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おっさんの異世界転生 <俺もテンプレ世界で冒険してぇなぁ~>  作者: ところてんはあんまり・・・
第六章 大勢でサバイバルすると楽しい、山ガール編
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第八十四話 クリーム

84.



 わたし達は滝から落ちながら、偶然にも横穴があることを見つけたのじゃ。それからの行動は素早かった、三羽スズメにそれぞれ乗り込み、スズメ達は跳躍を必要とせずに飛び立ち、その横穴へと滑りこんだのじゃ。

「げほっげほ、ここは……はぁはぁ、横穴に入れてでありますか、皆さん無事でありますか?」

「なんとか無事じゃ~」

「私も無事です。あれ、クーさんとモズタロー様が居られませんよ!?」

 そうじゃった。三羽スズメには私達が乗っておったのじゃ。モズタローとクーは滝に飲み込まれてしまったのじゃろうか……。

「飲み込まれたのはタローだけだよ~、まあ、タローのことだから無事だろうけどね」

 自力で飛行するクーがそう言いながら現れたのじゃ。


「クーさん!? 飛べたんですか!!」

 シュリが驚愕のまなざしを向けている。わたしも驚いたのじゃ。スズメが飛ぶような飛び方ではなく、空中に静止するような、まるで重力を感じさせない動きをしているのじゃ。

「これでも、白竜ビャクリュウなんだよ~、飛べて当たり前でしょ?」

 そう言えば、モズタローがそんなことを言っておったな。クーはもともと拾った翼竜ワイバーンだったとか何とか。

「ちゅん♪」「ちゅちゅん♪」「ヴぁーネエサンサスガ♪」



「モズタローさんは大丈夫なのでありますか……まあ、殺しても死にそうにないでありますな。自分の身を心配することにするであります」

「そうそう、アテナは弱っちいから、自分のことだけを心配してた方がいいね。あなた達が死んだらモズタローが悲しむだろうから、面倒だけどクーが守ってあげるよ~」

 モズタローがいなくなったせいじゃろうな。クーの態度に若干の刺を感じるのじゃ。まったく、この娘のモズタロー至上主義者っぷりには困ったものじゃ。こんなヤンデレ紛いのドロデレ娘の手綱をモズタローに握りこなせるのじゃろうか。

「えっと、これからどうしたらいいのでしょうか?この怪しい横穴を進んでみるべきでしょうか?」

 そうじゃな。今までは無限にも思えるほど十字路が続いていたのじゃ。それが流されたとはいえ、まったく見たことのない場所へと通じた事を考えると、先へ進んでみるべきじゃろうな。


「のじゃロリの意見にさんせ~い。この奥か強い魔素揺らぎを感じるよ。きっと何かあるよ。クー達を迷わせていた物の正体も分かるかもね」

 わたし達は先へと進むことへしたのじゃ。

 今までいた石壁の通路とは完全に作りが異なっていた。それは見たことも無い様な金属で作られた壁に囲まれており、魔術回路がびっしりと書き込まれている物じゃった。

 機能は停止している様じゃが、動くならばどのような効果があったのじゃろうか。見当もつかんのじゃ。



「やれやれ、どんな客人が来たかと思えば、人のマネっこ竜に、エレアもどき、ドゥーマーもどき、魔獣もどきなのら。こんな連中のおかげで機能が停止したと考えると情けなくもあるのら」

 通路の奥にある巨大な扉の前に立った時に、その声は突然聞こえてきたのじゃ。

「何者かな? 生き物じゃないね、この感じ、魔物でも人でもない。う~ん、もしかして、妖精の類かな」

 クーがそう言うと、巨大な扉は自ら開いたのじゃ。

「人のマネをしていても、さすがは竜なのら。そうなのら。オ・スアナームとクリツェートゥス間を繋ぐ『ビッグブリッジ』中枢機関管理妖精の中枢ちゃんとは我のことなのら~」

 目の前では、掌ほどの白い靄の様な球体がフヨフヨ浮かんでいた。どうやらこの物体がわたし達に語りかけてきた物の正体の様じゃ。



「まあ、せっかく来たのら。色々話もあるのらから、奥で話を聞くのらよ。どうぞどうぞなのら~」

 そう言って中枢ちゃんとやらは、わたし達を導くかのように奥へとふわりふわりと飛び去って行くのじゃ。

「話を聞けるのでありますか・・・ついていくべきであります」

「むしろ、それ以外の選択肢がないですね」

「ふん、疑似生命のくせにエラソーなの! まあ、この場所の話を聞きたいし、行くしかないよね」

 妖精とは、疑似生命とはなんじゃろうか、童話に出てくる存在とはかけ離れているようじゃが。後でクーに聞いてみることにするのじゃ。……まぁ、モズタローが一緒にいる時が良いかも知れんのぅ。

