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クロスリーパー  作者: ルーツ
第二章 新たなる旅立ち

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38/41

21.区切りと邂逅

登場人物


ディヴァインリーパー

ジェシカ グラフ アンディ アリス


ミネルバ王国         

ソフィア国王  アルス

 朝から国全体が、まるで祭りのような歓喜に包まれていた。


そんなミネルバ王国へ帰還したジェシカ達は、

ソフィアが所有する別荘へと身を寄せ、

 アリュールとの死闘で疲弊した身体を癒すため、各自ゆっくりと休息を取っていた。


─────。


 リビングのソファに寝転び、何も考えず天井を眺めていた時だった。


──ドアノッカーを叩く音が別荘に響いた。


「え……?」


 立ち上がってリビングのドアを開け、廊下へ顔を出すと、少し前をグラフが無言で歩いていた。


グラフは振り返り、ジェシカに向かって手を前に出す。


──俺が行く。


そう言わんばかりに、玄関へと向かっていった。


しばらくして、複数人の足音が廊下に響き、

リビングの前で止まる。


ドアが開くと、そこには鎧を着た兵士二名とグラフの姿があった。

一人の兵士が一歩前に出て、ジェシカに向かって深く頭を下げる。


「この度の討伐依頼、誠に感謝いたします」

「つきましては明後日、ミネルバ城にて、ソフィア国王の御前へ参上いただき」

「改めてご報告をお願いしたく存じます」


(えっと……私達、四人で行って大丈夫なのかな……)


ジェシカはグラフの方を見て、目で訴えかけた。


「くっくっ……」

「とりあえず“明日”伺う。そう国王様へ伝えてくれ」


「承知いたしました」

「それでは、失礼いたします」


 兵士達が別荘を後にし、城の方へ向かっていく様子を、ジェシカとグラフはリビングの窓越しに見送った。


「もう!どうして私なの!?」

「政のことなんて、全然分からないよ……」


「ふっ、だが形式上必要なことだ。避けられん」


グラフは淡々と言葉を続ける。


「これから俺達は冒険者として動く」

「つまり依頼主との“契約”が常に発生するということだ」


「……」


「そして、その窓口になるのはジェシカ。お前だ」

「今後、同じような場面は何度もある」


「うぅ……」


「政に深入りしろとは言わん」

「だが、“常識的な対応”くらいは覚えておけ」


「わ、分かった……」


「力だけじゃない。社会で生きる力も必要だ」

「くっくっ……」


帽子を深く被り直し、グラフはリビングを後にした。


───────。


翌朝。


朝日が差し込み、ジェシカは目を覚ました。


今日は、国王への報告の日。


そう思いながら支度を済ませ、リビングへ向かうと。

既に三人はソファに座り、紅茶を飲んでいた。


「あら、おはようジェシカ」


やけに上機嫌なアリス。

その隣には力の抜けたアンディ、向かいにはグラフ。


「うふふ、ジェシカの分も用意してあるわよ」


「あ、ありがとうアリス」


「くっくっ……お前達、毎日やりすぎじゃないのか?」


グラフがアンディに視線を向ける。


「うるせぇな、こっちはこっちで大変なんだよ」


ジェシカは会話の意味が分からず、首を傾げていた。


そこへアリスが、良い香りの紅茶を差し出す。


「どうぞ」


「ありがとう」


アールグレイの香りが鼻を抜け、

朝の空気と相まって心が落ち着く……。


 ジェシカは一口飲み、カップをソーサーに戻すと──おもむろにポケットから小さな塊を取り出し、テーブルに置いた。


最初に反応したのはアンディだった。


「……おい。それ……」


アンディの視線を追い、アリス、そしてグラフも気付く。


「うん。アリュールのダークマター」


──沈黙。


「……は?」


「ちょ、待て……」

「お前、四代厄災の一人から抽出したのか……?」


「え、あ、うん」

「だってアリスが、私には分離と融合のアルカナがあるって……」


ジェシカがアリスを見る。


アリスは口元を押さえたまま、言葉を失っていた……


「……確かに、ジェシカのアルカナは規格外だとは思っていたけど……」

「まさか、ここまでとは……」


「……これ、何かまずかった?」


その時、グラフが肩を震わせ、低く笑った。


「くっくっ……」

「いいか、ジェシカ。この世には“存在するかもしれない”とされる物が山ほどある」


「……?」


「だが実際に目にすることは、ほとんど無い」

「何故だと思う?」


「うーん……分からない」


「今のお前に説明しても理解できんだろう」

「だから一つだけ言ってやる」


グラフは静かに言った。


「お前は──不可能を可能にした」


「……そうなの?」


「ああ」

「詳しく知りたければ、アンディにでも聞け」


「アンディー、教えてよー」


頭を抱えながら、アンディは溜め息を吐く。


「話すと長くなる」

「とりあえず今は国王の所へ行く」

「その後、アルス達の所で説明する。それでいいな?」


「うん、分かった!」


「ただし」

「そのダークマターは、俺達以外に絶対見せるな」

「そして無くすな。いいな?」


「わ、分かった……!」


四人は支度を整え、

ミネルバ城──ソフィア国王の待つ部屋へと向かうのだった。


────。


「お待ちしておりました。今回の依頼、無事に完遂していただいたこと、心より感謝いたします」

「すでにギルドへは私の方から正式な報告を済ませております。報酬はそちらでお受け取りください」


「うん、ありがとうソフィア」


「うふふ……それと、もう一つ」

「今回の依頼の報酬として、これは私個人の判断なのですが」


ソフィアは一瞬言葉を区切り、穏やかな笑みを浮かべた。


「現在お使いになっている別荘、よろしければ貴女達にお譲りしたいと思うのですが、いかがでしょう?」


「えっ!? 本当にいいの!?」


驚きの声を上げるジェシカ。

その様子を見て、黙っていたアリスが一歩前に出た。


「……それはつまり、このミネルバ王国に私達を留めておきたい」

「そういう意図も含まれている、という事かしら?」


「え……?」


アリスの言葉に、ジェシカは戸惑いながら振り向いた。


ソフィアは一瞬だけ目を伏せ、そして正面から視線を返した。


「……確かに、まったく打算が無いと言えば嘘になります」

「ですが、それ以上に……これは私個人としての善意です」

「どうか、そのように受け取っていただけませんか?」


アリスはアンディとグラフの方を見た。

だが二人は何も言わず、静かにジェシカへ視線を向けていた。


「……うふふ」

「ごめんなさい、ジェシカ。少しでしゃばったみたいね」


「ううん、そんなことないよ!」


ジェシカは首を振り、ソフィアの方へ向き直ると、

少し緊張しながら右手を差し出した。


ソフィアはその手を取り、柔らかく握り返す。


こうして──

ミネルバ王国の王政是正、

そして四代厄災・魅惑のアリュール討伐という大きな幕は、静かに降ろされた。


だがそれは、終わりではない。


ジェシカ達は、

ヘレティク壊滅という、さらに大きな戦いへ向けて。

確かな一歩を踏み出したのだった。


─────────────。


第三章へ続く。












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