・・もうそれいいよ」
「悪い悪い、えっと三人合わせて、金剛力士!!だったよな」
「一人もかすってない!しかも自信まんまんだし」
「ま〜しかたないそれも親友」
「悪い悪い鏡介久しぶり」
「おおーさすが無二の親友よ、俺たちの愛は夕など敵ではない!!」
「あと団」
「・・・ひさしぶり、会いたかった」
「そうだったよな〜俺たち四人の名前の頭文字を取って公共団体だったよな、当時は先生がつけてかっこいいっておもってたけどな、な力士」
「どっからそれくるよ」
その後みんなで思い出話しに花をさかせる。
夕にもわかるようにみんなある程度ゆっくり話す、ここらへんのやさしさは当時から変わらない、本当にいいやつらだ。そんな楽しいのもつかのま
「しかし、あれはうけたな、学校の池にドジョウ入れまくって、それにシート引いて土かぶせて」
「そうだ、あの男を落としたのだったな、まさにあの日から俺の愛は・・・」
「そうなんだ〜、じゃ鏡介が変なのはそこから?」
「もっと前からよ、私の記憶だと落としたの小四だけどこいつら幼稚園のころからべったりだし」
「そうつまり愛や友情にきっかけなどない」
「そういえば落とした男の名前なんだっけ?」
「ばっばか」
俺は必死に大河を止める、ちなみにこいつが先ほどの力士である。
「・・・さざなみ」
もう遅かった。
その名前を口の動きで確認した夕が急に泣き出し震えだしたのだ。
「夕ー!!」
「夕ちゃん!!」
みんなが叫ぶ、俺は必死に夕を抱きしめ頭を撫でる、聞こえないとわかっていても
「大丈夫みんなここにいる」
といい続ける。
「悪いがこれで今日は終わりだろ」
「・・・ごめん俺」
「謝ることなんてない、俺たちふざけてたけどさ、今
思うとそれにも意味があると思うそれがその時の夕を救ったのは間違いないんだ」
「さすが我が愛の親友、臭い台詞を」
こいつのふざけてるのに意味は欲しくなかった。
「じゃまた明日な、宿題たのむよコウ」
「俺にもたのむさらばだ親友」
「・・・ごめん、まかせるねコウ、バイバイ」
みんな帰ったと思ったが、香は残っていた。
「どうした香?」
「いや〜今思うとコウにとって夕の存在ってなんなの
かな〜と思って」
「なんだよそれ」
「当時はさ、幼なじみとか、兄妹とか、そんな感じかなと思ってたんだけど、コウが都会に出た理由も私達なんとなく知ってるからさ」
「・・・一度しかいわない、夕は大切な人で、掛け替えのない人だ」
なぜか俺は夕ちゃんではなく夕と呼んでいた。
香は一瞬固まり、笑って
「掛け替えならここにいるよ」
指をさした先にいたのは朝鈴であった。
朝鈴は顔を赤くし香を追っかける。
「じゃーね、私はあんたのこと信じてるよ、宿題みせてくれるとね」
俺はまだ震えている夕の髪をなでてさっきのようにつぶやく、しかし、心の中では
「ごめん、ごめん、ごめん・・・」
俺の手には何年か振りの涙が落ちていた。
八月三十一日
朝日で俺は目を覚ます。
最近あじわっていない心地よい風が来る。
俺は昨日のことを思い出し、はっと起きる。
昨日の歓迎会の会場だった。
足に重みが感じられる、夕がぐっすり眠っていた。
どうやらそのまま眠っていたらしい、腹の上には毛布があった。
俺は夕の頭をなでて起こさないように床に下ろす。
そして昔の記憶を頼りながらこの広い家のなかでリビングを探す。
「遅い」
「あきらかにおまえも今起きただろ」
朝鈴は目を赤くして俺の目の前に立つ。
「あれ、夕は?」
「えっまだ寝てるはずだけど」
「・・・馬鹿、あの子起きた時一人だと・・・」
「その癖まだ直ってなかったのか、まっ夕ちゃんらしいけど」
「あんたもそのちゃん付けはやめたほうがいいと思うよ」
「おまえにもつけようか?」
「なにいってんの、私先行ってるから」
そういってリビングに向かう朝鈴に
「あっあと毛布、ありがと」
「なっ!?」
そういって顔を真っ赤にさせて走っていく、ああいうところはかわいいのだが、そして俺は夕が起きる前に空き部屋に戻り起きそうもないのでしばらく頭を撫でていた。
十分ぐらいたっただろうか
「おっじゃましま〜す♪」
「夜桜さん!?どうもお久しぶりです」
この人は朝鈴と夕の母親高橋 夜桜さんである。
とても二人のしかも高校の娘がいるとは思えないほど若くて美人である。
そして、俺は夕の頭を撫でていた手を離しまるで犯人が武器を持っていないことを主張するかのように手をあげる。
「あらあら〜気にしなくていいのに、それにしてもこんなに大きくなって」
「昨日はすいません。せっかくお誘いいただいたのに」
「そんな堅くならないでもっと昔みたいに自分の家だと思って使っていいのよ、朝ちゃんや夕ちゃんそれに昼野さんもそれに私だってあなたを家族だと思ってるの、その証拠にほらこの笑顔見てみなさい」
とてもかわいらしい笑顔で俺も微笑んでしまう。
「じゃ夕ちゃん起きたらリビング来てくださいね、私料理頑張っちゃいますから」
「すいません何から何まで」
すると夕が目を覚ます。
俺と目が合う、そして顔を赤くする、自分の状況がわかりはじめるとものすごいスピードで手を動かす。
俺には解読できなかった。
「ふむふむ♪きゃーなんでコウちゃんがここに〜?」
そういいながら夕の動きにあわせて夜桜さんがまねをする。
「そうたしか私の好きなコウちゃんは都会に」
そういうと夕は夜桜さんにチョップをした。
「もう夕ちゃん冗談冗談、よかったね夕,コウちゃんず
っとあなたの髪撫でてくれてたのよ、あとで二人でちゃんとリビングに来てね〜」
そういって夜桜さんは降りていく、夕を見るとさっきより顔真っ赤だった。
俺たちはリビングに降りた。
「お〜う、幸一大きくなったな、どうだ一杯」
「お久しぶりですおじさん、その話しは後ろの二人に相談した方がいいですよ、それに今日は宿題みなければならないのでまた今度」
「そうかいそうかい、じゃそれまでお預けだな」
そしてまるで本物の家族のように一緒に朝食を食べる。
「今日みんな何時からくるんだっけ?」
「九時からだからあと三十分ね」
「そのまえにどっちか問題みして、どれくらいのレベ
ルかしりたいし」
すかさず夕が手を挙げる。
そして夕の部屋にむかう、朝鈴も一緒である。
「うちの学校レベル高いから驚くわよあんた」
とりあえずこいつや大河がいけるレベルだ、当然問題も予想通り俺が中学に終わらせていた範囲だった。
「しかし良くできてるな夕ちゃん、九割以上あってるじゃないか」
俺が頭を撫でるとまた喜ぶ。
「あたりまえよ私の妹だし、学年トップだし」
ない胸をつきだしていう
「ちなみにこれって復習だよね」
「なにいってんの今やってるところに決まってるじゃん」
明日テストがあるがどうやら問題なさそうだ、しかし
「あいかわらずのぬいぐるみの量だね」
「数えるとはてしないわね」
『50はあったと思う』
まっ女の子ということで、俺はそう結論ずけた。
「じゃそろそろ準備するか、空き部屋だよな」
「じゃ私リビング行ってるからお願いね」
『私も手伝う』
「じゃ、いこうか」
そういうと夕は俺の後ろについてくる。
そして部屋に着くと
「グーテン・モルゲ〜ン、我が愛の親友よ、そして夕よ」
「あれはやいな」
色々いいたいことはあるが鏡介はこんな所で自分を変えるやつじゃないからな
『おはよう』
「・・・おはよう」
今度は団が部屋のドアから声をかける。
ちゃんと玄関から来たらしい、そして俺はテーブルを出し準備する。
その十分後、香と朝鈴もそろい、俺と夕以外は宿題をやりはじめる。
「そういえば、コウ宿題の範囲見なくていいの?明日テストあるよ」
香が聞いてきた。
「さっき範囲みしてもらったし問題ない」
「さすが我が親友、これはどうかな?」
そういって鏡介が左手で色んな動きを見せる。
そしておれもそれを返す
「・・・さすがコウ」
「あんたよくそんなのわかるわね、わたしなんかなに
やってるのかさっぱり」
これは俺たちにとっての危機的状況においての暗号みたいなもので手話みたいに会話できる。
つまり鏡介と団はこれでテストを乗り切るのだ、ちなみに大河はまだ覚えていないらしい。
「とりあえずトランプでもしてようか夕ちゃん」
『大丈夫なの?見てなくて』
「問題ないだろ、見たところ朝鈴だけ心配すれば問題ないし」
そして十時前に大河が部屋に入る
「はい、いっちば〜ん!」
「「「「「・・・遅い力士!!」」」」」
「みんなでですか?」
そして夕が大河の肩をたたき
『うるさい力士』
「そんな夕まで・・・もういいよ力士で」
「じゃ【公共団体】じゃなくなるな」
「我ら三人で公共団でいいではないか」
「・・・三人、トリオ、ピッタリ」
「改名してまで僕、はぶかれますか」
「わかんないとこは聞けよ街案内してもらいたいし」
「コーウ質問、コウの好きなひとだ〜れ?」
それを香が言い放った瞬間視線が集まる。
「そりゃおまえ、みんなだよ」
「特に俺だ〜NO.1さ」
