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おっさんの異世界転生 <俺もテンプレ世界で冒険してぇなぁ~>  作者: ところてんはあんまり・・・
第五章 冬景色観光がしたい、旅情編
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第七十七話 みんな運動してる? 一時間くらい歩くだけでも気持ちがいいよね。おっさんはサウナでいいや。

77.



 鍛え行こうランララン~鍛え~行こうランララン~、南へ向かいながらランニング中だ。体力をつけるならランニングがいいよね。湿地帯で足元がぬかるんでいるのも高感触だ。これなら存分に足腰を鍛えることができる。

「ひぃひぃひぃ、きついであります、しんどいであります! 死ぬ! 死んでしまうでありますよ」

「はぁはぁはぁ、旅立ちから走り通しです……。マッドスキッパーの皆さんも私達が走り去っていくのを不思議そうな顔をして見送っていらっしゃいましたよ……」

 とりあえず走らせている。体力をつけたいと言った二人のために俺が存分に鍛えてあげることにしたのだ。



「ほらほら、俺に追いつかれた罰ゲームだよ!」

 俺はハンデとして逆立ちでかさかさと二人を追いまわしている。

「ふむ、モズタローはすごいのぉ~、逆立ちであれだけ動き続けられるとは、かれこれ十三時間ほど走り通しじゃのう。いい加減、おなか減ったのじゃ~」

 グウェンちゃんはサブローに乗り上空から応援してくれている。それに加えて、ルート上の魔物を風魔術で吹き飛ばしてくれている。


「タロ~、そろそろ休憩しようよ~。クーもおなか減ったよ!」

 ジローの乗っているクーが俺にそう声をかけてくる。クーにはルート取りを頼んである。適当に走っていると見せかけて、方位磁石を使ってちゃんと方角を確かめながら移動しているのだ。

 うーん、今から丁度マッスルパワーが高まってくる時間帯なのだけれどね。ふたりもまだまだ元気だからなぁ、うん、あと二時間全力疾走ね!

「ひぎぃ! 加速して来たであります!! ひぃぎぃああああ!!」

「モ、モズタロー様に鍛えてもらうなど、言わなければ良かったです! ……ひぃぃぃぃ、怖いです!!」

 シャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカ・・・・・。逆立ちで爆走する俺は傍目から見れば、見紛う事なき変態だろう。



 ふぅ、日が沈むころ、イヒッの案内で今日のキャンプ地に到着した。イヒッには休める場所を探してもらっていた。スズメ達は有能だ。うん、ここなら地面も乾いているし、風にも吹かれないだろう。簡単な柵を設置して、野営するとしよう。

「ぜひっ、ぜひっ、ぜひっ、これが、これが初日でありますか……」

「うぷっ! また吐きそうです……」

 お疲れ二人とも、最後は歩くよりも遅くなっていたけど、止まらなかったのは良いガッツだ。特にシュリさんは吐きながら、がんばって走っていたね! 明日からはガンガン行くから、よろしくね!

 暑苦しい顔で、サムズアップしてみる。アテナさんとシュリさんはゲンナリとした顔をしているが、手を抜くなんてしないから期待していてね!

「モズタローの腕は大丈夫なのかじゃ? 今日は腕だけで移動していたが、痛めたりはしておらぬか?」

 無問題。


「明日からはどんな風に鍛えるの? 体力作り?」

 おう、イエス! 体力は全ての基本です! おっさんは体力至上主義者なのだ!! 体力さえあれば良いのだぁ! 動きが鈍かろうが、防御が疎かになろうが、攻撃が温かろうが、ただただ耐えて殴るでよかろうなのだぁ! というか、細かい技術など俺に教えることなど不可能だ。俺に出来る事と言えば、体を虐め抜くお手伝いだけ。

「脳味噌筋肉であります……」

「ま、まぁ、体力をつけるのは正しいはずです。きっと、そうです。あはは……」

 まるで生まれたての小鹿だな。大地を強く踏み締めてもらいたいものだ。


 ナクアさんと狩猟をすることで生まれていたシュリさんの自信が砕けていく音がするな。彼女は戦闘に関しては高スペックなのだが、持久力には問題がある。すぐに、警戒が雑になるし、集中力も落ちてしまう。これは体力を底上げするしか解決方法は無いだろう。


 アテナさんは知能労働者だったのかな。それか軍人でも宮仕えだったのだろう。

 知識や技術は持っているが、戦闘に必要なものがいくつも欠けている印象だ。軍人らしいのだが、ロス帝国の軍人は俺が知る地球の軍人とも、ミズーリの軍人とも異なる印象を受けるな。戦闘のプロと言うよりは、どちらかというと、技術屋だと思われる。殺しの経験が少なそうだから、そんな印象を受けるのだろうか。ナクアさんと同じように鍛えれば良いかも知れないな、魔物を積極的に殺させてみることにしよう。