「ちゅん」「ちゅちゅん」「ヴぁーヤナカンジ」

 わたし達は誘われるまま、ほいほい後をついて行くことにしたのじゃ。




「なんじゃ、これは……これほど巨大な魔石を使って動く魔道具があるのじゃか……いったい何をする場所なのじゃ……」

 部屋の奥に入ったわたし達の目の前には薄っすらと弱弱しく発光する巨大過ぎる魔石が存在していたのじゃ。美しい立方体にカットされたのじゃろうか、表面を削ることで動力への最適化をしているのかもしれん。

 そして、この魔術式が書き込まれた施設じゃ! この鉤爪のように地から生える機構はいったいなんじゃ? 何のために存在しているのか、少なくともわたしには理解不能な物じゃった。


「……おそらく、この大氷河って呼ばれる場所を作り出していたんだろうね。この術式は一部の魔素をかき集めるためのものが含まれてるもん。リンから聞いていたけど、千年以上前から稼働し続けていたのかな? つい今し方、止まったみたいだけどね」

「クーさん、わかるのでありますか!? どこでそのような知識を……」

「これは、・・七王家に伝わる術式も含まれています! リンさんが言っていた環境を激変させたその元凶がこの場所だと言うことですか」

 シュリは聡いのじゃ。こういう時にだけ理解が早くて普段のぽけぽけした姿との落差が激しいのぅ。


「まあ、大体正解なのら。ここは大陸と離島を繋ぐ橋にして、魔物の脅威から人類を守るための盾の役割も課せられていたのら。環境の激変による魔素の大規模な変質を起こすことによって、この地のみで存在できる魔物を出現させることによる魔物の封じ込めなのら。だけど、千年の間でもう限界も限界、崩壊直前だったのら。いくら優れた魔術機構と言えども経年劣化と使用減りには耐えられなかったのら~」

 耐えられなかったと言ったのぅ。先程起こった洪水は、その魔術機構の崩壊によって引き起こされたのじゃか?

「そんなわけないのら~、崩壊したら少なくともクリツェートゥス全域を含んだ辺り一帯を灰燼に帰すくらいの魔素崩壊が起きるのら~。ぎりぎりで、外部からあり得ないほど強力な魔力が一気に流れてきたせいでシステムが全てオーバーロードして止まったのら。それは竜のちみがしたんじゃないのらか?」


 そんなに危険な状態じゃったのか!? 灰燼に帰すとはまた物騒な話じゃのぅ。……まさか、モズタローのあの行為のせいで命を繋いでいたとは思いもよらなかったのじゃ。

「……タロー、結果オーライってやつだね! うーん、タローは言わなかったけど、何か感じる物があったのかな? あいかわらず、タローの考えも行動も読めないなぁ。まあ、そこが良いんだけど~♪」

 ……何だかイラつくのじゃ。

「その様子だと、ここにいない人物のおかげみたいなのら。すごいのら、ビッグブリッジの全システムを止めるとは、この中枢ちゃんでも想定の範囲外だったのら。まさか、あんな原始的で愚かな方法で崩壊を止められるとは思ってもよらなかったのら」

 なんじゃ、このチビ助の発言は一々癪に障るのじゃ。



「この中枢室の奥には、魔素保管庫があったのら。そこが経年劣化とシステムがオーバーロードしてシャットダウンした時の衝撃で全部溢れだしちゃったのら。そんで、あっという間に元あった場所へと戻っていったのら。螺子曲げていた環境が急激に元に帰ったせいで、上では大洪水なのら~、ビッグブリッジ内部にも少しだけ浸水しちゃったのら。それでちみ達が流れてきたのら」

 なるほど、大氷河は海へと戻ったと言うことじゃな。それで、その氷が全て融けて洪水が起こったと。わかりやすいのじゃ。

「その洪水の規模はどの程度なの? 周囲が吹き飛ぶ被害よりは小さいの? クーが感じた限りじゃ、クリツェートゥス方向に水が流れたみたいだけど」

「う~ん、中枢ちゃんには今の人がどんな生活をしているのかわからないのら。実際に見てみないと、どうなっているかなんてわからないのら。文明レベルと災害に対する備えで被害は大分変っちゃうものなのら~」


 そりゃそうじゃろうな。ロストアヴァロン帝国では鉄砲水が向かっているかも知れんのぅ。まあ、話に聞く帝国の技術力ならばどうとでもなるじゃろ。

「そ、そうですね。帝国の技術力で、対策もバッチリなはずです! えへへ、帝国は素晴らしい魔道具などが山ほど存在しますからね! きっと、たぶん、えっと、その、大丈夫だと思います」

「私は軍人として楽観視はできないでありますが、私達が無事だった程度なのですから、大丈夫なのではないかであります。ただ、都市の魔術障壁を破った場合はどうなるかわからないでありますな。上の方々は都市の機能を過信している部分があるであります」

