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第10話:我が名は藍采和

 「これで全ての点検作業が終了しました。お疲れ様でした」

 姫科研の若い女性所員は、相手が10歳も下なのに丁寧に頭を下げた。

 何故ならば、眼前の天才に畏敬の念と憧憬を抱いているからだ。

 「そちらこそ、お疲れ様でした」

 制服の上からローズレッドの白衣を羽織った詳子も深々と頭を下げた。

 「皆さんのお陰で(とどこお)りなく終わりました。本当にありがとうございました」

 すると、その場にいた所員達も詳子にお礼と労いの言葉を返した。ちなみに、異端科学部と同じく、それぞれ異なる白衣を着ている。

 ここは地下50メートル程にある巨大円形粒子加速器〈Hikobosi〉の制御室である。

 部活を休んだ詳子は、定期点検の最終工程に参加していたのだ。

 「今回は急遽(きゅうきょ)早朝からお呼びして申し訳ありませんでした」

 あらゆる地図記号がプリントされた白衣を着た女性所員が再び頭を下げると、詳子は穏やかな笑顔で、

 「お気になさらないで下さい。主任が急性虫垂炎で緊急入院なんて誰も予想出来ませんよ。私で良ければ、いつでもお呼び下さい。微力ながらお手伝いさせて戴きます」

 「ありがとうございます。

  ……そうそう、先程、曳津島(ひくつしま)博士から連絡がありました。『検査結果は全員異常無し。今からお返しします』との事です」

 「そうですか。予定通り間に合って良かった」

 「今夜はパジャマパーティーなんでしょ。やっぱり、人手は多い方がいいですよね」

 「そうですね。今回も厄介なあいつがいるだろうから……」

 「……あぁ、あの彼女ですか。以前、わたしも……色々大変ですね」

 女性所員は心底同情していた。そして、詳子を気遣って話題を変える。

 「そう言えば、〈ガラテア計画〉は順調みたいですね」

 「お陰様で。実用化までもうすぐです」

 「それは良かったです。

  ところで、夜にはまだ時間がありますが、これからどうするつもりですか?」

 「そろそろ部活が終わる頃ですから、顔は出さず準備に向かいます。それぞれの迎えのヘリはメイド達に任せているので、私がやる事は大してありませんが。では、お先に失礼します」

 そう言って制御室を出た。足早に長い廊下を進む途中、所員と何度も擦れ違った。尊敬や羨望の視線を送ってくる人もいれば、あからさまに嫉妬や憎悪の視線を叩き付けてくる者もいる。彼女にとって幼少の頃からなので、どちらも慣れている。

 そして、1人でエレベーターに乗り込む。長い静寂の末、ようやく地上に着くとドアが開いた。

 足を踏み出すと、そこは三方が壁で覆われている完全な密室だった。

 しかし、詳子は慣れた様子でUGを操作する。次の瞬間、正面の壁がスライドした。密室から出ると、見慣れた部室の正面出入口フロアだった。

 詳子の背後で壁が音も無くスライドして閉じる。そこは隠し扉があるとは思えない外観だった。

 (……奥が騒がしいな。JAマシンの実験が盛り上がって、まだ終わっていないのか? それとも――)

 自身の勘は「行くべきだ」と囁いている。

 詳子はそれに従い、第二実験室に向かって歩き始めた。

      ~ ☆ ~

 「イイねぇ~。〈ミョルニルレイン〉も絶好調だ。バキバキに絶望してるだろうなぁ」

 セカンドバトル後の覇征は、ファーストバトル後と違って機嫌が良くなっていた。

 「調子に乗るなよ、新人。またフルボッコのオーバーキルしてレベルの違いってヤツを思い知らせてやる」

 そんな浮かれている覇征を睨み付けている透流は、

 (お前こそ調子に乗るなよ。いつか必ずメイド全員でフルボッコのオーバーキルしてレベルの違いってヤツを思い知らせてやる)

      ~ ☆ ~

 ファイナルバトル開始早々、鉄子の胸にポォが止まった。

 その瞬間、彼女の脳内に玉虫色のロボットの顔が浮かんだ。そして、昨夜の雄姿が次々に甦ると、胸が熱くなって全身に力が(みなぎ)ってくるのを感じた。

 すると、鉄子の両肩と腰に巻かれていたベルトが勝手に外れた。

 「まさか、ポォもサイコキネシスが使えるのかッ!?」

 電馬達が驚く中、鉄子は玉虫色のロボットと同じく、両手を頭上に掲げて何かを捧げる――もしくは、授かる仕草をした。そのまま胸元に下すと、両手を素早く交差させた。

 その直後、まるで鳳蝶(アゲハチョウ)が羽化する様に、徹子の背中からエメラルドグリーンに輝く光の翅が広がり、額から光の触角が突き出た。その変化はディスプレイの中のアイにも起こっている。

