第七話 あったかいんだから……もっと熱くなれよ!!
7.
俺が物置生活を始めて4ヶ月が去ろうとしていた。季節は12月だ。といってもだいぶ暖かいな。昼間は。
朝晩が寒い寒すぎる、ちょっと~冬彦~寒すぎんよ~そんな寒いと夜中におしっことまらなくなっちゃーう。これで1月とかなっちゃったらどうしたらいいの? 今ですら体育座りで眠ってるのよ。イヌイットかよ。服がほしい。コートや半纏とまでは言わないから、せめてパンツがほしい。底冷えがやばいのよ、まじで。
うこぎは、いやーきびしいっすわ。あのでっかい掌みたいな葉っぱからポロポロしちゃうよ~。思ひ出ならぬ、きゃんたまポロポロやっちゃうよ。
そんなことを言っていても、寒さは凌げない。困ったときは牛乳に相談すればいい、と前世の記憶にあったので、いつかの食事担当のおばちゃんに相談してみた。おばちゃんは巨乳だから大丈夫だろう。
「はあ? 寒くて死にそうだって? 死ねよ。まあ、魔力を体内で高速で循環させてみるとあったかいような気持ちになるよ。心がぽかぽかするってやつ? なんだっけプッシーボーイだっけ? そんな効果があるらしいよ。」
プラシーボかな~。なんだろう、久方ぶりに、ゴブリン肉に慣れて以来久方ぶりに、心が折れそうだ。でも折れない。おっさんだもん。
俺が泣きそうな顔をしていると、おばちゃんはため息を吐いてから奥に行き毛皮を持ってきた。そして、何も言わずこっちに毛皮を投げつけてきた。痛かった。目に毛が侵入してきてすっごいことになったけど、うれしかった。おばちゃんありがとう。このお礼は絶対いつかするよ。
さっそく物置で毛皮にくるまってみた。暖かいなり……、得体のしれない匂いがする。
これは小学校の給食当番の時に、夏休みの間ずっと放置されたと思われる、豚汁だったらしきものの蓋を開けた時の匂いだ。得体が知れましたね。
おばちゃん、ありがとう。このお礼は絶対に、絶対に、絶対に、いつか必ずするから覚悟しておけよな。
全力で魔力を循環させるイメージをしたら、めちゃくちゃ暖かくなった。ついでにギンギンになった。これは疲れる。
循環させているだけなので、魔力自体を消費している分けではないが、カロリーをすごく消費しているようだ。なんだかおなかが減ってきた。イメージをやめるとあっという間に凍える。
ふむ、循環させる、カロリーを補充する、冷える前に再び循環させる。このサイクルが完成すれば、寒い夜も安心だな。幸いなことに土を食べるのにも慣れたし、最近じゃ土から栄養素を搾り取っているような気までする。
いけるな。物置が土剥き出しでよかった。物置には何度も救われるな。環境って大切だね。覚悟完了。
よっしゃいくぞーーーーー。
物置に冬の朝日が差し込むころ、俺の体はぽっかぽかだった。
この孤児院、いやこの都市に存在する誰よりもぽっかぽかな自信で漲っていた。魔力ってすごい! ヴィヴァ、ヴィクトリー、ウィン! 俺は寒さに勝利したんだ。だって、昨晩一度も寒くならなかったからね。最高だ。最高の気分だ。テンションも最高潮だ。まるで徹夜明けのハイテンションだな。その通りだけど。
放射冷却って石畳でもおこるんだね。すごいなぁ。冬が終わるまでは休みの日の昼間に寝るかね。1勤1休で助かったね。農家だったら死んでたね。
次回、転生してから初めてのステータス確認! 渦巻く期待! チートは権限するのか? 行ってきた奇行は実を結ぶのだろうか。