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34話【ルドフィア視点〜ドルイディ視点】見たくなかった光景の一つ

 ふんふふーん……


 さっきはちょこーっと気分が悪くなったけれど、今はあのかわいい姉弟二人組に癒されたのと『宝探し』がこれから始まるということで平常に戻ったわ。


 プララとラッシュという名前のこの子たちは、私とこの館の主であるリュゼルスのことをまだ信じきれていないようで怪訝な視線を向けてくるの。


 その視線をやめてほしいから……何より、これから始まる『遊び』……『宝探し』を楽しんでほしいから、美味しい紅茶を今入れているわ。とても美味しい物。


 私はそれをティーカップに注ぎ終わり、運ぶために近くにあったお膳に手を伸ばした。


 そんなところでリュゼルスが「ああ〜! 大変ですわ〜!!」と騒いできた。


 何かしら……ドルイディたちのこと……?


 私はティーカップを四つお膳に置くと、それをこぼさないようにゆっくりと運んだ。



「二人共……こぼさないようにね」


「……」


「あら……飲んでくれないのね」



 プララちゃんもラッシュくんもリュゼルスが見せてきたボードを夢中で見ていたわ。何なのよ……


 私は少しムッとしながら、気になって二人の背中の方から顔を出して、覗き込んだわ。



「ルドフィア、なんでそんなに慌ててるの?」


「リモデルさんが部屋の宝を見つけてしまったのですわ。いつか見つけるとは思っていましたが、まだ『宝探し』が始まってもいない段階で見つけるとは思っていなかったので、驚いているのです……!」



 リモデル……? 誰……?


 はて……そんな名前の人物も人形も私の知り合いにはいなかった気がするわ。いたら覚えてる。


 えっと……あ、思い出したわ。


 そういや、さっきリュゼルスが言ってたわね。



「ドルイディやディエルド、プララちゃんとラッシュくん以外の侵入者……だったわよね?」


「そうですわ……」



 神妙な顔ね……まあ、確かにまだ『宝探し』は始まっていないし、驚くこと……なのかしらね。


 ……どうでもいいけれど。



「……っ……ん〜」



 早く『宝探し』の説明と開始の合図を館の機能を利用し、この館にいる全ての者に伝えたい……


 ドルイディたちが宝を一生懸命に探す姿をお姉ちゃんは心から見たいと思っているのよ……


 ボードがないと開始を伝えられず、困るわね。


 無理やり奪うわけにもいかないし、仕方ないから待っておくとするわ。仕方なしよね……






*****






 ……ディエルドは、私の後ろをまるで忠犬のようにしっかりと着いてきていた。


 何も喋ったりしてないからまだいいけど、なんかちょっと気持ち悪いし、せめて横にいてほしいね。



「……」



 まあ、でもさ……さっきは私の方から後ろにいてほしいって言ったんだよ。怖かったのもあるし。


 だから、撤回してしまうのもどうかと思って、何も言えないんだ。数分前の私、馬鹿だな……


 ……関係ないけど、喉も渇いてきた。


 何か喉を潤せる物がないかと思ったが、何もない。


 仕方ないから、節約しておいた魔力を使うよ。もちろん、水属性の魔力を使う。


 ……もう、そのまま喉に流し込むつもりだ。


 そう思って、手に魔力を生成しようとしたところ、後ろにいたディエルドがちょいちょいと背中をつついてきた。何かを見つけてくれたのだろうか……



「ドルちゃん、水欲しいんでしょ?」


「……えっ、気が利くじゃないか」


「へへっ」



 事前に喉が渇いてきていたことに気づいていたようで、水を生成してくれていたようだ。


 中々に彼にしては気が利くね。


 普通に格好いいと思うよ。そういうところにすぐ気づいて、すぐ行動に移せるのには。


 私は彼に感謝して、水を受け取るためのコップか受け皿でも作ろうかと思う。


 すると、ディエルドは首を振りながら言った。



「……それも創ってあるって」


「用意が良すぎるだろう……」



 わざわざ、二度も感謝されたかったのか後ろに隠していたようだ。無駄なことしないでくれ……


 取り敢えず、水をタプタプと注いだその土属性魔力製のコップを私は受け取ると、口に運んだ。


 すっかり渇ききっていた喉が潤っていくのを感じ、幸せな気持ちになりながら、私は歩いた。



「あっ……」



 そんなこんなで歩いていたところ、リモデルの香りが心做しか近くなってきたような気がする。


 色々やってくれてありがたかったけど、そろそろ彼には別れてもらわないといけないね。


 なんか申し訳ないとは思うけど……


 彼の方を軽く見て私は言う。



「ディエルド……」


「……なに?」


「申し訳ないが、そろそろ別れないか?」


「なんか別れを切り出した恋人の台詞みたいでそれ、少しだけ面白いね、ドルちゃん」


「いや、別にふざけてないんだけど……」



 私は軽く心でため息をつきながら、もう一度最初から同じことを言おうとしたところ……


 あの好きな……私が愛している人の声が聞こえた気がした。香りも、唐突に強くなった……



「……っ」


「えっ……ちょい待ってよ!! ドルちゃん!!」


「ありがとう。さっきからの貴方は格好よかった」


「いやいや、ちょっとー!! 行かないでー!!」



 私はディエルドに感謝の意を伝えた後、香りを感じ、声が聞こえた方に駆けていく。


 リモデル……リモデル……いるんだね、そこに……!



「はぁっ……はぁっ」



 さっきまでのゆっくり歩いていた自分は一体なんだったのだろうと思えるほどの全力疾走。


 そして、たどり着いたところには……ずっと……ずーっと会いたいと思っていた相手が……


 ……ちゃんと、いてくれたよ。



「リモデル……良かった、会えて……」


「ドル……!? なんでここに……?」



 リモデルの方は私が来ることをわかってなかったか……それは少しだけ悲しいな……


 失望はしないけどね。彼にも色々あっただろうし、その程度で失望するのは酷いだろうよ。



「はぁっ……本当に嬉しいね。なんか、半日会えなかっただけなのに物凄く長く会えなかったような気分を味わってる。あの地下空間の時みたいに……」



 あの地下空間でのことも……そういや、もうそれなりに前になるんだよね……


 時間って心の持ちようだったりで早くも遅くも感じられるから、凄いと思うよ。


 私はこちらを見て驚きながら、部屋から上半身を出す彼の手を私は掴んでいった。


 部屋から出すためだよ。一緒に行くんだ。



「……行こう。ちょっと誰も来なさそうなところに」



 ……とにかく、隠れられる場所がないかと周りを見ながら走ろうかと考えている。


 全力を出したら疲れて探すことなんて出来ないから、さっきよりは抑え気味に。


 彼には疲れているだろうから、申し訳ないが……


 そう思って足を地面から離した瞬間に今度は息を切らしながらこっちに向かう者の姿が……目に入る。


 リモデルのもとには……私、全力疾走して向かったんだよ? よく追いつけたね……?



「ドルちゃん……その男、誰……?」



 ディエルドはこちらを見ながら、驚いた様子でそう言ってくるのだった。


 そんなディエルドを見ながら、リモデルは……



「……それはこちらの台詞だな。誰だ、君は? ドルイディ……彼女の知り合いか?」



 と言って怒りの宿った表情で敵意を向ける。


 ディエルドもその言葉でイラッときたのか表情が怒りを宿らせたものに変わり……


 返すように彼に敵意を向けてきた。


 私はそれを見て「あちゃー……」と言いながら、静かに頭を抱えるのだった。


 見たくなかった光景の一つ……だからさ……

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