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おっさんの異世界転生 <俺もテンプレ世界で冒険してぇなぁ~>  作者: ところてんはあんまり・・・
第三章 前略旅路の上より、風来編
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第四十四話 恐怖! 砂ネズミの尻尾はふかふか!!

44.

 


 あれから、しばらくの時がたった。


 塩の供給改善は未だ成されていない。マツオさんに話を聞きに行ってみたが、調整中とのことだった、どうなることやら。

 皆塩の無い生活に耐えられるの? なに? 酒のつまみどうするの? しょっぱいものがないとおいしくお酒が飲めなくなっちゃうよ。


 都市内では問題になっていないのだろうか? そもそも、俺の都市内に対する印象が違っていたのだろうか。意外と軍事力、経済力に欠けていて、塩田施設の復旧に手が回らないのだろうか、それとも、何か思惑が存在しているのか。実際に都市内部に入ったことがないから雰囲気がわからないな。

 外周街で大抵何でも揃う、と言うのが大きいかも知れないが、都市内に入りたいと特に思わない。まあ、俺だけかも知れない。


 都市から追い出され外周街に住むことを余儀なくされた連中は帰りたいのかもしれないな。おっさんは、根なし草な性格をしているのかな。

 この世界に来てから、生存に役立つ能力ばかりが成長している気がするなぁ。環境適応能力も高くなっていると思うよ。



 それよりも、北区での抗争が激化しつつあるらしい、一般人まで巻き込んだ騒ぎになっているとか。新参組織が思いのほか台頭し、既存の組合が都市内へ納める物の強奪や、都市内と外への出入りを露骨に邪魔するなど、都市内に対しても牙を剥いているそうだ。

 どうやら新参組織の構成員は外周街に潜み、ゲリラのように活動しているようだ。誰が敵なのかがわからない状態になり、偽情報や暗殺騒ぎなどで、死体が街中に転がっているのが常態化しているらしい。


 無関係なものにも死傷者が多数出ている、放火や乱闘騒ぎが頻繁に発生しているからだ。難民として北区の住民が東区や西区には大勢流れてきて、流通に問題が起こりつつあるそうだ。

 北区ではハンターの傭兵仕事が増え、魔物の討伐が疎かになり、食べ物や素材などの不足が目立つそうだ。

 怖いなぁ~、日本人からしてみれば暴動やテロなんてものは経験がないな。メキシコギャングの恐ろしさとか、コロンビアネクタイの恐ろしさとかは知っているけど、実際目にする機会はなかった。




「おめぇさん達にゃぁよぉ、西部海岸地帯での遠征狩猟に参加してもらいてぇ」

 ある日、マツオさんがそんなことを頼みに来た。

 どうやら、南部ハンター組合の一部を海の側での狩猟に派遣することになったらしい。

 願ってもない仕事の依頼だが、なぜ俺達に直接依頼が来たのか不思議に思っていると、マツオさんが罰の悪そうに説明をしてくれた。


 どうやら新参者である俺達を、北区での抗争と関係があるのでは、と疑う者達がいるらしい。南区に住んでいるから関係ないとか思っていたが、そこまで疑心が深まる状況になっていたのか。敵味方の区別がつかなくなっているのだろう。


 断る理由も特にないので、遠征狩猟に参加することにした。復旧中の塩田施設をキャンプ地として周囲の魔物を狩る、やることはこれだけだ。素材の買い取りはキャンプ地で行ってくれるし、食事処や道具屋なども出店されるとのことだ。

 お祭り気分で楽しめばいいとのことだった。生き死にのやり取りを祭りと言われて、楽しめるかはわからないが十分に稼がしてもらうとしよう。目立ちたくないし、外周街からしばらく離れるのも良いだろう。




「くさぁー! なまぐさー。これが潮の香りかぁ~、うーみー!」

 クーは大はしゃぎだ。俺も久しぶりに嗅ぐ磯の香りに興奮してしまうな。

話を聞いた翌朝、俺達はキャンプ地まで馬車で移動した。今はキャンプ地近くの海岸まで来て海を眺めている。


 キャンプ地は壊れた塩田施設に設置されているが、話に聞いていた通り、塩田の復旧はあまり進んでいないようだ。真新しい破壊の痕跡がいくつも存在している、何度も魔物の襲撃を受けて、その度に破壊されているのだろう。今年は街への魔物の襲撃がまだ無いことを考えると、こちらに集中しているのではないだろうか。

 周りのハンターの多くは南区の連中らしいが、顔見知りはいないな。まあ、カドちゃんとアキちゃんくらいしか親しい知り合いのハンターがいないから仕方ないか。今回はカドちゃんもアキちゃんもマツオさんから頼まれた仕事があるらしいので、遠征狩猟には参加していない。



 海を眺める俺達の後ろから声がした。

「おう、お前さんらが、マツオさん推薦のハンターか。俺はゼンリだ、今回の遠征でまとめ役をしている、よろしくたのむぜ。面倒は控えてくれよ」

 おや、ゼンリと名乗るナイスミドルから早速忠告をいただいてしまったな。俺の街での評価が覗えるというものだ。なぜか、面倒を起こすやっかいな野郎と思われているみたいだ。がんばって評価を覆すことにしよう。


