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クロスリーパー  作者: ルーツ
第二章 新たなる旅立ち

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32/40

15.心情と絶望そして希望

登場人物


ディヴァインリーパー

ジェシカ グラフ アンディ アリス


ミネルバ王国         

第二王女ソフィア  第一王女フェミル(現国王)


覚醒死者      

魅惑のアリュール  

 ジェシカは、馬車に乗ったグラフとアンディの後を、見つからない距離を保ちながら静かに追っていた。

 月明かりに照らされる森を抜けると、馬車は作戦通り、廃城と化したアリュールの根城へと入っていった。


 ジェシカは壁や柱の陰に身を潜め、慎重に様子をうかがう。

その肩越しに、アリスがそっと顔を覗かせる。


「ここって……さっきグラフが言ってた場所で間違いないよね?」

「ええ、でもここにいるとは限らないわ。確証がない以上、慎重に行動することが大事よ」


ジェシカは深く息を吸い込み、拳を握った。

「うん……じゃあ、中に入って、グラフ達のところに向かうね」


 二人は互いに視線を交わすと、静かに廃城の中へと足を踏み入れた。

薄暗い廊下を抜け、階段や曲がり角を慎重に進む。

 遠くで囮の二人の声や物音がかすかに聞こえるたびに、ジェシカの心臓は小さく跳ねた。


 目指すは、グラフとアンディのいる場所──作戦の中心。

 そのために、今は見つからないように、影のように歩を進めるしかない。


────。


 一方その頃、グラフとアンディの二人は、作戦通り無事に馬車へと乗せられ、魅惑のアリュールの根城へと連れ去られていた。

 二人は深く帽子とフードを被り、顔立ちが分からないよう視線を伏せている。


 馬車の中には、二人のほかに三人の男が同乗していた。

そのうちの一人。

 アンディの隣に座る男が、馴れ馴れしく声をかけてくる。


「なあ、あんた。“コレ”は初めてか?」


アンディは答えず、沈黙を貫いた。

だが男は気にも留めず、勝手に笑いながら続ける。


「なんだよ、無視か。まあいいさ」

「どうせ今から最高に気持ちいい目に遭うんだからな!!」


その言葉に、残りの二人も乗っかるように声を上げた。


「ああ!もう人間の女を抱くなんて考えられねえよな!」

「そうだな。俺たちはただ気持ちよくなれりゃそれでいい」


「ははは!確かにそうだ!」

「責任なんて取らなくていいし、何度だって楽しめる!」

「最高だよな、悪魔様様だぜ!」


「だな!今日も朝まで楽しもうぜ!」


馬車の中は下卑た笑い声で満ちていた……

そんな空気を裂くように、グラフが静かに口を開く。


「……それで、この馬車はどこへ向かっている?」


「ああ?決まってるだろ」

「悪魔様のお城だよ。そこで俺たちは、朝まで“いいこと”をするんだ」


「そうか。なら、もう一つ教えてほしい」


「んだよ。まあいいぜ、今は気分がいいからな」


「……お前たちは、ミネルバ王国の民か?」


男は一瞬だけ目を細め、吐き捨てるように答えた。


「だったら何だ?」


「いや……あの国に男が少ないと聞いた。何かあったのかと思ってな」


 それを聞いたアンディの隣の男が、堰を切ったように語り出す。


「そりゃそうだろ。男と女は平等、だなんて言い出したからな」

「だったら女も働けって話だろ? 男だけが我慢する理由はねえ」


男は嗤い、拳を握りしめる。


「いいか、よく聞け」

「ミネルバ王国は、俺たち男が造ってきた。街も、社会もだ」

「先代の王の時代までは、あの国はまともだった」


「だが今の国王になってからだ」

「男女平等だの平均化だのと言い出して、女が仕事に入ってきた」

「それだけならまだよかった」


男の声に、次第に怒気が混じる。


「だが現実はどうだ?」

「辛い仕事は全部男。女は楽な仕事ばかり」

「それのどこが平等なんだ?」


「俺たちは最初、我慢したさ」

「でもな、我慢にも限界がある」


男は低く笑った。


「だから考えたのさ。“やらない”って選択をな」

「ある日を境に、ミネルバ王国の男全員が働くのをやめたら、どうなったと思う?」


「……さあな。考えたくもない」


「だろうな」

「今じゃ女同士で責任のなすり付け合いだ」

「体が大きいってだけで前線に出され、防壁の監視だとよ……笑えるだろ?」


男は乾いた笑いを漏らす。


「もう終わりなんだよ、あの国は」

「だから俺たちは悪魔様に身も心も捧げた」

「俺たちの子が、あの国を滅ぼしてくれるなら万々歳だ」


「……分かったか?」


その言葉を、グラフとアンディは黙って聞いていた。

馬車はやがて、軋む音を立てて止まり──

魅惑のアリュールが棲む廃城の前に到着した。