鏡介は叫ぶ。
「ごまかしてほしくないんだけどな〜」
香がつまんなそうにつぶやく、しかし、俺がいったことは事実で、こいつらとはもう離れたくないとほんとに思う。
そして、各々が宿題を始める。
さっき見たところ、香や団の結構まじめなやつらは残り二割ぐらいで、鏡介や朝鈴は半分ぐらいだった。
大河は昔から夏休みの宿題は最終日にやるものだと思っているからまったく手をつけていない。
俺と夕は神経衰弱をはじめる。
しばらくたつと
「・・・ここわからない」
「あっそこ私もわからない」
『悪いちょっといってくる』
夕はトランプを睨んで集中していた。
そして、俺は公式の当てはめやヒントを出す。
「・・・なるほどね」
「わかったわかった」
基本的に団も香も普通以上のあたまの良さをもっているため説明も簡単にすむ。
しかし、神経衰弱のおもしろさに驚いた。
なかなかの実力者同士だと残り二十枚近くになると一回のミスが命取りなのだ、そして勉強を始めてから一時間ちょっとすぎたところで鏡介が
「フフフ、愛の勝利だ」
「・・・うっ嘘だろ」
「ありえないよあんた、何者」
どうやら鏡介が終わったらしい、あいつは悪知恵も働くのだが集中するとなんでも出来そうな気がする。
そして、鏡介も神経衰弱に加わる。
いままでの俺と夕の戦いを見るかぎり負ける気がしない。
・・・甘かった。
「フフフ、またまた愛の勝利だ」
これで鏡介の二十連勝、こいつはそういうやつだった。
二十回勝負をしたが一回のゲームで俺に回ってきた回数は平均二回、勝てるわけがない。
昼がすぎた頃、香、団、朝鈴の順で宿題も終わり夜桜さんの作った昼飯を食べる。
「この後、街案内してくんない」
『もちろん』
「うんいいよ」
「我が親友の頼み断るわけがな〜い」
「まだ終わってないんですけど」
「・・・明後日、街祭り」
「そうだね、じゃ今日は学校にしよう、商店街はあん
まり変わってないし祭りの時だね」
「お〜い俺無視ですか」
「じゃ行きますか」
「おいてく気?」
「いままでふざけてた罰だろ」
「ひで〜な」
「ひどいのは、おまえの頭さ」
鏡介のこの一言で大河は静かになり机につく、帰ったあと大河は部屋の片隅で壁としゃべっていた。
「なつかしいなこの川」
『あいかわらず綺麗だね』
「夕、あんた毎日見てんでしょ」
『そうだけど・・・あっカワセミ』
「まるで俺様とコウの愛の形のようだ」
「・・・いま犬がションベンした」
「ぐっぐぬぅ」
「「「ははは」」」
やっぱりこいつらといるとおもしろい自分が自然体でいれる。
しばらく歩くと木造の校舎が見える。
おそらく二、三十分ぐらい歩いただろう。
「ここが我らが愛を育む学校であ〜る」
「外は汚いけど中は結構きれいなんだよ。ちなみに、一クラス二十人の四クラスなんだよ。」
『同じクラスだといいね』
「それは問題ない、なっ団」
「・・・ブイ!」
団はコンピュータを使うのが得意でこんな田舎の学校のシステムなら簡単に新入していじれる。
大河がこの学校に入れたのもおそらくそのおかげだろう。
「そういえば私達の担任はね・・・やっぱ内緒」
そういって香が口を閉ざすどうやらなにかあるらしい、ちなみにこいつらはみんな同じクラスらしい。
学校の屋上を見ると人影がみえた。おそらくこの学校の生徒だろう、朝鈴や夕と同じような制服を着ていた。ちなみに見たのはたまたまでそんな趣味はない。
そして帰り道色んな人に声をかけられる。
ほとんどが知ってるひとで懐かしがられたが、なぜか話題は【公共団体】のことばかりだった。
「たしかに小学校の頃街ではうちら有名だったがなぜこんなに」
「・・・これ見る」
そういってパソコンを開きあるHPをみせる。
そこを見ると「【公共団体】のすべて」と書いてあった。そこにはメンバー紹介や活動内容などが書いてあり俺がいなくなってからも【公共団体】は色々やっていていまではこんな田舎なので知らない人はいないらしい。
「俺様とみんなの愛のあかしだからな」
街の人達が俺を覚えてくれていたのにはうれしかった。
そしてあたりが暗くなる。
今日もまた歓迎会が行われる。
昨日はつぶれてしまったがとてももりあがる、大河の気分もあがっていた。
「やっぱ友と食うと飯はうまい」
「だれかこいつの友達の人」
だれもしゃべらずし〜んとする。
「いいさいいさ食ってやる飲んでやる。おじさん一杯くれ〜」
そういって大河は一杯飲んでダウンした。
みんながたのしんで歓迎会もおわりみんな家に帰る。
俺は明日から学校なので早めに寝た。
昔の仲間との学校生活がはじまる。
九月一日
朝、目覚ましが鳴る前に目が覚める。
緊張でもしているのだろうか、確かに都会にいた頃よりも学校に行くことは楽しみである。
家のチャイムがなる
「おやおや、前のように迎えに来てくれたのかい?お〜いコウちゃん、おきなさ〜い」
「は〜い」
そして俺は、何も入っていない鞄、今まで着ていたブレザーとは違う学ランに身を包みリビングに降りる。
「遅い」
「いや、それはない」
現在の時刻七時、学校には三十分で着く時間にはかなりの余裕がある。
そして夕に肩を叩かれる。
『コウ君おはよう』
「ああおはよう夕ちゃん」
そして、朝飯を食べる。
「そういえば、あんた明日からの飯どうすんの?」
「学食があるんじゃないの?」
「あんたにぶいね〜、夕いってやんな」
『明日から私がお昼ご飯作っていい?』
「うん?ああもちろん」
俺は朝鈴に目で食えるのかと合図する。
明日の楽しみと返された。
楽しみと不安が三対七ぐらいだ。
そして、学校に行き始める。道は昨日通ったので覚えている。右には朝鈴、左ちょっと後ろに夕である。
八時前に学校につく。
「校長室ってどこ?案内してもらえる?」
「いいよ〜」
『こっちこっち』
夕が袖を引っ張る。
入って階段を昇り二階にいき奥に向かう、途中に職員室やコンピュータ室などを説明してもらいながら校長室前まで向かう
「じゃここでまっててくれ」
「『うん』」
そしてノックをして校長室にはいる。
「失礼します。東京から来ました松葉 幸一です。今日からこの大曲高校でお世話になります。」
この高校同様性格が大曲してそうなはげの校長が堂々とせきに座っていた。
「おお、君か話しは聞いているなんでもあのふざけている【公共団体】とかのメンバーらしいな」
俺は危うく殴りにいきそうだったがこらえた。
「うちの学校は少数精鋭だから優秀な生徒だけをそろえている。君の学年だと高橋 夕君とか水村 香君、男子だと気にくわないが森 団君だ君にはこれぐらい目標にしてもらわないとな」
「優秀ね〜」
俺は小声でつぶやき、ふと大河の顔を思い出す。
ちなみに俺の都会にいた時の学歴は全てない状況でこの学校にはいった。
むこうでは成績だけで人を区別する。
この人物もかなりの可能性でそうなのだろう。
「あと君のクラスの担任はこちらにいる超優秀な金沢 良子先生だしっかりまなべよ」
「よろしくねコウ君」
「・・・よろしくおねがいします」
コウ君!?こうよぶのは昔の知り合いだけだ、しかも仲がかなりいい人だけである。
俺は色々悩みながら校長室を出る。
その時・・・
六年前、それがその人と会った最後の日だった。
出会ったきっかけは、当時あのクソヤロウとやりあったときに両方ともただのけがではなかった。
鏡介が出掛けていたためにねらわれたのだ。
そして俺は、川で傷を冷やす。
ものすごい痛みがはしり視界が薄れる。
「ちょっと・・・君、大丈夫」
そのとき現れたのが彼女、金沢 良子である。
その後、事情を説明した後彼女は親身になり相談にのってくれたのだ。
時には褒めてくれ、怒ってくれた。
当時大学生の彼女は【公共団体】や夕などの仲間にとっても姉の様な存在であった。
そして校長室を出た時
「良姉さん」
「その呼び方懐かしいわね、まっ昔の知ってる人なら
今でも大体そう呼んでるけどね」
「あんた鈍いのによく気付いたね」
「一瞬わかんなかったけどな」
「そうそう校長あーいってたけどコウ君のことだから頭いいんでしょ」
「ま〜それなりに」
「あんな校長無視したほうがいいよ」
「先生がそんなこといってていいの?」
「そこら辺が大人として生きてく方法ね」
そんな話しをしながら2年A組の教室に向かう。
もちろんあいつらのクラスで成績順でクラスを組んでいるらしい、もちろん大河は色々な方法で残らしているらしい、本来ならこの学校にすら入れない頭だからな全員A組にいるのは校長がひいきしてくれるかららしい。
そして教室の前につくしかし、中にははいれず廊下で待機である。
鏡介や団に馬鹿にされながらも待つ。
そしてチャイムがなり少し経つと中に入るように促される。
中に入るとかなりの歓声で盛り上げられる。
なかには知ってる人もけっこういた。
知らない人でも【公共団体】の事を知ってる人はほとんどなので盛り上がりはよりいっそうあがる。
「コウ君はいあいさつして」