 そして、鉄子はフィギュアスケートの一流選手みたいに高く跳んで高速回転した。アイも同じジャンプとスピンを見せる。しかも、どちらもいつまで経っても降りてこないし止まらない。

 だが、驚くべき事はこれだけではなかった。

 「一体、何をして……ライフが全く減らない!?」

 ラストの動作からインビジブルスモッグを放っているのは明らかだ。しかし、ライフゲージと必殺技ゲージに変化は無かった。

 「こんな技、初めて見た。裏ワザか? それとも……」

 鉄子がゲーム自体に干渉していないのは明白。しかも、他の部員達もチート行為に手を染めていない。

 誰もが驚きの余り言葉を失い、電馬は空中で高速回転を続けている彼女を凝視して呟く。

 「……まさか、これもポォの力なのか? それとも……」

     ~ ☆ ~

 「インビジブルスモッグが効かないだとぉッ!?」

 それどころか、ラストは攻撃を喰らった様に体勢を崩した。しかも、ライフゲージが激減している。

 「スモッグが跳ね返されたのかッ!? それに何だこの羽とスピンは!? まさか、チート技を使ってんじゃねーだろうな? クソ卑怯ヤローがッ!」

 (ブーメラン上手いな)

 取り乱して喚き叫ぶ覇征を見て、透流は笑いを堪えるのに必死だった。

 覇征は怒りを込めてコントローラーを操作する。

 「だったら、動けなくしてやるッ!」

 ラストは突き出した両手からリング状の光線を放った。それがアイに命中すると回転が止まって隙だらけに――なる筈だった。

 複数の光のリングがアイの全身を緊縛した。けれども、回転が止まったのはほんの一瞬で、すぐに再開するとそれらは千切れ飛んだ。

 「ウソだろッ!? 〈バインディングリング〉が全然効かない。何でだッ!?」

 覇征は怒りが頂点に達した。

 「そうかよ。だったら、これでも喰らえッ! 覇王大帝(オレさま)電撃(いかり)をなッ!!」

     ~ ☆ ~

 まだ回転しているアイにミョルニルレインが降り注いだ。

 ところが、緑の竜巻と化している彼女は幾条もの稲妻を尽く弾き飛ばす。

 それを何発も浴びたラストは再び体勢を崩した。

 その時、アイの必殺技ゲージが満タンになった。すかさず回転を止め、シャドウストームを放つ。

 難攻不落の強敵だったラストは、開始早々敢え無く敗北した。1分以内で終わったので、文字通り秒殺だ。

 ディスプレイに「YOU WIN!!」の文字が出現し、続いてアイの勝利宣言が映し出された時、鉄子はようやく回転を止めてゆっくり着地した。その瞬間、光の翅と触角が消えた。ポォも胸から離れて左肩に移っている。

 ヘルメットを脱いで両眼が露わになると、光彩がルビーレッドになっていた。

 しかし、それも一瞬の事で、すぐにトパーズイエローに、そしてサファイアブルーへと変化し、元の色に戻った。

 「部長、仇を討ちましたよ」

 鉄子は自身の変化に気付かず、電馬に向かってサムズアップする。

 「あぁ……う、うん。あ、ありがとう」

 その笑顔と仕草に心を射抜かれた電馬は、返答が僅かに遅れた。しかも、不自然なぐらいぎこちない。

 けれども、その様子を見たのは鉄子以外の部員達がだった。彼女はそのまま他の部員達にもサムズアップしていたので気付かない。

 そんな彼等は2人に聞こえない様にコソコソ話した。

 「ありゃりゃ、部長はますます惚れたみたいだ」

 「イイとこ見せようとしたら、逆にイイとこ見せ付けられたって感じだな」

 「しかも、後半は部長の出る幕、全然無かったな」

 「チーターもヤバかったけど、ポォの助太刀はもっとヤバいって」

 「だな。まさか、翅と触角が生えて宙に浮くなんて……」

 「後で映像を確認だな」

 「私も見たいな」

 詳子が割って入ってきた。

 「いつの間に!? 今日は休みじゃなかったのかい?」

 電馬が驚きの声を上げると詳子は、

 「予定より早く終わったので寄ったのですが、我ながらとても運が良い。まさか、虫好きのテッコ君自身が羽化するとは」

 そして、タータンチェックの白衣を着た女子の先輩から、預けていた眼鏡を受け取って鉄子に話し掛けた。

 「体調はどうかな?」

 「特に変わりません。でも……」

 「でも?」

 「まさか、飛べるなんてッ!! 今でも信じられません!」

 鉄子は今迄に無い程テンションが上がりまくっていた。

 「そうだね。事実、君は飛んだ。あたかも妖精の如く」

 そう言うと詳子はスマーフォンで撮影した動画を見せた。

 「……ほ、ほんとに、私、飛んでるゥゥゥッ!!」

 鉄子はその場で飛び跳ねた。文字通り狂喜乱舞している。

 「自分でも信じられなくて。ポォが胸に止まった時から変な感じになって……」

 「あのロボットと同じ戦闘前の動作をしていたが」

 「あれも自然に出て――ポォがくっ付いた時、あのロボットの顔や戦っていた光景が重い浮かんだんです。すると、体の奥から力が湧き上がって全身に(みなぎ)って(あふ)れ出す感じがして」

