最終話 冒険はこれからだ!
――並木啓介・桜庭ともよ・須藤叉木・足柄富雄、そして私山元博樹は全員腕組みをして考え込んでいた。
しかし何時までも考え込んでいても仕方がない。
仕方がないが、優秀なこの社員達ですら考え込んでいる訳ですし私が何を言っても解決には向かわないかもしれません。……それにこの状況は既に私の想像出来る範囲を超えてます。
そんな中、並木君が手を上げる。
「いいですか社長」
いいもなにも此方からお願いします。
「先ずこれまで皆さんと話す中で得た情報と須藤さんの解析結果を総合して考えると、専務を救いに行くのは非常に危険では無いかと推測します」
「そうよねぇ。でもこのビル、じゃ無かった戦艦?があればなんとかなるんじゃない?ねぇ須藤さん」
「はい。この戦艦のシステムは全て把握してますし惑星での大気圏内の航行も可能だと思う。それに足柄さんの魔法にも期待出来る」
「そうですね、先程の身体検査は驚きましたけどまさか私に魔法が使えたなんて思いもしませんでした。ね、社長」
……え?そこで私!?そりゃこのビル、じゃなくて戦艦?の設備にそんな様な物がありましたけど。
確か検査結果で全員が全員前世でなにかしら関係のある者になって転移している様ですが……。
でもまさか皆さんが言う様に目の前の緑の惑星に迫田専務が居るのなら助けに行かなくてはなりません。
これは社員を預かる社長の義務でもあります。
――それにここには3人の美女が居ますが、ともよ君は女兵士、須藤さんはほぼサイボーグ、足柄さんに至っては中身が私より年上のおじさんだ。
私が会社に求めるのは色物ではなく、美女なのだ。
この状況を打破してくれるのはやはり元エロキャリアウーマンの迫田専務しか居ない。
この戦艦に居るテナントのバイトである義妹や母は論外。
それに、目の前にある緑の惑星は文化レベルが中世だと言うではないか。ならリアル「クッ殺」が見れるんじゃないか?いや、運が良ければ期待を裏切らない迫田専務の事だ。彼女自身が騎士になってる可能性も――うん、これは行くべきじゃないでしょうか!
「須藤さん、間違いなくその迫田専務の生体反応?はあの星にあるんですよね?」
須藤さんは力強く頷く。
「では行きましょう」
私のその一言で全員が動き出しました。
――――。
――。
「勇者殿!アレです!」
空を見上げた私は驚いた。
箱舟と言うには恐ろしく巨大な戦艦が真上に鎮座し、その影は地平線まで伸びていたのだ。
「……巨大過ぎるわ」
こんな物は映画ですら見た事がない。
異世界召喚で勇者?こんなもの魔王ですら勝てないわよ!
血の気が頭から無くなっていく――が、その時上空から声が轟く。
「あーあー、聞こえますかぁ。業務連絡です。迫田専務~迫田専務~いらっしゃればお城?の上まで来てもらえますかぁー。え?なに?なんか攻撃されてる?――須藤さん何かいい方法。え?攻撃!?殺しちゃまずいでしょ?――試し撃ちですか?仕方ないですねぇ一回だけですよ?あ、殺しちゃダメですからね!」
私は轟く声を聴いて自然と涙が溢れる。
「社長!山元社長!ここです!私、ここに居ます!!」
手をふる私に皇子が肩を揺らす。
「勇者殿、魔物の大群です。どうやら只ならぬ気配に湧いて出た様です」
視線をズラした先、黒い塊が巨大戦艦へ向かって行く。炎や雷が何度か戦艦へ当たっているのが見えた。
しかし次の瞬間。
――チュイン。 ドーーーーーーーーーーーーーーン!!
戦艦から放たれた光の一撃が魔物達を灰へと変える。――その先の緑豊かだった森林諸共。いや、それを超えて地平線が燃え盛っていた。
「……なんて事だ。緑豊かな我が国のヘベロ大森林が一瞬で――」
皇子が途方に暮れているが私は気配を感じ、腰に差した剣を抜き放つ。
――キンッ!
