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おっさんの異世界転生 <俺もテンプレ世界で冒険してぇなぁ~>  作者: ところてんはあんまり・・・
第四章 この街で暮らそう、マッドスキッパー興亡編
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第六十七話 ギンギラギン

67.


「この世界には、願いを叶える力がある」

 彼女は単刀直入に、そう言った。


「……なんじゃと!? それは魔法なのかや!」

 信じるの?うーむ、異世界人感覚がよくわかってないのかもなぁ。

「いや、この力は魔術だよ。魔法が対価無しで魔素に働きかける力だとするならば、この願いを叶える力は間違いなく魔術さ」


「オレは魔術にも魔法にも詳しくないんだ、説明してくれよ」

 キーちゃん、良い質問だ! 俺も全然わからないよ。

「ふむ、そうだな。まず魔素とはこの世の全てに満ちている根源的存在だと認識しているかな。まず魔術は、自らの魔力や他の何かを対価として、魔素に働きかけ望んだ現象を引き起こすことを言う。そして魔法とは、対価無しで魔素の持つ無限の力を自由に使う事ができる方法だと思ってくれ」

「このオリアブ島で言えば、君達の精神に影響している力が魔法だ。まあ、ワタシが一族の魔法である心象風景の保存と受け継ぎを、自ら改良することで、記憶の保存と転写という魔法へと昇華させたのだよ。それの影響を君達は受けている」

 なるほど、その魔法が、リンさんが記憶を取り戻したことにも関係していそうだな。しかし、改良とは言え新たな魔法を作りだすなど可能な事なのだろうか。


「信じられん、魔法もそうじゃが。新たに作り出したなどとは……」

「ふむ、モズタロー君は賢いな。その通りだ、あの魔術式はワタシ自身の魔法の発動トリガーになっていたのさ。ふぅ、自分を使って生み出した魔法の実験をしたのだろうね。ああ、魔法を改良すること自体は難しくはなかったよ。そこに至るまでが大変だったがね」

 褒められちゃった、えへへ~。ぺっ!

 賢い人は何を考えているかなんて、おっさんには分けワカメだ。



「生前のワタシの目的は、人類を救う事と失われたオリアブ島を復活させることだとは話したね。このオリアブ島に来たもの達は、この地に魅了される。それは、美しい景色や環境かも知れない。又は、自らの欲望を満たしてくれるからかも知れない。どちらにせよ、通常であれば、この場所に永住したくなるのさ」

「そして、この地での生活が掛け替えのないものになった時に、このままではこの場所が失われると通達される運びになっている。ワタシは与えられた役目として、霊峰ングラネェークの頂上にある祭壇で祈りを奉げることで、全ての願いが叶うと通告するのさ」

「……そこで、この楽園の維持継続を願うので候。しかし、それに何の意味がある?」

「意味はあるさ。なんたって、ここはまだダンジョンとして魔素によって再現されただけの存在だ。儚く脆い、いずれは消える定めさ。祭壇で祈りをあげることで、ワタシが作り上げてしまった機構が働き、この場所は現実世界に現出するのだろう」

 ダンジョンが、現実世界を侵食するのか。それならば、消え去ることは無くなるだろうな。

「対価はなんじゃ。想像はついているのじゃが、貴様の口から聞きたいのじゃ」

 


「マッドスキッパーの全てさ」

 リンさんは軽い口調でそう言った。



 やはり、そうか。都市すべてと外周街のほぼ全域を飲み込んだのだ。そこにあった人と物を対価として願いを叶えるのか。

「なぜ、あなたが願いを叶えないのでありますか? そんな他人に委ねる様な手順を踏む必要がどこにあるのでありますか!?」

「ワタシは魔法のせいで、人類のために、でなければならなかったのだよ。他者が望んでくれなければ、願いを叶えることはできない様にするしかなかったのさ」

 ここで、帝国の建国者達の魔法が影響してくるのか。

「マッドスキッパーの人達はどこにいるの? あなたの話を聞く限り、彼らはどこかに保管されているのかしら?」

 …………。

「言葉で説明するより見た方が早いだろう。ふむ、どうにかしてモズタロー君の感覚を彼らと共有できればいいのだけれど」



 ナクアさんに協力してもらえば、できなくはなさそうだな。

「うん? 何するの? え、魔力譲渡をするの? うんうん、それで、ふーん、ためしにやってみようか。まずは私で実験するね」

 そう言ってナクアさんはしばらく考え込んだ。

「うん、これなら良さそうだね。モズタローくん、手を繋いでね。よし、感借維持!」

 俺の全身の感覚を『感覚スイッチn段階』を使い、全て最高段階へと引き上げる。気分はあれだな、光子力ビームを放つ某新作くろがねの城だ。


 お、どうやらナクアさんの感覚魔術で、俺の五感全てを共有できた様だな。どちらかと言うと、俺の感覚を貸し出したような感じかな? 俺から失われていないから、コピーして渡した形だろうか。

「ワァーーーーー!!! すごいすごいすごいすごいすごい!! これがモズタローくんが見ていたこの世界なの?! すごいよぉ~すご過ぎ!! あはははははっはははははっははははははははっは、こうでなくちゃこうでなくちゃ~! 退屈過ぎたよ! あはははあああああ、なんであんなに退屈なのにそれでいいなんて思えていたんだろう~、魔法の影響ってすごいよ~!!!!」

 ナクアさんが狂喜乱舞し始めた。皆が嫌そうな目で俺を見ている。なんだよ、いいじゃないの~、俺目線の世界も楽しいよ?