良姉さんに言われ自己紹介を始める。
「みなさんはじめまして、ただいま紹介にあずかりました松葉 幸一です。都会の方からやってまいりました。何人か顔見知りの人もいますが、みんなが仲良くしていただけるとありがたいです。」
「おいおいなんだそれ、我が親友が他人行儀か?」
「うるせ〜よ、しゃーない、・・・はい真面目君ここまで、みんな久しぶり元気してたか?懐かしすぎだよこれみんなかわらなすぎ、良姉さん、俺の席どこ」
「あ〜そこね窓際の前から二番め」
そこの席は後ろに団、右後ろに鏡介、隣に夕、前に朝鈴、右前に香と全方位知り合い囲まれていた。
大河は廊下側の一番後ろ、団いわく【公共団体】が前一緒にいた時校長にねちねち文句言われたらしい。
席に着くと
「これが・・・愛の力」
鏡介が叫ぶ。
「いや、おまえら自分でこうしただろ」
「・・・先生に許可とった。」
色々言いたかったが気にしないことにした。
ガラガラガラ
「おはよさ〜ん」
大河が教室に入る。
「おせ〜よ力士!」
「そうだよ力士!」
「帰れ力士!」
「まったくだ我が愛のしんゆうであ〜るコウの自己紹介にこねえやつなんて原子以下さ」
「それ〜存在してないって、しかもなんでみんな力士の事しってんだよ」
「フフフ、これが愛」
「なさけない形ね」
朝鈴がちゃっかり突っこみをいれる。
そして、校長のトッテ〜モありがたいお話を聞きながら体育館で色んな人に話しかけられ【公共団体】のすごさに驚いたりもして、テストがはじまる。
教科は三教科、ここのテストは変わっていていきなり国語、英語、数学の三枚の問題用紙と三枚の解答用紙を一緒にくばられ、百五十分間一気にテストをするというものだ。
一応休みは各自でとってもかまわないが他人との会話はいっさい禁止というものだ、さらに終わった人から帰れるのだ。
俺はさっそく始める。
左手で後ろの二人に暗号送りながら右手で書くので、かなり字がきたなくなってしまっていたがそれは仕方ないであろう、そして二十分後。
「良姉さん、終わったよ。」
「ぎょっ!?」
みんなの目線が来る。
「まさか全教科?」
「そうじゃないと回収してくれないんでしょ」
「ま〜あんただしね、でも仲間テスト終わってない
よ。」
「屋上で待ってますよ。」
「じゃおまえら後でな」
そういって準備をして教室を出て屋上に向かう。
「おやおやトイレかね、テストせいぜいがんばるんだな」
校長がそういってきたが俺は一礼して屋上に向かう。
四階のこの校舎、五階のこの屋上は高く、風も気持ちいいらしい、そしてその扉を開ける。
綺麗とはいえないが落ち葉や虫もあまりなく横にはなれないが座ることが出来る。
そこに
「遅いな我が親友」
「俺、おまえが時々人間であることを疑うんだが」
「フフフ、褒め言葉なんて・・・照れるじゃないか」
そういって鏡介は顔を赤くする。
「おまえテストは」
「我が親友が暗号してくれたからな八割以上いけばいいのさ、これもまた愛」
「他のやつは」
「おそらく、団はあと二十分ぐらいだろう。」
そういって座ろうとした瞬間おれをみて
「ちょっとまってろいま畳を取ってくる。そう、まさに愛は光を超えて」
そういって鏡介は階段を飛び降り、愛は無敵な〜り!と叫びながら走り始める。
俺はふと前の空を見る。夏の空の象徴である入道雲、それに真上に昇ろうとしている日差し、そして、金網の外に見える女の子、自然である・・・
「女の子〜!?」
俺は思わず叫ぶ、金網の外には小さなスペースそして、そこには女の子が立っていた。
その女の子は一瞬上をみて下を見る。
その女の子はおそらく一年であろう、制服の肩にあるラインが黄色なのだ、青が二年、緑が三年だから間違いない。
しかし、その一年の女の子あまりにも危険な状況だ、ここには俺しかいない。
幸いその女の子は俺に気付いていない。
俺はゆっくり近づく。
そして俺は
「おちつくんだ水玉の君」
おいおい違うだろ、思わず自分につっこみを入れる。
「ひゃう!?」
その女の子はこっちを見る。
むんすんでいたのか髪はばさばさ、所々制服は汚れていて、目には涙、そして少女は少し考えてスカートをばっと抑える。
いやいやそうではない実際俺は決して見てはいない。
とりあえず落ち着く。
「ハジメマシテ、君の名前は?」
こんな時どうしていいのかわからない
「・・あぅあ」
その時、強風が吹き手を放していた女の子は体重が後ろに俺はとっさに手を出しなんとか支える。
「あの、えっちょっと」
女の子はあわてる。
そのとき
「我が親友よ、茶道部の畳と柔道部の畳はどちらがこのみだ」
そういって十枚ほどの畳をもっていた。
俺は冷静に・・・
「柔道部・・・のは臭いだろ」
危うく臭い思いをするところだった。
「とりあえずこれをなんとかしてくれ」
すると鏡介
「・・・そこの女、な〜にコウの手をにぎっているんだ?」
鏡介はそういうと俺の視界からはずれて俺の目の前にでてくる。
「せめて人間技つかえって」
「あとこの子落とすなよちゃんと助けろよ」
「フフフ愚問さ、ほらもうすでに」
よくみると俺の手はなにもつかんでおらず、女の子は
畳の上に座っていた。
「助かったぜ鏡介」
「当然だ」
「・・・鏡介?え〜まさかあなた鏡介先輩ですか?【公共団体】の嘘みたい信じられない」
鏡介の方を見て、アイコンタクトで知り合い?と聞いてみた。
鏡介は少し考えたあと
「まさか、日向妹か?」
「はいそうです。うわうわうわ〜話ししちゃったよ憧れの【公共団体さん】と〜」
「えっとあの〜」
「なんですかあなた?人が喜んでいる時に」
ものすごい酷いことを言われた。
「おいおい、我が愛の親友であ〜るコウになんて口の利き方だ日向妹、コウのことを馬鹿にしていい人間はいてはいけない」
「鏡介先輩が親友っていってるってことはまさか!?」
そういって女の子は俺に抱き付いてきて
「た、じゃなくて幸一先輩だ〜」
今、最悪なやつと間違えられた気がするが、俺はそんなことを考える暇もなく、抱き付いてこられたせいで後ろに倒れ気を失ってしまう。
九月二日
「おし今日はなにやるか〜」
「そうだな〜ふむ、愛について語ろう」
「・・・なんかいつもやってること同じだね」
「いいんだよ同じが一番さ、そう思うだろ日向」
「ああ、そうだ、変わることも大事だが、変わらないというのはもっともむずかしいことだからな、それができるのはすごいことだとおもう。」
『なんか詩人だね』
「運動神経抜群、容姿最高、なおかつ誰にでもやさしく、詩人、日向なんであんたこんなやつらとつるんでるの」
「だって楽しいじゃん」
・・・
目を覚ます。
後頭部が痛む。
目の前には俺の部屋の天井。
俺は昔を思い出していた。
それはきっとなにかをうったえているのだろ、夢とはそういうものだ、夢にも意味がある。
これも日向がいっていた気がする。
ふと横を見る。
手に暖かい感触、そして間の前に女の子、目が潤っている。
「よかったよ〜、幸一目が覚めたよ。もうだめかと・・・」
「わかったから手を放してくれないか水玉のきみ」
「あぅあ〜、それもういやだよ〜」
その時ドアを朝鈴が開ける。
「遅いよあんた今何時・・・シツレイシマシタ。」
そして階段を下りる音がしたのち
「つるおばさん!!!あれ何!!」
この子は物扱いかよ。
ちなみにつるおばさんとは俺の祖母である。
そして、階段の上がる音がして夕が入る。
口をパクパクさせ目を潤し
『しんじてたの・・・』
手話をしながら後ろを振り向いたのでなんていったかわからない。
夕は階段を降りる。
途中でこけたのはいうまでもない。
「とりあえず事情説明だな、しゃべれるえ〜っと、
み・・」
「小春、日向 小春・・・です。」
そして、今度は朝鈴、夕が一緒に部屋に入る。
「とりあえず、説明してもらいましょうか、この女はなに?」
コクコクコク、夕も頷く。
「フフフ、それについては俺様が説明しよう。」
そういって、上から落ちてくる。
「ボ〜ンジュ〜ル〜、諸君」
「おまえどこにいた?」
「天井に張り付いていた。」
「やめろ、黒いカサカサするやつ思い出す。」
『いいからはじめて』
夕が涙目でうったえるので、鏡介に話をすすめさせる。
何カ所かおれが訂正してなんとなく伝わったと思う。
どうやら学校の屋上から俺を運んだのは鏡介と後からきた団で、鏡介が見張る条件で小春の看護を許可したらしい。
「そういえば日向って」
俺が説明の終わった鏡介と、小春の方を向き訪ねる。
「そう、あいつだよ日向 狼」
「妹がここってことは兄もまさか」
俺がそう聞いた時みんなが静まりかえる。
「朝夕、日向妹つれてちょっとでといて」
「あ、あの〜私なら大丈夫です。それに幸一先輩には
ちゃんと本当の事を知っていて欲しいし」
「本当のこと?」
「コウ、おまえの親友である俺様がある程度短く話すぞ。」
そういって鏡介は床に座り俺を見る。
