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おっさんの異世界転生 <俺もテンプレ世界で冒険してぇなぁ~>  作者: ところてんはあんまり・・・
第四章 この街で暮らそう、マッドスキッパー興亡編
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第六十四話 あぁ~、夏休み

64.



 はぁ~、青い空、白い雲、吹き抜ける潮風に美しい海。


 この島は楽園です。シュリこと、私が生まれたロス帝国は年のほとんどが雪に閉ざされた地でした。

 食糧は『プラント』と呼ばれる有機物を完全栄養ペレットへと変換する機構が存在していたおかげで、民が飢えることはありませんでした。

 私は王族の立場にいましたので、ペレット以外の肉や野菜といった食品を食べる機会が間々ありましたので、それほどの感動を味わう事はありませんでした。ですが、アテナはこの地で食する物の美味しさに感動続きのようです。私も理性が揺らぐほどではありませんが、食事がおいしくてとてもうれしいです。


 国元に居る時には触れることが無かった家事や、狩り、屋外で友人達と思いっきり遊ぶなど、私がこれまで経験できなかった幸せが全て叶ってしまいました。

 モズタロー様に多くの迷惑をかけてしまいましたけど……あきらめずに私に指導し続けてくださったことには感謝するほかありませんね。何かしてさし上げられると良いのですが、自分で何でもしてしまう方なので、どうしたら良いでしょうか。

 こんな時は相談して見るべきでしょう。ここはクーさんに聞いてみましょう。クーさんはとても可憐な少女です。その雪のように儚く美しい外見からは想像ができないほど、強く芯を持った女性ですから、何か良い助言を頂けるのではないでしょうか。



「ふむふむ、なるほど。タローは魚が好きだよ! 肉も好きだけど、魚もねって奴だね。だから、はいコレ! つーりーざーおー!!」

 クーさんが釣竿を私に差し出してくれました。何でもモズタロー様が手慰みで制作されたものだそうです。その、竿と言うよりは柱なのが気にかかりますけれど、釣竿というものはこのような物のことを言うのでしょうね。


 魚釣りは初体験です。とても楽しみです、がんばってお魚を釣りましょう!

 ヒョイと釣竿を受け取る私を見て、アテナが、よよよ、と泣きマネをしていましたが何か問題があったのでしょうか?アテナも釣りがしたいのであれば着いてくればいいでしょうに。



「あ、釣りするの?私も行く~」

 どこからか現れたナクアさんとクーさんの三人で海岸へとやってきました。

ナクアさんは自作の釣竿を持っています。釣り糸が絡まないように気をつけて釣りをしなければいけませんね。

 海岸では、モズタロー様が豪華な休息空間を作成中でした。なんでも、南国でのバカンスなら欠かせない舞台装置だそうです。モズタロー様はとても物知りです。海でのレジャー知識など、どこで学べるものなのでしょうか。


 そういえば、モズタロー様が岩を削りだし、組み合わせて造ったお風呂もとても気持ちがよかったです。お湯に浸かる行為がこれほど心地よいとは思いもよりませんでした。ぜひ、ロス帝国でも奨励したいものです。外には素敵な文化が数多く存在しているのかと思うと、とてもわくわくします。

 ああ、様々な地を巡ってみたいという欲求が湧きます。私の好奇心は殊の外強いです、外の世界が見たくて飛空挺を使った任務に志願したくらいですからね、そのため乳母姉妹のアテナには心労をかけていますね。まあ、人に平気で蹴りを入れてくるアテナですから心労くらいは我慢してもらいましょう。


 釣竿を振り上げ、海岸から思いっきり投擲します。うーん、私の腕力はそれほど強くないのであまり飛ばせませんでしたね。釣りとはこんな具合でいいのでしょうか。

 ナクアさんの様子を窺いますと、ナクアさんはメイス使いなだけあって、素敵で豪快な振り抜きで仕掛けが目に見えないほど遠くまで吹き飛んで行きました。蔦で作ったロープの様な釣り糸が限界まで伸び切ります。すごいですね、私にはとてもまねできません。

 クーさんはジロー号さんに乗り込んで、上空から投げ網に興じているようです。他の二羽が投げ網を引きずり浜へとあげる作業をしています。これは釣果が楽しみですね。

 魔物をあれほど手懐けるとはすごいことです。我が国でも取り入れるべき技術ですね、しかし、どうすれば良いのでしょうか、取り掛りがまったくわかりません。



「きたきたきたきた~あはははは~! すっごい引いてるよ! あはは~、なにこれなにこれ~あははは」

 そう言ってナクアさんが思い切り糸を引いています。ナクアさんのお手製釣竿は既に圧し折れています。どのような魚がかかったのでしょうか?あれだけの手応えがあるとさぞ楽しいのではないでしょうか。


 ザッパーン!!!!!!!

