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第1の玉
今こうやって生きていること、息をしていること、心臓が鼓動を打っていること、なんて無意味なことなんだろう。
俺が今、死んでしまって誰か泣いてくれる人がいるのか。
死を悼んでくれる、そんな奇特な人が居ないことをこの16年間の長いような短い中で知ってしまったことは、良いことなんだろう。
透明のような無意味な世界の中で、何かに期待することもない。
そんな風に、斜に構えて物事を見ていた罰なのか。
車が目の前に迫ってきているこの瞬間にも俺の脳裏に過ぎるのは、走馬燈と呼ばれるものでは無かった。
こんな俺に懐いてくれていた2匹の仔猫がお腹を空かせながらも、それでも生きようと鳴いていた姿だった。
キキキキイイィィーーーー!!
ドンッ!
急ブレーキをかけるタイヤの摩擦音と、車に俺自身がぶつかってしまった音、足がアスファルトから離れたと思った瞬間には、目の前が真っ暗になって何も聞こえず何も見えなくなっていった。