「結論からいうと、あいつは死んだ、おまえのいうとおりこの学校に入り、たしか明後日が命日だったはずだ。」
そういうと小春がうつむきはがら
「コク」
頷く。
「あいつとふざけあった俺たちならあいつのすごさわかるだろ、あいつは、陸上で活躍していた。大会予選で全国大会のラインをクリアしていたんだ、それでも変わらず俺らとふざけ合ってたんだ、初めてあった頃一人を好んでいたあいつがだぜ」
鏡介がめちゃくちゃ真面目に話している。
「ちょうど一年前の明後日、うちの学校の文化祭があった。日向妹、こいつもこの学校を希望していたから兄に連れられて一緒に向かったんだ。あのうちの街の商店街の外にでっかい十字路があるだろ、信号無視だった。その男は謝った。しかし、なにも取り戻せなかった。唯一助かったのはこいつの命」
「うぐっ・・・ひっぐ」
小春が泣き始める。
「本当なら日向妹もあいつ狼も助からなかったはずだった。日向妹の臓器はほとんどがぼろぼろ、逆に狼は脳に影響がでていた。そこでさあいつこういったんだよ「小春の命・・・俺の命」最後まで詩人だったさ、あいつはそういうやつだった。本当なら脳も働かずしゃべることなんて出来ない・・・奇跡とよべるものだった。」
そういいながら鏡介の目にも涙がでる。
「結局俺が最後にみれたのはあいつの写真だけだった。確かにあいつは一人の命を助けた。でもそれはこいつにとってもきつい生活のはじまりだった。肉体的には拒絶反応も見られずすぐに体力も回復した。しかし、二度と兄に守ってもらい一緒に歩くことは出来ない、そしていつも言われる。兄が生きていれば良かったのにと・・・」
「おいそんなこと」
俺はそういって小春のほうを見る。
「いいんです。本当のことですから」
そういって涙を拭いながら話す。
「しかし、それはあまりにも・・・」
そしてみんなだまりこむ。
少しすると俺はあることを考えついた。
「鏡介、今俺が考えていることがわかるか?」
俺が考えたこととは、今日の祭りで小春も入れて暴れまくり、さらに今後【公共団体】をつかって大人からのいじめを減らす
「あ〜たりまえだ。今日の祭りでも日向妹入れて暴れまく〜り、さらに今後【公共団体】をつかって大人から〜のいじめを減らすとかそんなもんだろ我が親友はそういう世話焼き多いからな」
みごとに当てた。
それを聞いていた小春は
「はうわうわ〜、いいんですか?」
「そっちがめいわくじゃなきゃな、な〜おまえら」
そういうとドアが開く音、そしてなだれ込む人々
「ははは、ばれてたみたいだね」
「・・・おはよう」
「おはよう、香に団・・・それに食いしん坊」
「ね〜誰それ?僕?僕なのですか?」
大河、もちろんこいつだ
「あと夕ちゃんも理解したよね?」
『うん姉さんが教えてくれた』
そういって朝鈴を見る。
「なによ、文句ある?」
「今日は午前は学校だから午後の2時に校門前集合!
絶対こいよ水玉」
「はう!?」
「サイテ〜」
『えっ、なにがなにが?』
「フッ、愛」
「・・・わけわかんね〜」
「ね〜ね〜、早く学校行かないと、うちらはともかく
この子が」
時計の針を見ると八時十分、学校までは二、三十分、つまり
「鏡介、三人ぐらい運べるか?」
「フフフ、愛の力があればいける!!!しかし、いま
はハングリーだ、おまえが愛を永遠に・・・」
「・・・走る」
「だな、とりあえず俺、鏡介、大食らいと朝鈴はともかく、残りの三人は・・・」
「はうわ、ひどいよこう見えても私、走るの速いんですよ」
と小春が言う
「どれくらい?」
「五キロなら十五分切れる」
「はい決定、じゃ夕ちゃんは朝鈴に、香は鏡介、団俺に付いてこい」
「しきるのがいるとちがうね〜普段ボケボケなのに」
「・・・時間」
こういってる間にも時間はすぎる。
「ダ〜ッシュだ、我が親友達よ」
「小春ちゃんもほら」
そういって手を引く
「あの皆さんわたしのことは呼び捨てで呼んでください、あと私も友達でいいんですか」
「フフフ、愚問よ日向妹」
「あんた人の話聞けないよね」
「私は香さんでいいよ」
「・・・先輩面」
「俺の名前は・・・」
「大食らい」
「まだいうか」
そういってかける。
少し涙を浮かべていた小春は前を走り後ろを向いて
「先輩、覚悟してくださいよ。私あまえまくりますから」
「・・・条件がある。今度狼に会わせろ」
「もちろんで〜す」
そして、俺たちは走る。
それぞれが足りないところを補い、みんなで遅刻しないために
「お〜い、待ってくれ、仲間だろ〜」
遅れるのは大河、実は夕より遅い
「ぎりぎりねあんた達、二日前なのに」
良姉さん、が俺たちが教室に入って十秒後に来た。
「あいつ、速かったな」
「さすが日向妹だ」
「・・・よくしゃべれるね」
「あれ、菊地くんは?」
「菊地って誰?」
「さ〜?少なくとも我が親友にそんなやつは?」
「え〜っとつっこみいないな〜、ちなみに大河の姓だ
よ」
香がそういってくれた。
「先生〜、やつなら先の戦いで燃え尽きました」
それを言った瞬間、教室から大爆笑
今日は授業はなく、ただ話で終わる。
あとどうやら昨日のテストの採点が終わったらしく先生がみんなに点数を述べる。
「明日、順位が張り出されます。校長には明日までばれないので今自分の点数聞いた人はいいわけでも考えなさい」
ちなみに俺は二百九十九点、三百点満点だった。
さらには夕、鏡介、団、香は好成績を収める。
あっという間に学校も終わり、俺たちはいったん着替えたりするために帰路につく。
「おまたせ〜」
香も来た。
これで人数は俺、団、大河、香である。
どうやら夕と朝鈴は浴衣を着るらしい、そのために先に来た。
「俺を忘れているようだ」
そういって後ろから沸いてでる。
「悪い悪い、登場はもっと考えようぜ」
「ハ〜ハハハそうだな、しか〜し!!!きょうは祭り
そこでフフフ」
不適な笑いを浮かべる。
「しかし、香も浴衣似合うな」
「・・・俺もそう思う」
「うわっめずらし、この二人が褒めた。」
「馬子に〜も衣装!!!・・・グワッ」
「バ〜カべたすぎだって、本当でもいっちゃだめだ
し」
「馬鹿に馬鹿といわれた・・・無念」
そうして鏡介は倒れた。
その後、夕と朝鈴登場
「「遅い」」
俺と香はいつもの朝鈴の口癖を使う。
「うるさいわね〜、浴衣着てたんだからしょうがないでしょ」
「夕ちゃん、すごい似合ってるよ。あっちなみに朝鈴も」
『ありがとうコウ君』
さらに
「すいませ〜ん遅れました。」
そういって小春が走る。
「うわわ、止まれ、止まれ〜、はう」
ドス〜ン、俺は小春とぶつかり吹っ飛ぶ。
夕がものちなみに朝鈴もである。
しかし、俺はなにもしてないぞ。
「すいません、すいません遅刻しそうだったので」
「・・・もう五分ほどすぎてるけど」
「はう!?そこは忘れて〜」
『コウ君、私、金魚すくいに綿飴にくじ引きに盆踊りにヨーヨー釣りにリンゴ飴に焼きそばに・・・色々したいな〜』
「そんなに!?回れるかな?」
『したいな〜』
ものすごい威圧感が俺を襲う。
「・・・いこっ」
ナイス助け船、団。
「先輩、先輩似合ってます?」
「ああ」
「よかった〜自信なかったんだ〜、あう〜しあわせで
す」
商店街に入る。久しぶりの商店街はこの町の人以外にも大勢の人が来る。
名物の打ち上げ花火一万発があるからだ。
とはいってもどれくらいすごいのかわからない、しかしとても綺麗だった記憶がある。
「じゃ暴れますか」
「おう!まかせろ我が親友」
「・・・なにしようかな」
「あれ!?夕は」
いつのまにか夕はいない
「あっあそこ、あそこです」
小春が指さした先には夕とヤンキーおそらく別の街のナンパ三人組だ。
おそらく俺より年上だろ
「フフフ【公共団体】復活!!!」
「許可する」
「人変わっちゃったね〜」
「・・・夕がからむとね」
「僕も加わるでしょうか?」
「いら〜ん!!!」
「ガビ〜ン」
そういって大河はへたり込む
「いつもどうり周り見といて」
そして、俺、鏡介、団が向かう。
その途中、おじさんに声をかけられる。
「おう幸一の坊主じゃね〜か」
「八百屋『太郎』の次郎さん!?」
この人は祭りにすべてをかける有名な親父さんである。
おれが前に見た時は金魚の巨大化に成功して巨大な金魚を作ったのだ。
結局誰も救えなかったのだが
「どうしたんで〜い怖い顔して、このヨーヨーを持っていきな」
みるとまわりは水だらけ、顔に水がたくさんついてる人があちこちに
「今年は必ず割れる水風船を自作してヨーヨーにしたのだ」
相変わらずわけのわからん。
「じゃ次郎さん三つ、あとで金は渡します。」
「昔のよしみだもってけ泥棒」
そういって渡される。
いまにも割れそうだ。
ちなみに香や朝鈴、小春も結構人気があるので俺らの戦いを見といてもらう。
そして鏡介が
「フフフ、我が親友にてを出すとはいい度胸だ」
「なんだてめ〜、今からおれはこの子をナンパすんだきもいこといってね〜で帰れ」
その言葉に鏡介は切れる、しかし俺を見てなんとか抑えた。