「初日にして、かなり限界そうなのじゃ~、こら明日は無理かも知れんのぅ」

「筋肉痛で動けないかもね」

 それにはちゃんと考えがあるから安心してね。

 さて、手を洗ってから夕食の用意をするか。ふんふーん。飯盒出して、米用意。おかずは焼肉と野菜の酢漬けでいいだろう。寒いからスープも用意するか、レンコンの様な植物をすり潰したポタージュを製作しよう。具は肉でいいか。ミンチにしたお肉を入れちゃいましょう。


「おいしそうでありますが……おえっ」

「うっぷ、食欲がないです……」

 無理してでも詰め込まないとダメです。しょうがないな、木製の押し出し器を作ったのだ。これは注射器の様な形をしているが、その役割は無理やり食事を流し込むための物だ。ほら、動物園でアシカの赤ちゃんにご飯をあげるときに使用することがある器具だ。こうなることを見越して作っておいたのだ。


 ナクアずブートキャンプの時に、体力切れを起こしたナクアさんが中々ご飯を食べられなくなってしまったことがあった。その苦い経験を生かしたのだ。ちなみに、ナクアさんの時は素手で無理やり詰め込んだから、噛みつかれたり、喉に詰まったりで大変だった。歯が折れるとか、色々叫んでいたのが記憶に残っている。


「まさか、そのぶっとい物で、無理やり……」

「モズタロー様……、冗談ですよね?」

 ところがどっこい! これが現実!! これが現実ですよ!

 よいしょ、全てを擂り鉢にぶち込んで、流動食に加工する。ずりずりずりずり……。

「せめてもの情けで、クーが流し込んであげるね」

「わたしが体を押さえておくのじゃ!」

 うんうん、美しい友情だなぁ。クーは、巨大な注射器を口の中に挿入する。


「アガガガガガガガガガ……」

「オゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……」

 一本じゃ足りないかもしれないから、三回くらい流し込んであげてね。

「はがががががががが……」

「あべべべべべべべ……」

 クーは仕事をやり遂げた晴れ晴れとした顔をしている。満足したのだろう。

 二人は白目を向いてしまっているが、些細なことだな。お腹が膨れたら、白目を向いてしまうのはナクアさんと一緒だね。いや、あれは濃縮還元ゴブリン酢を使った健康ドリンクを飲ませた時だったかな?



 それじゃあ、俺達も食事にするか。三羽スズメも呼んで、三人と三匹で食事にしよう。

「ぷるぷる」

 ん? ああ、運担当もいたか、はいはい食事の用意ね。同じ物を用意させていただきますよ。何でも食べられる癖に、味にうるさい奴なのだ。味覚は俺達と同じな様だから、別に調理をしなくて済むのは楽でいい。普段は大人しいが、食事の時だけは自己主張をするけど、食いしん坊なのだろうか。・・・食べる割に体積が変動しないな、食べた物はどこへ消えてしまうのだろうか。


「はぐはぐ、モズタローが居ると荷物を大量に運べるから良いのじゃ。普通、旅ではこんな食事はできんのじゃ、もぐもぐ」

「むしゃむしゃ、はぐはぐ、鮮度も落ちないし、本当に便利だよね~。クーも作ってみたけど、魔力効率が悪過ぎるからクーでも使えそうになかったよ。異次元鞄は、魔力の異常回復体質じゃないと利用は不可能だね。魔石を使って補助して見たけど、費用に見合わないよ。古代人はどうやって利用していたのかな~、うーん、気になるよ」

 まるで俺が異常者みたいな言い方は止めてもらえませんかねぇ。まあ、魔力を使う魔術師には運用が難しいと思っていた。魔力を消費し続けるから、魔力の回復速度が大事なのは自明だ。俺も回復と消費が釣り合う様に訓練し続けていたら、いつの間にかこうなっていたのだ。今では街の一区画くらいなら飲み込めるのではないだろうか。



 さて、食事も済んだから、これからはお楽しみタイムと行きますか。デザートを作らせていただきますよ、疲労回復にばっちりの逸品にご期待ください。

 青汁、いや、モズタロー汁の完成だ! 二人には俺特製の青汁を飲んでもらおうかな。筋肉痛など吹き飛ばしてもらおう。逆立ちで走りながら健康に良さそうな草を大量に確保しておいたよ! 煎じただけだから、とんでもない味がするかもしれないけどいいよね! え? 青汁がデザートは侘し過ぎる? 無いより、ましでしょ。

 それに、俺がマッドスキッパーでがんばって調合した、クエン酸見たいな味のする何かが大量に配合されているよ! 昔、薬局に行ったら、ひとつだけ場違いな梱包をされたクエン酸があったよ! 970円だったよ! 酸っぱかったよ! あれの再現はとてもじゃないができなかったけど、まったく別の煉獄の様な酸味を実現することができたよ!!

