異世界でも家なき子⁈
スイが降り立った、というか落ちたのは港だった。
しかし海はなく、切り立った崖の上にその港はあった。
雲が下にある…
小学生のころ修学旅行で乗った飛行機で見たきりの光景だ。雲って高度何メートルにあるんだっけ。森林限界?不登校が長かったスイにはすべてが難しい問題だった。
こんなことなら教科書くらいひらけばよかった。後悔してももう遅い。
しかしラノベ通りなら、ここで召喚者が現れるはず。よく来た、異世界人よ。さあスキルを選びたまえ。
しかしスイの周りには誰もいない。というか港で働く人々はいるが、誰もスイに目もくれない。あれ?私、異世界人ですよ?珍しいでしょう?
誰かが話しかけるのを待っていたら、どうにもならないとわかってきた。ベテランひきこもり、ついに声を出して話しかけてみます。
「あにょ…!」
噛んだ。思いっきり噛んだ。でもこちらを見てくれた人がいた。その人は港の男性で、筋骨隆々。そして大きなため息をつかれた。
「また異世界人か…」
また?またってなんですか?心の中で不安が広がる。あ、あの、申し訳ないのですが、大きなお体で腕を組まれるとちょっと怖いのですが。
「学園なら街を出てカリトの宿場街を経由してそのまま王都まで行けばいい。あ、王都ではシュヴァルへは近寄るな。あそこは異世界人の生きていけるところじゃない」
ま、待って待って。情報が多い。まず街を出るって?え?この街に学園はないんですか?
「あんた、黙ったまんまだけど、言いたいことはわかるぜ。異世界から入学許可が出たんだから迎えが来てもおかしくないはず、だってな」
「はわ…」
一緒に暮らした親戚ともまともに話したことがほとんどなかったので、声はかすみのような頼りないものしか出てこなかった。
「みんな勘違いしてるけど、異世界人はここじゃ珍しくない。なぜなら学園が片っ端から入学許可証を出してるからだ。でも学園にたどり着けるのはほんのわずか。みんなモンスターに食われるか、まず安全な街を出るのを諦めてここで暮らすかだ。あんた、働けるのかい?」
スイを見て男性は学園にたどり着けないと判定したようだ。働けるはずがない。働きたくなくてここに来たといえば過言だが、でも現代日本で働きたい人なんてまれだと思いますが?
スイは自分でもわかるくらいに青ざめていた。男性はスイがしゃべれないとわかったら、また大きなため息をついて仕事に戻ってしまった。
い、異世界で働く…?
スローライフは…?
学園生活は…?
彼氏は…?
スイはその場でぺたりとへたりこんだ。
スイ、がんばれません