そして涙目の夕に
『そこに朝鈴とかいるから俺が目を引きつけてる間に逃げろ』
『わかった・・・でも怪我しないでね』
『当然』
そして俺は
「いくぞ〜」
そういって俺は水風船を二個投げる。
それはみごと夕を抑えていた二人の顔に当たり夕は逃げる。
「鏡介」
「フフフ、ハ〜ハハ、俺様を馬鹿にしたなその罪はその汚い顔の骨をぐちゃぐーちゃにするまでしてやろう」
そういって一番強そうなやつに拳を入れる。
鏡介は負けない、それはこの町にいるやつ、都会で色々見てきた俺でも確信できる。
俺とふざけ合うだけでも俺はギリギリなのだ
「てめ〜兄貴になにしやがる」
俺は今発言したモヒカンヘッドの肩を叩き
「夕の恨みだ!!!」
「フフフ、あいつが夕と呼ぶ時は本気だ、死んだなこいよあんたボクサーかなんかだ〜ろ」
「そこまでわかっていて俺を殴るか、けっ気にいらね〜」
「おまえに気に入られる必要など・・・皆無!!!」
モヒカンは拳を振るう、鍛えてはあるらしい、しかし俺も昔祖父の影響で武術をたしなんでいた。
モヒカンが一発二発と俺に近づき、三発目の時俺はやつの手をつかみその勢いのまま相手を後ろに転げさせる。
さらに立ち上がってきたモヒカンに俺はある臓器に向かって拳を振るう。
するとモヒカンは倒れうなることもせず、じたばたする。
おそらくしばらくは立てないであろう。
昔独学で医学を学んでいた俺の脳が役に立つ。
「・・・ブイ」
そういったのは団である。
いつのまにか相手は倒れていた。縄でグルグル巻になっていた。
「愛の勝利さ、どうするよこいつ」
「うっ、ちっちひろさん」
俺のとなりのモヒカンがしゃべる。
そこには人間と呼べない姿の宇宙人いや宇宙人がかわいそうなぐらいボロボロだった。
「とりあえず、このちひろちゃんとその仲間達を縄で縛って」
団がすぐにグルグル巻にする。
そして俺はちひろの持ってる鞄の中にこっそりさっきもらった水風船をいれた。
「コ〜ウ〜警察つれてきたぞ」
大河が来た。
「三年に一度の大活躍だな」
「ガビビーン」
「どうかしたのかねどうしたこれは?」
縄で縛られた三人組をみていう、さらに俺たちをみて
「お〜【公共団体】か〜?なつかしいなどうした?」
「お久しぶりです。」
「こここここ【公共団体】!?まさかあの?」
三人組のモヒカンがおどろく
「とりあえずそこのヨーヨー盗んでいたのをみたんで、あと夕ちゃんがナンパされたので」
「それじゃ〜しかたない、ほらっしっかりあるけ」
「おっおぼえてろよ〜」
「達者でなモヒカン千尋ちゃん」
「「くっつけんなくそ〜〜」」
暴れた俺たちの周りにはたくさんの人だかり、とりあ
えず大河をおいて逃げた。
「うわっおいてかれた」
「わうわうあ〜すごいね〜驚いたよ」
『コウ君大丈夫?問題ない?』
「問題ないって、あっこれ」
そういってどこかでかったある物を手のひらにのせる。
『これっ、髪飾り?まさか』
そうこいつの髪には小五までつけていたのだが、そこはいろいろな事情が加わる。
「あ〜その、えっと、普通の店で買った方が良かったかな、そうだよねごめん返してくる」
そういって取ろうとすると、顔を横にふり涙目になり顔を真っ赤にさせ
『これがいい、これでうれしい、これじゃなきゃやだ、もう二度とはなさない』
そういって髪につける。
「似合ってるよ」
そういうと顔を俯せる。
「なになにこっそり何やってるの?なにやられたの夕?」
「・・・いじわる?」
「フフフ、俺のあいが勝ったのか?」
「たぶんあんたの負け」
そういって周りに冷やかせられる。
たくさん楽しんだ、夕が希望していた物に加え色んな人と暴れたり、輪投げとか、射的などでとても高いものをねらって俺がはずしたら鏡介が取り、みんなで笑い会う。
そして、花火大会が始まる。
何百発か打たれると職人の名前が呼ばれる。
そのあとに玉の名前や説明がある。
しばらくすると司会が
「次の職人は加藤 鏡三郎、玉名は【公共団体赤光】」
「おいこれって」
「フフフ、マイファザーさ」
そしておやじさんはしゃべりはじめる。
「次にうったやつは【狼青光】青と言いながら緑色に見えるやつですわ〜、息子が作れ作れ言うもんで徹夜の作業だったんです〜」
とてもなまりのあるしゃべり、でも小春は
「あうあうあう〜」
「鏡介まさかこれ」
「フフフ、人の愛も美しい」
その緑色は二発しか打たれなかったが、一つの玉を二つ目の玉が包むように見えた。
「楽しめた?」
「もちろんさ我が親友よ」
「・・・おまえじゃない」
「つまれなかったかな?小春ちゃん」
「ブンブンブン、すごかった。狼兄さんと遊んだみたい」
おれはよりつらい思いをさせたのではないのだろうか?
少し悩むといつの間にかみんなに睨まれる。
「幸一兄さん、下向いてたら花火みえませんよ」
「「「兄さん!?!?」」」
「フフフ、ブラザ〜」
「ちょっと小春ちゃん?」
「だめですか?」
みんなに睨まれる。
特に朝鈴には、もう食われそうなほどに
「ま〜好きにすればいいさ」
「あう〜やった〜」
そして花火も終わり、楽しかった祭りも終わり、明日もこの仲間に新しい仲間も入りもっと楽しい日々に期待しながら目をつぶる。
九月三日
誰もいない、独りぼっちだった。
しかし、誰かに頼ろうというわけではない、誰かと仲良くしようというわけではない、ただ、会いたい、君に会いたい、昔近くにいすぎてわからなかった君の存在の大きさ、だんだん少なくなっていく君との過ごせる時間。
・・・君に会いたい
目覚ましで目を覚ます。
嫌な夢を見た。
おそらく都会にいた頃の夢だろう、あまりいい思い出はない。
今日は小春も・・・鏡介もこの部屋にはいなくてほっとした。
下からは笑い声、朝鈴と夕がもうきているのだろう。
「遅い」
ちなみに今の時刻は七時である。早くいってなにをする気なのか俺にはわからない。
祖母のまさに朝食といわんばかりの和食に迎えられる。
登校中は相変わらず他愛もないことを話す。
こんな夢を見たとか、この人がね〜など誰か一人が話し他の二人で返す会話だった。
今朝あんな夢で目を覚ましたからだろうか、いつもよりしっかり会話に参加する。
『そういえば来週から修学旅行だね』
「へっ!?」
俺は驚く、当然だ何も聞いてなかったから。
「へってあんた知らなかったの?」
「来週って三日後じゃん」
ちなみに今日は金曜日、明日学校が午前で終わり、そこから二日後である。
「あんたどこ行くか決めなさいよ」
『コウ君私達と東京いこ』
「えっみんな同じ場所じゃないの?」
「うちの学校は大阪、東京、福岡、台湾から一つ選べるの、ちなみに私達は東京、あんたのせいで」
理由はなんとなくわかる。
俺が東京にいたからみんなでいっておどろかそうとでもしたのだろう。
そして、おれは夕に肩を叩かれる。
『実は最初に東京行こうっていったの姉さんなんだよ』
すると俺はたまらず笑ってしまった。
教室に入るとみんなその話題で盛り上がっていた。
学校全体で行くため、高校生活で三回も修学旅行にいけるのだ。
ちなみに、小春は昔住んでいた福岡、良姉さんは台湾らしい。
俺はみんなと一緒に東京に行くことにした。
あまり気が進まないが、みんなと一緒ならきっと何か変わると思ったからだ。
昼に校内放送がなる。
「え〜あっ、おっほん、みんな聞いてくれ、今から校長先生のありがた〜いお言葉がある。みんな心して聞くように」
「え〜ただいまからそれぞれの学年の一位〜五位までのテスト結果を発表する。」
どうでもよかったが、昼だったのでみんなで食事を取りながら話していた。
「・・・次〜二年生、一位は・・・へっ?いや、なんでもない、松葉 幸一、点数は二九九点」
テストは三百点満点なので、一点落としたということか、クラス内では俺以外は盛り上がっている。
「二位は高橋 夕得点は二八〇点、前回もすごかったが今回もよく頑張ったといっておこう」
さらにクラスが盛り上がる。
俺も自分のときとは大違いに喜ぶ、本人の顔はまっかだった。
さらにその後、鏡介が二七一点で三位、そして二六九点と僅差で団と香が同率四位だった。
上位が【公共団体】関係だったことに校長はいらつきを隠せなないくらい変な口調だった。
そして、一年の順位が呼ばれ校長の話が始まる。
そして、校長がぐだぐだ話し始めてしばらくたつ。
そのある一言に俺たちは行動を起こした。
「我が学校は勉学が大事だ、それが出来ない奴らでもスポーツぐらいはできるはずだ、なのにたとえば一年の日向 小春とか」
俺は鏡介、団を見る。
「あの〜僕のほうも見て欲しいんですけど」
「あ〜悪い、今回は待ってろ」
「そんなの関係あるか〜僕もいくぜ〜」
「だまりやがれコノヤロ!!!」
鏡介がおもいっきりガンつける。
「ひ〜」
大河はおもいっきりビビッて後ろに後退し窓から落ちる。
「うわ〜」
「よし、いくぞ」
「おい、まかせろ我が親友」
「・・・まかせろ」