 「成程ね。今すぐ君を調べたいな」

 「……もしかして、解剖ですか?」

 鉄子は興奮が一気に冷めて後ずさりする。

 「私はしないよ。専門外だからね」

 「『私は』って、じゃあ、ショタ子先輩以外の誰かがするって事じゃないですか!」

 「気付かれたか」

 「おいおい、怖がらせたらダメだよ。

  手塚君も安心して。ここも姫科研もマッドサイエンティストばかりだけど、見境無く生きたまま解剖する人はいないから」

 電馬が詳子を窘め、鉄子を宥める。

 「ほんとですか?」

 鉄子はいまいち信じていない。

 「OBやOGの伝説は色々聞きましたよ」

 「あぁ……いや、大丈夫。後輩に手を出す訳が無いから」

 「安心したまえ。予定通り身体検査はするが、それ以上の事はしない」

 元々、明日は新入部員達を連れて姫科研へ見学に行く予定だ。その上、ポォの調査と鉄子の身体検査が急遽追加された。その事は鉄子を含めた全部員に通知している。

 詳子の説明に鉄子は頷いた。

 「分かりました。先輩を信じます」

 その横では電馬が「僕は信じてくれないの?」と言わんばかりの表情を浮かべていた。

 それを見た他の部員達は気まずそうに沈黙している。

     ~ ☆ ~

 「分かりました。風汰党に伝えておきます」

 怒り狂った覇征の命令を受けた透流は(うやうや)しく頭を下げた。

 彼はチート行為に協力させたプログラマーへの脅しのネタを、ネットに上げて広める様に言ったのだ。完全に逆恨みである。

 「面白くねーッ!!……何をしてる。さっさと他のゲームに変えろ!」

 不機嫌極まりない覇征は少し考えてから、

 「そうだ。『タロスマキア』にしろ。どいつもこいつも|覇王大帝(オレさま)の最強無敵不敗タロスでギッタギタのメッタメタのバッコバコにしてやるッ!」

 命じられた透流は「自分より弱いプレイヤーに八つ当たりかよ。ダッセーな」と嘲笑したい衝動を抑え、ポーカーフェイスを保ったままタブレットを操作した。

 数十秒後、3面のディスプレイには中世ヨーロッパ風の市街地が映し出された。大通りには人間の騎士や魔法使いだけでなく、エルフの精霊使いや獣人の戦士等も歩いている。

 ただし、道行く馬車馬の中には鋼鉄製の馬が少なくない。しかも、街の中心には駅があり、黒光りする蒸気機関車が走っていた。更に、港には外輪式蒸気船が停泊している。

 剣と魔法と蒸気機関の世界――それが『タロスマキア』の世界観だった。

 けれども、石炭は使われていない。魔法使いの魔力と呪文に反応して高熱を発する炎晶石を設置した魔法陣で術式を展開し、タンク内の大量の水を熱して発生させた蒸気で動く仕組みだ。その為、装置から黒煙が噴き上がる事は無い。

 宿屋から駅がある広場に出た覇征のキャラクターは魔法戦士だった。頭上に〈覇王大帝 Lv.88〉と表示されている。身長は190センチメートル近くあり、鍛え上げた肉体を高価なハープレートアーマーで覆っている。精悍(せいかん)な風顔で、無精髭がダンディーな印象を与える。まるで筋肉質な阿部寛みたいだ。

 透流は呆れた口調で、

 「やっぱり、キャラの外見を変える気は無いのですね」

 「変える? オレそっくりに作ったのに?」

 「御自身では、こう見えてらっしゃる?」

 「どういう意味だ?」

 「これが認知の歪みってヤツかぁ」

 「何が歪んでるって?」

 「いつでも阿部寛に謝罪出来る様に心の準備をしておいて下さい。菓子折りと弁護士はこちらで用意しておきます」

 「何でだよ!? お前って、時々ワケわかんねーコト言うよな」

 覇征は理解出来なかったが、深く考えずにゲームを進める。

 ちなみに、『タロスマキア』の運営に属する人達の弱みはまだ1つも握れていない。

 しかも、プレイヤーキルや略奪行為を犯した瞬間、唐突に出現したNPCの警備隊に包囲され、一定期間刑務所に収監されてしまう。当然、牢屋の中を歩き回るしか出来なくなる。もし、運良く彼等の包囲や追跡から逃れられたとしても、逮捕されるまで指名手配され続ける。その上、賞金稼ぎと化したプレイヤー達も追ってくるので逃げ切る事は不可能だった。

