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おっさんの異世界転生 <俺もテンプレ世界で冒険してぇなぁ~>  作者: ところてんはあんまり・・・
第四章 この街で暮らそう、マッドスキッパー興亡編
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第六十話 遥かなる霊峰ングラネェーク

 60.



 翌朝降りしきる雨の中、俺達はカロちゃん、キーちゃん、グウェンちゃん、委員長、ナクアさん、クーと三羽スズメのメンバーで門を潜ることを決意した。


 食糧に水、必要な物は全て用意したつもりだが、品不足なのは否めない。収穫前の米が南区の先にある田園地帯に実っていたので、米は確保できたのだけれどね。

 理由は分からないが、恐らくダンジョン内にクーム達調査隊は潜入してしまったと結論付けたためだ。

「モズタローの兄貴、親父を頼みます。こっちはあてらに任せてくだせえ。きっちり仕切ってみせますから」

「あたし達はがんばってまとめますから、そちらもがんばってくださいね。どうにか生活できるだけにはしてみせます!」

 アキちゃんとカドちゃんの声援を受け、俺達は進む。


 

 門の前までやってきた俺達。

「……いやな気配がするね。タロー、これは門と言うよりは、わぁ!!」

 門から、中央に浮かぶ巨大な目玉から、手が生えてきた! 黒く、デコボコしていて歪であるが、おそらくは手だろう。その手が俺達をまとめて掴みあげる。俺は隣に居たグウェンちゃんを庇い抱きかかえた。

「がぁ、引き摺りこまれる!? モズタロー!! これが、クーム達を!」

 う~ん、もう少しきつく握ってくれても良いのだけれど。あ、うんうん、クーム達もこれで連れ去られたと考えるべきだろうな。

「このマゾヒスト!! アホ! あんた、アホ! どうするのよ!!」

 いいんじゃない? このまま引きずり込まれよう。どうせ潜るつもりだったんだ、丁度いい。

「あぅ、モズタローちょっと、きついのじゃ~。あ! そ、そ、そうじゃな、このままダンジョンに潜入するのじゃ!」

「タロー、後でお仕置き」

 なぜ!?

「わぁ~い、もふもふする~、いざかまくら~」

「チュチュン!」「ヂュン!」「ヴぁ~」

 ナクアさんはスズメに挟まれてご機嫌のようだ。あ、カロちゃんはもふもふに埋もれて声も出せないようだ。


 そんなこんなで、騒がしい俺達は引きずり込まれていった。




 照りつける太陽、吹き抜ける風、青い海、白い雲。季節は夏、太陽の季節だ。

「ここは、どこだ」

 俺達の目の前には青く透き通る美しい海と砂浜が、そして後方には雲を貫く巨大な山が聳え立っていた。



「グウェンちゃん、これってダンジョン? 俺には外に見えるのだけれど」

 完全に外だ。もしかして、離島か半島なのだろうか。

「……森や都市がダンジョンとなることもあるのじゃ、島が丸ごとダンジョンとして現れたとしてもおかしくはないのじゃろうが。これは、あまりにも規模が違うのじゃ」

「すっげー、こんなに綺麗な海は始めて見たぞ。以前見たのはドス黒かったし、ミズーリ北部の海もこんなに透明度は高くなかったぞ」

 テンションが上がり、今にも海に飛び込みそうなキーちゃん。


「はしゃがないの! どんな魔物が近くに居るかわからないんだから!」

 委員長はピシャッとキーちゃんを叱る。

「むむむぅ~、もっと魔物がワンサカいるんじゃないの~、これじゃ殺せないじゃない!」

 ふむ、魔物の気配も近くには感じないな。クームや取り込まれた人々の気配も感じないがね。ただ、どうしても拭えない違和感がある。なんだろう、吐き気がするほどの醜悪さを感じる。

「タロー、空から見てきたけど、ここは島だよ!孤島だよ。周りは全部海!出口なんて見つからない~」

 あ、ジローを従えたクーが見て来てくれたのか。そうか、今回はこの孤島がサバイバルの舞台となるのですね、わかります。はぁ、俺は普通のダンジョンに潜った経験がないな。まあ、今回は初めから期待していなかったよ。普通ってなんだよ!?

「……もふもふで候」

 カロちゃんは恍惚な表情でサブローとイヒッに抱きついている。気持ち良かったのだろうか。触手が好きだったり、もふもふが気に入ったりとすごい男だ。



 クーが確認してくれたことだが、俺達がいるのが南の浜辺であり、山を挟んだ向かい側には森があり、その奥には湖があるそうだ。湖のさらに奥には集落が見えている。東側には港町が存在していたような形跡があるようだ。山は非常に巨大で麓には森林が生い茂っているようだ。