たぶんきっと、ここ三階だけど彼は生きているだろう。
俺たちは放送室の中に入る。
「なんだね君たちは」
「誰かが僕らを呼んでいる。」
「そんなときには飛んでいく」
「・・・きっとそれが誰かの助けになる」
キュピーン
「レッド幸一」
「・・・ブラック団」
「パープル鏡介」
「「「我ら【公共団体】!!!」」」
「これ放送で流れてるよな」
「・・・んぐ」
今それにきずいた団が両手両膝をついて落ち込む。
「フフフ、まっいいではないか」
「なにをしとるんだね君たち」
校長が迫ってくる。
「校長先生、ちょっとお話があります。」
俺がそういうと
「本来なら君たちが私と話しなんかするわけないんだ、しかし君たちはみんな五位以内に入ったからその権利を与えてやろう私は心優しいからな」
俺は一瞬殴りにかかろうとしたが鏡介がそれをとめる。
そしておれは話し始める。
「とりあえず校長に話す権利にもう一人増やそうかと思いましてね」
「ほ〜う、なんだねそれは」
校長は思いのほか乗ってくれた。
「要するに校長は勉強もしくは勉強ができればいいんですよね?」
「・・・まっそうだな」
「たとえばいままであなたがばか〜にした生徒が陸上部現部長に勝ったりしましたらどうしま〜す?しか〜も、現部長の得意な五キロで勝ったりしたら」
鏡介が説明する。
そう、ここの現部長は五キロで市の大会で二位に選ばれたのだ。
「ははは、そんな生徒がいるとは思えんがな」
「・・・日向 小春」
団がその言葉を放った時、学校中が静まりかえる。
「いいだろう、体育の授業をさぼっているやつがどれほどのものか、しょせん結果は見えているがな、時間今日四時、コースは私が指定しよう」
そういって負けるとは微塵も思っていない校長はわらいながら放送室を出る。
そして、俺はマイクをとり
「一年の小春、聞いているか?おまえが本当の兄貴を思うきもちがどれほどかみしてもらうぞ」
「フフフ、果たしてそれは愛なのか!!」
「・・・勝算はこっちが上」
「小春〜あんたしっかり走りなさいよ」
「応援するからね」
香、朝鈴、夕もきた。
すると廊下でも、盛り上がり始める。
あとで教室をみると小春は仲良しクラスのやつから質問攻めをされていた。
そんななか俺をみつけて
「幸一に・・・先輩」
「あぶないな〜おまえ、あと大丈夫か」
「うん、逆にみんなから話しかけられてうれしいです。ただ、私勝てるかな」
小春はすごい不安だった。
「大丈夫だよ。今でも兄貴忘れないために毎日練習してるんだろ、大丈夫、負けたら俺がおまえを守る。」
「うわうわうわ〜、いいんですかそんなこといって」
「いいわけないじゃないか〜!!!」
鏡介が椅子のしたから出てくる。
しかし、俺が教室内で
「あ〜鏡介先輩がいる〜」
この一言で十分だった。
一年生で俺の存在を知ってるやつはまだ少ないといっていい、今日でだいぶ多くなったがまさか小春と話してるやつだとは思わないだろう。
その点、鏡介は【公共団体】でもリーダ的存在、陰の生徒会長、運動神経抜群、などさまざまないいところがあるらしい、そのため
「みんな鏡介先輩をかこめ〜」
「色々話を聞くぞ」
一年が鏡介に集まる。
「フッ、我が親友よ、やるじゃないか」
そういって鏡介は、もんのすごいスピードで消えた。
「あのスピードで走れたら、世界新だな」
「鏡介先輩なら出来そうですけどね」
放課後、校庭には多くの観衆がつめかけていた。
校長が俺、鏡介、小春、そして陸上部女子部長霧崎部長を集めてコースの説明、コースはこの学校の外周を三周というシンプルな物で、邪魔や卑怯なことがないように飲み物をあげられるのはスタート地点で三周のうち一回それぞれの代表者が与える。
また、それぞれにチェックされる場所がありそこを通らないといけないことになった。
この校長にしては真面目なルールだと思う。
そして、いったん解散、レース開始は十分後となった。
「緊張するか」
「あうあうあう〜、助けてよ〜幸一兄さん」
「・・・霧崎は先行逃げ切り型」
そういってPCを取り出して過去の記録を見せる。
「小春ちゃんはどれくらい走ってる?」
「毎日二十キロは欠かしたことないですよ」
俺は正直驚いた。
そして、霧崎部長のタイムを見て考える。
「校長先生、一人一緒に走る人つけていいですか?」
校長はしばらく考え、了承した。
「どうする気だ、俺にはわからないんだが」
大河が聞く
「だって馬鹿だし」
大河は一人落ち込んでいた。
「鏡介、頼みがある」
「おう、まかせろ我が愛の親友よ。この小娘のペス〜メーカをやればいいんだな」
「なにもいってないが完璧だ」
「あの〜どういうことでしょうか?」
「霧崎部長に付いていってもいいが、その場合、むこうは自分のペース、つまりこっちが不利になる。」
「だか〜らゴールタイムの時間をみて〜、俺が案内するのさ」
実際問題はないと思うが念には念をおす。
そしてレースがはじまる。
案の定、飛ばしまくる霧崎部長、おそらく最初の一キロは二分台で走るだろう。
実は霧崎部長のゴールのタイムはそれほど早くない、みんながつられるだけなのだ。
だから、弱いとこにしか勝てないのだろう。
鏡介はいわれたとおりのスピードで走る。
一周目が終わりここで相手の霧崎部長は飲み物補給をした。
そしてその水筒を落とすと、中からスポーツドリンクとは思えないほどの白い液がでてくる。
「団、ちょっとあの水筒調べてきて」
「・・・わかった」
そして約四十秒後に小春が来る。
水分補給はまだしない。
意外にも応援してくれてる人は多いがこれの九割は鏡介にむけられたものだった・・・。
二周目が終わる。
先にきたのは霧崎だった。信じられないスピードで走っている。
とてもじゃないが県で止まるレベルじゃない。
「・・・やっぱりはいってた。」
「成分は分かるか?」
「・・・時間かかる、でも競技では使ってはいけない成分だと思う」
予想したとおり、せこい手をつかっていたのだ。
約一分後に小春がきた。
そして俺は鏡介に片手で暗号を送る。
すると鏡介は頷き、小春にそのことをつげ、飲み物を取・・・らずにダッシュを始める。
まるで百メートル走をやるかのごとく走っていた。
観衆や校長はもちろん、隣で走っていた鏡介や俺も驚く。
しかし校長は
「あんなスピードで約一キロ走れるとはおもえんがね」
そう他の先生と話しているのが聞こえた。
そして、なぜか鏡介が戻ってくる。
「鏡介、どうした?」
俺だけじゃなくみんなが鏡介に近づく
「ゴールで待っててください、先輩」
鏡介は息を切らしながらも必死に小春のまねで答える。
そして約二分後、先にゴールに現れたのは小春だった。
綺麗なホームとはいえないが、それでも力強く、なんか常人にはないものが見えた気がした。
なんと霧崎部長の一週目のタイムよりはやいのだ
みんなが小春に駆け寄る。
「すごいな日向あんなにはやいなんて」
「私感動しちゃった」
みんなが思い思いに小春に話しかける。
小春は息を切らしていたが、満面の笑みでこちらを見つめる。
そして、霧崎部長がゴールする。
タイムは、部長が地区予選で出した最高記録より二十秒早い、さらに小春の出したタイムは全国大会出場の参考タイムより早かったのだ。
「すごいはあなた、私の負けね」
そういいながら二人は握手を交わす。
部長という権力をもっているので、鏡介と交流があり性格はいいやつらしい。
そして校長がこちらに近づく。
「いや〜すばらしい、さすがはあの小僧の妹といった
ところか」
相変わらずむかつくやつだった。
「・・・メチルテストステロン」
そういった瞬間、校長は顔を赤くしてごまかすように逃げる。
「ドーピングか?」
「・・・そう」
「しか〜し我らはかったんだ、日向妹祝うぞ」
しかし、小春はみんなと仲良く話している。
「ま〜よかったじゃないのお・に・い・さ・ん」
「まったく」
香と朝鈴が話しかけてくる。
『でもこわかったよ〜』
「まっ負ける気ゼロだったけどな」
「そういえば大河は?」
「生きてるよ」
「ちっゴキブ〜リめ」
「あんたらね〜僕は落ちたんですよ。いたたた」
そしてみんなで大笑いする。
しかし、一番頑張ったのは小春だ。
多分このいまの小春の笑顔が狼が一番見たかった小春の姿だったと思う。
九月四日
俺は走っていた。
隣には、小春が走っている。
小春は俺に付いてくるために思いっきり走る。
それでもだんだん離れた行く距離。
しかし、俺は止まり、小春を待つ。
そして今、小春は俺の横を笑顔で通りすぎ、一人で駆けていく、俺はその場から動くことが出来なかった。
目が覚める。
今日は土曜日、学校は午前中まで、そして、狼の一周忌である。
「遅い」
『おはようコウ君』
「おはよう夕ちゃん、朝鈴」
いつもの通り朝の挨拶、そして、登校する。
途中で香と団に合流、さらに木の上から鏡介、猫に追われる大河
「僕そんなことされてないから」
