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宇宙をかけた戦士の戦い  作者: イシハラブルー
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第十七話 宇宙最強の座を懸けて



 〈永田町・二丁目〉


 ーガッシャァァァンー


「ぐあッッ!!」


 放り投げられたライトの体は用品店のガラスを突き破った。今、ここ永田町ではライトが激闘を繰り広げていた。


 ーガチガチガチガチガチガチー


 そしてその相手は以前ライトがトンネルで戦った巨虫、それの別個体であった。四メートルほどある体長に発達した牙を持ち、真っ黒な体のあちこちから棘や触手を生やすその姿は以前の個体とそう変わりはない。ただし今回の個体は以前戦った個体とは比べ物にならないほど進化していた。


「ギィィィ!!」


 ーガタガタガタ.. ブォン!!ー


 まず二足歩行ができるようになり、それによって生まれた四本の腕で多彩な攻撃を繰り出せるようになった。爪が発達している上にパワーも車を放り投げられるほどに強い。


「危ねっ!!」


 ーガシャンッッー


 ライトは投擲(とうてき)された車をかわし、横っ飛びしながら剣を振るい光の刃〈ブレードショット〉を放った。


 ーガキンッー


 だが巨虫は硬い背中を向け光の刃を受け止める。以前の個体よりも外殻の強度が増し、背中でなら剣を受け止められるようになった。しかし何よりも厄介なのは....


「ギシィィ....」


「......」


 より高い知能を獲得したことで以前の個体と違って闇雲に攻撃をしなくなった。それによって隙が減ったために硬くなった外殻と合わせ、ライトが攻撃できるチャンスが格段に減ってしまった。しかし巨虫の方もライトの強さを理解しているために両者は共に慎重に攻撃のタイミングを図っていた。


「「............!!」」


 一陣の風が吹き木の葉が舞ったその時、両者はお互いめがけて走り出した。ライトは巨虫の足元に向けてブレードショットを放つことで巨虫の動きを止め、怯んだ巨虫の胸部に渾身の一撃を叩き込む!! 衝撃に耐えられず巨虫は背中から地面に倒れた。追い討ちをかけるためにライトは巨虫の牙に剣を咥えさせると、マウントをとって胸部を殴りつけた。


「......い..痛ってぇぇ..」


 だが外殻はライトが想定していた以上に硬く、殴ったライトの方が手にダメージを負った。素手で攻撃しても効果がないとみてライトは剣を手にとって一旦距離を取った。巨虫も跳ね起きて戦闘態勢を整え、両者は再び睨み合いを始めた。このまま膠着(こうちゃく)状態が続くかと思われたその時..



「風刃(ふうじん)!!!!」


 ーシュォォンー


「ギィャァァ!?」


「!? 誰だ!?」


 突如起こったカマイタチが巨虫を襲い、不意打ちを食らった巨虫は地面に手をついた。予期せぬ事態にライトも目を見開き、思わず声のした方向へ顔を向けるとそこには黒い甲冑に身を包んだ武士が太刀を振り切っていた。


「....ライト殿でござるな??」


 その男は歩み寄りながらライトに問いかける。その問いを肯定し、謎の乱入者に対してライトは身構えた。しかしそれは全くの杞憂であった。


「おぉ、やはりそうでしたか!! 会えて光栄でござる、拙者はブシドと申しまする....ライト殿!! お力添えよろしいか!?」


 ブシドと名乗るこの男はライトに助太刀の申し入れを行った。つまりこの男は敵ではなく味方であった。


「..あぁもちろんだ!! 一緒にコイツ倒そうぜ」


 ブシドの申し入れを快くライトは受け入れると、二人の剣士は巨虫を倒すためそれぞれの得物を構えた。


「いくぞ!!」


「いざ参る!!」


 ーズザザザッ ズザザザッー


 ライトとブシドは互いの位置を目まぐるしく変えながら巨虫との距離を詰めていく。その動きに惑わされ巨虫は狙いを絞ることができず、そうこうする間に二人は射程距離に入った。


