第三十八話 決戦の日
「・・・・ん....ん?? あれ?? ここどこだ??」
意識を取り戻した星奈は、まだボンヤリとした目で周りを見渡した。されど目に映るのはいつもの自室の風景ではなく、青々と茂る木々ばかりで、場所を特定出来そうなオブジェはどこにもなかった。分かるのは、ここが彼女にとって未知の場所であるということだけであった。
「んんっ!? あっれ!!」
そして寝ぼけ眼をこすろうとした星奈は、自身の手の自由がきかないことに気がついた。そして彼女が見上げてみると、手首には鎖が巻き付けられており、ピンと張ったソレが彼女をその場に釘付けにしていた。
「嘘でしょ.. くっ!! このぉ..」
なんとか抜け出そうと強引に引っ張ってみるものの、もう一端が繋がれた大木の幹はビクともしない。むしろ引っ張るたびに鎖が引き締まり手首に苦痛が走る。そうなるともう脱出は諦めざるを得なく、落胆した星奈はその場でため息混じりに首を垂らした。
と、その時だった。不意に誰かの視線を感じた星奈が顔を上げると、そこには黒い服装に身を包んだ隻眼の人物が立っていた。
「やあ、お嬢ちゃん、お目覚めいかが??」
「..おかげさまで、すっっごく肩が凝ってます!!」
その人物、シャドウのキザったらしい態度が気に入らず、星奈は思いっきり悪態をついた。手が空いてたら引っ叩いてもおかしくなかった。
「ハハハ、それは悪かった。 まぁ許しておくれ、これぐらい」
「これぐらいって.... あなた..私を攫って何をしようって言うの!?」
「そうだな、さしあたり釣りと言ったところか ..闇の中に逃げ込んだ、大魚を釣り上げるのさ」
「大魚?? ....あぁなるほどね..私を餌に、ライトを誘い出そうって腹づもりなのね」
「その通り、なかなか鋭いじゃないか」
「..それで?? 今度はどんな魔獣をぶつけるの、どうせ負けるんだろうけど!!」
その星奈の問いに対してシャドウは空を指差して言った。
「今日は..最高の天気だ」
「・・・はぁ??」
星奈はそう漏らさざる得なかった。シャドウの返答は全く答えになっていない、イライラするものであったし、今日の空は雲で覆われており、そもそもいい天気でもなかったのだ。
「..暗雲が光を覆い、影が地を蔓延る。 ボクにとって、これ以上ないほどの好条件だ」
シャドウのポエムに、星奈は頭痛さえ覚えたが、肝心の手が拘束されているので頭を抑えることはできなかった。そんな彼女に構うことなく、シャドウは力強く叫んだ..!
「やっとだ.. ずっとこの時が来るのを、待ち望んでいた.. 来るべき........時が来た!!!!」
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「来たるべき....時??」
間をおいて、シャドウの言葉を星奈は反芻した。そしてシャドウは口元を引きつらせた笑顔を浮かべながら、彼女に振り返った。
「そうだ.. 今!! ここで!! ボクはアイツと決着をつける..」
「じゃあまさか!!!?」
「そう、そのまさかだ。 今日アイツと戦うのは......このボクさ.. それで全てが終わる」
その時、まるで二人の心情を映し出したかのように木々はざわめいた。シャドウは落ち着きなく歩き回り、星奈は喉を鳴らした。
「必要なデータは全て集めた.. 切り札も準備ができた.. そして場も整えた.. ピースは揃った、あとはアイツが来ればいい!!
それで長きに渡った因縁も....お終いだ..」
シャドウは打って変わって憑き物が落ちたような、寂しささえ感じさせるような顔でそう言ったため、星奈は違和感を覚えたので、
「・・前々から気になってたけど..あんたはライトとどういう関係なの?? どうしてそこまでしてライトに拘るわけ??」
と、尋ねた。そして意外にも、その問いにシャドウはすんなりと答えた。
「....ボクとアイツは戦友..いや、それ以上の関係だった」
シャドウは懐かしむように空を見上げて言った。
「なんたって..ボクがアイツを..育てあげたんだから」
そう言った、シャドウの右目は虚ろだった。