「おい、人の心を読む大河は寿命が八年縮まるんだぜ」
「なにそのリアルな数字、僕死ぬんですかね」
「そういえば今日小春は?」
「学校休むらしいよ、逆に今日学校行ってたらもみくちゃにされてそうだけど」
「あんたほんとむっせきにんよね」
「しっかし校長も普通ドーピングまでさせますか?」
「フフフ、学園側最大の壁俺様が言ったんだ、校長も
内心びくびくだったんだろ」
『でも勝てて良かったね、あんなに速いなんてびっくり』
「でも鏡介が走ったの無意味じゃない?」
大河がそういった瞬間、一筋の閃光とともに大河が仰向けになっていた。
「・・・今日帰り街よろ」
「ん?なんで?」
「・・・修学旅行」
「やべっ俺準備してねえ」
『わたしは終わってるよ〜コウ君との旅行だもん』
「あのね〜、一応ここにいる人同じ班だからね」
「ぐっ、しっしまった〜、俺様としたことが、遊び道具買い忘れた〜」
「・・・何する気?」
「フフフ、愛のみぞ知る」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
『・・・』
みんな黙りこくってしまった。
校門前、良姉さんがたっていた。
「やったねあんたら、校長今日休みだって、しかも胃潰瘍」
「教師の言葉じゃないって」
「しかもなんかあっちドーピングしたらしいじゃん」
「僕の実力からすれば・・・ぐはっ」
俺と団の間に入ってきた大河に二人で殴る。
「・・・虫がいたからつい」
「絶対冗談だよね〜」
「じゃ授業に遅れないようにね〜」
そういって良姉さんは駆けてった。
「あと二十分もあるのに遅れるわけ」
大河がそういった瞬間、ものすごい地響き
「あ〜あ」
「・・・どうするこれ?」
その地響きの正体は昨日の勝負のことを見てたり聞い
たりした人達だろう。
「せんぱ〜い」
「きゃ〜」
人数はおよそ四,五十人が走ってこちらにきた。
「どうする鏡介」
「フフフ、散れ皆のも〜の」
そして俺は慌てふためいていた夕の手を取り
「こっちだ夕ちゃん、逃げ遅れるな〜」
俺がそういうと夕は顔を赤らめて頷く
「こら、まちなさいよ」
朝鈴もこっちに来る。
大河がみんなに囲まれたかったんだろうが夢かなわずみんなに踏まれていた。
半分ぐらいが俺たちに付いてきてしまった。
団と香の所にも半分、鏡介はすでに教室のベランダから手を振っている。
「我が愛の親友よ助けはいるか〜?」
「いや、たぶん大丈夫」
『なの?』
「あんたら速くはしんなさいよ」
そういって前を走っていた朝鈴は思いっきりジャンプして二階に飛び乗る。
『姉さんすごい』
「でも女とは思えないよ」
「フフフ、恋の相手など男でも女でもかわら〜んのさ」
いつのまにか鏡介が隣で走っていた。
「・・・」
『・・・』
いつの間にか教室の中にいた。
そしてすぐに団と香も来る。
「イリュージョン?」
そして残された大河はみんなに囲まれて・・・
「痛いっ痛いって、おまえら俺先輩だぞ」
蹴られていた。
四,五十人に・・・
「あいつも頑丈だよな」
「痛がってるけどね」
『助けてあげよ〜よ』
「夕ちゃん、やさしさは時に人を傷つけるんだよ」
うん、と全員が首を縦に振る。
『みんな・・・ひどいね』
そして、
「よ〜し今日は全員いるな〜」
良姉さんが出席を確認する。
大河が校庭で一人屍になっていた。
1時間目、歴史教師である鈴木が教頭代理となったため自習、まっ静かにしてるわけもなく
「フフフ、この自習も愛の力」
「そういえば何となく思ったんだけど」
俺がそういった瞬間周りが静まる。
「え〜っとさわいでてください」
またクラス内で様々な会話がはじまる。
「大河って馬鹿だよな」
「ちょっとんな唐突に・・」
「・・・ああ」
「なにあたりまえなこといってんの」
「フフフ、馬鹿だな」
「ばかよね」
『馬鹿・・・だね』
「皆さんひどいって」
そして俺は退屈しのぎに
「な〜大河、人間って空飛べるんだぜ」
「おいおいコウ、そんなわけ・・」
「うんとべるよね〜」
「へっ!?」
大河が香りの発言に驚く、香はこういう時のアドリブが早いのだ。
「フフフ、愛の力が・・・なくても可能だ!!!!」
「そんな・・ばかな」
「・・・まじ」
「あんたそんなことも知らないの」
「夕、本当か?」
大河が夕の方を見る。
夕は一瞬とまりそして頷く。
「そうかそうなのか、人間はとべたのか〜」
そして、大河が空を見ている間に俺たちはにやける。
「どうやれば飛べるの?」
大河が聞いてくる。
「フフフ、飛ぶためにはちょっとした道具が必要で
な」
そういって鏡介は、手品のようにかばんをだし、その
なかから・・・何も出さなかった。
「フフフ、これぞ都会ではや〜り!流行最先端の裸のマントだ!!!」
「えっこれ何かあるの」
「フフフ、これは愚か者にはみえないしろものなの〜さ」
「あっこれねこれ、赤い生地がかっこいいね」
「これ青でしょ」
すかさず香がいう。
「あっそうそうこの青まさに空と一体化」
大河があわててとりつくろう。
準備が整い、大河は・・・
「ひえ〜〜〜」
3階から落ちた。
『大丈夫かな』
「死ぬときは一瞬のほうが楽だって」
「こんなんで死ぬやつじゃないし」
みんながシ〜ンとする。
おそらく日向を思い出していたのだろう。
「こうせんぱ〜〜〜〜い・・・うわっ」
小春の声がしたので下を見る。
すると倒れていた大河に足が引っかかってこけていた。
「なにやってんだよ大河」
「お〜い小春がこけてんじゃね〜か」
「僕のせいなんでしょうか・・・そうなんでしょう
ね」
「あわわ、大丈夫です〜。私のせいですから」
「あれ?ないてんの小春ちゃん」
大河のその声に反応して俺は・・・
三階から飛び降りる。
足が少ししびれたが、みごと陸上部のマットに落下したのでだいぶ痛さはなかったと思う。
「あんたらね〜」
香が片手で頭を抑えて抱えている。
あんたら・・・?
「グググ、これぞ愛的力量」
「あうう〜え〜え〜と」
後半いつもの鏡介からはありえない声が聞こえた。
「中国語?」
「心服口〜服」
「あの〜え〜と、あうわう〜」
小春は困っていた。
「・・その通り、だろ」
「フフフ、そのとお〜りだ」
もとにもどった。
「そういえばどうしたの小春ちゃん」
おれは目の赤い小春にたずねる。
「幸一兄さん・・・うわ〜ん」
小春はなぜか泣いているが今自分のいる場所は全教室から見える位置にいて、しかもなんか夕とかの目線が痛いわけでして
「鏡介、とりあえず教室に、人間技で」
「フン!!」
また、いつの間にか教室にいた。
「だから人間技にしてくれ」
「甘いな、我が愛の親友、これぐらい鍛錬でどうにでもなる」
「とりあえずあんた、その子下ろしなさいよ、見てるこっちが恥ずかしい」
朝鈴に指摘された俺は自分の置かれた状況を確認する。
胸が濡れてる、おそらく小春の涙だろう。
両手に重い感触、おそらく小春をお姫様だっこしてるからだろう。
俺はその場で赤くなり、すぐに小春を降ろす。
「夕ちゃんの赤くなる理由がわかったよ」
『コウ君ひどいよ〜』
とりあえず、今は小春から話を聞きたい・・・がクラスの中で今全員がこちらを見ている。
「大河・・・」
「コウ、あんた落とした友人わすれちゃだめでしょ」
すかさず香がいう
「あっそうだっけ」
朝鈴も忘れていたらしい。
「・・・書き置き」
そういって団は紙になにか書いて前の机においた。
「ナイス」
「じゃ屋上かな」
「フフフ、我が親友よ、今日は日が強い、運動会用の
テント、茶道部の傘、体育館の屋根、好きな物を選ぶがよい」
「そうだな〜」
「茶道部の傘、わたしあそこの下で寝てみたかったのよ〜」
と朝鈴、ってか体育館の屋根を選んだらどうするつもりだったんだろう。
そして大河を除く七人は屋上に座る。
「畳まであるのね」
と朝鈴は驚く。
「茶道部のやつだよ、テストの日に鏡介が持って来ちゃって」
「まっ愛のためだからな楽勝さ」
そういって両手には赤く少し赴きのある傘を持っていた。
『はは、相変わらずだね』
そしてなんとか小春は泣きやみ話は本題に、
「すいません、急に泣いたりして」
「いや大丈夫だよ気にするな」
そういって俺は小春をなだめる。
「しかし、どうしたっての?今日狼の・・・」
「うっ、うわ〜ん」
また泣いてしまった。
「あさすず〜」
「フッさすが愛敵を地獄にたたき落とすとは」
『ねえ〜さんだめだよ泣かしたら』
「なっなによみんなして」
しかし、どうしたものか・・・
「とりあえず首を縦か横に振ってくれいいかな?」
小春は首を縦に振る。
大方の予想はついている。
多分小春は狼と向き合おうとしたのだろう、しかし親の問題が・・・
「親になにか言われたのか?」
一瞬小春は止まり、首を一回ゆっくりと縦に振る。
やはりそうだった。
たしかに、ここで親と口論するのも大事かもしれない、しかし今日はまずい、狼が可哀想だ、なので俺は
とりあえず狼の墓に向かい二人いやここにいる全員と狼を対面させたいと思った。
