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29話【リモデル視点】覚悟と強さ

 ドルイディに騙されていたことで鼻息荒く怒る俺をペルチェが嘲笑してきた。


 言っておくけど、君にもイラついているからな。君も騙していたし。あと、何故か頭突きしてきたし。


 俺が二人に対して交互に怒りの視線を向ける。ペルチェはそれを無視してきて、ドルは物怖じせず真っ直ぐに見つめ返してきたから、俺は調子を崩された。


 そんなこんなで五分……発信機を見ている俺の横でペルチェが爽やかな顔でドルイディに質問していた。



「姫様、少し質問よろしいですか?」


「いいよ」


「それでは……」



 もう欠乏症は完璧に治ったみたいだな。頭突きにより、できた俺の額の痛みはまだ消えてないんだけど。


 はぁ。俺は取り敢えず、発信機と二人を交互に見ることに決めた。今のところはラプゥペは無事そうだからな。


 地下とかで監禁をしているんだろうけど、発信機に表示された反応から察するに解体とか実験はされてない。


 便利な発信機だよね。発信機という名前ではあるけど、場所の特定以外にも色々できる。多機能なんだ。


 ……これを作れるのもすごいだろう。人形作り以外も俺は難なくできるんだよ。



「……姫様、貴女は何故リモデルさんと付き合うことを決めたのでしょうか?」



 ……いきなり、すごい質問が来たな。


 ドルイディはそのまま答えるだろうか……ドルイディ以外の俺が知っている人間や人形なら、考えた末に無視を決めこむか、考えもせずに無視を決めこむか、聞いてる途中で聞かなかったことにするか……のどれかだぞ。


 というか、ペルチェ……なんで君はドルイディの方から俺に告白してきたことを知っているんだよ。


 もしかして、さっきの移動中か俺を騙すことを決めた時のどちらかに教えてもらったな? 仲間外れやめろ。



「彼は見ず知らずの私が暴漢に襲われているところを助けてくれてね。それで付き合うことを決めたんだ」


「……そうですか」



 納得したのかはわからないが、表情は変わらない。


 ただ、怒りのようなものが滲み出ていないように思うし、これから俺とドルイディが付き合うことを何がなんでも阻止しようとはしてこないだろう。


 取り返そうとだってしないはず。まあ、その気があったとしても、俺から取り返すのはもう無理だがな。



「次はリモデルさん、再び貴方に質問……いや、質問はやめておきましょうか。言いたいことがあります」


「俺?」


「はい、貴方です。疲れていて聞くのも返事も億劫ということなら……時間をおいてからにしますが」


「……いや、別にいいよ。俺たちの目的は急ぎなんでね。長時間ここにいるつもりはないんだ。それに、時間を置くというのがどれくらいの時間なのかはわからないが、待ちすぎると貴方は回復しそうなんでね」



 回復されたら、たまらな……



「あ、もしかして時間をおいてから、とか言ったのは回復して俺のことを狙っていたからだな? こんな状況でよくそんな考えが浮かぶものだ」


「いやいや、そんなつもりはありませんよ」



 ……そうか?


 まあ、本当だと思っておこう。疑ってばかりっていうのも良くないよな。


 ……それで、何を言うつもりなんだろうか。



「……貴方のような国外の……それも王族でない人間が姫様と付き合うことを国王陛下(姫様のお父上)はお許しになられないとは思いますが……少なくとも、私は貴方が姫様と付き合うことを許そうと思います」


「なんでだ?」


「……覚悟と強さを、見たので」


「……簡潔にどうも」



 覚悟と強さか。まあ、伝わってくれてるならよかった。


 俺のペルチェへの先程の言葉にも態度にも嘘偽りはない。ドルイディのことを守る覚悟は俺の中にある。そしてこれからも有り続けるだろうと、そう思っている。



「執事失格って言われたりはしないか?」


「……どっちにしろ、侵入者にこうして無様に負けている時点で失格になったようなものです。あ、許すとは言いましたが、その後の行動次第では撤回します。姫様への愛と覚悟は常に胸に。そして、鍛錬はするように」



 愛と覚悟においては、胸に留めておく。それは断言することはできるんだが、鍛錬か……


 『人形操技』が使えなくなる場面もいつか来るかもしれないしな。身体的に未熟な俺はもう少し鍛錬をきちんとすべきだと、そういうことだよな。


 ……億劫だとは思った。でも、確かに必要なことだ。ドルイディのためにも俺は鍛錬もやっていこう。



「はい。いつか貴方も倒せるほどに鍛えて見せます。その時には実力を見てくれますか?」


「構いませんよ。私がまだこの城で働くことができていれば、ですがね。それで……何故に敬語に?」


「一応、敬った方がいいかと」


「別に敬語など使わなくても構いません。今更むず痒い」


「わかった、ペルチェ」



 公認だ。今後は敬語を使わない。



「……貴方たちが歩む道に祝福があることを祈ります」


「ありがとう、また会おう」


「はい、リモデル。では、姫様もまた会いましょう。貴女は一応王女ですので、さすがに祭事や国の緊急事態などの際は城にもきちんと顔を出してくださいよ? まあ、こう言っても貴女は聞かぬ可能性が高いでしょうが」



 ペルチェのドルを見る瞳には親心のようなものが感じ取れた。ドルの方は彼のことをどう思っているのか知らんが、彼の方は親に近しい感情を持っていそうだ。


 送る目線が執事然とした冷たさや真面目さを感じる目線ではなく、優しさと穏やかさの伝わる緩んだ目線ものだったんだ。俺じゃなくても感じ取れると思う。


 執事という立場である以上、その感情を表に出すことも、それが悟られてしまうような扱いも普段の彼ならば、きっとしないだろうけどね。



「酷いな、ペルチェ。祭事はともかく、国の重要事態となったら、多分城に来るようにするよ」



 多分ってなんだよ、ドル。はは。


 彼女がペルチェを怒らせるつもりじゃないことはわかっているさ。確実に来れると断言できないが故の返答だろう。その証拠に視線が泳いでいる。


 罪悪感はきちんとあるんだよね。ドル。



「……ふふ、まあそれでも良いでしょう」



 ペルチェのその言葉を聞いた俺は彼に対してウインクを送る。


 普段は格好をつけるためにやるものだが、これは「また会おう」という意思を再び届けるために使った。


 格好つけの意図として受け取られないといいな。そこはあまり考えていなかった。


 俺はドルイディのことを見て、彼女と頷き合うと、ラプゥペがいる方向へと向かう。



「さっきまでは反対方向にするつもりだったがな」


「ペルチェが捕らえられている地下の場所がバレてしまったら困ると考えたからだよね」


「ああ、でもあの人ならもう邪魔しないだろ。バレてもいいかなって。君もそう思ってるだろ?」


「ああ、バレても構わないさ」



 最後に振り返って、ペルチェのことを確認すると、俺とドルイディは走った。


 ……城内は走っちゃいけない場所だとは思うが、さっき好き勝手に走りあった後だし、今更歩かない。

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