鉄が弾き合う音が響く。
「ほう。我の一撃を止めるか勇者よ」
引き寄せた皇子が剣を持つ女を見て慄く。
「ま、魔王っ!」
黒い肌で耳が尖った女が、大きな鎌を持って舌なめずりをする。
「空のアレは帝国の物ではないのでしょ?この国の皇帝とお前の首を差し出せばなんとかなると思わない?ねぇ、今代の勇者、さ、ま」
なんて嫌らしい目をする女だ。それに露出が多すぎて女性の私ですら目のやり場に困る。
「あなた、勇者だけどそのアーマー。私と同類でしょ?」
「何を言って――」
言いかけて私は自分が身に付けている鎧に視線を向ける。
間違いなく目の前の魔王より露出が多いのだ。
「(こ、このままでは社長の前に出れない!!)」
その時空から一閃、一筋の白い光が此方へと飛んで来る。
「ぉお~い!迫田専務~迎えに来たよー」
見れば大きく翼を広げた天馬に跨る超イケメンが居た。
「おーい!迫田専務だよねーー!」
まだ遠いが、あの声は間違いなく山元社長で間違いない。私が愛する社長の声を聴き間違える筈はないのだ。
だがどうだ、今の私は露出女。これでは痴女だ!嫌だ、嫌だ。
憧れであり愛する社長にこんな姿を見せたくない!
しかもイケメン転移とか反則過ぎる!嫌だ、嫌だ。
嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌どぁあーーーーーーー!
彼女の内なる力が覚醒する。
中年係長に手を押さえつけられ動けなくなった非力な自分。
ただ黙って男の言いなりになるしか無かった自分。
それら全てを彼女は反転させる。
――「な、なんだこの力は!こ、これが勇者の力だとでも言うの、か、ぁああああああーーーー」
魔王が消え、辺りが静寂に包まれる中、美鈴はつぶやく。
「勇者の力?愛の力に決まってるじゃない」
気力を使い果たした彼女はそこで倒れ込み、空を見上げたまま意識を失った。
――――。
――。
「迫田専務様?もう大丈夫ですか?」
そう言って私は艦橋でコーヒーを彼女に手渡す。
「はい、皇子が私の隣に居たまでの記憶はあるのですがそれ以降が全くなくてすみません。――それとなんで様?」
彼女だけが前世の姿のままで、コーヒー缶を両手で包む。
「ええっと、では私が迫田専務の所業を説明しますね。ええ、秘書の仕事ですから」
「いや、ともよちゃん言わなくてもいいって」
「いえ、ここはヒロ君の秘書としてしっかり聞いてもらいますぅ」
その言葉に迫田専務様がピクリとする。
「そこの泥棒キャバ。あんたいい加減社長をヒロ君とか言うの止めなさい!」
「五月蠅いこのエロウーマン。あんたなんか乳しか良い所ないじゃない!」
「エ、エロウーマン!?エロはあんたも同じでしょーが!」
――――女性二人がいつもの様にぎゃーこら騒ぎ出したのを見て「漸く社員全員そろったな」と独り眼前の宇宙を見つめる。――宇宙は広いなぁ、これからどんな冒険が私達を待ち受けているんだろう……。
気絶している彼女の身体を好き放題触りまくりながら連れ帰ったのは私ですが……しばらく様付け呼びで誤魔化しましょう。さて、
「と、取り敢えず発進しようか、須藤くん」
「どちらへ?」
「んーそうだね、折角だし稼げそうな星探そうか」
「了解。人が住んでいる惑星を検索……108の惑星を発見、一番近い星へ発進します」
「あいあい」
私は行く、広大な宇宙で美女を探しに。
――戦艦は灰塵と化した一つの惑星を背に、猛スピードで発進する。決して壊滅させた星から逃げた訳ではない!絶対にだ!
END