「とりあえず、狼の墓にいこ」
みんなが頷く
約八年前小学三年の時クラス替えで始めてあいつを見たと思う。
その時は耳の聞こえない夕にたいして男子のいじめが酷かった。
なので俺たち【公共団体】は毎日のように殴り合いをしていた。
そんな中、狼はいつも一人でいた。
みんなあまり存在に気付かない、俺もそのなかの一人だった。
三年になって少したったある日の放課後、下駄箱で待ち合わせをしていたはずの夕がいなくなっていた。
どこにいったか分からず不安になった俺。
「鏡介〜!!!」
俺が大声でさけんだあと、ダダダダダズサ〜
「ハァーハァー、どうした我が親友」
「ちなみにどっから来た?」
「我が親友の家の前でたいきしていた。」
ちなみにここから俺の家まで歩くと十分はかかる。
「夕をみなかったか?」
「ああ、俺は見てない、もうしわけない」
「そうかすまなかったな」
「じゃもういっていいか?今から盗聴器とやらをつけ
たいんだが」
それは犯罪です。
「じゃ話したいこともあるが夕を探してくる」
「俺に話したいこと・・・なんだって〜!!」
とりあえず俺は階段を上ってみる。
とちゅうで鏡介のとんでもない声が聞こえたが無視した。
屋上で女の声が聞こえた。
俺はものすごいあわてていたので誰の声か分からなかったが屋上の扉を開ける。
目の前に現れたのは多分小五、六年であろうがたいのいい人達三人が俺の同じクラスの狼、さらに小さい女の子、今思うとそれが小春だったのだと思う。
狼は少し血を流していた。
一人目のパンチをよけると二人目のパンチでよろめき、三人目のやつに今度は蹴りで足を痛められる。
後ろにいた女の子は今にも泣きそうだった。
俺は当然のごとく足が勝手に動き狼とその三人組の間に入っていた。
「え〜と理由わかんないけど手伝うよ」
「えっ」
そういって俺は三人組に向く。
「なんだおまえ、関係ないチビは引っ込んでろ」
「そうだ俺たちを誰だと思っている」
「泣く子も黙る・・・ブヘボッ」
俺はおもいっきり一人の脇腹にヒットさせる。
「軽いんだよ」
そういって俺の脇から現れたのはものすごい早さの狼
であった。
そして俺がなぐったはずの男に蹴りをいれる。
「ヘブッ」
そういって一人動かなくなる。
「てめ〜ら調子にのりやがって」
そういって二人が俺を囲む、片方にはものすごい見覚えがあった。
なぜなら先日鏡介にぼこぼこにされたやつだからだ。
そのとき俺は鏡介を呼ぶことしかできなかったので、相手にも自分にも腹が立っていた。
「そういえばおまえ、あの難聴のチビと一緒にいるやつだろう」
その相手の放った一言の後俺は
「・・・う〜んとだれだかしらないひと」
「俺か?」
狼がそういったとき
「俺の拳軽いって言っただろ?まっ見てろよ」
その後の記憶はない、俺が目を覚ましたときには転がってる三人と狼、小春、そして噂を駆けつけた鏡介や団、大河それに夕もいた。
「・・・目さました」
「フフフ、我が親友話は聞いたぞ」
『コウ君無事?』
俺の周りに人が集まりだした。
そんなとき狼が俺の前にあらわれて膝をついてあたまをさげた。
「すまなかった、本当は助けてもらってまじ感謝してる」
「ちょっと待ってくれ、こいつらやったのは・・・」
そういうとみんなが俺を見た。
「俺?っていうか頭あげてくれよまったく」
「いや感謝しきれない、なにせ小春をまもってくれたのだからな、あんたには・・・」
その一言でその場にいたやつ全員がこいつをシスコンだと思ったのは言うまでもない
「コウでいいよ」
「おれは狼だ日向 狼」
その後も狼はしばらくの間一人でいた。
しかし、一ヶ月もたつとまるで昔からの友のように一緒にいた。
とりあえず、一度支度のためみんな家に戻り再度俺の家に集合となった。
もちろん学校はまだやっていたが俺たちにとってはもっと大事なことだと思うことを良姉さんにそのことを伝え、早退ということにしてもらった。
小春はこのまま一人にすると何をしでかすかわからないのでうちにこさせた。
「はう〜ここが幸一兄さんの部屋ですか」
「前にきているはずなんだがな」
「わっなんでそういうこというんですか」
やっと小春が笑い出してくれたので俺はうれしかった。
「あとなにか必要なものは・・・」
俺がそういって忘れ物がないか確認していると上から段ボールが落ちてきた。
「うわっ、ビックリしたな〜、幸一兄さんこれな〜に?」
小春が興味津々に段ボールを見ていた。
「あいつらからの手紙だよ。時代は変わったのに未だに文通」
「ええ〜いいじゃないですか心がこもってるような気がします。それにしてもまじめですね〜こんな取ってあるなんて・・・ちょっとみてみませんか?」
時間はすくなかったが、俺も何となく見てみたくなった。
「わ〜綺麗な絵、これ夕先輩ですか?」
「あ〜それは朝鈴、ちなみにこの柔らかい感じの絵が
夕、この写真画は団、この字がだんだん斜めになってるのが大河、綺麗に行数をそろえているのが香、このおっきく一文字「愛」って書いてあるのが鏡介」
「ふわ〜すごいですね、なまえみないでわかるなんて」
それはそうだ、この何百枚にも及ぶ手紙にはその枚数以上に俺を助けてくれたのだから
「あれ・・・幸一兄さんこれは?」
そこには自分で作った詩、そして毎回変わる楽器の絵そして下の方に一言「約束忘れるなよ」の文字
「狼もさ、送ってくれたんだよ何枚も」
小春が、我を忘れてるかのように段ボールから手紙を出す。
手がかりは詩、楽器の絵、「約束忘れるなよ」の文字
そして小春は何百枚の中から二十枚くらいの手紙を取りだし抱え込んで何かつぶやいた。
そのとき俺は忘れてはいけない「約束」を思い出せずにいた。
みんなが俺の家の前に着た。小春が狼からもらった手紙をどうしてもみたいというので貸してあげることにした。
そして霊園に行く途中
「わわわわ、先輩隠れて」
そう言われてみんな物陰に隠れる。
その目線の先には黒いスーツにグラサンというどこかのやくざのような格好のいかにも筋肉質そうな男が五人立っていた。
「あれだれ?」
俺は小春に小声で訪ねる、するとなぜか鏡介が
「あれは、日向家のガドーマンだな」
「わわわ、なんでわかるんですか」
「フッ、これぞ愛」
「背中見てみなさい」
朝鈴がそういうのでせなかをみてみた。すると
「日向家死守それぞ我が誇り」
「・・・なにあれ?」
みんなが小春を見つめる。
「わわわ、そんなみないでください、本当に恥ずかしいんですから」
「しかし、今の時代あんな典型的なガードマンってい
るんだな」
「で、近づけるの?」
朝鈴そう訪ねると
「・・・きついかな」
「そうだな、あのガードマン強そうだし」
「っていうか何でガードマンなんか」
どうやら日向家の人々はよっぽど小春を嫌っているらしい
「どうだ鏡介いけるか?」
と俺がたずねて横をみるとそこには鏡介がいなかった。
「ね〜小春、ガードマンってどれくらいいるの?」
香がそういうと
「この前庭に五十人くらいいましたけど」
俺はこれはたぶん小春には悪いけど無理だと思った。
「フフフ、我が親友よまたせたな」
いきなり鏡介があらわれた。
しかもなんかでっかい風呂敷持ってるし
「無理だな」
唐突に鏡介が言ってくる。
「実際に墓の前に人がぎょうさ〜ん、あと我が親友ちょっとこっち来てくれ」
そういって、俺と鏡介はみんなから少し離れる。
「おそらく同じ結論が出ると思ったんでな、ちょっと出過ぎてしまったよ〜だ」
「主語いってくれって」
「残念だ、俺とおまえに言葉なんていらないはずが、
まさか!!!!偽物」
「まじめなはなしなんだろ」
「ああ、日向妹の家に行って来た。あいつの部屋に黒ずんだシミがたくさんあったんだよ」
つまり、虐待を受けていたのだろう。
「確かに人の家庭に首をつっこむのはだめかもしんないがな」
鏡介が珍しく自分の行動に自信を持っていなかった。
「悪いな俺も同じ事をしていたな」
つまり、あいつの風呂敷の中には
「わっ、わっ、わ〜なんで私の家具が?」
「・・・なるほど」
「あいつ〜」
あっちではもう風呂敷をあけてだいたいの内容がわかっていた。
「ってことでたのん〜だぞ」
そういって鏡介は朝鈴の肩をたたく
「なんでよ」
「我が恋敵よ、日向妹と我らが愛の親友が同じ屋根の下で一緒に暮らすんだぞ」
夕は顔を赤くさせて、ブンブン首を横に振る。
「で、でも〜でも〜」
「あ〜もう遠慮しないの」
朝鈴はそう言うが小春はまだ悩んでいた
「明日、途中まで一緒に行こうな」
俺がそういって、小春は
「わかりました。高橋先輩お世話になります」
「あんた、コウだと言うこと聞くのね」
『よろしくね〜小春ちゃん』
そして、結局狼の墓参りにはいけなかった。
俺はものすごい後悔した。
無理しても言った方が良かったのではないか、しかし、もう日が変わってしまった。
外に光はいっさいない。
そして何も解決しないまま修学旅行を迎える