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紅月のクロスリーパー   作者: ルーツ
第二章 新たなる旅立ち

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31/129

11.打算と高揚

登場人物紹介


<クロスリーパー>

主人公 ジェシカ   

賞金稼ぎ グラフ


<ミネルバ王国>

第二王女 ミネルバ・ソフィア・マニフィック

第一王女現国王 ミネルバ・フェミル・オルグイ

錬成師 アルス


<四代厄災>

魅惑のアリュール

──工房の中

炉はまだ沈黙しており、金属の匂いだけが微かに残っていた。

アルスとアンディは、制作前の打ち合わせに入っていた。


アルスは一束の資料──

ジェシカの体格、筋肉の付き方、そしてこれまでの戦闘記録が書き込まれた紙を手に取り、アンディへ差し出す。


「あんた……アンディって言ったな?」


アンディは一瞬だけアルスを見つめ、無言で頷いた。

近くの椅子を引き寄せ、アルスと向かい合うように腰を下ろす。


「それで……俺は何をすればいい?」

「ははっ!せっかちだな、アンディ」


アルスは楽しそうに笑い、指で資料を叩いた。


「いいか。今回の作業は、互いの呼吸が合って、同じ方向を向いていないと成立しない。

言わばこれは"合成錬成"だ」

「合成錬成……?」


アンディは眉をひそめる。


「聞いたことがない言葉だな」

「そりゃそうだ」


アルスは肩をすくめる。


「悪魔の雫を使って武器を作るなんて、普通は一生に一度あるかどうかだ。

それを今、俺たちはやろうとしている。

『言ってしまえば、

   偉業ってやつだな』」


その言葉に、鍛冶の心得を持つアンディも、否定できなかった。


「……なるほどな。で、その合成錬成ってのは、具体的にどうやる?」

「簡単に言えばこうだ」


アルスは指を折りながら説明する。


「まず、アンディが憑代を再び溶かす。

その間、俺は悪魔の雫が蒸発しないよう、錬成で保護と制御を行う。


次に、憑代と雫を合成。そして最後に──」


アルスはアンディを見据え、にっと笑った。


「アンディが、俺の描いた設計を“形”にする」

「……なるほど」


アンディは資料に目を落とし、しばらく黙考する。


「なら、まず設計図を見せてくれ。それと……この憑代、ダマスカス鉱を使っているな。

熱には強いが、衝撃には弱い。普通なら細剣を選ぶはずだ」


アンディは視線を上げる。


「だが、この設計は……その理由が、俺にはまだ見えない」


アルスは、その言葉を聞いて満足そうに、ニヤリと笑った。


「そこまで理解できる奴はそうはいないな。

アンディが腕のいい職人で、しかも“審美眼”を持ってるってことが分かって、安心したぜ」


その一言で、アンディもまた、アルスの力量を認めざるを得なかった。


「……ふっ、互いに良い仕事ができそうだな」

「ああ!じゃあ、これが俺の設計図だ──」


二人は設計図を広げ、構造、重量配分、刃文、魔力の流れについて意見を交わす。

議論は白熱し、気づけば半日以上が過ぎていた。


やがて。アルスが、工房の窯に火を入れ炉の奥で、鉄が鳴るような低い音が響いた。


赤く灯る炎を前に、二人は無言で頷き合った。


──制作が、始まる。



工房を後にしたジェシカ、グラフ、アリスの三人は、ソフィアの側近に案内され、城内の客室へと向かっていた。

長い廊下を歩きながら、ジェシカは久しぶりに再会したアリスの隣に並び、嬉しそうに声をかける。


「あれからずっと、アリスはアンディと一緒だったの?」

「ふふ……ええ、そうよ。私たちは、あれからずっと一緒だったわ」


アリスは柔らかく微笑み、続ける。


「でもあの人、ずっとジェシカのことを心配していたの。

だから今回、協力できることを、とても嬉しく思っているはずよ」


「そっか!私はみんなに会えただけでも、すごく嬉しいけどね!」

「ふふ、そうね。でもね、これは偶然じゃないの」


アリスは前を向いたまま、静かに言った。


「ジェシカの行動が巡り巡って……こうして、接点のなかった私たちが同じ場所に集まったのよ」

「……ありがとう、アリス!」


二人の会話を、グラフは黙って聞いていた。

やがて側近が一つの扉の前で足を止め、軽くノックをする。


中から、聞き覚えのある声が返ってきた。

扉が開くと、そこにはソファに腰掛け、紅茶を嗜むソフィアの姿があった。


