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第6話∶忍び寄る夜風――女王達の狂宴

 電馬はドアを開けてアパートの自室に入った。

 「お帰りなさいませ、電馬様」

 彼を出迎えたのはメイドドレスを着た鉄子だった。声も髪型も日焼け具合も掛けている眼鏡も胸元に下げているルーペも全く同じだ。ただし、虹彩は蛍火色だが。

 着替えた電馬は食卓の椅子に座るや否や、夕食を用意しているメイド鉄子に話し始めた。

 「んふふ。今日は大活躍したよぉ」

 「まぁ、どの様な?」

 「今朝、テッコに刑事が迫っていたんだけど、その前に立ち塞がって庇ったんだ。そして、大帝院グループの科学者も同じ事をしていたから、これも庇って守ったんだ」

 「凄く素敵! とても格好良いです!」

 メイド鉄子の称賛に電馬は気を良くする。

 「んふふ、だろう。それに、密教の剣印の説明をして彼女に良い所を見せられたし」

 「キメましたね」

 「そうなんだ。しかも、あのルーペとブローチを贈ったんだよ」

 「昨日、閉店ギリギリに買えたルーペと、徹夜で造ったブローチを?」

 「そうだよ」

 「彼女の反応はどうでした?」

 「とても喜んでくれたよぉ」

 「プレゼントは受け取って貰えたし、説明もキマったし、2度も格好良く庇えたし、最高ですね」

 メイド鉄子は褒め称えながら電馬の前にオムハヤシとサラダ、そしてコーンポタージュを置いた。

 「そうなんだよ。でも……」

 「何か気になる事でも?」

 「今日も言えなかったんだ。手渡した時に言えれば良かったんだけど、タイミング悪く人が来たから」

 「それは残念ですね。でも、焦らないで。まだチャンスは幾らでもありますよ」

 「うん。今度こそ告白するよ」

 しかし、大好物のオムハヤシを口に運ぶ速度が遅い。

 「まだ何かありましたか?」

 「テッコに好きな人がいるらしい。そして、妊娠疑惑が出た時はショックだった」

 「あの方、浮気でもしていたのですか?」

 電馬はそれを否定して、生徒会室での会話と受胎告知の説明をした。

 「そういう事でしたか。電馬様の良い所を沢山知っている彼女が、そんな事をする訳がありませんよね」

 「当然だよ。ポーカーフェイスでそれとなく訊いたけど、テッコは全力で否定してた」

 「なら安心ですね。もしかすると、好きな人って電馬様では?」

 「そ、そうかな?」

 「きっとそうですよ」

 「だったら、嬉しいな。……さて、今日は色々あったから、いつもより疲れたよ」

 「お疲れ様でした。お風呂の準備は出来ています」

 電馬はメイド鉄子に話を聞いて貰いながら食事を終えた。その後、彼女の手作りプリンにも舌鼓を打つ。

 紅茶を味わっていた電馬は、空になった食器をシンクに運んだ彼女を不意に背後から抱き締めた。心地良い感触と体温と体臭を堪能する。

 けれども、彼女は慣れた口調で(たしな)めた。

 「いけませんよ、これから片付けなのに。困った御主人様ですね」

 「後で良いじゃないか。お願いだ、アイ。今日も褒めてよ。(ねぎら)ってよ。慰めてよ。僕を癒してよぉ」

 「聞き分けの無い御主人様ですね。でも、そこが可愛いのだけど」

 アイと呼ばれた鉄子そっくりのメイドは、天使の様な笑顔で創造主を受け入れた。

     ~ ☆ ~

 玉虫色のロボットが飛び去ってから数時間後、日付が変わろうとしている。

 鉄子は自室のベッドで熟睡していた。

 しかし、彼女以外の手塚一家は、まだ眠れなかった。

 特に、ようやく全身から麻痺が消えた線二郎は、怒りで身も心も震えていた。

 「お父さん、これからどうなるの?」

 「あのキモいロボット、また来るのかな?」

 顔色が悪い双子が不安そうに訊く。けれども、頼れる父として愛娘達の不安を取り除く言葉を持ち合わせていなかった。