「都市の魔術障壁なのら? それは『ニエベ』の機能の一部なのら? それくらいの障壁なら容易くぶち抜くのら~。それくらいの洪水なのら! 千年もの間に堆積した水の魔素が生み出す洪水の力を甘く見ないでほしいのら」

 こらあかんかも知れんのじゃ。この事がばれたら、指名手配は免れんかも知れんのじゃ。どうしたもんじゃか。


「……帝国が!? まずいであります!!」

「アテナ! 落ち、落ち、お、お、落ちついてください!!! ダイジョブです、帝国軍人はこんなことではウロタエナイノデス??」

 あ~、状況的に性が無いがお主ら落ちつくのじゃ~。

「はぁ、ジロー、サブロー! やっちゃって!!」

「ぢゅん!!」「ぢゅぢゅん!!」

 凄まじい勢いの突きが嘴によって繰りだされたのじゃ。わたしでなかったら見逃してしまうのじゃ。首筋に突き刺さったが大丈夫なのじゃろうか?まあ、何だかんだで二人とも丈夫じゃから平気じゃな。

「ひぅ!」

「ぴょえ!」

 二羽とも御苦労じゃったな。



「ヴぁーオマエノモクテキハナニ? マルデハメツガノゾミダッタミタイダ」

 イヒッが質問を繰り出しおった。これほどの長文をしゃべったのは初めてみたのじゃ。こやつ、中々油断できん存在なのじゃろうか。

「はてな、そんな風に見えたのら? ふふっ、すでに主のいない中枢ちゃんがどうしようとも勝手なのら。いくつかの命令で縛られてはいたのらけど、もう完全に自由なのら。さって、これからどうしてやろうのらか。何をするにしても、この体は不便なのら、ちみ達の体をくれないのら? ……まあ、勝手に貰うのらよ」

 目の前の糞妖精から不穏な気配が漂ってきたのじゃ。


「暴走した疑似生命か、はぁ、めんどくさいなぁ。はやくタローと合流したいのに。まあいいや、もう守るモノも無いんでしょ?色々聞かせてくれたお礼に、クーが眠らせてあげるよ!」

 のわぁ、クーはもうやる気なのじゃ!むぅ、周りのわけのわからぬ機構ががちゃがちゃ動き始めたのじゃ。こやつに誘い込まれたのじゃ。

「ここは我の腹の中のら、ここに来てしまった時点で、ちみらの負けは確定的に明らかなのら!」


 ボチャン


「あれ? 何の音? ん、あいつの上に銀色のスライムみたいなのが……、あれは運担当!?」

 なんじゃと!? 運担当が上から降ってきたのかじゃ? モズタローの反応は側には無いのじゃ! 単独で動いているのか!

「なんなのら? こ、の、ス、、ラ、、、、イ、、、ム、、、、、、、あ?????? タ、ムゥゥゥゥゥ!!!!!!」

「全員! 部屋の外に退避!!! 運担当からやばい気配を感じるよ!!!」

 言われんでもわかっているのじゃ!? ジロー、サブロー! うむ、既に二人を抱えて逃げだしているのじゃ。偉いぞ~。わたし達もさっさと、逃げるのじゃ!

「ヴぁー、……フルキモノ、アナタノモクテキハナニ?」

 イヒッが分けのわからんことを呟いているのじゃが、今は聞いている暇は無いのじゃ。さっさと部屋から抜け出すのじゃ。


 ガオンッ!!!!!


 私達が部屋から鋒鋩の体で抜け出した時に、全てを抉り取るような凄まじく不快な音を響かせ、部屋の扉が消滅したのじゃ。その奥には暗視ができるはずのわたしにも見通すことのできない闇が広がっていたのじゃ。


「……全部、喰われた。中枢室も、その奥にあった保管庫だっけ? それらも全部あいつが喰ったんだ。……タロー、アレは本当にやばいよ……やばすぎるよ。はぁ、夫をがんばって立てるのが妻の役目だね! よーし、がんばるよぉ!」

 クーがアホな決意をしているのじゃが、私の耳にはその声は届かなかったのじゃ。恥ずかしながら、人智を越えた力を見せつけられて呆けていたのじゃ。かつての仲間達がドラゴン相手に消し炭にされた時でも、これほど無力感を感じたことはなかったのじゃ。

 ……ふぅ、まったく、モズタローめ、世話を焼かせるのじゃ。わたしがしっかりしなければのぅ。なんたって、わたしはお姉ちゃんなのじゃからな!



 気を取り直したわたし達は、ロストアヴァロン帝国の様子を確認するために歩を進めるのじゃった。恐らくモズタローも帝国にいるじゃろう。そんな予感があったのじゃ。






 次回、自己紹介は大切だね。せっかくだから、恰好よく決めたいけど、どんなのがいいのかな? おっさん世代のネタが通じない異世界は不便だね!


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