第五十二話 魔帝降臨
中央塔最上階、今までの攻防の激しさが嘘のようにこの場所は静かであった。白い壁と床がどこまでも続き、一歩ずつ歩くたびに足音が響いてはまた静寂に引き戻される。
音も色もない世界、あるのは無のみ。神聖とみるか、不気味とみるかは意見が分かれるだろう。
今まで張り巡らされていたような武装も、ここには全く存在しない。
まぁ本来ならこんなところまで敵が侵入するすることなんて絶対にありえないことなのだから当然だ。
それに神聖なる帝の間の側に、騒々しい設備など見合わないのだろう。
「ハァハァ....やっと..か..」
そびえる荘厳な扉の前に立ったライトは額の血と汗を拭った。纏った服は歴戦を経て所々ズタズタに裂け、手に握る双剣の剣身にも細かい傷がついている。
かつて真っさらな体で飛び出ていったこの場所に、ライトは回り回って帰ってきた。あの時から随分と成長して。
「..久しぶりの再会だ.. 全く嬉しくないけどな..」
-パチパチッ........ザッッ..ズガンッッ!!-
振るわれた剣が扉を崩壊させた。鮮烈な一撃によって、荘厳な扉もただの瓦礫となりバラバラと土煙を上げた。
「随分と、手荒な入場だな、ライトよ」
そこ部屋の奥から厳かな声が響く。
「あぁ、久しぶりすぎて....加減がわからなかったぜ」
ニヤリと歯を見せるライトが見上げると、アノウと目が合う。相変わらずの巨体だ、威圧感がある。仮面の奥の瞳もまるで全てを凍て刺すようだ。
「まぁ、よい。扉の一つや二つ、今更どうでも良い」
「へぇ、太っ腹じゃねぇか」
話しながらライトはアノウに歩み寄る。隙さえあればそのまま喉元に剣を突き立てるだけの準備はできていた。
「..お前に与える罰は、既に決まっている」
アノウは銀色のマントをなびかせた。ただそれだけのことで台風をも超える強風が吹き荒れ、ライトは顔を覆った。
「........死だ」
よく響く声でアノウは静かにそう吐き捨てた。
「再び忠誠を誓ったなら、処遇も考えてやらないこともなかった。だが、貴様が余に従う意思がない以上、生かしておく価値もない。裏切り、邪魔立て、貴様は少々不遜が過ぎた.. もはや死は....必然的だ」
視線が痛い。負けじとライトも睨み返すが、アノウは全くもって意に介さなかった。やれやれといった風に首を振る。
「それに猶予は十分に与えただろう?? 愚かにも貴様は全て無駄にしたがな」
「お前に従って生きる方が愚かだ」
鋭い目と共に言葉を放つ。
「それはそれは....実に面白い冗談だ」
口では面白いと言いつつも、アノウの目はこれっぽっちも笑ってはいなかった。
「オレは......本気だ..」
..言葉を介さず、二人は激しく睨み合う。
「....全く、脈々と連なる崇高な意志を理解できぬとは、やはり貴様はとんだ失敗作だ。
我々の一族は、宇宙の調和と平和を保たねばならん、それが課せられた使命だ。
その使命を果たすためにも、知性生命体は抹殺せねばならない。奴らは無意味に争い、汚し、いたずらに調和と平和を乱す、宇宙の出来損ないなのだよ。ゴミは捨てなくてはならない、地球でそう学ばなかったか??」
「確かに掃除は大切だな。でも、それ以上に命は大切だ。そんな簡単なことも分からないのか」
「下等な命など、ゴミも同然だ」
「そんなことはない。必死に生きてる人たちの命は星に負けないぐらい輝いて、尊いものだ。
お前が滅ぶべきと言った星々で、オレはそういう人たちをたくさん見てきた。お前が頭でっかちで無知なだけだ」
「それは違う。貴様が奴らと同じだからそう思えるだけだ。どこまでいっても、奴らは平和の足枷だ」
「平和、平和うるさいな、お前は」
ライトは呆れ返るように半笑いで言った。その様子にアノウは瞼をピクつかせた。
「そもそもお前はただ、与えられた意志で平和を追ってるだけで、なんで平和を守るかなんて知らないんだろう??
教えてやるよ。平和だとな、みんなが自由で笑ってられるんだ。だからみんな平和を願うんだ。
そもそも....平和自体には大した価値なんてないんだよ。みんなその先にあるものを求めてるんだ。あったかいものを。
じゃあお前が求める平和の先にそういう何かがあるか?? いやないね、あるのは冷たい闇だけさ。そんな平和は、誰も求めちゃいない!!」
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「..オレはお前を否定する。そして....お前を倒す!!」
指を指すように、ライトは剣先をアノウに向けた。
「面白い。ならば真っ向から叩き潰してやるのがせめてもの手向けというものだ」
そう言うと、アノウは手からキラキラ輝く光の粒子を発し、それがライトを取り囲んだ。その粒子が触れる度に傷口が塞がる、失われた体力も回復する。
「..どういうつもりだ」
怪訝な顔でライトはアノウを睨みつける。が、アノウは疑問には答えない。
「さぁ見せてみるがいい、貴様の力を。もう言葉は不要だ。自分を貫きたいのならば、力で示せ!!」
ただそう言って、ライトを待ち受ける。
「・・(流石の自信だな、それにこの力.. やっぱ格が違う。勝機があるとしたら背負ってるものの差か..)」
有り余る体力。双剣を力強く握りしめ、ライトは魔帝に向かっていく。
【どうせもうすぐ終わっちゃうから色々ぶっちゃけちゃう劇場】
・魔人について
今更ながら魔人について軽く触れておくと、魔人というのは元々アノウが魔獣を指揮、監督させるために造った戦闘員のことを指します。
主な魔獣との違いを挙げると、
・人に近い姿
・より高い知能
・感情
・学習能力
を挙げることができます。作中人物ではライト、シャドウ、シノビ、ストロンの4名が該当します。
ちなみに通常魔獣の強さを6とするなら、訓練を積んだ魔人の強さは基本的には6.5〜7程度に落ち着きます。これは万が一、魔獣のコントロールが敵に奪われた場合でも対応を可能にするためにそう設定されています。それが出来て初めて魔人として認められるのです。
・・なので8話で一般宇宙人にボコボコにされたシノビも一応ライトたちと同等の強さなのです..




