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おっさんの異世界転生 <俺もテンプレ世界で冒険してぇなぁ~>  作者: ところてんはあんまり・・・
第五章 冬景色観光がしたい、旅情編
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第七十四話 木枯らしに抱かれて

74.




 うむ、生活もそこそこ安定してきたし、娯楽用品でも作るか。建物の建材運搬などの仕事もあるが、俺が異次元鞄で手伝う段階は過ぎた。俺が何でもしてしまうと、運搬体勢が整うのを邪魔してしまうからね。

 田んぼの見張りをしながら手慰みで作業することにしよう。



 今回作るのは、麻雀牌だ。マッドスキッパーでも麻雀は行われていて、俺も遊んでいたのだが、牌ではなくトランプのようなカードだったのだ。そのため、今一麻雀をしている感じがしなかった。やはり、牌を握らないとね。

 現代日本では逮捕されかねないギャンブルが横行しても大丈夫なのが異世界クオリティだな。ギャンブルで身を持ち崩すハンター達が多かったらしい。ほどほどに楽しむようにしないとね。


 牌の素材にはオーガの角を使う。マッドスキッパー北東の山脈地帯の麓まで行って、討伐してきた物だ。討伐したのはシュリさんとナクアさん。二人は好き勝手に出かけ、たくさんの獲物を持ち帰って来てくれる。

 リアカーを引いて朝早く出て行く笑顔のお姫様、獲物がテンコ盛りのブラッドバスを引いて帰ってくる充実した顔のお姫様。このお姫様は残念だ。残念姫!エリーさんも結構残念だから、王族は残念な女を産む素養でもあるのかもしれない。……王族侮辱罪とかで捕まりそうな発言は控えよう。


 オーガの角は武器の素材などにも使えるのだが、武器になりそうな物は他にも多く存在しているためと、嗜好品や娯楽品は不足している事もあって、俺が使わせてもらうことになったのだ。

 昔の麻雀牌は象牙や獣骨で作られていたらしい、オーガの角なら似たようなものだろう。便利な機械の登場や、材料が手に入らなくなったことで、手彫りの職人は誰も残っていないと聞いたことがあるな、残念なことだ。おっさんの家にあった雀牌はユリア樹脂製というよくわからない原料で作られていたなぁ。




 さて、手彫りで雀牌に挑戦だ。えっと、うんと、アレ、どうしたらいいの? ……上手く出来ない。当たり前かもしれないが、素人では均等に切り出すことが難しい。俺の手持ちのナイフくらいでは不可能だ。彫る作業に進めないのだ。

 うおお、道具の作成からしなければならないな。物差しに万力、鉛筆、ペンチにその他諸諸の工具がいる。


 工具の作成はアテナさんに手伝ってもらった。彼女は俺が望む様々な工具を魔術で加工してくれた。

 アテナさんは水魔術が得意なのらしいけど、土魔術もかなりの腕だな。彼女は土魔術を使っている姿ばかり見ていたから、それが本職なのかと思っていた。


「色々できたでありますな、あまり見た事がない道具もあるであります。釘抜き付きトンカチ、分度器、バール、T字物差しに、それにこの方位磁石でありますか? 常に北を指すとは、魔道具ではなくとも便利な道具があるのでありますね」

 方位磁石は便利だよね。まぁ、魔道具と比べられても困るけど。磁石を見つけるのが大変だったよ。魔物街で磁化された鉱石を見かけたから、購入して作ったのだけれどね。大量生産できないのが問題だな。天然磁石は雷が落ちたところにある石が磁化してできるらしいから、自然界ではレア物だろう。雷魔術はないのかな? 聞いたことはないな。


 それよりも鉛筆だ。これが欲しかったのだ。石炭と泥を合わせて練ってから、細長く成形して焼き固めて芯を作った。あとは、溝を付けた木材に嵌めて、漆を接着剤として木材で挟み込んで、使いやすいようにカッティングして完成とした。

 やっぱり、鉛筆は便利だなぁ、石鉛を使っていないが似たようなものができたと思う。鉛筆はマツオさんがとても気に入ってくれた。さすが俺と同じ、もと現代人だな。マッドスキッパーで製品として作られるようになったらいいのだけれど。インクと羽ペンや炭などの筆記用具より先進的でいいと思う。ゴブリン皮紙やオーク紙などの紙にばっちり書き込める。



 アテナさんには魔道具もいくつか制作してもらった。その中でも、水属性の魔石を使ったウォーターカッターは非常に便利だ。威力調節をすることで、切断から研磨まで様々な需要に対応している。値段が安ければ普及すると思うのだけど、水魔石の価格を考えると、難しいかな。

 ニスは自作して見た。防砂林として海岸付近に生えていた松の様な植物である、ちくちくの樹から脂をもらって、魔物の脂と煮ただけの物だ。艶出しはこれでいいだろう。

 絵具も、すごく被れ草、手が青くなり草などの草花から、グウェンちゃんに数種類の色を抽出してもらった。魔術の力ってすげー。意外な事にキーちゃんの実家では染物もしているらしく、色々教えてくれた。これで染牌してみることにしよう。



 よし、大体必要な物は揃っただろう。後はサクッと雀牌作成と行ってみますか。よしよし、均等に切り分けることができたな。これで全て白の牌ができたわけだ。作り過ぎてしまった気がする……何セットできるだろうか……。オーガの角を何本使ったか覚えてないな。

 よーし、彫るぞ、各種四牌ずつだったな。華牌や赤ドラは無視だ無視、彫り彫り彫り彫り、点棒も作ろう、彫り彫り彫り、サイコロも作ろう、彫り彫り彫り、皮製のケースも作ろう、彫り彫り彫り彫り彫り彫り彫り彫り彫り……。

