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おっさんの異世界転生 <俺もテンプレ世界で冒険してぇなぁ~>  作者: ところてんはあんまり・・・
第四章 この街で暮らそう、マッドスキッパー興亡編
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第六十五話 継ぎ接ぎの記憶と不快なおっさん

65.



 はぁ~、青い空、白い雲、吹き抜ける潮風に南国風のフルーツ。この島は楽園だ。ぱっと見は、ク・リトゥ・リトゥのようなおぞましさがないから最高に生活しやすいよ。


 俺は今、浜辺にウッドチェアーと木の枝で作った日除け、石造りのテーブルを設置して完全にバカンスモードだ。あー、最高に気持ちいい。

 ウッドチェアーに寝そべりながら、フルーツを搾って作ったミックスジュースを味わう。南国時間はゆったりしていると言うが、これこそまさに南国生活だな。あくまでおっさんの勝手なイメージです、実際に南国に住んでいる人ごめんなさい。

 安全な物を見分けて俺達の生活用品は作られているが、この海辺の夕凪セットは最高の出来だと自負している。見たい物だけを見て、見たい物だけを信じるならばこの世界ダンジョンは最高だろう。食糧の毒見係が俺でよかったよ、そのおかげで色々捗った。

 


 皆も、それぞれの余暇を思い思いに楽しんでいることだろうな~。

 目の前の海ではクーとナクアさん、そしてシュリさんの三人で、俺が自作した釣竿を持って海釣り臨んでいる。グウェンちゃんに注意深く探ってもらったが、海に危険な魔物は見当たらなかった。それどころか、この世界では危険な魔物を見ていない。ゴブリンよりも危なくない程度の魔物しかいないだろうな。



 いや、俺には薄々わかっているのだ、目の前のコレは海ではないことが。この世界が見たままの物ではないことが。皆には伝えていないが、始めて降り立ったときから違和感は拭えなかった。告死蝶を解体した時に推測ができた、そして現在は確信している、この世界は欺瞞に見ている。それはク・リトゥ・リトゥよりも悪趣味だ。


 マッドスキッパー住人の行き先も想像がついていると言うか、わかったと言うべきだろうか。さて、皆に伝えたところでどうしようもないだろうが、どうしたものだか。

 クームを探すのが最優先事項だろうが、探して見つかるものではないだろう。おそらく、クームは俺達が探せば探すほど隠されてしまうはずだ。誰に隠されているのかは若いて言うならば、世界、だろうか。

 さて、この異常事態に気が付いているのは現在では俺だけの様だな。クーも気付いてはいない様だ。いや、気付いているが異常と認識していない可能性があるか、元が魔物なだけあってクーの感覚は俺とは少し異なる所がある。

 生活が安定してからは、皆はのん気に遊び呆けている。

 これはこの世界の力とでも言うべき物の影響があるだろう。どうやら危機感や目的を忘れさせたいらしく、俺達に暢気に陽気に生活してもらいたいみたいだ。この地に足を踏み入れた者は、この地を楽園と認識し、その楽園で過ごす日々を甘受するようになってしまうのだろう。


 クーム達を探しに来た俺達、部下を殺されたアテナさん、ダフダールブ一派から狙われているであろうシュリさん、普通に考えればのんびり遊んでいられるような状況ではない。

 ダフダールブと言えば、彼のことを話の上でしか知らない俺からしても、彼の行動はそう急過ぎると感じたな。もしかしたら、彼もこの世界の影響を受けて、あのような凶行に走ったのかも知れない。そうなると、この世界が与えてくる影響は俺が想像している物よりも恐ろしいかもしれない。




「こんにちわ」

 そう声をかけられた。

 まったく接近に気付かなかった。俺の感知はガバガバじゃないか! 俺はリュウ・ハ○ブサか!? あいつも忍者のくせに後ろを取られてばかりだったな、それも一般人とかに後ろを取られていた。あ、忍者龍○伝なんて知らないかな? テ○モシアター!! 砂地の上を無音で歩くなんて忍者だと思っても仕方がないだろう?