「ナクア、悪いのだけれど落ちついたら私達にも見せてくれるかしら? アホ一号の見ている世界なんておぞましい限りだけれど、今は見ないと話が進まないようだし」

「うわぁー、いやじゃ~」

「タローの感覚かあ、楽しみぃ~」

「……モズ殿には何が見えているで候?」

「モ、モズタロー様の感覚を得たりして、私は壊れたりしないでしょうか……」

「もう、キャラはぶっ壊れているでありますから、今更でありますよ、シュリ様」

「ワタシも一緒に良いかな? ワタシにも見えてはいないのだよ」

 はいはい、それじゃあ、ナクアさんお願いしますね。


 全員で手を繋いで輪になりましょうか。なんだろう、UFOでも呼び出そうとしているのだろうか。それとも踊りだした方がいいのかな? さぁ、輪になって踊ろう!

「ひゃっあぁん♪」

 あ、手を繋いだらナクアさんがビクンビクンと痙攣し始めた。そうだった、触覚も最高段階まで引き上げてしまったのだったな。風が吹くだけで痛みを感じるかも知れないな。うーん、調整をしよう。ちょっと待ってね~。よし、これで大丈夫だろう。

「はぁはぁ、うん♪ これで、大丈夫だね♪」

 なんだろう、視線が妖しいな。まあ、いいや。それではお願いします。



「それでは、感借維持! 発動~」

 俺は別に変らないな。今まで目を逸らして見ない様にしていたものが見えるようになっただけだ。まあ、魔術とは関係ないけどね。

 俺達は骨で作られた砂浜に立っていた。人の物、魔物の物、ありとあらゆる骨で浜辺が作られているようだった。人間には215本の骨があるのよ! 浜辺を作るぐらい何よ!

 目の前の海は、赤く染め上げられ鉄錆の様な臭気が立ちこめている。


「きゃ、キャーーー」

 シュリさんが悲鳴をあげた。どうやら手に持っている魚達を見て驚いたようだ。先程までサバの様に見えていた魚は、全身に目玉を生やしたグロテスクな姿となっている。赤ミーハイの様な魚は、水分を含み過ぎてぐずぐずになった提燈アンコウのようになっている。エビは巨大なゴキブリ然とした姿が印象的だ。

「シュリ様!? うわぁあ、景色もそうでありますが、魔物までその姿を偽装していたのでありますか……」


 そうだ。おれが告死蝶を解体した時に感じた違和感はこれだ。なぜか偽装する魔物に偽装するという不思議な状況に笑ってしまった。告死蝶は大きなコオロギのような魔物だったよ。味が良かったのは助かったけどね。

 まあ、食糧に関しては特に問題なかった。俺が毒見したから大丈夫だよ。グロテスクな物のほうがおいしいよね。

「……某、この血の池に素潜りしていたで候? オボボーー」

 カロちゃんが吐いちゃった。えー、そんなにショックなの?別に赤くて鉄錆の味がするしょっぱい水だったよ。ちょっと、ペタペタするのが印象的だったよ。


「あの、森だった場所はなんじゃ? 柱が、柱が立っておる様に見えるのじゃ」

 うん、あれは瓦礫の木だね。何かは知らないけど、奇妙な果実が生っているね。歌にある通り奇妙だね。うふふ、ふっしぎ~。

「私達は、今までアレを食べていたのね・・うっ、私もちょっと気分が悪いわ」

あら、委員長も吐いちゃう? 吐きたいなら吐いた方がいいよ。その方が楽になるからね。

 俺は食べなかったし、食卓にも出さなかったけれどね。さすがに見た目が悪過ぎる。自分で小腹がすいた時に捥いで食べていたなら知らん。今まで食していた果物はマッドスキッパーで森林生活していた時に確保したヤマモモなんかだ。秋だったおかげで大量に確保できたのだ。

「うえぇぇぇっぇぇーーーーー……」

 委員長も吐いちゃった。適当に捥いで食べたりしていたのだろうな。


「ふむ、非常に興味深いな。これはワタシの魔法を使って隠蔽していたのだろうか? この隠蔽を見破るとは、君の感覚はとんでもないな。しかし、ワタシの一族で伝えてきたはずの心象風景がこれほど歪で歪んでしまっているとはな。狂人から狂人へと受け継がれていくなかで、憎悪と憤怒によって変化して行ったのだろうか。それとも、歪んでなどいないのだろうか、この光景は楽園を奪われた時の光景を示しているのか? 争いの中で多くの民衆が亡くなったはずだし・・・」