 さて、どこへ向かうべきだろうか。一番近いのは港町跡地だろうが、人がいる可能性は湖の周辺だろうか。いや、そうとも限らないか、全員遭難者見たいなものだったな。

「それじゃあ、近場の港町跡地に向かおうぜ。明るいうちに休める場所を探しておくのは悪くない。飯は数日分持っているが、確保できるに越したことはないしな」

「そうじゃな、それでは向かうとするかのぅ、くれぐれも魔物に気をつけるのじゃぞ」

「あ~、楽しみ~、どんな強敵が出てくるんだろう!?」

 クームの心配をして上げてほしいな~。

 上空から見上げた限り、マッドスキッパーらしき都市は存在していなかったな。森の中や地下といった場所も考えられるし、そのまま残っているとは限らないことは十分に想定していたから、少し残念くらいの気持ちだな。

 

「暑いのじゃ~、むしむしするのじゃ~。モズタロー、水くれなのじゃ~」

 はいはい、ほらどうぞ。グウェンちゃんも水は持っているのだが、俺の異次元鞄に入っている水は冷えているため、俺の水を飲みたがる。井戸水を汲んですぐに保管したから冷たいのだ。

「う~、つまんない! ぜんっぜん魔物の気配しないよ!」

 不満そうなナクアさん。山からは強力な気配を感じ取れるが、今いる海沿いは魔物の気配を感じないな。俺の感知を潜り抜けている可能性もあるから、油断はできないけど。しかし、山の気配は強いな、ここからでも感じられる程とはどれほどの存在なのだろうか。

「ナクア、安全な場所を確保できるまではでないに越したことはないでしょうが」

 呆れた様な委員長の声。


「……空から来たで候! む、クー殿が仕留めた」

「タロー、見て見て、これ何?白い羽に赤い鶏冠を持ってるよ! おいしそうじゃない?」

 鶏の様な鳥を複数仕留めたクーが誇らしげに見せてくる。飛んでやがる、鶏のくせに。

「ふむ、これは告死蝶じゃな。鳥の様じゃ、しかし羽を毟るとわかるのじゃが、虫の魔物じゃ。まあ、味も悪くないのじゃ~。オスアナア大陸南方に生息すると言われておる魔物じゃな」

 虫だった、まじか。しかし、南か。なら、この暑さも納得かな。いや、南に行けば熱いと言う発想は、前世が北半球在住だったからかな。

「あの大きな山から来たようね。あそこは危険そうだけれど、食糧がありそうな場所として覚えておきましょう」

 水は海があるからグウェンちゃんがいればいくらでも確保できるな。なら、食糧のことに意識を向けるのは良いことだな。

 しかし、これが虫なのか。キチン質ならぬチキン質の表皮をしているのだろうか。解体して見たいものだ。からあげでいいだろうか、見た目が鶏だから良いかもね。

 

「……風が気持ちいいで候。イヒッはすばらしいで候」

 カロちゃんはイヒッに乗って空を飛んでいる。自分で空を駆けるのとは、また違った味わいがあるのだろうか。ご機嫌な様子が伝わってくるな。

スズメ騎乗を交代で練習することにしたのだ。空を飛べると言うのは非常に便利だからね、ただ落ちても死ななそうな人から練習することになっている。

 具体的には、俺、クー、グウェンちゃん、カロちゃんだ。キーちゃんは大柄な体と大盾と金属鎧を含めた装備で、重量が重すぎるから三羽とも嫌がった。委員長は空中に放り出されたら受け身がちゃんと取れるかが心配なので遠慮してもらった。ナクアさんは……スズメ達が危険だ。

 だから、自力で空中移動できるカロちゃんが練習している。これもう、意味があるのかわかんねぇな~。



 目的地へとかなり近付いてきた。

「タロー、人の気配を感じるよ」

 そうだな、十数人くらいの気配を感じるな。遭難者だろうか。

「そうじゃな、もしかすると敵かも知れぬから気をつけて接触することとするのじゃ」

「了解~。あははは、平和すぎてため息がでちゃうところだったよ~」

 殺る気は抑えてね!だめだよ、初対面の人にメイスで殴りかかったら!!


「クーはスズメ部隊を連れて、上空から見張るね。タローがピンチになったら降下して助けるから安心してね!」

 わかった。よろしくたのむよ。でも、空を飛ぶ魔物がいるから、そちらも気をつけてね。

 ぐしぐしと乱暴にクーを撫でつけてから、クーを見送った。イヒッに乗っていたカロちゃんも一緒に行った様だ。

「じぃー、なのじゃ」

 なんですかねぇ。視線を感じるのですが、無視無視。ていうか、口で言ってるよ!

「はぁ、痴話喧嘩しないでよね。こんな時でもいつもとかわらないのはいい事かも知れないけど。」

 委員長が緊張してくれているから、俺はゆるいくらいで丁度いいよ。




 しゃべくりながら歩いていると前方に人影が見えた。

「フリーズであります!! そこで止まるであります!!」

 第一村人発見!声をかけようとしたら威嚇された。ふむ、ショートヘアーの金髪で、ナチスの親衛隊が着ていたような軍服らしき服装をしている女性だな。大きめのカチューシャが良く似合っている。ただ、130センチくらいしかないな。見た目は成人女性の様だから、身長だけが小さい。随分傷ついているな、魔物と何度も戦闘を行ったのだろうか。

