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16_解ける偽装と、拾われた猫

 第三セクターに静寂が戻った。


 ギリギリ意識を保っていた状態であった桜夜は、凶悪な気配が完全に消えたことで意識を手放してしまった。


「全く……七大執政ともあろう者がみっともない」


 同じ七大執政の一人である第七席。


 第三席は彼女に関する情報を多くは持ち合わせていなかった。


 一定の場所には留まらず、世界中を縦横無尽に飛び回り、戦場の最前線にて敵を一掃してはすぐに姿を消す。


 彼女が戦ったその場所一帯は、白き氷の世界へと変貌して一定期間魔物が生息できない環境へと変えてしまうほどの実力の持ち主。


 そんな彼女についた異名が『暗黙の白姫』。


 『暗黙』というのは彼女が一言も発さない人柄もそうだが、彼女の姿を見かけたら邪魔をしないよう、一目散に退却するというガーディアン内での『暗黙の了解』が発端だ。


「『暗黙の白姫』の名が聞いてあきれるわ……え?!あ、あなた……体が? !」


 第三席が見つめていた第七席の体が、限界を迎えたように淡い光を放ち始めた。


 偽装されていた肉体の輪郭が氷の融解と共に崩れ落ち、大人の女性だったはずの体型が、傷だらけの華奢な少女の姿へと収縮していく。


「これは一体……あ、あなたは? !  ……そういうことだったのね」


 第三席は、第七席のフードを取り、初めてその素顔を見た。


 そこには見覚えのある顔があった。



乃愛のあちゃん、乃愛ちゃん! ねぇねぇ聞いてよ!」

「うるさいわよ遥。耳元でキャンキャン吠えないでくれる?」


 第三席・乃愛は呆れたようにため息をついた。


「それに七大執政としている時は、本名で呼ばないでって何万回言ったら分かるのかしら? 頭の中身が腐っているのかしら?」

「あたし二人目の子どもが出来たの!」

「ブフッ?! ……ケホ、ケホ」

「大丈夫?」

「大丈夫じゃないわよ! アンタ自分の立場分かってるわけ?! 何も考えずにポンポン産むんじゃないわよ!  一人目の時もわたしがどれだけ……」

「見てみて! 桜夜っていうの! 可愛いでしょ?」

「はぁあ? !  身ごもっているわけじゃないの?」

「うん! 拾った!」

「捨て猫拾ったみたいに言うんじゃありません!」

「乙羽と同じ年なんだぁ~ ! あたしの子は二人とも可愛すぎて キュンキュンしちゃうんだよ~ !」

「でもこの捨て猫ちゃんはぶっきらぼうね。わたしはこういうクールな子が好きだわ。静かで利口そう。アンタと違って」

「今日も家を出る前は二人で抱き合って寝ててさぁ~ ! もう~うっとりしちゃんだよぉ!」

「相変わらず人の話聞かないわね。はぁ~この親で本当に大丈夫なのかしら、この子ら」


 この時に第三席が第一席から見せられた二人の少女。


 一人は『本当の第一席の姿』に瓜二つの少女、乙羽。


 もう一人は冷たい瞳をこちらに向けている少女、桜夜。


 しばらくの間、しつこくこの二人の写真や自慢話を聞かされる日々が続いていたある日、第一席が突然謎の『女性』を七大執政に推薦すると連れてきた。


 その者は一言も発することもなく、常にフードを深くかぶって顔を隠していた。


 通常であればそんな不審者を世界の頂点ともいえる七大執政の一員に入れることなどできはしない。


 しかし、世界最強の実力の持ち主である第一席と、国王の推薦があるともなれば話は別だ。


 もともと実力主義の世界である以上、魔物に対抗するための戦力はいくらでもほしいところ。


 その『女性』は推薦に見合うだけの実力を他の七大執政たちにも証明したことで、正式に第七の席を授かった。


 そして、第七席の加入により明らかに世界的にも戦況が緩和されたことで、誰一人として第七席の実力を疑う者などいなくなっていた。


「『シロ』ちゃんお疲れ! ずっと働きっばなしは体が持たないよ?  少しあたしらとお茶しようよ!」


 第一席から『シロ』と呼ばれ出したことで、自然と周りも第七席のことを『シロ』と呼ぶようになっていた。


「まぁ地べたになら座ることを許可するわシロ。ありがたく思いなさい」

「ほら、こっちにおいで!」

「ちょっと!」

「あ、これもお食べよ! おいしいよ!」

「それはワタシの分でしょ! ?」


――これが、七大執政『第一席』との最後のやり取りになった。


「まさかアンタが『桜夜』だったとはね……。遥が殺されたと聞いて、正直一番あなたを疑っていたのよ。素性も分からない上、遥の一番近くにいて、あの子を殺せるほどの実力を持つのは、あなたくらいだったから……。でも、見当違いだったわね」


 第三席も、遥の娘二人がコモレビという部隊に所属していることは知っていた。


 一人は昔の母親の姿を連想させる実力を持ち、もう一人は魔導力が低い落ちこぼれ。


 その落ちこぼれが実は自分と同格の実力を持ち、最強の娘を守っている。


「さすがにこんなこと、想像もしなかったわ……。まぁアンタとはそれなりに付き合いもあるし、これで遥にも愚痴を言われないで済むでしょう……わたしはわたしのやり方で戦う。アンタはしっかりとあの子を守りなさい」


 第三席は、ボロボロの姿で気絶している少女、桜夜を抱きかかえその場を後にした。

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