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宇宙をかけた戦士の戦い  作者: イシハラブルー
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第三十五話 厄災の再来



 暗雲が立ち込める東京、しかし徐々にだが、その雲行きは変わっていった。と言っても、決して晴れ間があるわけではない。一つの暗雲が、別の暗雲によって呑み込まれようとしていたのだ..


「どうやら手にしたみたいだな....厄災(パンドラ)の力を」


 鋭敏にその雲行きの変化に気づいたシャドウはニヤニヤしながらポツリとそう呟き、左目の眼帯に爪を立て、ガリガリと削るように掻きむしった。


「さぁて....ここからが本番だ」


 シャドウはビルの上から、その事態の行く末を傍観している。しかし、その結果自体はすでに分かっている。だから観察するのは結果ではなく、その“過程”である。


「じっくり見せてもらうぞ」


 そして、これから始まるほんの数分間の出来事は、後に“東京大災害”と呼ばれ、宇宙の命運を左右する最大の転換点となる。





「ヴォォォオオオア"ア"ア"ア"ッッッ!!!!」


 喉が潰れそうなほど低く、まるでケダモノのような雄叫びをライトはあげた。蒼かった目は紅く染まり、その奥に灯る憎悪の炎が他の万感を焼き尽くす。

 そして両手に輝くのは、真っ直ぐ伸びた白銀の剣身を持つ双剣。名は“魔双剣パンドラ”.. 万物を切り、破壊する、宇宙最強の剣にして宇宙最凶の剣。

 これまでの地球での戦いで、どんなに追い詰められようと決して切られることのなかった切り札(ジョーカー)は、最強魔獣という最大の脅威を前についに切られた。


「ヴゥゥッ..」


 ライトは唸り声をあげながら、一歩、また一歩と、まるで獲物を狙うかのように静かに間合いを詰める。

そして足を踏みしめるたびに黒いオーラが立ち昇り、景色が揺れる。

 だがそんな異様な状況にも最強魔獣は決して動じない。何事もないかのように、無感情のまま左腕の砲塔をライトに向け構えた....が..


「ヌア"ァ"ァ"ァ"ッッ!!」


 いきなりライトがなんの前触れもなく、ゼンマイを外した玩具のように勢いよく走り出した。アスファルトの道路を砕き、目を見開きながら、ただひたすら真っ直ぐに突進する。


 -チチチッッ ドォオオッッ!!-


 しかし近づく前に魔獣の砲撃の方が放たれた。そしてライトは



 -バヅンッッッ-


 

 ・・魔獣の背後にワープすると、なんの小細工もなしに乱暴に剣を振り下ろし、魔獣の左腕ごと砲塔を斬り落とした。左腕を失った魔獣は右にバランスを崩し大きくよろめいた。


「ヴゥア"ア"ッッ!!」


 -ゴァァアンッッ-


 そしてライトは斬り落とした左腕を蹴り飛ばして魔獣にぶつけた。その速さは隕石のよう。

 それによって魔獣はフラつかされるも、二歩ほど歩かされたところでなんとか立ち止まり、残された右腕の砲塔にエネルギーをチャージ、


 -ドォオドォオッッ-


 二発連続で光球を発射。だが....


 -バチンッッ ..ドォオッッ-


 -ズバンッッ  ・・・ドォォゴォオオンッッ-


 もう今のライトには通じなかった..


 難なく弾かれ、斬られ、光球は虚しくライトの背後で爆炎を上げるだけで全く使い物にならない..


 -ヂヂヂッッ-


 それでもなお、三発目を撃とうと魔獣はチャージを開始した。


 -ガチャッッ-




 -ドボォォオムッッ-


 ライトがワープで魔獣の前に飛び、砲塔内に剣をねじ込んだ.. 結果、魔獣の右腕は内部のエネルギーが暴発し、一挙に吹き飛んだ。

 が、それで終わりではなかった。魔獣の目には、間髪入れずに双剣を振り上げたライトの姿がハッキリと映った。


 -バギギィィィンッッ..-


 魔獣のボディにはクロス型の傷が深く刻まれ、その衝撃でついに地面に背中をついた。失われた両腕とボディの傷から火花が散り、電流が流れる。さらにモノアイも破壊され、外部情報は遮断された。武器を失い、装甲はもはや何の意味も持たない。ライトが切った切り札によって、戦局は完全にひっくり返された。もう魔獣に勝ち目はない、ゼロだ。

 しかし命令という強制力がある以上、死ぬまで魔獣は戦い続ける。だから、立ち上がろうと身をあげようと..


