13 花を買い始める
一度少し上げたEーヨの株価がジリジリ下がってきている。沙優はここの株価はそのうちまた上がると特に理由もなく信じているので、下がったらお得だと感じ、欲しくなってしまう。しかし、もう証券口座の現金は30万くらいしかなく、お金が足りない。もちろん、銀行口座には別に貯金があるのだが、それに手をつけたら終わりだと思う分別は残っていた。最近危ない橋を渡っている自覚があるので、最後の砦として、せめて銀行預金には手をつけないように自分を律している。
それでもどうしても買いたいという気持ちが募り、沙優はD証券の株を売ることにした。長期投資をするのではなかったのか。すぐに前言撤回してしまう沙優である。
D証券は株価があまり変動していないが、沙優が買った時から30円ほど株価は下がっている。とは言え、損は合計で9000円と今の彼女にとっては誤差のようなものなので、さっさと売り、Eーヨを買った。
沙優は最近、スーパーで買い物をする時に、スーパー内に出店している花屋で生花を買うことを贅沢としている。きっかけはコロナでお花が売れないとニュースになっていたことで、何か協力できることはないかと自分用に花を買い出したことだった。仕事以外はほとんど家から出ない生活をしているので、花が癒しになっている。それまで自分用に花を買ったことなどなかったが、千円ほどで花瓶にいけるのに十分な花が買え、しかも1週間から2週間はもつので、コロナで出費も減ったことだし、と続けているのだ。休みの日も出かけることができないので(コロナ前も別に頻繁に出かけるタイプではなかったが)花にあわせられるように、家を前より更にきれいに片付けるようにもなった。インスタとかにあげたら人気が出たりしないだろうかと考えることもある。ただ、本名でSNSはやりたくないな、とか、本名ださなくても批判されたらいやだな、とか思って踏み出せない沙優だった。まあ、仕事で大半のエネルギーを使っているのでそれどころではないのだが、「株でこのまま儲かったらどうしよう、ぐふふー」とか、「インスタ始めて人気出ちゃったらどうしよう、にゃほほー」とか考えないとやってられないというのもある。そんなことを考えられるだけ、まだ余裕はあるとも言えるが、仕事の大変さを妄想で紛らわしているのだった。婚活があまりうまくいかなかったのも納得である。
この作品中の会社、人は全てフィクションです。株式投資は元本割れするリスクがある投資です。始める場合はリスク管理などの情報収集をしてからにしてください。