 そして、チート行為が確認されると即座に出禁処分が下り、一生アクセス不可となる。

 従って真面目にプレイするしかないのだが、根っからの腐れ外道な覇征は場外プレイスタイルを変えなかった。

 十数人ものプレイヤーの素性を風汰党に突き止めさせ、弱みを握って脅して手下にし、モンスター相手の戦闘ではタンクやデコイを押し付けて捨て駒にし、獲得した金品やレアアイテムを残さず譲渡させ、重要な情報を独り占めした。

 そうした動きは他のプレイヤー達にも周知され、いつしか極悪クラン〈邪悪帝王軍〉と呼ばれ、誰からも軽蔑と嫌悪されるに至った。

 そんな評判を屁とも思わない覇征はランキング一覧を見て、

 「ここにもカミナリジジイとライペガがいるな。チッ、また上位かよ。

  で、1位は……って、またコイツかよ! 名前は……貧乳、読めるか?」

 「いえ、読めません。検索してみます」

 「チッ、使えねーな。

  いつもランキングトップだし、名前はムズいし、綽名が“藍色の悪魔”ってカッコ良過ぎるし、気に喰わねーな。まぁ、ここ以外で見かけないから、何処にでもいるカミナリジジイやライペガに較べたらまだマシだけどな」

 「分かりました。『藍采和(らんさいか)』と読みます。中国の仙人だそうです」

 「仙人だぁ? じゃあ、こいつもジジイか」

 「うーん。どうもそうじゃないらしくて――」

 「まぁ、どーでもいい」

 覇征は覇王大帝を駅前にそびえ立つコロッセオに向かわせた。それはローマにある実物より豪華で荘厳な造りだった。

 「もし出喰わしても、さっきのライペガみたいにブチ負かしゃーいいだろ」

 (またボロ負けしちゃえ!)

 二度目の敗北を願っている事を、透流はおくびにも出さなかった。

     ~ ☆ ~

 「追撃すべきだと考えます」

 詳子が電馬に進言した。

 「奴はオンライゲームで初めての敗北を味わいました」

 彼女は自身のスマートフォンの画面を見せた。そこには、覇王大帝の初黒星を目の当たりにした感想で溢れていた。誰もが勝者のテッコを誉め称えると同時に、覇王大帝を嘲笑し、煽り、揶揄(からか)っている。

 尚、アイの反撃方法に関しても盛り上がり、あちこちから「テッコってヤツもチーターでは?」と疑う者も少なくなかった。しかし、詳子が「我が異端科学部の部員です」と打ち込んだ瞬間、疑惑も非難も止まった。

 「つまり、ダメ押しして敗北感を更に与えろ、と」

 電馬の言葉に詳子は頷く。

 「現状でも耐えがたいのに、同じ日に2連敗ともなれば、完全にネット民のオモチャに成り下がります。奴にとってこれ以上の屈辱はなく、オンラインゲームにトラウマを抱くかと。これ以上の被害者を増やさない為にも、水に落ちた狂犬は打つべきです」

 「でも、奴は君の……いや、何でもない」

 首を横に振った電馬はキーボードを操作し、覇王大帝のアンチ達が運営しているサイトを覗いた。

 『断頭台同盟』と題されたサイトでは、覇王大帝のチート行為の被害者達により、その時の状況が大量に書き込まれていた。そして、彼が一度でもプレイした事があるオンラインゲームのタイトル一覧表があった。

 「奴は憂さ晴らしと八つ当たりを目論んで、違うゲームに移っている筈です」

 「また挌ゲーかな?」

 「シミュレーションとスポーツ関連は1つも無いな」

 「直接ボコすのが好きなんじゃ?」

 「だったら、アクション関連だな」

 部員達が話し合う中、ポォが「リィィィン」と一鳴きした。

 その瞬間、鉄子が眼を見開いてゲームタイトルの1つを指差した。

 「これです!」

 「な、何で?」

 驚く電馬達に鉄子が答える。

 「何で、って……何でこれを指したんだろう? でも、ポォが教えてくれた様な気がして……」

 指し示されたタイトルを詳子が読み上げる。

 「『タロスマキア』……MMORPGだが、あり得るな」

 「そうか! タロスファイトだ!」

 納得した電馬がキーボードを操作し、早速プレイを始めた。

 彼自身のアバターは、引き締まった肉体とそれを包むハーフプレートから歴戦の戦士だと分かる。プレイヤー名は当然、ライトニングペガサス。そして、レベルは81だった。

 「心当たりがあるんですね?」

 鉄子が尋ねると、電馬はライトニングペガサスを宿屋からコロッセオに走らせながら、

 「このゲームは普通のRPGみたいに剣と魔法でモンスターを倒すだけでなく、蒸気機関で動く巨大ロボット・タロスを操縦してモンスターや他のプレイヤーのタロスと戦えるんだ」

 「この前、言ってましたね」

 「街の外で戦う以外に、どの街にもあるコロッセオでプレイヤー同士、または互いのタロス同士で戦えるんだ。互いの所持アイテムを賭けたり、優勝賞品がある大会に出場したりね。そして、観客も賭けに参加出来る」