 「分からん。オレにはどうする事も――」

 その時、彼のスマートフォンが鳴った。画面を見ると、秀臣からの電話だった。急いで出てみると「今すぐ入れて欲しい」との事。

 玄関の扉を開くと、彼と美女秘書以外に作業服姿の男達がいた。

 予想外のメンバーに驚く線二郎に、秀臣は余裕を取り戻した笑みを浮かべていた。

 「お待たせしました。早速、プランEを始めましょう」

 秀臣が再訪の目的を鉄子の拉致とポォの回収だと説明すると、線二郎は反対するどころか喜んで承諾した。

 作業服の男達は線二郎から間取りを教えて貰うと、階段の照明を点けず2階に上がり、窓から差し込む月明かりを頼りに廊下を経て鉄子の部屋の前に来た。その間、不自然なぐらい足音が全く立たなかった。

 誰もが何の支障も無い簡単な計画だと思っていた。たかが女子高生と空飛ぶ虫型マシンの回収である。ドアの隙間から催眠ガスを流し込み、標的を完全に眠らせてしまえばどうとでもなる。うるさい機械も頑丈なケースに入れて液体窒素を噴射し、機能を停止させてしまえば問題無い。

 ところが、鉄子の部屋のドアを開けようとした男が横に倒れこんだ。周りの男達が慌てて支えると、彼は気を失っていた。続いて、その横にいた男も眠る様に意識を失った。

 残っている男達は周囲を警戒した。1人が倒れた男達の首筋に異物が刺さっているのを見付けた。

 「針だ。まさか、これで……」

 「それって、吹き矢か含み針かも……」

 だが、狭い廊下には自分達以外はいない。

 そして、また1人崩れ落ちた。

 「何がどうなっているんだ!?」

 「分からん」と首を振った男が倒れた。

 男達は今回の任務を簡単だと思っていた。あらゆる不測の事態を想定し、対処法も万全だった。それを上回る規模のアクシデントは、大帝院グループの財力と権力で容易く揉み消せる。

 ところが、これは想定外だった。しかも、相手は正体不明だ。敵の気配すら察知出来ない。

 「ボディーガードを雇っていたのか?」

 「一般家庭の高校生が雇える大金も伝手(つて)もある訳が無い」

 「それに、事前に対策を立てていたとは考えられない」

 どの様に対処しようか迷っている間にも1人ずつ脱落していく。

 「まさか、よかーー」

 最初の男が倒れてから1分も経たぬ間に最後の一人が倒れた。

 その時、廊下の突き当りの天井が膨れ上がって人の形になった。その小柄で瘦身の人影は天井に足を付け、逆様の状態で直立している。

 「こちら断風(たちかぜ)。全員眠らせた。直ちに回収を頼む」

 その人影は宙で前転して床に降り立った。羽毛が落ちたみたいに音が全くしない。

 そして、ドアをそっと開くと、ベッドで眠っている鉄子を庇う様にホバリングしているポォが見えた。暗闇の中、複眼はトパーズイエローに光っている。

 「君の友達を拉致しようとした敵は、俺が1人残らず眠らせた。こちらで全員回収するから安心して欲しい」

 小声で告げると、複眼はサファイアブルーに変わり、何も知らずよく眠っている鉄子の枕元に着地した。

 「信じてくれてありがとう」

 礼を述べてドアを閉めた後、人影は闇の中に消えた。

     ~ ☆ ~

 (……遅い! 何をしている?)

 上からドタバタと音がしていたので、催眠ガスを流し込む前に目を覚ました鉄子がかなり抵抗していたのだと思っていた。しかし、静まってからしばらく経っても工作員達は降りてこない。

 痺れを切らした秀臣は、左耳に装着している小型インカムで呼び掛けた。ところが、リーダーから返答が無い。意を決して恐る恐る薄暗い階段を上ると、男達の姿は無かった。

 慌てて廊下を見回したが、隠れる場所は無い。そもそも彼等が隠れる理由も無い。ドアを開けて夫婦や姉妹の部屋を覗き込んだが、やはりいなかった。

 (一体、何処に行ったんだ?)