「一歩でも動けば撃つであります!」

 拳銃のようなものを突き付けている。銃なのだろうか、魔道具なのかも知れないな。


「やめい、言葉が通じるのならば争う気はないのじゃ。その筒は見たところ魔道具のようじゃ、そのようなものを突き付けられていたら話もできないのじゃ」

 グウェンちゃんが大人の対応をしているな。ナクアさんが気色ばんでいるから先を制した形で声を出したのだろう。

「魔銃を下ろすことはできないであります、そちらの人数が多いでありますから。このまま自己紹介するのはどうでありますか?」

 いいんじゃない? 向こうが武器を突き付けていないと不安だと言うのならば、それを受け入れるくらいの余裕が俺達にはある。

「わかった、情報交換をするのじゃ。話はわたしが主に応対を行うのじゃ。わたしはグウェン、以前は教師をしておった。今は冒険者じゃ」

「了承したであります。わたしはアテナであります。軍人であります」

 


 グウェンちゃんとアテナと名乗った女性は一問一答形式で情報交換を行った。どこの誰だとか、なぜここにいるのだとか、ここはどこなのかとか、自分達の状況などだ。

 彼女はぶっちゃけ何もわかっていなかった。数人で調査をしている途中とのことだった。何でも、森に仲間達がいるのだそうだ。

「そうでありますか、ここはダンジョンなのでありますね。話には聞いたことがありましたが、このような空間がそうであるなど思いもしなかったであります」

 とりあえず魔銃という武器は下ろしてくれた。敵意が無いことをわかってもらえたようだ。


「あなた達は二次遭難に陥った調査隊と言ったところなのでありますね」

 俺達の状況も正しく認識してくれたようだ。

 彼女達は「ロストアヴァロン帝国」というところから、魔力爆発の調査にきたらしい。つまり、あれだね。飛空挺に乗っていた方々ということだよね。アハッ。

「アテナさん、あなた方はあの飛空挺に搭乗していたのですか?」

 やんわり聞いてみよう。

「……そうであります。そちらは都市を守るために戦っていたのでありましたね。それならばタイタニックを見たでありますか」

 あ、やっぱりね。


 その時、上空から声が聞こえた。

「タロー、隠れて狙っていた連中を全部縛り上げてきたよ~。黒男すごいよ、影からヴュンヴュン生えてきてあっというまに制圧しちゃったよ」

「……好調で候。『暗黒』……使いこなせればかなり有用で候」

 十数人を縄で縛りあげたの?そんなに縄を持っていたの!?攻撃仕掛けちゃったの?やっちまったなぁ!!……向こうも武器を構えた人員を伏せていたのか、その話は聞いていなかったな。じゃあ、制圧しても仕方が無いか。

「あの魔物は!? あ、あなた達はまさか! タイタニックを撃墜した方々でありますか!」

 イエス、アイアム!!

「くっ、動くなであります!」

 あ~あ、こりゃもうダメかもわからんね。


「あはっ! ちょろい!!」

 会話中にナクアさんは彼女の背後に移動していた。感覚魔術で隠蔽しながら行動していたのだろう。アテナさんはまったく気づいている様子はなかった。

ナクアさんはメイスで腕を殴りつけた。嫌な音がした。銃を構えていた両腕があらぬ方向に折れ曲がっている。

「ぐあっ、く、ここまででありますか……」

 いや、ちょっと待って、死なないでください。それほど強い攻撃じゃなかったのに腕が使い物にならないようだ。体が小さいから、その分脆いのかな?

 

「ナクアやめんか!! なぜ、皆こんなに血の気が多いのじゃ~、はぁ、モズタロー済まぬが急いで休憩できる場所を探してほしいのじゃ。この娘の治療はわたしがするのじゃ。他の面々は縛った連中を全て連れてくるのじゃ! 急ぐ急ぐ!!」

 一緒にしないで!はぁ、走って港町に行きますよ。すぐにキャンプ地を見つくろってきます。


「安全に先手を取れたと思えばいいのかしら。あの空を飛ぶ物を見た限り、彼女達は友好的な存在ではなさそうだったし」

 委員長も敵性判定していたのか。

「都市が襲われてたのに、隠れて静観を決め込んでたからな。こっちの命なぞ、なんとも思ってない連中だろうさ」

 キーちゃんの判定も厳しいな。大勢が苦しんでいる姿を黙って見過ごせない性格からすると、それは許せない事なのかも知れないな。

 まあ、助けないのは別に良いとは思うけどね、だが眺めていたのは趣味が悪いと思う。

 

 こうして俺達は捕虜を手に入れた。いや、いらない。捕虜いらないよ! 十三人だよ! どうするんだよ。もぅ~、こんなに捕まえちゃってさ。この影縄だっけ?どうやってはずしたらいいの?皆、雁字搦めじゃん! 股に食い込んで、可哀そうじゃん!

 食糧やその他諸々を考えると、俺は頭痛がしてきた。





 次回、絶望的な関係を取り戻せ。これって愛を取り戻すより難しくない? 袖擦り合うのも他生の縁という言葉を教えたい。おっさんが苦労人化するとは、このリ○クの目を持ってしてもわからなかった。


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