 ーザザンンッッ ー


 二人の刃は巨虫の脇腹を斬り裂いた。ライトは続けざまに頭部に剣を振り下ろし重い一撃を叩き込み。それに負けじとブシドは後頭部めがけて太刀を真一文字に振り抜いた。


「ギィィシャァァア!!」


 ードゴッッー


「ぐふっ」


 怒る巨虫の右ストレートを受けブシドは吹っ飛んだ。すぐさま追撃を図るがライトがこれを妨害。首筋に飛び蹴りを喰らい巨虫は地面に叩きつけられる。頭部に集中攻撃を受けた影響で巨虫の足元がふらつき出した。


 ーザンザンザンザンッッー


 好機を生かすべくライトは猛攻を仕掛ける。胸部を右から左から往復斬りして、トドメに一回転して勢いをつけた剣を叩き込むと巨虫は宙を滑りながら路肩の車に激突した。しかしそれでもまだしぶとく立ち上がるとその車を持ち上げ、投擲(とうてき)を試みた。


「地走(じばしり)!!!!」


 ーズドトドドッッー


 だがブシドが放った大地をほとばしるエネルギー波の直撃を喰らってバランスを崩し、自身が持ち上げた車を落下させてしまった。こうなることを見越していたライトとブシドはすでに走り出していた。


 ードスドスッッ!!ー


 二人の剣豪から放たれた突きは外殻を破り、胸を貫いた。中枢神経を破壊された巨虫は手足すらピクリとも動かせずそのまま活動を停止した。


「やりましたな、ライト殿」


「そうだな..礼を言う」


「いやいやお礼なんてそんな〜〜!! 共に戦えただけで感激でございまする〜」


 兜のせいで顔はよく見えないが発言と態度がかなーり分かりやすく今のブシドの感情を教えてくれる。


「あそ、じゃあオレ帰るから、じゃあな〜」


 ライトは背中越しに手を振ってそのままスタスタと足早に立ち去ろうとした。その背中をブシドは全力で追いかけてきた。


「待ってください、ライト殿ぉぉぉおおお!! お願い事が一つあるのでござるぅぅぅ!!」


「願い事??」


 心の底から面倒くさいと思いながらも、ライトはその圧倒的なブシドの熱量に負け、しぶしぶ話だけ聞くことにした。



・

・

・



「ただいま〜」


「おかえり、ライト」


「44(☆7・(2(3(|」


「........いや、誰よ!?」


 当たり前のように入ってきた鎧武者に星奈はツッコミを入れずにはいられなかった。


「あ、忘れてた 靴は脱げよ」


「¥(8(☆+2(3(☆7°|」


「あ、ちゃんと靴脱いでえらーい....ジャネーヨ!! 誰なんだよ!! 説明の方が先でしょーよ!!」


「いや..オレもまだ詳しくは知らない....」


「なんだそっかぁ〜........なおさらしれっと入れないでよ!!」


 帰って早々に星奈のツッコミの嵐が吹き荒れる。しかし一番の疑問はなぜ宇宙人が日本の武士みたいな格好をしているのか?? その答えを知る者はいない。


・

・


「それでお願いってなんだ??」


 腕組みしながらライトが尋ねた。その頭を宇宙語翻訳のため、あと多少イライラも込めて星奈が鷲掴みしていた。


「うむ、単刀直入に申し上げます....ライト殿!! そなたに果たし合いを申し込みたい!!」


 鼻息荒くブシドが言った。ライトの方は目を細めこそすれ冷静だった


「果たし合い?? ....なんで??」


 一方で星奈は聞き慣れない単語に目をパチクリとさせた。親切にもブシドは果たし合いを申し込むに至った経緯を二人に説明してくれた。


「拙者には夢がある..」


「夢??」


「夢....そう宇宙一の剣豪になるという夢が!!」


 そう言って立ち上がるとやたら大きい身振りをしながら話を続ける。


「その夢を叶えるため、拙者は修行を続けてきた!! 雨の日も、風の日も、病に倒れた....ことはない..か.... ともかく!! 拙者は宇宙一になるために全てを捧げ生きてきた!! そして名だたる強者たちに勝負を挑み、討ち破ってきた、だがッ!! ......まだ最強の剣士との勝負が済んでおらん..」