三人は彼女の前に腰を下ろす。


「今回の依頼を受けていただき、ありがとうございます」


ソフィアはカップを置き、少し表情を引き締める。


「実は……王城内ですでに噂が広まってしまいました。

そこで一つ、私から提案があります」


ジェシカが身を乗り出そうとした瞬間、グラフがそっと肩を掴み、制した。


「……俺が聞く」


ジェシカは一瞬戸惑いながらも、グラフの目を見て頷く。


「……うん」

「提案とは何だ?」


ソフィアは口元に手を当て、微かに笑ってから、咳払いを一つ。


「あなた方には、“冒険者として依頼を受けた”形を取っていただきたいのです」

「理由は?」

「先ほども申しましたが、今回の件は“クロスリーパーが受けた依頼”として噂になっています」


ソフィアは静かに言葉を選ぶ。


「今のミネルバでは、どこから情報が外へ漏れるか分かりません。

それは……あなた方にとって不都合ではありませんか?

それに、この話が現国王の耳に入れば……私たちとしても、都合が悪いのです」

「……なるほどな」


グラフは腕を組む。


「表向きは冒険者として動き、情報だけを流す。実情は伏せる。それが得策か」


そう言って、ジェシカを見る。


「どうだ、ジェシカ。お前はどう思う?」

「んー……まつりごとはよく分からないから、グラフに任せるよ」


その時、黙っていたアリスが口を開いた。


「……ちょっと、待ってちょうだい」


グラフがアリスへ視線を向ける。


「ふふ、大丈夫よ。悪いようにはしないわ」


アリスはソフィアへ向き直った。


「あなたの言い分は理解したわ。その上で……私からも提案があるのだけれど、聞いてもらえるかしら?」


ソフィアは目を細め、微笑む。


「ええ。話が早くて助かりますわ」

「今回の依頼が終わったら──この国のどこかの街に、ジェシカを中心とした私たちの活動拠点を置くことを認めてほしいの」


「理由を伺っても?」

「うふふ……これは、お互いにメリットがあるわ」


アリスは指を折りながら説明する。


「私たちにとっては、この街を拠点にすることで、ジェシカの目的──ヘレティック殲滅を行う際、ミネルバが後ろ盾となり、動きやすくなる。

そして、あなた方にとってのメリットは──」


アリスはソフィアを見つめる。


「依頼を無事終え、私たちがここを拠点にしていると知られれば、不用意に手を出す勢力はいなくなるでしょう?」


一瞬の沈黙。

やがて、ソフィアは声を上げて笑った。


「あはは!いいわね、貴女。話が分かるわ!」


ソフィアは紅茶を置き、ゆっくり息を吐いた。


「その提案、受けるわ。私は、貴女達にベットするわ!」

「ふふ……ありがとう」


「では早速、冒険者登録を済ませなさい。それから、私の所有する別荘を使うといいわ。

支度を整え、依頼をこなす拠点として……好きに使って構わない」

「うふふ……それでは、早速冒険者として登録に参りましょう」


アリスはジェシカを振り返る。


「ジェシカ、行きましょう」

「え…アンディは待たなくていいの? それに、グラフ……」


「ふっ、俺は賞金稼ぎだ。すでに登録は済んでいる」

「あ、そっか。確かに」

「アンディのことも心配いらないわ」


アリスが微笑む。


「私もアンディも、昔に冒険者登録をしているもの。

抹消されていなければ、今でも有効よ」

「そっか!じゃあ私、登録してくるね!」


「ええ。それと……ジェシカには、もう一つ大切なことをしてもらわないといけないの」

「え……何?」


「ふふ、これからは、ジェシカを中心に私たちは活動していくの。

だから──活動名も、ジェシカに決めてもらわないとね」


アリスの言葉にジェシカは、満面の笑みを浮かべた。


「そうだね!!よーし、行こう!」

「うふふ」


三人はソフィアに挨拶を済ませ、城を後にする。


こうして彼女たちは、冒険者として、新たな運命へと踏み出すためにギルドへと向かうのだった。


───────────────────────


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なるほど、刃文があるのか。 _φ(・_・ と、いうことは日本刀の技術に近いのかな? 少なくとも直刀では無さそうなイメージです。 (´・ω・`) 出来上がるのが楽しみ。 (*´ω`*) 建前として…
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