「ヴァ!!!」

 イヒッ号さんが釣り上がりました。

「「…………」」

「ヴァ! くいっくい、ヌイテ~」

 自らの口に刺さった針を抜いてくれと身振り手振りで表現しています。イヒッ号さんはとても賢いのです。牙がチラリと見えるのが愛らしいですね。ふむふむ、なるほどそうですか、餌に使ったお肉がおいしそうだったのですか、それは仕方がありませんね。

「あは、あは、あはははははははは……!! きゃっち、あーんど、りりーす!!!!」

「ヴァヴァーーーーー!!!!」

 ナクアさんが思い切りイヒッ号さんを遠投しました。あぁ、空の彼方へ消えていきますね。お昼なのに星になるとは中々できるスズメですね。


「あ、私の釣竿も引いています!」

 うん、なんでしょうか?引いてはいるのですか、こちらに近づいて来る様ですね。

 ザバァーン!


「……釣られたで候」

 カロンさんが釣れました。

「……素潜りで魚を獲っていたで候」

 あ、手に持つ網には魚や虫のような物が多数入っていますね。えっと、あの、お邪魔しちゃいました?

「……針が水練着に引っかかったで候」

 ……やっちゃいましたね。近くに人がいないことを確認して釣りは行いましょうね。

「……いやーん、エッチで候」

 あ、私もナクアさんの様にした方がいいのですね。これがネタ振りという奴ですね、わかります。


「それでは、空の旅をお楽しみください!!!!」

「……酷いで候!!!!」

 カロンさんもお星様になってもらいました。この一月余りで力が強くなった気がしますね。大柄な男性をあれほど投げ飛ばせるとは、お父様が見たら卒倒しそうです。

 カロンさんが落した網に入っていたお魚はもらってしまいましょう。さあ、材料は手に入ったので、これから料理に取り掛かるとしましょう。



 炊事場へと向かう途中でアテナとキースさんも見かけました。

「よし、アテナ。オレの用意はいいぞ、どっからでもかかってきな」

「胸を借りるでありますよ! せいやぁ!!」

 どうやら模擬戦を行っているようですね。アテナは自分が弱いことを気にしていましたから、皆さんから鍛えてもらえることがうれしいみたいですね。まあ、モズタロー様が主導するのだけは絶対にお勧めできないとのことでしたが、どのような過酷な訓練を行うのか気になります。

「ナクアさんは、モズタロー様に鍛えられたそうですが、実際のところはどうだったのですか?」

 体験者のナクアさんが一緒に居ましたので、思い切って聞いてみました。

「あれはね、あ、あれ、アレ、……あは、あれはね、あははあは、あ、あ、あ、あ、あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛~~~~ッッッッッ!!!!!!!!」

 ……触れてはいけないものだったようです。


「しょうがないなぁ~、アテナ直伝! 正気に戻れパンーチ!!!」

「ハグホォゲェア!! はっ、……私は正気に戻ったよ~!」

 クーさんがナクアさんの腹部に正拳突きを打ち込みました。背中が盛り上がるほどの威力があります。

 アテナ、なんてものを人様に教えているのでしょうか。そして、私のマネをしないでください! 忘れてほしいと言ったじゃないですかぁ~。



「ぎょえええええ!! であります!!」

 あ、そんなアテナはキースさんの盾殴りを両腕で防いだみたいです。防ぎきれずに両腕が変な方向を向いています。

「おう、折れたな。そうだそうだ、何べんも折ってるとそのうち強くなるさ。それに、腕が折れたぐらいで大声をあげてるようじゃ、ダメだな。まずは痛みに慣れるところから始めるか」

 そうですね、何度も折れた方が治る度に強くなりますよね。綺麗に折ってくれているみたいですが、キースさんも厳しい教師のようです。

 キースさんは、初めは冷たい人なのかと思っていましたが、最近では面倒見のいい方だということがわかりました。何かと私とアテナを気遣ってくれています。

「う、腕を圧し折っておいて、その言い分でありますか!?」

「おいおい、オレはモズタローに比べたら、随分温いことに定評があるぜ?」

 モズタロー様の調練がますます気になってきました。


 

「おや、どうしたのじゃ。ふむふむ、魚料理とは良いの~、しかしのぅ。魚は扱いが難しいのじゃ~、どのような料理が良いかのぅ」

 炊事場に着くとグウェンちゃんさんが居ました。小腹が空いたそうで、肉を焼いているそうです。私と同じくらいの体格ですが、とても聡明な大人の女性です。モズタロー様の従姉弟にあたるそうですが、はっきり言って似ていませんね。

「そう言えば、なんの料理にするの? 調味料はほとんどタローが保管してるから、大したものはできないんじゃない?」

 ええ、私も難しい料理をするつもりはありませんよ。

 大きな鉄板がありますので、浜まで運んで浜焼きとしましょうか。

「うん! いいんじゃない? それぞれが適当に焼いて食べるのであれば焼き加減にブツブツ言われないもんね~」

 そうですね、炭になるまで焼くのはいただけませんからね。それなら自分で焼き加減を調整してもらいたいのです。


 道具を持ちだし、浜へと戻ることにしました。グウェンちゃんさんも一緒に来るそうです。

「あら、浜焼き? いいわね、私もご相伴にあずかっていいのかしら? あらありがとう。それなら私も行くわ」

 途中で、洗いものを終えたカタリアさんにお会いしたので一緒に浜へと行くことになりました。



 さあ、浜辺で皆とご飯にしましょう。あぁ、とても楽しいです。本当にここは楽園と言っても過言ではありませんね。こんな時間がずっと続けばいいのですが。




 次回、モズタローの悩み


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