 「じゃあ、あいつはコロッセオで他のプレイヤーをボコボコに八つ当たりして、私に負けたイライラを解消する、と?」

 「きっとそうだよ。ただ、この街にいるかは分からない。頼む、いてくれよ」

 ライトニングペガサスはコロッセオの入場係に料金を払って一般観客席に向かった。そこは9割ぐらい埋まっており、熱気に包まれている。

 闘技場では、既に試合が始まっていた。

 10メートル近い武骨なデザインのタロス同士が殴り合っている。どちらも機体のあちこちこから蒸気が噴き出し、駆動音が轟いている。

 激闘の末、片方が倒れて全く動かなくなった。

 すると、もう片方の勝利を宣告するアナウンスが流れた。

 それを聞いた観客の半分は歓声を上げ、もう半分は落胆した。そして、最後まで立っていたタロスが勝利宣言のポーズを決めている。

 けれども、すぐに『挑戦者、入場!』とアナウンスが響いた。

 入場門から現れたのは、黒い機体だった。

 『マスターは覇王大帝! タロスはロードカイザー!』

 その直後、観客席から激しいブーイングが巻き起こった。相当な嫌われようだ。

 「良し! ここだったか」

 電馬が小さくガッツポーズをする横で、鉄子が首を傾げる。

 「ロードカイザー――道路の皇帝?」

 すると詳子がスマートフォンを操作しながら、

 「いや、『君主』の『lord』だろう」

 「じゃあ、『君主皇帝』ですか? でも、それだと意味が重複してませんか?」

 「そもそも、覇王大帝も重複している。

  英語で覇王は『Over lord』、大帝は『Great Emperor』なのだが、恐らく名付けた本人は大帝を『Great Kaiser』と勘違いしたまま2つを組み合わせてロードカイザーにしたと考えられる」

 「学もセンスも無いですね……って、覇王、大帝……もしかして、こいつって大帝院グループの跡取り息子じゃないですか?」

 鉄子が呟くと、詳子と電馬は一斉に彼女を見た。

 「どうしてそう思ったのかな?」

 詳子に訊かれた鉄子が答える。

 「章子から聞いたんです。大帝院の長男は名前に覇王の覇が付く、って。だから……いや、きっと気の所為ですね。大金持ちの跡継ぎがこんな事してる筈ないし」

 (いや、それが、してるんだよねぇ)

 電馬はそう言いそうになったが、今回は口を滑らさずに済んだ。

 観客達から罵声と帰れコールを浴びているロードカイザーは、武骨な全身は黒く、黄金で造られたライオン像の頭部が填め込まれている。だが、(たてがみ)は赤い。更に、両肩と両膝にはドリルが備わっていた。パワー主体の機体だと窺える。

 「マジンガーZとガオガイガーを足した様なデザインだな」

 「完全にパクリだ。センスも倫理も順法精神も無いな」

 「永井豪と東映とサンライズにとっちめられろ」

 「著作権違反で逮捕されてしまえ」

 ほかの部員達からも嫌悪感が洩れ出ている。

 尚、ロードカイザーの左肩には幾何学模様が描かれていた。機体の何処かにパーソナルマークを書き込むのが流行っており、肩か胸が多い。

 誰もが、その紋章――

 逆三角形の3辺の真ん中を結んで正三角形を描く。

 それぞれ3つの頂点を結んで二重の正円を描く。

 6つの頂点から正三角形の中心に向かって線を引く。

 ――に見覚えがあった。

 「露出プレイのネットニュースで大帝院グループのビルが出た時、エントランスの前に置かれてた石の看板にこれがありました!」

 鉄子が指差して声を上げると、詳子は「それは社名碑だね」と名称を教えながらスマートフォンの画面を見せた。

 「これの事だろう?」

 そこには鉄子の言う通り、社名碑には文字通り社名が、そしてロードカイザーのパーソナルマーク――グループの社章が刻み込まれていた。

 「そうです。じゃあ、こいつはやっぱり跡取り息子!?」

 「恐らくね。見事な推理だよ」

 詳子が誉めた時、勝敗は早くも決していた。

 ただし、それは試合と言うよりも一方的な蹂躙(じゅうりん)だった。

 殴り掛かったタロスは、ロードカイザーのライオンの口から噴射された火炎をまともに浴びてしまい、怯んで身動きが取れなくなった。

 すかさず飛んできた、炎を纏いながら高速回転するロケットパンチを顔面と右胸に喰らってよろめく。

 その隙を突き、鎖が繋がった鉄拳を回収しながら稲妻を帯びたドリルのニーキックで腹部を貫く。

 態勢を大きく崩すや否や、背中から引き抜いたバスタードソードを右腕の付け根から斬り飛ばす。更に転倒すると、すかさず左大腿部に剣を突き立てる。グリグリと捻じ込むと左脚が斬り離された。