 俺も飲んでみたけど、酸っぱすぎて味覚の機能が全てダウンして、心臓をバクバク刺激してくれたほどだ。俺を気持ちよくさせてくれる中々の逸品に仕上がっていると自負している。筋肉疲労には酸味がいいよね!? もちろん、疲労回復効果はゴブリンで実験済みだから安心してほしい。ゴブリンは……その、残念だったけど。


 そ~れ、飲んで飲んで飲んでー。え? 自分じゃ飲めない? もっかい、押し込む? 勘弁してくれ? 甘えるんじゃないよ!! どうしてそこで止めてしまうんだよ! ほらほらほらほら! 胃に無理やりぶち込んじゃえばなんでも一緒なんだよ! 死ななきゃ安い! 死ななきゃ安い! 死な安! 死な安! 死な安! 死な安! 死な安! さっさと飲めや! おらぁん!!


「殺されっがぼがぼがぼがぼがばおごおおごぉぉぉ!!!」

「アテナ!? 許してくださぁあぶぶぶぎゅえうええええええぇぇぇぇぇ!!!」


 二人ともピクリとも動かなくなってしまったな。今日のところはお開きとしますか。風邪をひくといけないな。敷物を敷いて、二人を寝かせて。イヒッ、悪いが今晩は羽毛布団をしてやってくれ。

「ヴァ~、オオイカブサルー」

 翼を広げたイヒッが二人に覆いかぶさった。これで、安心だな。圧死しないかな? イヒッはそれほど重くないから平気だよね。夢見は悪そうだけど別に良いか。

 夢なんて悪夢くらいで丁度いいだろ!おっさんは、車のブレーキが効かなくなる夢をよく見ていたな。こっちの世界に転生してからもチョクチョク見ていたが最近はあんまりみないな。最近はクーに襲われる夢や、グウェンちゃんに襲われる夢、スズメにもふられる夢など散々な夢が多い。おっさんは夢見が悪いのだ。毎日毎日、悪夢に魘されるよ。

 

「あ、青汁残ってるね、んぐっ、ブボォ!! スッペェアアア! ……タロー、この青汁ヤヴァイよ。うえぇえええ、吐きそう、気持ち悪くなってきちゃった」

 え! そう? 俺も飲んでみよう。うーん、マズゥイ! もう一杯!! 青汁なんてこんなものだよ。たぶん。

「明らかにマズイ物に挑戦するとは、中々剛毅じゃな~。はぁ、わたしも寝るか。モズタロー、しばらくしたら起こしてくれなのじゃ。見張りを変わるのでな」

 グウェンちゃんも飲む? いらないですか、そうですか。それじゃあ、深夜に起こすからね。その後、俺は深夜の狩猟にでかける予定だ。食材は補給しておくに越したことはない。

「タロー、水ちょうだい~、口が変な感じするよ」

 はいはい、クーに水を手渡しながら、寝床の準備をする俺だった。




 湿地帯を抜けるまでは、しばらくかかるだろう。それまでは体力作りでいいな。二人に足りないのはスタミナと根性だ。何があっても諦めない心を作り上げてあげよう。

 走り続けることで、それが得られるのかはわからないけど、厳しい訓練の経験は死に直面した時に、それを乗り越える原動力になると信じている。

 この世界は残酷だ、自分の身は自分で守れなければ、すぐに命を奪われてしまうだろう。いつでも俺が守ってあげられる分けでは無い。俺が鍛える以上は、彼女達が何に襲われようとも逃げ伸びられるくらいには強くなってもらうつもりだ。


 二人が鍛えたいと言ったこともあるが、俺が彼女達に死んでもらいたくないから、これほど厳しく鍛えるのだ。二人とも友達だからね。俺も頑張るから、アテナさんとシュリさんも頑張ってもらおう。さすがに、死にそうになったら止めるよ? 信じて! ホントホント、オッサンウソツカナイ。


 

 がんばって、氷河と湿地帯の境にあるという、大断崖を目指そう。大断崖なんて派手な名前が付いていますなぁ。その先に進んだ人はいないそうだが、シュリさん達は空から眺めた限り、なんとかなると思っているみたいだ。空から見る景色と地面から見る風景には大きな隔たりがあると思うけど、どうにか越えられたら良いのだけれどね。

 



 次回、駆け抜けろ青春!巻きこめ激闘!訓練はまだ始まったばかりだ。


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