 ブシドはライトの方を向き、打って変わってかしこまった態度をとる。


「ライト殿、ぜひ拙者との勝負..受けて下さらぬか!!」


 長年の夢を叶えるチャンスなだけあってブシドの態度は真剣そのもの、ライトは一瞬目を閉じると刺すような目でブシドの目を見つめた。そのただならぬ様子に星奈も思わず息を飲んだ。


「....いいだろう、お前の勝負受けてやる」


 部屋の中は静寂に包まれた、それを最初に破ったのはブシドであった。


「かたじけない....」


「それでいつ勝負する??」


「ライト殿に決めてもらいたい」


「そうか....じゃあ明日でいいか??」


「構いませぬ..」


 こうして勝負の日取りも無事決まったことでブシドは部屋を後に....しなかった。なぜか明日勝負をするというのにブシドとライトによる和やか〜な談義が開催された。


「お前の剣、なかなか良さそうだな」


「さすがライト殿お目が高い、この太刀は拙者の故郷の星雲で一番の業物(わざもの)、〈星覇〉でござる」


「へぇ〜、どうりで」


「しかしライト殿の剣もかなりの業物(わざもの)であろう??」


「まぁな、使い勝手は良い」


「やはりそうであったか....しかしどんな業物(わざもの)も扱う者の力量が伴わなければナマクラも同然....そう言う意味で言えば優れた刀剣ほど扱いに難がある....それを使いこなすライト殿の力量はやはり確か!!」


「ありがとよ....でもお前だってちゃんと名刀振ってたぞ、相当努力したんだろ??」


「いやいや当然のことをしたまででござる」


 と、こんな具合に二人の剣士談義は続いていた。だが話してる当人たちはともかく聞いてるぶんには何一つ面白くない、傍で二人の会話を聞く星奈の目は死んでいる。


「ところで星奈殿は何か聞きたいことはあるか??」


 突然の質問に星奈は力なく首を横に振った。


「そうか..では宇宙最強の剣n....」


「もう剣の話はいいよ....他の事話そうぜ」


 星奈のことを気遣った....わけではなく単純に自分が嫌だという理由からライトは話をぶった切った。


「そうでござるか?? しかし剣以外のこととなると..一体何を話せば良いか....」


「じゃあ、外で修行でもしたらいいんじゃないですか?? 明日なんでしょ、勝負は」


「なるほど..一理ある」


 もっともらしい星奈の提案にブシドは賛同し、善は急げと言わんばかりに外に飛び出ていった。そしてようやく落ち着いた二人は大きく息を吐いた。



・

・

・



 〈瀬戸内海・某島〉



「いよいよですな、ライト殿」


「あぁ..そうだな」


 いよいよ二人の果たし合いが始まろうとしていた。待った無しの真剣勝負、己の意地と誇り、そして宇宙最強の座を懸けた戦いの火蓋がまもなく切られる。


「ライト殿....そなたを倒し、拙者は宇宙最強の称号を手に入れる」


「称号に興味はない....だが、負けるわけにはいかない!!」


 互いに愛用する得物を構える。あたりは凪(なぎ)、まさに嵐の前の静けさ。そして二人の精神も同じく。いよいよその時は来た。


「では........拙者!! いざ参る!!」


「......」


 まずはお互い一定の距離を保ちながら相手の出方を伺う。ハイレベルな剣士同士の戦いともなると勝敗は一瞬の差で決まる。その初太刀、当然慎重にならざるを得ない。だがついにお互い覚悟を決めた!!


「「今だ!!」」


 ーザッ  ザッー


 お互いほぼ同時に飛び退くと、水平に剣を引いた。


「風刃(ふうじん)!!!!」


「ブレードショット!!」


 お互い初太刀には遠距離攻撃を選択、風の刃と光の刃が衝突するもあえなく風の刃は斬り裂かれ、光の刃はそのままブシドに向かっていく。だが衝突により威力の弱められた光の刃をブシドは難なく切り落とし、振り下ろした太刀を地面に突き立てた。


「地走(じばしり)!!!!」


 地を走るエネルギーはライトに向け直進する。すぐさまライトは体を捻って剣を振り上げる、そして前方の地面をすくい上げ土砂の壁を形成させた。エネルギーはその壁を破れず、ライトの下にたどり着く前に消滅した。だが二人共そんなことには構わず動き出していた。振り向きざまにライトが剣を振るうと刃が衝突して火花が散った。