 鉄子の部屋のドアノブに手を掛けようとしたその時、爪先が何かに触れた。

 眼を凝らして足元を見ると、自身が装着しているのと同じタイプのインカムが落ちていた。しかも、男達の人数分。

 それを見た秀臣は得体の知れない恐怖を覚えて足早に階段を下りた。

 「どうしたの? 顔色が悪いけど」

 訊いてきたキャサリンに状況を説明した。

 「まさか、あの研究所の仕業? それとも孝恵(たかえ)が――」

 「分からん。ともかくプランEは中止だ」

 そう言って今度は外で待機しているメンバーに声を掛けたが、いつまで経っても小型インカムに返答は届かなかった。

 「まさか、あいつらも……」

 ただならぬ様子を察した線二郎が何事かと尋ねてきたが、それに答える余裕も無く、気色ばんで外へ飛び出した。

 家の前にトラックが停車している。眠らせた鉄子をコンテナに監禁して迅速に運び出す計画だった。

 しかし、秀臣が運転席を覗き込むと誰もいなかった。ただ、そこと助手席に同じタイプの小型インカムが置かれている。

 「コンテナの中には誰もいないわ。メンバーの数だけインカムが落ちているだけ。そっちは?」

 キャサリンの問い掛けに秀臣は、

 「こっちもいない。インカムだけ残っているのは同じだ」

 「僅かな時間であれだけの人数が消えるなんて……」

 「やはり、姫科研の仕業なのか? それとも孝恵か? だが、一体どうやって?」

 「トラックの回収は別班に任せたわ。とにかく私達は急いでここから離れましょう」

 「そうだな。クソッ!」

 2人は乗ってきた社用車で慌てて撤退した。

 「あいつら逃げますよ」

 「このまま見逃すのですか?」

 月明かりが照らす手塚邸の屋根の上で、2人の長身の女性が1人の男性に問い掛けた。3人とも濃紫色の忍び装束をまとって、目元だけ覆う仮面を装着している。

 「大丈夫。この世に〈夜風衆〉から逃げられる者などいない――だろ?」

 赤い仮面を着けた痩身で小柄な男性忍者――断風はそう言うと、忍び装束の上からでも分かる程グラマラスな2人のくノ一は頷いた。ちなみに、2人はそれぞれ白と青の仮面を着けている。

 「あの女が気になる」

 「秘書が、ですか?」

 「経歴は把握済みですが、特に変わった所は見られません」

 「でも、何か引っ掛かるんだ」

 「分かりました」

 「あなたがそうおっしゃるのなら」

 「あいつが何者なのか、徹底的に洗え」

 「「畏まりました」」

 2人のくノ一が頭を下げた直後、彼等はいなくなっていた。

 まるで一陣の夜風に搔き消された様に。

     ~ ☆ ~

 青年は目を覚ました。荘厳な大音声が鼓膜を激しく震わせたからだ。英語なので歌詞の意味は分からなかったが、聞き覚えがある歌だった。

 (これって『オペラ座の怪人』だよな?)

 数年前に付き合っていた恋人とアマゾネスプライムで観た映画のテーマ曲だと思い出した。

 次いで、甘ったるい香りが鼻孔をねっとり舐めているのに気付いた。

 (これって、アロマか? でも、リラックスじゃなくてムラムラしそう)

 そして、ようやく自身の異変に気付いた。

 衣服は全て剝ぎ取られており、口周りと背後に回された両手首が何かで締め付けられている。(さら)け出されていた股間を隠そうと慌てて両脚を閉じた。

 (オレはトラックのコンテナのドアの前で見張ってて、風が吹いた様な気がして……それから……どうなったんだ?)