「モズタローです。面倒をかけないようにそこそこがんばらせてもらいますよ」

「クーも、がんばるよ~」

 そう答える俺達。印象が良くないようだから外面を整えておこう。

「そうかそうか、寝床はあっちを使ってくれや。まあ、気の荒い連中ばかりだから気を抜かねぇようにな、なんかあったら俺にいいな」

 特に当たり障りのない会話をしてゼンリさんは戻っていった。ふふふっ、ああいう仕事人みたいな男性を困らせたいと思うのはおっさんだけ? まじめに働いている人を笑わせたくなるよね? 去っていく後ろからカンチョウとかぶちかましてやりたくならない? 初対面だろうと遠慮する必要はないかな、やっちゃう? ダメ? がっかり……。また今度だな。



 ここで海を眺めていても仕方がないな、よし、準備をしたら、早速狩りに出かけることにしよう。

 砂地周辺で出現するのは、どんな魔物か確認をしながら狩っていくとしよう。内陸の方に移動すると生態が変わるが、今回は砂地周辺を主な狩り場にしてみよう。大体の魔物の情報は頭に入れてきたが、百聞は一見に如かずだな、一見は一行に如かずだけど。


「見て見て! おっきなネズミ!」

 ふむ、クーが見つけたのは毒砂ネズミだな。

 カピパラより大きな体躯をしていて、毒撒きトカゲと同じように毒を吐くことができるネズミだ。大群で生活し、基本的には砂の中に潜んでいるらしいぞ。

 まあ、毒撒きトカゲが襟から毒を噴出するのに比べると、口から直接毒を吐くから美しさにはかけるかな。ああ、あの味わいをもう一度。


「一匹だけに見えるけど、囮ってこと?」

 さてね。とりあえず殺そう。ぶっ殺そう。サイレントキリングと洒落込もう。

砂浜でゴロゴロ砂浴びをしている相手にこっそりと近づき、相手が気づくよりも早く頭に斧を打ち込む。

「ぴゃ!!」

 甲高い声をあげて死んだな。仲間を呼ばれたかな? む、『魔力探知』に大量の魔物反応が現れた。なるほど、砂の中に隠れていると探知を掻い潜れるほどの隠蔽効果を持っているのか。


「タロー! たくさんくるよ、気をつけて!」

 よし、よし、クーもしっかり気づけているようだな。なら狩りを続行しますか、クーは毒に注意してくれよ。

「うん!」

 わさわさ湧きあがってきたが、大きな体のせいかネズミのくせに動きが素早くないな。あっ、毒を吐いてきた! もったいないぞ! クー、毒を吐く前に頭を潰そう。毒が肉に回ると金にならないから毒袋を潰さないように頭をしっかり狙え!

「なんで毒を吐く前なの?」

 俺が食うからだ。

「…………」

 何その顔? いいじゃん!? 毒撒きトカゲの旨味を思い出しちゃったんだもん。味が気になるんだもん!


 俺達は次々と襲いかかってくるネズミどもを潰していった。こんなに襲いかかられると楽しくなってきてしまうな。

 魔物は実力差がある相手にも襲いかからずにはいられない性質があると思う。仲間が次々に潰れていくのに逃げ出さないとは狂気の沙汰だな。



 砂毒ネズミの屍の山で、さっそくご賞味タイムと行こう。あ、クーさんはどんどんリアカーに積み込んじゃって、どうぞ。


 よし、毒袋だけをうまく取り出せたな、あとは零れないように開いてと……ほうほう、黒寄りの赤色をした毒が溜っていますな。どれ一口いただいてみましょう。粘度が少しだけあるな、カラメルソースのようだ。

 パクッとな。その瞬間、俺の口内には、濃厚なチョコレートとブランデーのような香りが爆発した。あぁ~、甘いが甘いだけではない、野性味が強いが荒々しいだけではない、口の中に絡み付く豊潤で蟲惑的な味が俺を掴んで離さない。

 上等なブランデーを口に含んだときのピリッとしながらもどこか心地の良い刺激、高価な生チョコを贅沢に口に転がした時のえも言われぬ快感、そんな感覚がある。


「これは……これは、いいものだ」

 感動して思わず呟いてしまった。毒キノコもおいしいが、やはり魔物の毒は違うな。なんだろう?どうしてこんなにおいしい必要があるのだろうか?毒キノコも美味い必要はないらしいから、これも謎だろうな。理屈が思いつかないよ。



「じっーーーー」

 なにクーさん? そんな変顔しちゃってさ。

「タローだけ、タローだけずるい! ひとりだけでおいしいもの食べるなんて! クーも食べたいよっ!!」

 ダメです、死にますよ!俺は毒には強い抵抗があるから、これが味わえるのだ! クーは毒に強いの? 強くないよね? お腹だってそんなに強くないのに、毒なんてとんでもないよね?

「そ、それは……だ、だって、タロー、あんなに幸せそうな、幸せそうな顔してたもん!! クーも食べたいよー! ふ、ふぇっ、うぇぇえええん」

 あ、泣きだしちゃった。まだまだ子どもっぽいところがあるな。いや、俺も毒がこんなに美味いなんて思わなくって・・その、ごめんね。


 悪かったよ、キャンプ地に戻ったら何か美味しい物を食べようね。海水があるから潮汁でも作ってあげるよ。だから、くれぐれも勝手に毒を食べようなんて思わないでね。

「ぐすっ、約束、約束だからね!」

 はいはい、今日のところはキャンプ地に戻ってご飯にしましょうね。



 そんなこんなで一日目は無事に帰ることができた。




 次回、遠征狩猟編がしばらく続くのか? 海の味覚を楽しみたくなるおっさん、それは危険だぞ! 釣り柱Mark2が生まれるのか? それとも、素潜りに挑戦するのか? 海は魔物の宝石箱やぁ~。


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