 声は疲れた女性のものに聞こえた。声がした方を見ると、浜辺には不釣り合いな白衣を来た、深緑色の髪をした目のクマが印象的な女性がいた。顔の印象とは異なる穏やかな笑みを浮かべている。皮のズボンを履いているが暑くないのだろうか。

「驚かない様だね。ワタシが来ることがわかっていたのかい?」

 え、何言っているの? 知らない人が自意識過剰な事を言っている。

「そうかそうか、君はやはり異質、いや異端と言うべきなのかな? 楽園を楽しんでもらえていないようだからね。こうしてわざわざ出向いたのだよ」

 あ、何か色々説明してくれそうなキャラが現れたようだ。よかった、情報が不足していたところだ。情報は何であろうとありがたい。

「ふふっ、それでは自己紹介しようか。ワタシはダイラスグリーンという、長い名前だからリンでいい」

 ドーモ、リンさん、モズタローです。

「さて、ワタシから話せることなど大したことは無いのだけれどね。お話をしようか。おっと、ワタシにだけ話させるというのはやめてくれよ、ワタシも君のことを知りたいのさ」

 俺からも話せることなんてあんまり無いけれどね。それでも、いいさ。情報交換と行きましょうか。



「ふーん、何でも願いが叶うねぇ」

 彼女の口から発せられた言葉は眉唾なものだった。なんでも、ングランネェーク山の頂上で祈ると願いが叶うのだそうだ。俺達は自分でも知らない間に挑戦権を得ているらしい。

 おっさん、そう言う話しは嫌いだなぁ~。だって、ダイレクトメール詐欺の告知文と一緒じゃないか。最近だとアドウェアなんかで表示される広告と言うべきだろうか。


「ふふっ、君達はクーム君を助けるために来たのか。美しい友情と言うべきだろうか。それとも、危険に飛び込む大バカ者と言うべきだろうか。どちらにせよ、君が面白いことには変わりがないよ」

 俺の何がそんなに面白いのかわからないよ。おっさんは普通のおっさんだよ?

「こんな不思議な状況にいるのに、君は自分が見て感じた事しか信じていないだろう? 全てを疑っている様な、まるで、自分に有利に働くことにはすべて裏があるかのように見ているようだ」

 ふむ、それはそうだな。基本的に疑って掛かるのは大人の嗜みだ。特におっさんなんて思考ロックマンだからね、頭が硬いからね。

「さて、ワタシが知っていることは大体話したが、何か聞きたいことはあるかい?」

 クームは彼女の家で世話になっているようだ。マツオさん達ものんびりとしたスローライフを営んでいるらしい。後で合わせてくれるとさ、その情報を俺に教えたことで怪しく思えてきたな。なぜだろう?きっと、彼女の雰囲気が胡散臭いからだ。まあ、それ以外にも感じることはあるのだけど。


 それにしても、このおだやかな笑みがむかつくな。誰にでも優しい笑みを浮かべる奴にまともな奴はいない。そうだな、記憶喪失だと言っているし、名前を聞いた時から出すべきかと思案していた物を見せてみようか。少しでも感情を揺らせれば良いのだけれど。

「これどうぞ、あなたの物でしょ?ダイラスほにゃららリーンさん」

 そう言って、翼竜山脈の洞窟で手に入れた手記を投げ渡す。

 彼女は繁々とその手記を眺めていたが、手記に挟んであった魔術式の写しを開いたところで目の色が変わった。

「あ、え、この手記は何だ……? え、これは、ワタシ、……私? ワタシは、アレ、そうか……、…………そう、だったな」

 おや、想像以上にうろたえたな。それにすごい速さで一通り眺め終わったようだな。斜め読みができるのかな?いや、俺には読解不可能だった部分も読めているようだな。


「……ふはっ、はははははははははははっはは、そうかそうか、そうだったのか! ははっ、君は、君は! 一体どこまでわかっているんだい!? ははは、ここまで君の計画通りなのかい? そうだとしたら尊敬せざるを得ないよ! ワタシが、私がこんなに落ちぶれて、惨めに生にしがみついているのが可笑しいのかい!? はははっ、はは、そうか、ワタシは私のせいで死んだのだったな」

 うわ、首を激しく引っ掻き始めた。血が滲んでいるよー、怖いよー。心の病気レベル5発症かな?