 -ガゴンッッ ....メキッ-


 した瞬間、ライトがジャンプニーを仕掛けて、無理やり押し倒した。魔双剣によって身体能力も強化されており、魔獣の体は地面にめり込んだ。


「ヴァ"ァ"ア""ッッ!!」


 マウントを取ったライトは(いかめ)しい雄叫びをあげながら、双剣に紫電のエネルギーを蓄え、


「ダァ"ァ"ア"ア"ア"ア"ア"ッッ!!」

 

 魔獣に双剣を突き刺すとまばゆい光にあたりは照らされ出した。



 -ドッッ ドドドドドドドドドッッッッ-


 そして紫電のエネルギーは、ドーム状になって街を破壊しながら広がっていった。そのエネルギーに呑み込まれたモノたちは、跡形もなく、塵すら残さず消え失せた..

























「ハァハァハァ....ぐっ..う..うぐっ....」


 夕陽が落ちて夜となった街を、ライトはフラフラとさまよっていた。ビル群は薙ぎ払われ、地平線がくっきりと見える。いつもなら夜でも眩しい街も、今は夜空に浮かぶ星の光以外に明かりはない。


「あ..ああ....ああぁぁぁぁあ!!」


 闇と静寂に包まれた街で、ライトは慟哭をあげた。地面を叩き、行き場のない思いをぶつけていた。


「ハァハァハァ.....はっ!!」


 ライトは気配を察知し、膝をついたまま振り返った。そしてそこに立っていたのはシャドウであった。


「な..何の用だ!?」


「..お前の勝利を称えに来てやったんだ」


「ふざけんなッ!! これの....これのどこが!!」


「ハハハ、流石の破壊力だったな。 なにしろ、半径四キロが壊滅状態だからな、巻き込まれてたらボクも今頃オダブツさ。 ..でも良かったじゃないか、その力のおかげで最強魔獣を倒せんたんだ..」


「確かにオレは倒した....ただそれだけのことだ..」


「ハハハッ.......ほんと、良かったな..地球は丈夫で..」


「テメェッ!!!!  うっ..ゲホッゲホ!!」


 シャドウの言葉に怒りを露わにするも、すでに死闘を超えてきたライトは疲弊しきっていた。思いに体がついてこれず、その場に這いつくばった。


「ボロボロだな.... ほんと、もっと賢い生き方をしろよ」


「黙れ!!!!」


「はいはい黙りますよ.. 今日のところはお前が勝者でボクが敗者だ。 言うこと聞いてやるよ.. でも覚えておけ....次ボクと会う時は、お前が敗者だ。 それと..それで終いにしてやる!!」


 最後にそう言うと、シャドウは懐からカプセルを取り出し、それを起動させると青い光の玉となった。その玉はシャドウを取り込むと、ソニックブームを発しながら宇宙へと飛んで行った。













「無事だよね、ライト..」


 真っ暗で無音の部屋の中で、懐中電灯の光とブランケットだけを頼りに、星奈がライトの帰りをひたすら待っていた。

 もう明け方の四時近かったのだが、心配と不安で全く眠れる気配はなかった。何か調べようとも、様々な設備が破壊された結果、情報網がズタズタに裂かれたため、何が起こっていたのか分からないのだ。


「帰ってきてよ....ん!!」


 その時、階段を上る足音がかすかに聞こえた。そして続けて、扉をノックする音が。恐る恐る、少しだけ扉を開けて覗き込むと、そこには確かにライトが立っていた。


「あぁ〜、よかった!! 無事だったんだねライト!!」


 扉を開け放し、満面の笑みで星奈はライトを向かい入れた。ようやく不安から解放され、時間帯も相まって若干テンションもおかしくなった。


「・・オレもお前が無事でちょっと安心した」


 ライトはわずかに顔を綻ばせた。しかし、すぐに口を真一文字に結び、神妙な面持ちに変えた。そして星奈が手を引くも、その場からは一歩も動かなかった。


「ライト??」


 不審がった星奈が素っ頓狂な声を上げた。


「・・ここには戻らない....」


 うつむいて、声を震わせながらライトが言った。


「え!? なんで??」


「・・今のままじゃ戻れない..」


「どういうこと?? ちょっと待って!! ライトッ!!」


 星奈の声も聞かずに、ライトは走り出した。行くあてなんてないし、体はボロボロになっていたが走らずにはいられなかった。今のままでは、いられなかったのだ。


『強くならなきゃ、あんな力に頼らなくてもいいように、強く..強くならなきゃ!!』





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