 タロスは右足で蹴飛ばそうとしたが躱される。しかも、左のロケットパンチで膝を潰され、そこから下が千切れ飛んだ。

 だが、タロスのマスターはまだ戦意を失っていなかった。残った左手で腰からダガーを引き抜いて斬り付ける。

 その闘志に観客達は熱い声援を送った。同時に、ロードカイザーに罵声を叩き付ける。

 ロードカイザーは悠々と刃を躱すと、素早く左手首を掴み、そのまま握り潰した。

 ダガーを握った左手が地面に落ちるより早く、残った左腕で殴り掛かった――が、それより早く踏み付けられた。肘関節に負担が掛かって前腕部が千切れる。追い打ちとばかりに、左上腕部も付け根から斬り離す。

 ロードカイザーは四肢を失ったタロスを何度も踏みにじる。胸や腹だけでなく顔面も。客席から悲鳴が上がり、怒声が浴びせられたが意に介さない。

 長い凌辱の末、ようやく首を刎ねた。

 斬り離した頭部を高く掲げたロードカイザーの勝利が宣告されると、観客達から試合前以上のブーイングが湧き上がった。覇王大帝はコックピットから出ると、その左肩に立った。そして、大破したタロスと観客達に向かって両手の中指を立てて挑発した。

 「奴は魔法戦士らしい。手強いな」

 電馬は扇子で自らの首筋を叩きながら呟いた。

 「レベルも技量も差があるし、僕でも勝てるかどうか……」

 他の部員達は、電馬が戦わない理由を察していた。

 (これ以上、負けるところをテッコに見せたくないんだろうな)

 「他に自信がある人は?」

 鉄子が他の部員達を見回すと、「ぼくも勝てる気がしない」と「そもそも、このゲームをやってない」に二分された。

 「残念だが、私も未プレイだ」

 スマートフォンを操作し終えた詳子も後者だと告げた。

 その時、『挑戦者、入場』のアナウンスが響き渡った。

 入場門から現れたタロスを見た観客達は、一斉に大歓声を発して盛り上がった。

 藍色の機体は、甲冑を纏った戦国武将を思わせるデザインだった。

 両腰に打刀と脇差を、背中に野太刀を2本差している。兜の装飾である三日月を模した鍬形(くわがた)から一角馬(ユニコーン)の如く刀身が突き出ていた。黒のバイザーに覆われた両眼は見えない。

 そして、左肩にはパーソナルマークとして太陽と瓢箪(ヒョウタン)が真紅で描かれていた。

 このゲームで和風のデザインを使うのは可能だが、中世ヨーロッパ風の世界観に合わせるプレイヤーが多く、周りから浮くのを承知で実装するプレイヤーはかなり少ない。

 「この人、そんなに有名なんですか?」

 観客達の盛り上がりを目の当たりにした鉄子に訊かれた電馬は、

 「とても有名だよ。間違いなく、このゲームで最強の魔法戦士にして最強のプレイヤーだ。

  ――ようこそ、〈藍色の天使〉」

 入場する藍色のタロスの左肩に操縦者(マスター)が立っていた。

 「江戸時代の子供?」

 鉄子の言う通り、10歳ぐらいの少年だった。

 着こなした小袖、袴、羽織、手甲、脚絆(きゃはん)、足袋は全て藍色。履いているのは黒塗りの下駄で、鼻緒は濃紫色。一見するとポニーテールに見えるが、侍らしい茶筅髷(ちゃせんまげ)

 彼のタロスと同じく、この世界では珍しい純和風の服装だ。

 ただし、黒兎を模したドミノマスクで顔の上半分を隠している。

 そして、頭上にはプレイヤー名とレベルが表示されているが――

     ~ ☆ ~

 「こいつがランサイカってヤツか! カンストしてるじゃねーか!」

 〈Lv.99〉の表示を見た覇征は、先程得た勝利の喜びを忘れ、驚き焦っている。

 「しかも、ジジイじゃねぇ!?」

 「藍采和は少年の姿をしている仙人だと言われています」

 透流が言うと覇征は声を荒らげて、

 「んなコト全然言ってなかっただろがッ!」

 「はぁ? 私が説明する前に『どーでもいい』って聞き流したんでしょうが。違いますか?」

 「うぅっ……んなコト今はそれこそどーでもいいッ!」

 透流の迫力に気圧された覇征は一瞬怯んだが、すぐに誤魔化した。

 「フゴッ! とにかく、あの“藍色の悪魔”が出てきたんだ。コイツを倒したらオレが最強、ってワケだろ。やってやろうじゃねーかッ!!」

      ~ ☆ ~

 『マスターは藍采和。タロス七星剣(しちせいけん)