 手記と俺の推測によれば、ダイラスグリーンは最後には自らの研究に身を奉げ、あの黒いウジへと身を変じさせたはずだ。なら、あなたは誰ですか。恐らくは本人だろうと思うけどね。

 ここまで効果があるとは思わなかったな。もしかしたら、ダイラスグリーンが何か仕掛けをしておいたのかも知れないな。そうだとすると、手記と魔術式と残されていたことにも納得ができる。本人も、まさかこの手段が有効化するとは考えていなかったかも知れないけど。



「はぁ、はぁ、はぁ……取り乱してすまなかった、そして、ありがとう。君は、そうだな、ワタシの救世主と言ったところかな? それとも死刑執行人なのかい? そうか、ワタシのせいで、ワタシの研究のせいで、大勢の人を巻き込んでしまったのだな。この身を再生した者も、これほど残酷なことをしなくても良いだろうに」

 そう言いながら自嘲気味に彼女は笑った。先程まで浮かんでいた穏やかな笑みはなりを潜め、今では疲れた女の顔になっている。

 どうやら、自分を取り戻したらしいな。彼女を生み出した存在は、恐らく彼女自身なのだろうけど。残酷な事とは何だろうな。


「信じてもらえないかも知れないが、ワタシはこの世界の歯車のひとつに過ぎなかったのだよ。先程までは……ね」

 そうですか。それで、今のあなたの視点からの情報をいただけますかね?俺がほしいのは有耶無耶な可能性ではなく、残酷な事実だけですよ。

「そうか、君には見えて、いや違うな、感じられているか。人であった頃のワタシが呪いの如く求め、そして生み出してしまった『オリアブ島』の真実を。……話を聞いてくれるだろうか。君に聞いてもらいたいんだ。ワタシ、ダイラスグリーン=モラ・キャンベルの事、ある楽園の事、呪われた一族の事、君に聞いてもらいたい」

 ええ、聞きましょうか。あなたを許せるかどうかはわかりませんが、あなたの話を聞きたいよ。


 ちょうど、皆が夕飯の道具を持ってこちらに来ているから、食事の支度の前に皆にも聞いてもらいましょうか。

「ああ、そうだな。はは、ワタシに私の罪を忘れないために、ワタシから消去していなかったのだろうな。そうだな、以前の私はそう言う人物だった気がするよ。すまない、不愉快な罪人の悔恨を聞かせることになるかも知れない」

 さてね、それは聞いてみないとわからないな。


 ほらほら、皆、固まってないでこちらに寄ってきなさい。リンさんの講演会が始まるよ~。悪いが食事は後にしよう。話の後も食欲があるかはわからないけどね。

「そう言われると緊張するだが。ははっ、自らの恥部を晒すと思うと恥ずかしいな。ふぅ、自己紹介からしなければならないか。暑いな、いや、暑さは感じないが、なんだか暑い。白衣を脱ぐか」

 120センチ程度の体躯だが、出るところは出ていて、引っ込むところは引っ込んでいるな。エッチは目で見ておこう。

「タロー! その雌なに!?」

「なんじゃ、この女!? わたしを挑発しているのじゃな!! ムッキーーーー!」

「……誰で候?」

「さあ? 見た目はロス帝国の人達に似ているわね」

「足は、……長ズボンで見えねぇな」

「えっと、どちらさまでありますか?」

「……どこかでお会いしたことがあったような」

「この感じ……ふーん、おもしろ~い!どんなお話が聞けるのかな~」

 それでは、リンさん自己紹介してもらえるかな。それが終わったら、さっそく始めよう。




 次回、ある女の一生、夢の後先。


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