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39話【マリネッタ視点】マリネッタとトムファン

「大丈夫かぁーよ。マリネッタ」


「屈辱だ……こんな屈辱を受けてー……大丈夫なわけがないだろー……トムファン」



 怒りが湧いてこないはずがない……っ……オレの鼻が……大事な鼻なんだぞ……?


 自分の顔が大事なオレにとって、顔を傷つけられることは最大にして、最悪の屈辱……許せない。


 まあ、許せないのはドルイディだけじゃないけどー……


 オレは目の前にいる男……オレの兄弟、トムファンを睨みつける。嘲笑いやがってー……



「屈辱なのはさぁー……彼女(ドルイディ)の方もだったと思うよ。おれはわかるんだわぁ」


「あー……?」


「だから、おれは倒れて気絶するまでの時間を回復させることで長くしてやったんだぁ。うわ言を呟いていたのも聞こえたろぉーう? あれも回復したからだよ」


「……うわ言なんて言ってなかっただろー……」


「マリネッタ。おまえが聞こえてないだけだってぇ……言ってたよ。この子。頑張って人格をどうたらって」



 ……もーいい。オレは腹が立ってきた。折角気分がよかったのに台無しだ。あぁー……


 茶会の為に用意した机をオレは蹴り飛ばした。


 苛立ちを向ける先が机と椅子のどちらかしかないからねー……はぁーあ……腹立つ。



「……まあ、精神干渉の技を使ってるのはおまえじゃなくて……おれだしねぇ……おれの方が干渉先の相手の言動、行動に敏感なのは当然……かなぁ」



 そうだ。このドルイディという女は見事に勘違いしてくれていたが、精神干渉の技を使っていたのはオレじゃない。この部屋の壁に隠れていたこの……トムファンとかいうクソみたいな兄貴の技なんだー……


 街でオレが女共に好かれたのもこの兄貴が手伝ったから。


 なんでこんな努力もしてねぇ非力兄貴が良い能力持っててオレは何の能力も持ってねぇんだよー……


 せめて……何だっけー……加護とかいう神様の祝福的なものがあればよかったー……


 本気でそう思ってるってー……



「……技じゃなくて、さっき第二王女の複製人形からオマエが額を通して受け取った本物さんが城にやってくるまでの記憶情報のおかげなんじゃないかー……?」



 他人の記憶を移すと、一定時間のみ……その人間そのものになったような……一体化したような……そんな感じになるとかー……オマエが自分で言ってたと思うんだがー……いや、知らんけど。



「意外に鋭いねぇ。そっちかもぉ……いやぁ、そこの第二王女がアホで助かったよ。まんまと自身の記憶をおれによって改造された複製人形に移したんだからね」



 第二王女が自室に来ることまでは予測してたが、そこからまさかそこに来るまでの記憶を都合よく複製の方に移してくれるとは思わないじゃーん……?


 だから、驚いたんだよねー……オレもトムファンも。



「それはオレもそう思うよー……間抜けだよねー……」


「第二王女がここに来ることをわかったのも、リモデルとやらと分断できたのも、精神干渉がスムーズにできたのも、複製人形の記憶のおかげ。嬉しいねぇ」


「あの執事が出てくるのは予想外だったろー……?」


「まあ、でもきみが応戦してくれたおかげで今はリモデルって奴と一緒に閉じ込められてるわけだぁ。別にいいじゃないかぁ。それぐらいさぁ……」



 トムファンは高笑いする。うるさいー……


 それにさー……ここに誰かいたらどうすんだよー……ドルイディとかいう第二王女だって、オマエが中途半端に回復したから起きる可能性があるだろうしー……


 オレが睨みつけるとー……トムファンは更に調子に乗って、癇に障ることを言う。



「まあまあ落ち着いてくれよぉ……おれは能力があるけど、腕力が弱い。おまえは能力はないけど、腕力は強いし、おれ以上の魔力も秘めている。兄弟に生まれたんだし、お互い助け合っていこうよぉ」


「……勝手に言ってろー……どうでもいいー……」


「おまえが可愛がってるマオルヴルフ。言うこと聞かなきゃ、殺しちゃうよぉ?」


「はぁー……?」


「ラプゥペとかさぁ……第二王女自体もその複製人形もいる。モグラなんて必要なくなぁーい? おれの能力さえあれば、昼間の時みたいに国民を操って、手足のように使うこともできるわけだしぃ……ねぇ?」


「……っ」


「誰のおかげで……昼間にあんなにモテたと思ってるんだぁ……? わかってないのか、なぁ? 国民に着せるための外套を用意したのだって……」


「あれを用意したのはオレのマオルヴルフだろー……」



 蝙蝠を意識したスライム製の外套。スライムで出来ているために、サイズの心配が必要ない優れもの。


 あれはオレがマオルヴルフと一緒にスライム狩りして作ったものだよー……決してオマエが用意したものでも、作ったものでもないんだよー……



「……そうだっけぇ」



 この男ー……やっぱり、クソだ。クソ兄貴と呼ぶに相応しいクソ度の高さだー……



「……兄貴。そういや、オレのマオルヴルフ共をそのラプゥペとかいう奴を運ぶのに使ったのはオマエかー……?」


「ああ……運んだっていうのは合ってるけどぉ……おれは何も命令してないよぉ……?」



 何も命令してないー……? それは……?



