10-3.未知との遭遇
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「わははは、そりゃあおめぇ、ワシの凧じゃ」
ガサガサと動いていた草むらの正体は⋯⋯裏に住むおじいさんでした。
おじいさんは驚く私達を家に招き入れ、お茶を出してくれます。
縁側でいただきながら、おじいさんはUFO⋯⋯ではなく、巨大な凧を見せてくれました。
「趣味で作っとったんだが、光らせたくなってなぁ。夜、たまーに自分とこの土地で上げとるのよ」
凧は両手を広げたよりもはるかに大きく、電飾がついていて、眩しいくらいの光を放っています。
「ワンコロもパーツ見つけてくれてありがとうなぁ」
おじいさんに撫でられ、さらに茹でた鶏肉をご褒美にもらったノエルが「ワフ!」と満足げに鳴きました。
私達が見たのは、紛れもなくこの巨大電飾凧で、最初に見つけたパーツも、この凧から落ちたものでした。
つまりおじいさんは、私達が森に来る前に落としたその凧を、一人で探していたというわけです。
ちなみに、この森のような場所も、おじいさんの私有地だそうです。田舎は土地持ちが多いと聞きますが、まさかここまでとは思いませんでした。
そして、驚くことはそれだけではありません。
おじいさんは、あの妖怪伝説の発生源でもあったのです。
「ありゃあなぁ、昔、勝手に人の土地に入って好き放題するヤツらがぎょうさんおってな。試しに流したウソ話だ」
「ええ?! じ、じゃあ、人を食う妖怪とかは、おじいさんの作り話ってことッスか?」
「おーそんなもん、おるわけなかろ。せいぜいあそこにおるのは、狸かリスだわな」
カカカッと笑うおじいさんの言葉に、水瀬君はわずかにショックを受けた様子でした。妖怪を怖がりつつも、どこかでロマンを感じていたのかもしれません。
私が気にしていた「十年」という区切りも、そうした方が信憑性が増すと踏んでのものだったそうです。つまり私は、まんまと騙されたというわけです。少しだけ、悔しく思いました。
「そもそもはよう、ケサランパサランだかなんだかが流行った頃に、ここいらに不法侵入するやつらがおってな。どうせならそれにあやかって、お化けの話でも流したろ思うたんや」
おじいさんは膝を打ち、豪快に言い放ちました。
正直、ケサランパサランはお化けではありませんし、妖怪とも少し違う気がしますが、おじいさんからすれば、どれも似たようなものなのでしょう。
「あのー、ちなみにケサランパサランって、それ本当にあったんスか?!」
「そんなもん、あったらワシが捕まえとるよ。それにアレの正体は、タンポポの綿毛か、うさぎの毛だ」
「そっスか……」
水瀬君は、ケサランパサランも信じていたのか、あからさまに落ち込んでいました。
意外と乙女なところがあるようです。私は彼の肩に手を置き、無言で慰めました。
時計を見ると、すでに時刻は二十時を回っており、私達はお礼を述べて、お暇することにしました。