 ーガンギンッ ギギギンッッー


 刃が何度もぶつかり合い、その度に甲高い音が響き渡る。攻防は意外にもはっきりしており、ブシドが一方的に攻め続け、ライトは防戦一方であった。だからといってブシドが有利なわけではない。なぜならブシドの猛攻をライトが的確に判断して返していくからだ。


 ーギギッ ガガガンッ カキィィンー


「くぅ!!」


 ーザザッー


 これ以上攻め続けても意味はない、そう判断したブシドは跳び退き、一旦距離を取る。息を乱すことはないが額には汗が滲(にじ)んでいる。一方ライトはまだ涼しい顔、とはいえ決して油断はしない。そうなってくるとブシドが劣勢だと言わざる得ない。そしてこの劣勢は簡単に覆せるものではない。そのことをお互い知っている。


 ースゥッ.... チャギンッ!!ー


 ブシドは刃先を右後方の地面に向けると覚悟を決めライトに向かって走り出した。


「ぬぅぉぉおおおおお!!!!!!」


 全身全霊、己の全てを懸けた一撃。腕を引いて柄を左の腰のところへ運び、刃先をライトの方へ向けた。


「火牙(かが)!!!!」


 ーボシュゥゥゥッッー


 ブシドは突きを繰り出した。あまりの突きの速度に空気との摩擦で刀身は火を帯びた!!


 ーガンッー


「な!!!!」


 だが全てを懸けた一撃をライトは剣身で受け止め、そのまま突きを滑らせるように受け流した。


 ーゴシュッッ  カキッッー


 そのまま柄頭でブシドの腹部を打つ。その威力に刀を握る力が弱められた、その一瞬で太刀はブシドの手を離れ、ライトのはるか後方に弾き飛ばされた。そしてライトは剣先をブシドの喉元に向けた.. 宇宙最強の座を懸けた戦いに決着がついたのだった。


「....くっ.......拙者の....負けかッ」


 ブシドは拳を握りしめ震えさせる。


「......いや、引き分けだな」


 ライトが口を開く、その言葉の意味がブシドには分からなかった。だが、すぐにその言葉の意味を知ることになる。


 ーピシピシピシッ   ボキンー


 刀身が折れ、剣先が地面に突き刺さった。ブシドの最後の一撃によって折られたのだ。よってこの勝負、両者共に得物を失ったので引き分けとなる。


「フォトロンが折られたのは久しぶりだ....お前、なかなかやるな」


 健闘を称えられブシドは兜の上から頭をかいた。もうさっきまでの緊張感はない、あるのはちょっとした高揚感である。


「ライト殿、そなたとの勝負、誠に楽しかった!! いつかまた勝負してくださるか??」


「..まぁいいだろう、だが負ける気は無いぞ」


 いつになるかはわからないが二人は再戦を誓った。


「ではライト殿、世話になった」


 ードロンー


 白煙が上がるともうそこにブシドの姿はなかった。


「..行ったか」


 ライトも自分の居場所に帰るべく海へ向けて歩き出した。


 ードカァァァン!!ー


「!! なんだなんだ!?」


 突然背後で爆発が起こった、あまりの驚きにライトも身をすくめる。


「ゔぇっほ、えぅほ..」


 そして爆炎の中から飛び出すブシド、さっきまでの活躍が嘘のように煤(すす)まみれ、馬鹿丸出しである。


「ラ..ライト殿、一つ言い忘れがございました」


「..なんだ??」


「噂程度でしか知らんのですが、また星が一つ奴らの手で落とされたようです」


「..そうか.... なんて星だ??」


「..確か、〈ベルゼ〉とか申したような....」


「..なるほど....」


「ライト殿もどうかお気をつけください、では拙者はこれにて失礼するでござる」


 それを伝えると今度こそ本当にブシドは去っていった。そして....ライトの地球での戦いはここから激しさを増していく!!!!








*巨虫に関しては15話、ベルゼに関しては8話をご参照ください。

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