 あ、一索は三羽スズメのデザインにしてみよう。

 焼き鳥札はイヒッ単独にして上げよう。彫り彫り、東南札も作って、彫り彫り。

 あぁー、一応、ルールブックも作るか。初心者にもわかりやすいようにしたものがあると普及に一役買うだろう。……役とか待ちとか鳴きとか、そんな色々な情報が必要だな。うえぇ……符計算や平和の説明が面倒臭いなぁ。仕方がない、ここまでしたのに投げ出す分けにもいかないか、……やったるでぇ!!!そうと決まれば、三麻のルールも書こうかな、えっと、北をドラとして除外するルールでいいかな。あと、中国式と台湾式のルールも書いておこう。遊び方が豊富な方がいいだろう。ただでさえ、トランプなどに比べると多様性が無いからね。旧役など場合によっては加えても構わない役も書いておこう。

 うまくできたら雀荘を作ってもらえるように、マツオさんに交渉するか。魔道具として自動卓を作れないかな?さすがに贅沢品すぎるだろうか。




 外は冬、田んぼにも畑にも霜が降りる季節だ。寒いね。見張り台の中でイスに座り、時たま遠くを眺めながら一心不乱に牌を彫る。見張りなら俺の隣に寄り添っているイヒッがしてくれているので、それほどまじめにしなくてもいいだろう。


 イヒッは温かいな。スリスリ。あ、マフラー化している運担当がプルプルして自己主張しやがる。なんだこいつ、イヒッに対抗心でも抱いているのだろうか。マスコット利権を醜く争う姿は見たくないな。あまりしゃべらない……違った、筆談? をしない癖に自己主張は激しいからな。

「タロ~、イヒッと幸せそうだね……ふーん、クーが寄り添っている時よりも顔が緩いよ……イヒッと一緒の方が安心してるみたいだね……へぇー」

 ビクッとした。雀牌を彫るのに必死で周囲への警戒が疎かになっていたのだろう。俺の後ろには、クーがいた。いつのまにか見張り台に上がってきたのだろう。ひょぇえええ~~、おっとろしい表情していますがな! こ、こわウィッシュ! なんで怒っているの? おっさんにはジェンジェンわかんないよ?


「……。クーが心配して色々調べてるのに……タローはお気楽に遊んでるし……異常事態なのを理解してないし……でも、どうにでもなりそうなのも事実だし……むぅ、今のところ無害なのもわかってるけど……」

 クーはぶつぶつ呟いている。まあまあ、クーさんや、ここに座って空でも眺めようや。寒空の下した外を眺めるのも中々おつなものですよ。

「はぁ、うん。クーも最近忙しかったから、ゆっくりしようかな」

 クーは俺の隣に座って、寄り添ってきた。クーの体温は俺よりも高い、温かいよ。

 

「タロー、これからどうするの?」

 唐突にクーがそう聞いてきた。

「そうだな、もう少ししたら旅に出ようか」

 俺は旅に出るつもりだ。新マッドスキッパーは暮らしやすい街になるだろう。でも、俺は世界を見て回りたいのだ。どんな不思議が待っているかワクワクする、俺の探究心はまだ衰えてはいない。

 ミズーリから南東にある大樹海の中に存在るすると言われるエルフ達の都、アテナさんとシュリさんの出身地であるロストアヴァロン帝国、行く先は少なくとも二つはあるのだ。迷う事など無いさ、他の文化圏を除くだけでもきっと楽しいだろう。


「そっか、クーも行くよ~。この土地は住みやすいけど、終の住処に決めるのもまだまだ早計だもんね。あぁ~すごい巣を作りたいよ~、財宝溜めたり~、タローを囲ったり~」

 巣を作って、そこで俺に何をするつもりなんですかねぇ。まあいいさ。じゃあ、皆には上手く話を切り出さないといけないな。俺はミズーリに帰るつもりがないことも、しっかり伝えないといけない。




 はぁあふぅ、でかい欠伸が出てしまったな。眠いわけではなく、作業に飽きて来てしまった。それにしても、これだけ細かい作業を続けているのに肩こりがまったくしないな、魔力とは格も便利な物だな。健康維持という面では現代日本よりもずっと進んでいるだろう。いや、人自身の力が強いということを考えると、現代日本人よりも野性的な強さを持っているのかも知れない。

 最近、戦闘をしていないせいか、体が鈍っている気がしてならない。訓練と狩りはしているのだが、あのドラゴンゾンビとの戦いのようなヒリツクような緊張感の中での激戦となると、この近辺の魔物が相手であれば難しい。

 体が疼く、殺戮という名の快楽を! とかそんな感じかな? クーに前、タローは殺しが好きだもんね、と言われたがどちらかというと戦闘狂だと思ってください。殺しが好きなのではなく、戦うのが好きなの! 結果的に殺し回っていることになるかもしれないが、敵対的な相手に限定しているから許してほしい。

 現代日本いた時では感じる事の無かった闘いという快楽に身も心も流されっぱなしなのだろう。そのせいか、大人な人物達からは散々警告をもらい続けているな。いつまで経っても、子ども心を忘れないおっさんでごめんね!



 夕暮れが迫ってきた。さて、そろそろ交代の時間だな。さっさと、拠点に戻って食事にしよう。クー、起きてくれ。帰るよ~。イヒッ、悪いがクーを運んでやってくれ。

「ヴァヴァ、セオエ!」

 ふむ、先行して連絡して伝えてくるからクー様は貴様が背負え、かな? 了解了解、そうしましょうか。それじゃあ、クーを背負って帰るとするか。




 次回、奇跡の泉、その名はホットスプリング


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