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33話【リモデル視点】腑抜け

「あれは蔦です。私はアレに拘束されていた……」



 俺はペルチェとこの地下空間に来るまでに何があったか話すことになったんだが……


 ……その前に俺がたまたま見つけた壁の方にある蔦を指さして「アレは?」と聞いたら……


 返ってきた答えが今の。見たらわかるよ、蔦なのは……


 「アレは?」だけじゃダメだな。もっと具体的に言うべきだったよな。俺が悪い。



「……うーん」



 俺が知りたいのはペルチェの目がなくなった原因とその原因を作ったものの正体、蔦を使った者の正体となんでペルチェのことを捕まえたのかということ……


 ペルチェの目を奪った奴は知らないが、蔦を使った奴に関しては……やっぱり、最初にファルナーメの姿が脳裏に浮かんでしまうよな。


 蔦を操る奴と言ったら、俺はあいつしか知らないし。


 でも、あいつではないと思う。あいつはこんなことをするような奴ではさすがにない。


 故に、これはファルを知る敵がファルに罪を被せるために拘束用で使った蔦じゃないかな。



「……ごめん。話そうとしてたのに。じゃあ、座るよ」


「いえ、構いません。あ、その蔦に関しては貴方がよく知るファルとかいう少年のものではないと思いますよ。ちなみに気休めではありません」


「……」


「邪魔だと判断されてここに入れられる直前まで、私は意識があったので、顔以外はこの蔦を出した人間のことを見ています。ちなみに私の目を抉ったのも、同一人物です。この身が幻覚攻撃を受けていないのならば、それは確か」


「……なら、よかった」


「蔦は少年に罪を被せるためにこの地下の者が使っていたんだと考えています」



 やはり、同じことを考えていたね。よし。



「そいつが貴方の目を抉った理由も知りたい」


「私の発言に彼が怒りを露わにしまして……蔦を利用して拘束した後にマオルヴルフを利用して抉りとってきましたよ。傭兵時代でも中々感じなかった痛みでした」


「なるほどな」



 どんな奴なんだろう、そいつは。


 ドルのことをあんな状態にして、俺を彼女と分断させようとしたのも、もしかしてそいつなんだろうか。


 複数人いる気がするから、そいつだと断定はできない。


 だが、そうなのかもしれないと思うと……心の底から、怒りが湧いてきてしまう。



「……どうしました?」


「あ、いや……」


「若干怒りを感じたので、貴方から」



 怒りか。鋭いな、ペルチェは。


 そうだな、俺は怒っている。怒りが湧いてきている。また、怒りが。


 この怒りの完全鎮火は……まだ遠い気がする。


 鎮火を早めるには、早くドルに会うための何かをしていたい。どうするべきかな。


 俺は座ると、ペルチェのことを見ながら話を始める。



「まず、俺は貴方と別れた後にドルと一緒にとある道具を使って地下空間にやってきた」


「ほう、やはり無理やり連れてこられた私と違って貴方たちは自分からここに来たのですね」


「ああ。だが、途中で俺の軽率な判断で……」



 そこで言葉が止まってしまう。



「……どうしました?」



 言うことに躊躇いが生まれた。ここで俺が自分の軽率で勝手な判断によってドルイディと別れる羽目になったことをバラしたとしたら、どうなる?


 失望される、だろうな。確実に。


 いや、それならまだいい方だ。俺は……この男に殺されてしまうんじゃないか? 今度こそ。


 そりゃ、そうだ。さっきはあんなふうにカッコつけて彼女のことを守れると言ったはずなのに……


 ……俺は……全然、守れていないのだから。



「……」


「……喋らないとわかりませんよ」


「……くっ」



 ダメだ。冷や汗が出てきた。


 彼女を……俺は……


 本当にダメだ。なんで俺は……もっと、考えて行動しなかったんだ。もっと考えてさえいれば……



「なるほど。こんな状況でドルイディ様と一緒にいないあたり……まあ、そういうことなんでしょうね」


「……っ」


「はぁ、腑抜けですね。認めるべきではなかったでしょうか。早いですが、撤回しましょうか。さっきの言葉」


「……ペル……チェ」



 下を向こうとすると、前にいるペルチェが立ち上がるのがわかった。


 え? 何をする気だ。そう思いながら、彼の影を見ていると……俺の頬が腫れた。


 ……なんというか、殴られた……ようだ。



「今、殴ったのか?」


「はい。今の貴方は正直言って情けない。腑抜けている。だから、喝を入れただけです」


「……そうか」


「……まあ、一度叩いただけじゃダメですよね」



 そう言うと、ペルチェは俺のもう一つの頬も同様に殴っ……いや、叩いた。


 腫れる頬を抑えていると、ペルチェは吼える。



「しっかりしなさい!! 貴方がそんな姿でいて、ドルイディ様はどう思いますか!!」


「ドルは……」


「情けないと思うはずです。立ちなさい。立って前を向いて彼女を助けることを考えなさい。もう過ぎたことに囚われて、クヨクヨするなど愚かです」



 座るように言ったのは君だろ……


 いや、その時は彼は俺が軽率な判断でドルと分断されてしまったことに気づいていなかったからな。


 まあ、そうだよな、クヨクヨしていても、仕方ない。それはわかるよ。


 でも、そう簡単に失敗を忘れられるほど、俺は出来た人間というわけでもない。優れていない。



「……わかりましたか? リモデル」


「わかった……わかったよ」


「……そうですか」



 ペルチェはそう言うと、俺のことを引っ張りあげる。


 力のこもった手から伝わる熱は冷めきった俺の心に……少しだけ影響を与えてくれた。


 でも、少しだけだ。


 まだ、彼が言う『過ぎたこと』は頭の中で燻っている……


 ……が、今は気にしないようにしよう。



「……ありがとう、ペルチェ」


「……まあ、いいです。少しはよくなったようですし」


「ああ、ペルチェのおかげだよ」



 俺は部屋の中をぐるっと見渡すと、他に何か落ちているものがないか探す。


 そして、それらがないことをわかると、どうやってあの鉄格子を破っていくべきかそこに考えをシフトさせる。



「ペルチェ。あの鉄格子と結界、どうする?」


「……それについては、少しだけ試したいことがあります。協力しましょう。貴方も私も弱くはない。協力すれば、いける可能性はあります。もちろん……」


「救出できる可能性もある……だろう ?」


「はい」


「じゃあ、話してくれ」


「それでは……」



 俺はペルチェに耳打ちされて、『試したいこと』の詳細を知ると……にっと笑い、首肯する。


 いけるかはわからない。


 だが、試す価値は十二分にある。そう思った俺は取り敢えず邪魔になっていたマオルヴルフの死骸を空間の隅まで持っていって、穴を掘った。


 魔法は使わないで手で掘った。少し疲れたな。


 穴を掘ったのはもちろん、簡易的な埋葬をするため。簡易的なのは時間も体力にも余裕がないからだな。


 奴らも命があった。埋葬はしておこうと思ったんだ。



「……」



 埋葬を済ませると、俺は彼らの死骸が埋められたその地点から背を向けて……


 全力でペルチェ提案の脱出&ドルイディたち救出作戦を遂行するため、準備の運動を始める。


 目指せ、脱出&ドルイディとラプゥペ救出!!


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