 アナウンスが少年とタロスの名前を告げると、観客達は更に沸き上がった。

 それに対して彼は丁寧に一礼すると、コックピットに乗り込んだ。覇王大帝も七星剣に向かって中指を立てて挑発してから乗り込む。

 「名前通り、全身が剣と刀だらけですね。ところで、さっきの綽名は何ですか?」

 鉄子が訊くと、答えようとした電馬より先に詳子が説明を始めた。

 「彼は常に単独で行動しているが、通りすがりに困っているプレイヤーがいれば必ず全力で助け、お礼を一切受け取らない事から“藍色の天使”と呼ばれ、畏敬の念を抱かれている。

  一方で、他害行為に対しては容赦無く攻撃・殲滅する事から“藍色の悪魔”とも呼ばれ、悪質なプレイヤー達から恐れられている」

 何故か、その口調は誇らしそうに聞こえた。

 「プレイした事が無いのに詳しいですね」

 「噂だよ。そんな私が耳にしたぐらいだから、かなり有名なのだろうね」

 『タロスファイト・レディー・ゴー!!』

 試合が始まった。

 先に動いたのはロードカイザーだった。一気に間合いを詰め、バスタードソードで斬り掛かる。

 しかし、七星剣は右手で素早く抜き払った打刀で受け止めた。両腕で振り下ろした剣で押しているのに、片手で握った刀は微動だにしない。

 そんな鍔迫り合いの最中(さなか)、七星剣は左手で脇差を抜き払う。

 ロードカイザーは慌てて退いたが、刃は腹部を少し斬り裂いた。その直後、ライオンの口から炎が吹き出た。

 鍔迫り合いの最中に火炎攻撃を仕掛ける戦術だったのだろう。ところが、藍采和の判断の方が一瞬だが早かった。

 「どちらも強いな」

 電馬が唸る様に呟いた。ハイレベル同士の戦いを目の当たりにして語彙力を失った様だ。

 離れたロードカイザーは稲妻を纏って高速回転するロケットパンチを放った。

 けれども、それは容易(たやす)く剣身で喰い止められた。

 ただし、防いだのは打刀でも脇差でなければ、甲冑に装備された刃でもない。

     ~ ☆ ~

 「な、何だ、これはッ!?」

 覇征は予想外の防御に狼狽えた。

 「何でファンネルが使えるんだッ!?」

     ~ ☆ ~

 「剣が……」

 鉄子は、唐突に何処からともなく飛来した7本のショートソードが、七星剣の前で剣身を重ねてロケットパンチを弾き返した光景に言葉を失った。

 「ファンネルビットか!?」

 電馬が驚きの声を上げるが、鉄子はガンダムの知識は皆無なので何を言っているか全く分からない。

 「いや、ファンネル――漏斗(じょうご)と言うよりも、ソードビットですね」

 詳子が言うと、他の部員達からも「言われてみれば」「確かに」等と賛同の声が上がった。

 「7本のソードビットを操る、全身が刀剣だらけのタロス――確かに、七星剣の名に相応しい」

 そう呟く電馬に鉄子が尋ねる。

 「これも蒸気機関で動いてるんですか?」

 「違うよ。これは魔法だ。ビット攻撃は仕様にあると聞いていたけど、大量の魔力と幾つもの高度な術式が必要だから使うプレイヤーはいない。

  ――いや、いなかった、と言うべきかな」

 「恐らく、彼が最初のプレイヤーだろうね」

 電馬の説明を補足した詳子は、やはり誇らしげだった。

     ~ ☆ ~

 「クソガキャぁぁぁォツ!」

 (それはお前の事だろ、こどおじ)

 透流が心の中で毒づく。

 「けどな、ファンネルが使えるからって勝てるとは限らねーんだよぉッ!」

 ロケットパンチを回収したロードカイザーは炎を放った。しかし、これもソードファンネルで防がれてしまう。

 「だったら、オレ俺もだ。使えるのが、てめーだけと思うなッ!――バルキリーどもッ!」

 覇王大帝の怒号が闘技場に反響(こだま)した次の瞬間、上空から無数の影が急降下してきた。

 しかし、七星剣と全てのソードビットは辛くも避ける。

 その影達はロードカイザーに集まり、周囲でホバリングした。

 それら9体は鋼鉄で造られた鷹だった。

     ~ ☆ ~

 「あれもビットですか!?」

 鉄子の疑問に電馬は、

 「多分……見た事無いけど」

 「七星剣がソードタイプなら、向こうはホークタイプか」

 詳子は興味深そうに呟いた。

 「9羽いるからヴァルキリー……浅学非才無知蒙昧にしては洒落たネーミングだな」

 戦乙女の名を持つホークビット達は、一斉に甲高く()くと突っ込んできた。

 同時にソードビットも急加速して突進する。

 7本の剣と9羽の鷹が何度もぶつかり合う。

 ――いや、うち2羽は七星剣を急襲した。

 だが、七星剣は右手の打刀をその場に突き立て、素早く脇差を抜いた。短刀二刀流で2羽を迎え撃つ。

 「これじゃ藍采和が負けてしま――」

 「それはない」

 鉄子の不安を詳子が毅然と断ち切った。

 「どうしてですか? 剣は全て鷹と戦っていて七星剣を庇えず、残りの2羽に七星剣は手も足も出ない。そして、ロードカイザーは余裕で鷹を操っていて、誰からも攻撃を受けていない。このままでは――」