 リンさんは研究者モードに入ってしまったようだ。ブツブツ呟きながら考察に勤しんでいる。



「モズタロー。まじでさっさと出ようぜ。ここはク・リトゥ・リトゥより直接的なグロ表現が多いから気持ちが悪ぃぞ。どうすりゃ外に出れるんだ?」

 知らなーい。俺も解決策がなかったから、皆には黙っていたわけだしね。確かに、ク・リトゥ・リトゥのような狂気の芸術性は感じないな。俺としてはあちらのほうが気持ち悪いのだけれどね。

 もくもくと調査はしていたけど、山には近づけなかった。山を目指すと、いつのまにか戻ってしまうのだよ。無限ループって怖くね?


 リンさん、何か良い方法ないですかね。今のあなたは、俺達を助けてくれるということでいいんでしょ?

「……そうだね。願いを叶えれば、この場所は消えてなくなるはずだ。ングラネェークへはワタシの家の側にある洞窟から向かわなければ誰も辿り着く事が出来ない。そして、この場所を現出させるために、祭壇へとクーム君とダフダールブ一派は向かっているよ。ここに来る前に、ワタシが向かわせてしまったのだったね」

 それは、まずい。この世界が現実へと現れてしまうな。こんなグロテスクな島が現れるなんて嫌だなぁ。

「もちろん、ロス帝国が存在する座標に現出するよ。帝国を上書きするようにして現れるはずさ。そこに居た人々は……どうなるのだろうね?押し潰されるのかな?」

 おう、今度は帝国でも大虐殺が起こりそうな予感がする。

「な!? それは!! なんてことでありますか!? 早く向かって止めなければならないでありますよ!! 帝国人民が危ないであります!!」


「ちょっとまって、マッドスキッパーの住人はどこにいるの? それを教えるためにモズタロー君の感覚で世界を見たのではなかったかしら?」

 委員長、あの山が見えるかい? よーく、目を凝らして見てほしいのだけれど。

「……あれは、山ではないで候」

「うわぁ、何アレ? 肉塊? 人だけじゃない、魔物もいるみたいだけど、死骸が積み上げられてできているの?」

「願いを叶える為の生贄は、目の前に見えていたということじゃ・・・いや、生贄ではないのじゃ、捧げものなのじゃ」

「霊峰ングラネェークがマッドスキッパーで出来ていると言えばわかってもらえるだろうか。彼らを助けるすべはない、彼らはもうこの世界の贄と成り果てている」

「……誰も、助けられなかったのね」

委員長・・・。


「カタリアさん~、これから死んじゃうかもしれない帝国の人は助けられるよ~、マッドスキッパーの人達は残念だったけど、悼むのは後にしようよ~。見ず知らずの人の危機を救うのはあんまり変わらない分けだし~」

 暢気なナクアさんの声が響いた。

 そうだな、マッドスキッパーで利用した施設の顔見知りなどはいたが、大半は見ず知らずの人達だ。帝国の人も条件はほとんど同じだな。変な考え方だと自分でも思うが、今はやるべきことをしよう。



「案内しよう。すまない、ワタシの罪を尻ぬぐいさせてしまうな」

 気にしてください。たっぷり恩を感じてください。そして、しっかり返してくださいね。

 ところで、願いを叶えるってどんなのでもいいの?

「そうだ。このオリアブ島を現出させるのと、同等以下であれば魔素がほとんどの願いを叶えてくれるだろう」

 それはすごい。まるで、どこぞの聖杯みたいじゃないか!! 大丈夫? 汚染されてない? おーし、おっさん、一番乗りして願いを叶えちゃうよ!!


「ちょっと待て、ずるいぞ! オレが世界中の男を足フェチに変えてやる!」

「やめい! わたしが身長を伸ばすのじゃ!!」

「……某の引込思案を治したいで候」

「あははは、皆が血風呂の良さがわかる世界にする~」

「ちょっと! わ、私は、そうね。貴族死ね! この世の貴族と名のつく連中は全て死ねぃ!!」

「わ、わ、皆さんが良くない興奮をし始めたであります!! 私は、私はどうするでありますかな~、あ、強い肉体がほしいであります!!」

「えっと、じゃあ、私はタイタニックの再建を願い……いえ、窮屈な生活とさよならしたいです! 私だけの楽園がほしいです!!」

「タローとの、愛の巣作る~!!」

「チュン!!」「チュチュチュン!!」「スズメノニンキハ、セカイイチーーー!!」

 しまった。全員の欲望に火が付いてしまった。

「……はぁ、頼もしいよ。それでは急いで行くとしようか」


 こうして、欲望に目をギラつかせた俺達の爆進が始まる。




 次回、幕間タカ&エリーの現在。


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