「なんか勘違いしてるけどぉ……あのラプゥペって人形に関してはモグラが勝手に連れ去ったんだよぉ。高性能な人形を連れてきてほしいと願望は言ったけど、命令はしてないから、別におれは悪くなくないかぁ……?」


「……やっぱり。まあ、最後に見た時に元気そうだったからいいが、次に運搬用なんかのために勝手にあいつらを操ろうとしたら、オレはオマエを殺すぞー……?」


「だから、操ってないってぇ……」



 あいつらはオレの大切なものだからな……オレは自分の顔が一番好きなんだがー……


 二番目は……あいつらなんだー……


 醜いとかいう奴もいるがー……オレはあいつらの可愛さを知っている。雑に扱わせない。


 低俗な人間や人形なんかよりー……よっぽど可愛くて尊い存在なんだー……あいつらは。



「死にたいかー……?」


「……ふーん……そういうこと言うんだぁー……」


「それ、オレの真似かー……? 似てないから、即座にやめてもらいたいんだけどー……? なぁ?」


「まあまあ」



 凶暴な犬を落ち着かせるかのように諌めてきようとしてきた。本気で喧嘩を売っているんだなー……


 自分が優れた能力をたくさん持っているから殺されないとタカを括ってやがるー……


 顔をぶん殴るぐらいならどうせ死なないだろうし、それぐらいはしてやろうかなー……


 ……と思ってしまうなー……


 どうせ、オマエはオレの手助けばっかでほとんど人に自分の顔を見せないんだし、なー……



「……多分だけど、あのラプゥペって人形を連れてきたモグラ。元は野良じゃないよぉ……?」


「はぁー……? 野良だよー……これは正真正銘なー。洞窟で拾ったんだからー……」


「……私はわかるんだよぉ。これでも、現在侵入しているリモデルとかいう奴とそこの第二王女と比べれば、腕はまだまだだけど、何となく……」


「……何がー……?」


「あのモグラはきっと、人形師に元々飼われていたんだぁ……ドルイディの複製人形がいる場所を見つけたのも彼だったし、ラプゥペのことも見つけ出したぁ……その後、糸繰り用の糸を見せたら興味を示したりも……」



 糸繰り……糸繰り人形とかいう一昔前はたくさんいたとかいう過去のボロ人形のなんか……そういうやつか。


 こいつが前に言ってたから知ってはいるがー……



「妄言はもういい。第二王女の複製人形をリモデルって奴のところに向かわせたんだろー……? オレは腹立ったから寝てるし、様子を見に行ってきたらー……?」


「……あ、それもそうだねぇ」


「……?」



 なんか、また嘲笑してきたかー……?


 クスッとこちらを見て笑った後に隠し扉の方へと向かっていきやがったよー……


 見下しやがってー……


 そう思いながら、オレは部屋の隅に置いてあったと思われる布団を取りに行ったのだが……



「なくないかー……?」



 なくなっている。トムファンが持っていったとは思えないしー……誰が持って行ったんだ?


 ……元々は人形師に飼われていたかもしれないモグラ(マオルヴルフ)がいる……とトムファンは言ったな。


 もしかしてー……もしかしてなんだけどー……そのマオルヴルフが……勝手に布団を持って行ったとか?


 ありえない話じゃない。図体は小さいが、あいつらは少しぐらい自身の大きさを変更できるしー……



「まあ、でもあんな大きい布団を穴に入れたとは思いにくい。第二王女の複製人形の方に持っていかれた?」



 ……よくわからない。


 まあ、なくても寝れるからいいー……持って行った奴が何のためにそれを使おうとしてるのかは知らないけどー……オレは近くの椅子で不貞寝してるから、それに関しては起こさないでもらいたいねー……


 オレは先程、倒れたドルイディが茶会にて座っていた椅子を拾い上げると、そこに腰掛けた。



「あー……ダルい」



 休みたい気持ちはあるけどー……イライラも時間の経過に合わせて増していくからー……大人しくできないよな。


 怒りが増していく中、後ろで……何かが動いた気がするが、オレはそのまま目を閉じて眠ることにした。


 目を閉じていれば、いつの間にか眠れているだろー……と思ったからなー…………はぁーあ……

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