 「落ち着いて、よく見るんだ」

 詳子に言われ、改めて見るが、戦況は明らかに七星剣が不利――

 「――あれ? おかしくないですか?」

 「何がかな?」

 電馬が訊くと鉄子は、

 「ロードカイザーはその場から一歩も動いていません」

 「そりゃあ、ビットを操っているからね。特にこれだけの数を動かすのは、かなりの腕前と大量の魔力が必要だから」

 「でも、七星剣は2羽の鷹と戦っています。7本の剣を戦わせながら」

 「えっ!?」

 「自分が戦いながら操作するって、このゲームでは簡単な事なんですか?」 

 鉄子に指摘された電馬は眼を見開いた。

 「いや、簡単じゃない。でも、ビットの数は向こうが……けど、そんな事はあり得ない……が……」

     ~ ☆ ~

 「ぶひっげろげろっ! 手も足も出ない様だなぁぁぁッ!」

 覇征は勝利を確信していた。

 次の瞬間までは――

 ソードビットが次々にホークビットの胴体を貫き、地面に串刺しにする。

 「オレのホークファンネルがぁぁぁッ! 何でだッ!?」

 覇征は敗因が全く分からなかった。

 実はホークビットとソードビットの飛行速度はほぼ同じだが、後者の方が小回りが利いていたのだ。機動性の差が勝敗を決めた。

 そして、七星剣も見事な刀捌きで2羽のホークビットを立て続けに叩き斬った。

 丸腰になったロードカイザーに、両手の脇差を納めた七星剣は突き立てていた打刀を引き抜いて構える。

 「……お、おいおい、ウソだろぉ!?」

 覇征は慌ててロードカイザーにロケットパンチを射出させようとした。

 その直後、ロードカイザーの両腕が飛んだ。

 「へ!?」

 予想外の事態に、覇征は思わず間抜けな声を洩らしてしまった。

 両腕は付け根から斬り落とされていた。先程のタロスみたいに。

 地面に突き立っているのは、2本のロングソードだった。

     ~ ☆ ~

 「ビットはショートソードタイプ以外にロングソードタイプもあったのかッ!?」

 驚愕する電馬に鉄子が、

 「まだ5本あります!」

 彼女の言う通り、ロードカイザーの頭上では5本のロングソードビットが、獲物を狙う鷲の如くゆっくり旋回している。

 そのうちの2本が急降下すると、両脚の太腿に突き刺さり、その勢いのまま地面に突き立った。その衝撃で両脚は切り離される。

 地響きを立てて転倒したロードカイザーは、激しく機体をよじり、炎を噴射した。けれども、無駄な悪足掻(わるあが)きに過ぎなかった。

 七星剣が親指を下に向けると、1本のロングソードビットが急降下し、ライオンの口内に突き刺さる。その直後、爆発してその顔がビットごと吹っ飛んだ。

 最後に2本のロングソードビットが、両肩の断面に突き刺さり、そのまま持ち上げた。胴体が地面に対して垂直になると、磔にされた罪人に見えた。

 その間、七星剣は歩を進めており、無残な姿を晒しているロードカイザーに近付いていた。

 バイザーの奥で両眼がオレンジ色に光る。すると、右手の打刀の青白い刀身が幾条の紫電を纏い、強く光を放ち始めた。

 丁度良い間合いに来た時、その刀が一閃――ロードカイザーの頭部が空高く飛んだ。

 間髪入れず背中から引き抜いた野太刀を真っ向から振り下ろす。その長大な刀身も眩いばかりに発光していた。

 一瞬間を置いて、宙を舞う頭部と残った胴体は真っ二つになって地面に落ちた。

 『勝者――藍采和の七星剣!!』

 勝利宣告のアナウンスが響き渡ると、客席から怒涛の様な大歓声が湧き上がった。

 部室でも同じく部員達が狂喜乱舞している。

 誰もが熱狂している中、詳子はドラララインで文章を送った。

 『ありがとう。私の守護天使君』

 返信がすぐに来た。

 『こちらこそ、いつもありがとうございます。僕の守護女神様』

 それを読んだ詳子は、誰にも見せた事が無い、普段の理系クールビューティーとは程遠い笑みを浮かべた。

☆次回予告


詳子が主催する女子会は波乱の展開。

猛牛の如く暴走する黒ギャル。

そして、赤いリーゼントの王子。

鉄子はこのカオスを乗り越えられるのか?

第11話「海上のパジャマパーティー」


「次回は、あーしとショタ子がサービス、サービスぅ!!」

「いや、私はしないぞ」

「あぁ~ん、いけずぅ〜!――でも、好きぃ~」

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