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4話【リモデル視点】予感、悪寒、直感

 まだ早い時間帯だから大丈夫だとは思っていたが、さすが大国のオトノマース人形国……


 早朝でも城の周りに人はいる。


 ……夜の時はいなかったのにな。あれはもしかしたら、誰かが人払いしてたのかもな。


 これじゃ、ドルが出てきた時にも気づけるかどうか……愛の力とやらで行けたりするもんか?


 まあ、それでも見守るんだけどな。


 俺は取り敢えず、城の出口が見やすいと思われる近くの草むらに飛び込んでみた。



「……うん」



 なんか、不審人物って感じだな。


 ……いや、まあ実際不審人物と言っていいかもね。


 不審な……人物だからね、明らかに。誰がどう見たとしても……わかるほどに明らかに。



「……」



 それでも、家でじっとしているのはやっぱり、なんか嫌でね。そういう性分じゃなかったと思うんだが……


 ドルイディと会って、変わったのかもな。


 ……でも、もしそうならそれは絶対に良き変化だよ。これを悪い変化だとは俺は思わない。


 まだまだドルには俺のことを変化させていってほしいと……そう思っているよ。



「それにしても、あいつら本当に何者だ……?」



 騎士といった格好でもない。


 何のためにあんなところを歩いているのかもわからないし、何をしている人間なのかも不明。


 不明尽くしだ。考えない方がいいな。



「……あー」



 考えるべきことも特にないので、俺は取り敢えず草むらに自分の尻を落とした。


 もちろん、土の付着を避けるため、事前に結界を張った。こんなことに結界魔法を使う奴は少ない気がする。


 いや、そんなことないかな。


 何かで何度か見たような気も……ってそれはいいや。



「……うむ」



 暇な自分に出来ること……それは魔法の威力強化だよな。


 ドルイディを守るためにはちゃんと力を付ける必要がある。人形操技にばかり頼ってばかりではいけないのだ。


 筋力をつけるのは出口を見るのが疎かになるので、やりたくないしやれない。やらない。


 魔法の練習だけをずっとやってるよ。


 やるのは攻撃魔法だが、途中から趣向は変えるよ。



「……よしよし」



 まずは得意属性である闇属性の攻撃魔法から。下級から上級までの『球』と『槍』と『剣』を生む。


 そして、それらをぶつけてみることで強度が満足のいくものになっているのか確認する。


 音は結界を途中から重ねたことである程度は遮断できていたはずだ。忘れていたら目立ったね。


 攻撃魔法の練習はそんな感じでやっていたら、一時間もかからないぐらいで全て終わっていた。


 なので、防御魔法として用いられる『壁』の魔法を二つ発動し、それらに今まで生み出した『球』などを潰させてみた。


 すると、どれもきちんと潰れたよ。


 壁系の魔法も、これなら十分に攻撃として使えるよね。他にも色々とやってみよう。



「……」



 ……普段はこういうことやらないから、中々に悪くないよ。楽しいと思っている。


 一頻り魔法の練習を行ってから、今度は人形操技の練習もやろうかな……と思った時だった。



「……!?」



 先程まで城の入口近くにいた奴らが一斉に消滅していた。


 少し目を離していただけなのに、消えていたんだ。


 これが一人ならわかるが、全員だぞ? たった三分ぐらいで全員跡形もなく消えるのはおかしくないか?


 不思議に思って草むらから体を出そうとしたところで、背筋に悪寒が走ってきた。


 それによる困惑を覚えたと同時に、俺は乗り出しすぎたせいで顔面を地面にぶつけていた。


 ぶつけた鼻を抑えながら、俺は立つ。



「……何なんだよ」



 何か物凄く嫌な予感がする。そうやって不安になっていたところで悪寒と共に……


 目の前を通り過ぎて行った人物……いや、人形に俺は視線を奪われていった。



「えっ……ドル……?」



 視線だけではない。そのドルらしき人形が歩いてどこかへ向かう姿に足すらも惹きつけられていた。


 俺の視線はもう城などには向いてない。


 距離としては結構離れていたため、気づかれなかったが、それでも俺は自分の身長を二倍にしたら届くほどの距離まで近づいてしまっていた。


 そこでやっと我に返って隠れたからよかったけど、もうすぐで見つかっていただろうな。


 先日の地下空間でそうやって無心で着いていくと痛い目を見るということを学んだはずなのに。


 フェロモンのようなものが出ていたとはいえ、あってはいけないよな。結界をしておけばよかった。


 ……結界なら、防げただろうからな。


 後悔が俺を襲ってくるが……


 ここで気にしても仕方がないという楽観的思考に途中で切り替えることでその後悔を払い除ける。



「……っはぁー」



 彼女が振り返ってこちらの方向を見てきたので隠れているのにドキドキは増している。


 あれはドルイディだ。


 イディドルが更に見た目を近づけたことは知っているが、俺ならわかるんだ。あれはドル。


 ただ、きっと本人そのものではない。


 幻術かそれに似た何かであると思われるよ。それもかなり高度なんじゃないかと俺は思ってる。


 普通の幻なら、このようにフェロモンのようなものを発することなどないだろうし、見た目を完全に同じにすることも出来ないだろうからな。



「……動向が気になって仕方ないな」



 幻ということにしておくが、あの幻はどこに向かおうとしているんだろうか。


 そして、何を目的としているんだ?


 人が多い場所がこの先にある。そこに向かおうとしているのかな。どうなんだろう。


 ……どうしよう。追うべきか?


 でも、ここで追ってしまったら、城から本物ドルが出てきた場合に見逃してしまうことになる。


 それはいけない。


 俺は本物のドルイディの恋人なんだからな。


 そう思って城の方向へ戻ろうとする。



 だが、それから三十秒ほどした辺りで……俺は再び後ろを振り返ることとなる。


 何故ならば……



「……消え、た……?」



 先程まで城の周りにいた者たちと同様に、幻ドルイディが跡形もなく消えていたからだ。


 悪寒と気配らしきものの消失を感じたから、振り返ってみたら消えているっていう……


 本当に何なんだ……これは幻覚なのか?


 頭を抱えながら……俺は自分が先程までいた草むらの方向へ……ゆっくりと戻っていった。


 右手に糸を……左手に魔力を蓄えながら。


 ……これは何者かが俺のことを錯乱させようとしているのではないかと、直感で思ったから。

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