 仲間と共に僅かな私語も交わさず待機していた事は覚えているが、記憶はそこでいきなり途切れていた。

 薄暗い周りを見回すと、目覚めた同僚や先輩達の口にはボールギャグが、後ろ手にされた両手首には黒革の手枷が()められ、発言と動作の自由が奪われていた。自身も同じ拘束を受けているのは間違いないだろう。

 尚、道具の名前を知っているのは、付き合っていた彼女と倦怠期になった時に通販で買ったからだ。ただし、いざ使おうとしたら彼女が激しく嫌がり、それが破局の決定的な原因になったが。

 更に見回すと、結婚披露宴会場の様に広くて内装は豪華だ。けれども、あちこちに三角木馬やX型磔台(はりつけだい)鋼鉄の処女(アイアンメイデン)、ファラリスの牛、等々の大掛かりな拷問道具が見える。ただし、彼は名前も用途も知らない。

 しかも、壁に沿って等間隔に人が立っていた。彼等は火が灯った蝋燭が立てられた三つ又の燭台を持っている。ところが、全員が全身ピッチリの黒いラバースーツに包まれている。顔も同じ素材の目出し帽を被り、首輪を嵌められ、口にはボールギャグを嚙まされていた。だらしなく弛んだ体のラインから40~50代の男性だと分かる。

 青年を始め誰もが「ここは何処だ? 誰がこんな事を?」と疑問を抱くが、球状の猿轡(さるぐつわ)で口を封じられているので、くぐもった(うめ)き声と(よだれ)を垂れ流す事しか出来なかった。

 テーマ曲がクライマックスを迎えた時、不意に天井から十数本のスポットライトが一斉に照射され、青年達を取り囲んだ。まるで彼等を閉じ込める鉄格子の様に。

 突然の光芒に眼が眩んだが、数秒かけて慣れた。その直後、驚きのあまり大きな呻き声を上げてしまった。

 照らし出されている十数人は、デザインと光沢がエロティックな漆黒のエナメルスーツを均整が取れた体に纏っており、見るからにSMの女王だった。

 全員が20代半ば前後と思われ、それぞれ異なるドミノマスクで美貌の上半分を隠し、手にした乗馬鞭を(もてあそ)んでいる。その仮面によって紅い美唇が、衣装によって美白の肢体がより妖艶に見える。

 その若き女王達が座っているのは、四つん這いになった人だった。全員が燭台役と同じ格好をしている。彼等と異なる点は首輪から伸びた鎖を女王が握って主従関係を強調していた。そして、燭台役と同年代の男性ばかりだ。

 そして曲が終わった時、凛とした美声が響き渡った。

 「ディシプリンパーティーにようこそ。(いや)しき愚か者ども」

 声がした方に視線を向けると、そこには舞台があり、やはり1本のスポットライトが降り注いだ。

 照らし出されたのは、同じくSMの女王だった。

 ただし、数十人の女王達と違って眼光と威圧感の凄まじさが段違いだ。

 コバルトブルーの眼が、漆黒のドミノマスクの奥で怪しく光っていた。更に黒い軍帽を被り、長く(つや)やかなブロンドをポニーテールにして、前髪を少し遊ばせている。黒くて光沢があるエナメルスーツは初雪の様な柔肌の美しさを際立たせていた。

 その彼女が座っている椅子の奴隷だけでなく、背凭(せもた)れや肘掛けとなって全身を支え、オットマンとなって組んだ美脚を背中で受け止めている奴隷もいた。その全員が女王に勝るとも劣らないプロポーションを持つ若い女性だった。勿論、美貌は目出し覆面に隠されて見えない。そして、形が良くて煽情的な口にボールギャグを嚙まされていた。

 軍帽を被った女王の姿が照らし出された瞬間、全ての女王が組んでいた美脚を揃えて立ち上がり、彼女に深々と頭を下げた。全裸で転がされている男達はSMプレイ未経験だが、女王が誰かに恭順の意を示すのは初めて見た。

 青年は聞き慣れない英単語を、記憶の引き出しを引っ搔き回してようやく見付けた。

 (確かディシプリンって『訓練』や『(しつけ)』って意味だったよな……まさか!)

