3. それぞれの道
登場人物
<ディヴァインリーパー>
ジェシカ
四代厄災
絶対死者 アブソリュート
「……アブソリュート……あれが……」
ジェシカはその場に立ち尽くしていた。
そんなジェシカに向かうように強風が襲い、髪、服、手に持っている地図がバタバタと音を立てる。
はっ、と我に返る。
「だめ……今は目的を果たす事が優先。それに──」
広い湖畔を見渡したジェシカは、言葉を言い切る前に──アルカナンへ向かった。
─────────
ミネルバ王国──拠点。
「ふっ、行ったか」
「ああ、ジェシカならやれるさ」
「ふふ、そうね」
グラフ、アンディ、アリスの三人は真紅の薔薇を見つめながら言葉を交わしていた。
そこへアルスが口を開く。
「さーて、とりあえず俺の役目は終わった。だからソフィアの所に帰るわ」
「いや、待てアルス。まだ一つやって欲しい事がある」
アンディに呼び止められるアルス。
「はあー? まだ俺を使うのかよ」
「悪いな、これもジェシカの為だ」
「そんな事言われたら断れないな。それで何だ?」
アルスに向き直り、真剣な表情になるアンディ。
「俺の武器にも血の結晶を錬成してほしい」
「なるほどな、分かったが武器はどこにあるんだ?」
「……それは今から作る」
「おいおい。そりゃ無理があるぜ?」
アンディとアルスの会話に、グラフとアリスが割って入る。
「話の途中で悪いが、俺はクロードを連れてブラッディローズで“こいつ”を屈服させたい。
だから先に行くぞ」
「ああ、後で俺も行く」
「……分かった。クロード、出雲刀を取ってこい」
「は、はい!」
クロードは部屋へ向かい、出雲刀を取りに行った。
「アンディ、あなたは無理よ」
「何? どう言う事だアリス」
「だってあなた、自分の適正分かっているの?」
「……そんなもの、俺は槍に決まってる」
アリスの言葉を聞く耳持たず、決めつけるアンディ。
「確かにアンディの言う通り、槍なのかもしれない。だけど、もし違ったらどうするの?」
「……そんなはず……」
「おいアンディ」
グラフの低い声がやけに響き、アンディは振り返る。
「何だ」
「……アリスに見てもらえ。話はそこからだ。それに武器ならグレンに頼め。
鉱石から鉄を作る技術やアーティファクトはお前の方が優れている。だが、武器に関しては──」
グラフの言葉に重ねるようにアンディが口を挟む。
「あーうっせーな! 分かったよ!アリス、見てくれ」
「うふふ、ええ……分かったわ」
「悪いなアルス。俺はこれからアリスに適正を見てもらう」
「おう!俺はミネルバ城にいるから来てくれ」
「分かった」
アンディとアリスはリビングへと向かい、アルスはミネルバ城、ソフィアの元へと軽快な足取りで去っていった。
三人の様子を見ていたグラフは鼻で笑い、帽子を深く被り直す。
「ふっ、騒がしい連中だ」
そこへ、息を切らしながらクロードが戻ってくる。
「はあ、はあ……お待たせしました」
「ああ。いいか、これからあの山に向かう。だが、ここから向かうにはブラッディローズを作り、それを蹴る必要がある」
「え……ぶ、ぶらっでぃろーず?」
「そうだ。俺たちクロスリーパーはブラッディローズを使い、身体解放を行うことで死者共を狩っている」
急に始まったグラフの話に、戸惑いながらも耳を傾けるクロード。
「まず、ブラッディローズを自力で作れるようになれ。そしてクロードの持つ力を俺に教えてほしい」
「お、教えるって……どうすればいいか……」
「今のクロードには分からないだろうが、キッカケさえ掴めばできるはずだ。
それまでは俺が、しっかり指導してやる」
帽子の奥から覗くグラフの目に圧を感じ、クロードは思わず肩に力を入れる。
「最初だけ見せてやる。いいか、まずは目を閉じて右手に神経を集中しろ。
次第に右手に向けて血液が集まる感覚が分かるはずだ」
「は、はい。やってみます」
クロードは目を閉じて集中する。
だが──何も起こらない。
「うーん……」
「そのまま続けておけ。俺は俺でやれる事をやっておく」
「分かりました」
クロスリーパーとして芽吹いたクロードの指導と、自らの進化のため──グラフはフィセルを屈服させる修行へと入る。
そして──
それぞれが、自らの“選択”を背負い、次の段階へと進み始めた。




