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紅月のクロスリーパー   作者: ルーツ
第四章 争いの果てに何を想うのか

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30.血は絶えず、命は巡る

登場人物

<ディヴァインリーパー>

ジェシカ 

グラフ

アンディ 

アリス

アルス

クロード

「ねえアリス……」

「どうしたの、ジェシカ」


「……私も……やっぱり……死んじゃうのかな……」


今後、自分の身に起こることを受け止めるためにも、ジェシカはアリスに事実を聞いてきた。


「……ジェシカ。あなたの中にマリアが眠る。それが全てよ」

「……そっか……」


一度、言葉が途切れる。

喉の奥が詰まったように、次の言葉が出てこなかった。


「……分かったよ」


ようやく絞り出した声は、わずかに震えていた。


ジェシカの蒼い瞳は涙で潤み、大粒となって頬を伝い落ちる。

それでも、拭おうとはしなかった。


リビングには、ジェシカの泣き声が静かに響いていた。


そんな空気の中──クロードは、気付けばジェシカの手を強く握っていた。

震えているその手を見て、胸の奥が締め付けられ考えるより先に、言葉がこぼれていた。


「ジェシカ! 俺はお前を泣かせるようなことはしないよ!

俺、これからもっと強くなって守るから!


それに……」


一瞬、言葉に詰まるがそれでも、逸らさずに言い切った。


「──お前がどんな運命でも、俺は離れない」

「え……く、クロード!?」


「あ……ご、ごめんジェシカ!」

「う、ううん。大丈夫だよ」


初々しい二人を見てアリスは声をかける。


「うふふ、クロード。ジェシカをお願いね」

「あ、はい。はは……」


クロードは照れながらソファーに座り、冷めた紅茶を一気に飲み干し、咳き込んだ。


「ゴホッ! ゴホッ!!」

「ふっ、ようやくクロードも眷属として自覚してきたようだな……」


「ははっ! 確かにグラフの言う通りだな! クロード!」

「は、はい」


「ジェシカのこと、頼んだ」

「アンディさん……」


「もう! みんなして何よ。私、まだクロードのこと好きじゃないんだからね」


顔を赤らめ、クロードの方を向かずに、アンディとグラフに向けて怒っていた。


「ほら、まだ話は終わってないぞ。聞くんだろ?」

「聞くよ!」


「アリス、続き頼む」

「ええ。ここからは、冷めちゃったけど紅茶を飲みながら聞いてちょうだい」


アリスは一度カップに視線を落とし、小さく息をついた。


そして、ゆっくりと足を組み直す。


「リベリオンが崩壊した後、エルドレッドは意識を失ったマリアと子供を連れて、クロスマインにある自宅へと戻り、二人をベッドに横にしたの。


でも、すでにマリアは力を使い切り、衰弱していて、意識も朦朧としていた。

エルドレッドは気付いていたの。もうマリアの命は長くないと……


そんなマリアは、最後の力を振り絞って声にしたの。


“血を絶やすことなく生きて”と……。


その言葉を最後に、マリアの命の灯はこの世から消えたわ」


リビングには、さっきまでの空気から一変し、悲しい雰囲気が漂っていた。


「マリアの隣で寝息を立てている子を、エルドレッドはゆっくり抱きしめ、“サクシード”と名を付け、マリアの力を引き継いだの。


だけど……エルドレッドは考えたの。

最後のマリアの言葉を……そして、クロスマインの血を絶やさないために、人間の女と恋仲に落ち、種を増やしたの」


「それって……」

「……ええ、そうよ。そのマリアの血でリーパーとなったエルドレッドは、人間と恋仲になり、子を授かった。そして子が生まれたわ」


紅茶を取り、一口含み、息を整えてから、再び口を開く。


「リーパーの血を引き継いだ子供がクロスマイン村で生まれたことで、死者狩りの依頼を受け、報酬を得る民族として、いつしかリーパーは“クロスリーパー”と呼ばれるようになったの……


これが、リベリオンとマリア、そしてクロスリーパー誕生の話よ」


アリスの話に、全員何も言えず、その場に固まっていた。

だが、アンディが口を開く。


「まさかな……俺の血はマリア様ではなく、エルドレッドだったなんてな……」

「アンディ、それは違うわ。あなたたちクロスリーパーは、マリアの血筋なのよ」


「なぜ、そう言い切る。根拠でもあるのか?」

「……ブラッディローズよ」


「何? なぜブラッディローズがマリア様の血筋だと言える?」

「だって、ブラッディローズは女しか扱えなかったからよ」


「意味が分からない……俺が女とでも言いたいのか?」

「違うわ。マリアの血がないとブラッディローズは作れないの。それにエルドレッドは眷属だから、ブラッディローズではなく……」


アリスは言葉を止め、クロードを見た。


「この話はまた今度してあげるわ。今はジェシカを聖王国リベリオンへ送ってあげなきゃでしょ」

「……ああ、分かった」


「ジェシカ。これで私の知っていることは全て話したわ」

「うん。これでもう、いつでも向かうことができるよ」


「そうね。まずはアルカナンに行って、レーヴ討伐の依頼を受けてちょうだいね」

「分かった! 色々驚かされたけど、情報ありがとう、アリス」

「うふふ、いいのよ」


こうして話は終わり、ジェシカはアルカナンへ向かうための準備をするのだった。


────────────


──翌日。


ジェシカは拠点の庭へと出ていた。

アンディ、グラフ、クロード、アルス、アリスに見送られ、アルカナンへと向かう。


その時、アリスがジェシカの元へ歩み寄り、小さな皮袋を渡してきた。


「何これ?」

「それは、一時的に瞳の色を変える薬よ。リベリオンに入国する時、正体がばれないようにするために飲みなさい」


「わー、ありがとうアリス!」

「ええ、無事に免罪符を持って帰ってくるのを待っているわ」

「分かった! それじゃ行ってくるね!!

アンディ! グラフ! クロード! 待ってるね!」


『ああ! 待ってろよ』


「アルス! 免罪符、待って帰るね!」

「ああ! 期待してるぜ!」


「アリス!!」

「なあに?」


「アルカナンのこと、やれるだけやってみる!!

それじゃ、行ってくる!!」


そう言うとブラッディローズを使い、紅い花びら舞い空高く紅を描きジェシカはアルカナンへ向けて姿を消したのだった。


             第五章へと続く。


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