─────。


ジェシカは隠れながら廃城の中に入り馬車を遠くから見ていた。

かなりの数の死者達が居る事が分かるが全て小柄に見える


「ねえアリス」


「何、どうかしたの?」


「なんかここの死者達って全員小柄にみえるんだけど…」


「そうね。ソフィアが言ってる事が間違ってないって事になるわね」


「なんか私アリュールの事が許せなくなってきたよ」


「ええ、それでいいのよ。ジェシカの目的は魅惑のアリュールの討伐ですもの」


「そうだね、それじゃまた移動するよ」


「あら、ここからは私も歩くから大丈夫よ」


「あ、確かにそうだね」


「うふふ、いきましょうジェシカ」


アリスの魔術により、ジェシカの姿も消え無駄な体力を使う事なく馬車の方へ歩いていく。

そんな会話をしている時だった、近くで女の怒号の様な叫び声が聞こえた。

二人は顔を見合わせて声のする方へ向かって行った。


────。


グラフとアンディを乗せた馬車が止まり、ドアが開くと人間の男達は慣れた様に下車した。


「アンディ少し待て。居るぞ」


「ああ」


二人は心音で確実に覚醒者がいる事に気付いた。

するとグラフが小声で話しかけた。


「不意打ちするぞ。二人で一気に殺る、準備はいいか?」


「ああ、いつでもいい」


「ふっ、先に俺が奴を空高く吹っ飛ばす、お前はその後を頼むぜ」


アンディはフードを被り無言で頷いた。

 グラフ達がなかなか降りて来ない事に気付いた女の死者はドアの近くに手を掛けた。


 その瞬間、グラフのブラッディローズで作られた両手斧をブンッ!と振り回し、馬車を粉々に破壊され。


 死者も巻き添いをくらい、バラバラ斬り刻まれ木屑となった馬車と一緒に死者の血が舞っていた。


 その血を使いグラフは一気に覚醒者へと距離を詰め、両手斧を振り上げ、不意を突かれた覚醒者は勢いよく空中に飛ばされた。


 両手斧を振り上げた時にグラフは、攻撃を仕掛け覚醒者が空中に飛ばされてながら血を垂らしていた。


 空中で思う様に動けない覚醒者に向け、既にアンディはブラッディローズで槍を作り狙いを定めていた。


 アンディは覚醒者に向け、全力で頭を狙い投擲し槍が頭に突き刺さった。


その時、

覚醒者は怒号にも似た叫び声を上げた……


 いきなりの不意打ちと攻撃の連携を喰らい、すでにボロボロの覚醒者だが簡単には倒れてくれなかった。


 飛ばされた覚醒者は地面に落ち、身体をバタバタさせ、自らから刺さっている槍を握り、頭から抜き大量の血がぼたぼたと流れてた……


 グラフ、覚醒者、アンディと挟むように、位置を取り互いに様子を見ていた。


 覚醒者はアンディの槍を両手で持ちアンディに向け攻撃を仕掛けてきた。

 しかし移動速度が遅く、アンディは簡単に避ける事ができ槍に手を触れ槍の存在を消した。


 体勢を崩した覚醒者は、その一瞬の隙にアンディが力を込めて蹴り飛ばしグラフの方へ飛ばした。


 アンディの動きを読んでいたグラフ──両手斧を構え間合いを取り、槍が突き刺さっていた頭は、

頭蓋骨が見え。

血が垂れながしている。


 そこに狙いを定め、思いっきり両手斧を振り下ろし顔を潰した。


 身体はまだ微妙に動いているがしばらくすると動きも止まり覚醒者はようやく生き絶えた。


アンディはグラフの元にゆっくり歩き、

        二人は拳を作り合わせた。


「さすがだなグラフ」


「ふっ、お前こそ。だがまだ終わりじゃないぞ」


「ああ、周りにいる死者共も殺らないとな!」


 そう思い二人は周りをみつつ構えた、だが既に死者共は息絶えていた。


「えへへ、全部倒しておいたよ」


──。


 そこには姿を消していたジェシカとアリスが現れて

立っていた。


「ふっ…くっくっ…」


 グラフはジェシカの方を向き帽子を被り直し近くにいた男三人の方へ向き直した。


「いいか。ミネルバ王国は変わろうとしている、それをお前たち男が目にする事になる」

「分かったならここから出ろ、そして帰れ」


 周りは血の海となり、返り血を浴びているグラフとアンディ。

そして謎の女二人を男達は見て足を震わせていた。

そんな男達にジェシカは優しく声をかけた。


「ほら早く行きなよ。グラフが怒るよ」


 三人は、この世の終わりを見たような叫び声を上げながらこの場を去ろうとし姿が見えなくなった。

しばらくすると奥から男達の断末魔が聞こえた。


四人は一斉に声の方へ振り向いた。


 ペタッペタと素足で血みれの床を歩きこっちに歩いて来る奴がいる。


「ふふふ…お前たちクロスリーパーか?」


 そう言うと、一人の女がロングソードを持ち、四人の所に姿を現した。

 まだまだ魅惑のアリュールへの討伐は始まったばかりだ。



───────────────────────


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