 女王達の上に君臨する女王は、艶のある美声にして厳かな口調で伝えた。

 「置かれた状況とパーティーの名前から、もう気付いている者もいるだろうね。

  ここは訓練と調教と懲罰の為の宴。つまり、新人ミストレス達の訓練。

  そして、邪悪で汚らわしい愚か者どもへの調教と懲罰。

  今宵はこの3つを同時に行う」

 (オレ達を拉致して裸にひん剥いて縛り上げた挙句、ドMみたくフルボッコかよッ!?)

 青年達は抗議の声を上げた。しかし、ボールギャグに遮られて空しく呻き声になった。

 それを鼻で笑った青い眼の女王は、

 「一介の女子高生を就寝中に拉致しようと目論んだ、家畜以下の社畜どもに反論する権利も無ければ、人の言葉を話す資格も無いよ」

 (バレてるッ!? こいつ、何者なんだ!?)

 青年達は未遂に終わった犯行計画を他者から聞かされ、全身が強張って言葉が出なかった。

 「各自、1人のスレイヴを選んで首輪に鎖を付けなさい。まずは“御挨拶”の仕方から教えてあげるの。じっくりと、丁寧に、体だけでなく心にも深く刻み込む様に」

 当然、青年達は激しく抵抗した。けれども、重厚な造りの扉が開いて現れた、サングラスと黒スーツを身に着けた巨漢達に取り押さえられた。彼等は決して肥満ではなく、黒服の上からでも分かるぐらい鍛え抜かれていた。そんな筋肉の塊から生み出される剛力で押さえ付けられるのだから、呻き声を上げる以外に出来る事は無かった。

 青年は1人の巨漢に引きずられ、この宴を取り仕切る青い眼の女王の足元に連れてこられた。

 彼女は冷たい眼で見下ろしながら、

 「ようこそ、愚かで賤しくて哀れな社畜。

  私は(おおとり)琉魅香(るみか)

  真夜中の帝国にて、自身を(なぶ)り尽くすクイーン・オブ・クイーンズの名を憶えておきなさい」

 琉魅香女王は青年の首輪に鎖を付けると、

 「己の幸運を喜び、かつ不運を嘆くといい。熟練の女王達からも畏怖されている私自らが調教してあげるのだから。

  夜が明ける頃には、オナニーでザーメンまみれになったティッシュペーパーにも劣る粗大ゴミだと常に自覚する様になる」

 そう言って御馳走を目の前にした幼児みたいに目を輝かせて舌なめずりをした。

 青年は26歳の自身と同年代に見える女性に恐怖心を抱き、全身を激しく震わせた。実は数箇月後には17歳の誕生日を迎える女子高生だと見抜けていない。

 妖艶な黒き女王は新人女王達に言い放つ。

 「私が今からやって見せるプレイを手本として、ミストレスに相応しい技術と作法と威厳を習得しなさい。同時に、こいつらに己の存在の矮小さと罪深さを思い知らせておやり」

 こうして阿鼻叫喚(あびきょうかん)が渦巻く、苦痛と屈辱にまみれた狂宴が始まった。

     ~ ☆ ~

 ある女子高生は、今朝も自転車を漕いで駅に向かっていた。

 いつもの様に近道しようと、その駅の手前にある中央公園の中を走っていた時、視界の端に見慣れないものが入った。思わずブレーキを掛けて広場に視線を向ける。

 次の瞬間、眼を見開いたまま思考が停止した。あまりの事に悲鳴すら上げられない。

 しばらく呆然としていたが、やがて我に返ると慌ててスマートフォンを取り出して警察に通報した。

 そして、学年末テストで全教科赤点だった時以上にガックリと項垂(うなだ)れる。

 「マジ最悪ぅ~! 朝からメッチャど汚いもの見ちゃったよぉ~」

☆次回予告


詳子が主催の女子会は波乱の展開。

猛牛の如く暴走する黒ギャル。

問い詰め続ける赤いリーゼントの王子。

鉄子は食卓にて歓喜感激のあまり涙する。

第7話「海上のパジャマパーティー」


次回は、あーしとショタ子がサービス、サービスぅ!!

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