30話【ドルイディ視点】うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!
私とリモデルはペルチェと別れてから、本目的であるラプゥペを救出するため、リモデルが持つ発信機を元にこの城の地下を目指している。
「ここ……なんだよね?」
「ああ」
眼前、あるのは壁……大きすぎる扉とかいうそういうわけではなく、正真正銘の壁だ。取っ手などない。
この壁が地下空間に通じているなどと普通は思わないだろうな。現にリモデルも驚いている。
それはそうだ。私も教えられてなければ、ここが地下空間に通じる場所であることに気づくのは時間がかかる。
時間がかかると言ったのは私は昔から好奇心が強くて、壁を探ることもよくしていたからだ。
教えられていなくともそういった隠し扉を見つけることは容易なはず。
……現に私の製作者が教えそびれたと思しき研究道具を私は自力で見つけだしている。壁のボタンを押したら出てくる隠し棚の上から二段目。どうでもいい情報だ。
「……!? は? なんだ?」
「どうした? ドルイディ」
「どうした?」だと? え?
震動が来たんだ。またさっきみたいな地震だと思った。
しかし、リモデルは動揺もしていないし、こちらの驚きの原因が何なのかわかっていない様子。
地震なんてあったら、驚くのはおかしくない。リモデルが地震を驚かないタイプでないことは知ってる。
さっきの地震ではきちんと驚いていたのだから。
……ということは。
「……もしかしたら、今のもさっきのも地震じゃない」
「え?」
「地震だったなら、おかしなことが多すぎる。さっきの場合は部屋のみんなが出てこなかったこと。今はリモデル。貴方が地震(仮称)に対して驚いていないことだ」
「驚き自体はしたけどな。地震(仮称)ではなく、君の驚く様子を見て生まれた驚きだが」
揺れを感じてない者なら、私の突然の声には驚くよね。私が同じ立場でも驚いているよ。
私は自身の首飾りに薄くとはいえ、浮かび上がる『ERROR』の文字……とそれを告げる脳内の言葉。
それをウザったいと思いつつ、話していく。
「これは私の脳内に何者かが干渉したから、感じたものだと思う。揺れと錯覚しただけで全く違うものなんだろう」
「そうか……じゃあ、さっきは俺の脳内にも誰かが干渉しようとしてきていたってことかな?」
「ああ。でも、さっきは私の首飾りに『ERROR』の文字が浮かび上がらなかったし、今使われたものより弱かったのだろう。さっきのアレが効果なかったから強めたのだと推測するよ。ま、通じていないけどね」
辛さが完全にないと言ったら、嘘になる。
しかし、だからといって我慢できるものだし、この程度なら続けざまに行われたとしてもただ辛いだけで干渉することは不可能だと断言していいよ。
「……この話はもう終わりにしよう。そろそろ、ラプゥペを助けないと。危ないんじゃないの?」
「……発信機を信頼するならまだ大丈夫……だが、相手が未知の力を持っている可能性も考えた方がいい気がしてきた。危ないかもしれないし、急ごう」
「……うん。じゃあ、開けるから待ってて」
私は自身の頭上の右側……手のひら二つ分ほど右横にスイッチがあるから、そこを押し込む。
これは今まで見てきたものとは違って、高い位置にある上に縁もない。見つけるのは至難の業だ。
秘密の場所だからね。通るためのボタンがこれぐらいわかりにくいのはとても良い。
もし、誘拐犯がマオルヴルフを使ってその空間にたどり着いているのだとしたら、マオルヴルフ対策ができていないという点だけがこれの唯一の欠点となるよね。
「……」
開いた。念の為にリモデルに誰も隠れていないか探してもらっていたんだけど、誰もいないみたいだし行く。
私は「大丈夫」と伝えてくれながらこちらにやってくるリモデルの手を引っ張る。
いないとは思うが、誰かがいたとして不意打ちは食らいたくない。監視されている可能性もあるし、長く留まっていたくない……っていうのは建前で……
……本当は早く地下に降りてみたいんだ。リモデルとね。探検気分もドキドキも味わえるかもだし。
地下への階段は段数は多そうだが、一つ一つの段の幅が広いため、降りやすく怖さもない。
そのため、サクサクと降りていくことができて、五分後ぐらいには降りきることができた。
「……楽しかったね」
「ああ、ドルと一緒だったからこそだな」
「あ、ああ……うん。一緒だったからこそ、楽しかった」
確かにリモデルと一緒なおかげで楽しさは倍になったけど、いなくても楽しさはある程度味わえた。
だから、「一緒だったからこそ」という言葉に同意するべきか迷ったけど、私は二回ほど頷く。
逆に変に思われたかもだけど。
「……楽しいよ」
「……強調しなくていいぞ?」
楽しかったのは本当だし、疑われていたら嫌だと思ったからこその強調。
不安が強かったしね。この空間でどんなことが起こるかわからない不安もあるし、彼に今の返答が変だと思われていないか不安でもあった。不安二つで大不安だ。
私は大ファン……誰の? リモデルの。
……って変なこと考えすぎだな。不安であるが故の頭のおかしい思考。口に出さなくてよかった。
「お、道が分かれてるな」
前を見ずに考えながら歩いていたから気づかなかった。分かれ道があるのか。
それに関しては聞いてなかったな。
「どちらに行く?」
「うーん……右に行ってみる」
「根拠はあったりするのか?」
「ない。試しに行ってみるだけだ」
ふむ……
私は首を横に捻って思案しながら、頷いた。
リモデルはすぐに戻れるようにギリギリまで私と手を繋いでくれていたのだが……
「なっ!?」
「えっ……」
リモデルと私の温度差の違うほぼ同時の驚きの声と共に……突然、目の前に結界が降りた。
結界によって、ガッシリと握っていたつもりだった手は無慈悲にも離されてしまい、私たちは嘆き、後悔する。
だが、もう遅い。いくら叩いても結界は壊れない。
「くそっ……っ!! ぐっ……ぞぉ……!!」
リモデルの悲痛な怒りの声が結界越しにくぐもって私の耳へと届いてくる。
普通の結界ならこのようにくぐもって聞こえることなどない。それほど厚いということの証明だ。
私は唇を噛んで項垂れる。
「あぁ……」
絶望感が押し寄せてきた……ほんの一瞬だったが。
ほんの一瞬……それは言葉通り。
「は?」
押し寄せてきたと思った絶望感は……何故か一秒ごとに私からどんどんと離れていく。
そして、十五秒後には私の絶望感は完全に消え去っており、意識も虚ろになっていた。
虚ろな意識のままの私の足はどのように動いたのか……
……わからないが、気づいたら目の前にリモデルはいなかった。
「私は……一体何を?」
彼が消えたわけではない。私が何故か、彼を置いて歩いてきたのだ。多分、分かれ道のもう片方を歩いて。
意味のわからさにより、困惑しながら下に向けた目に映ったのは……首飾りの『ERROR』の表示。
それは先程よりもくっきりとみえる表示。
そして、脳裏に徐々に甦ってくる。『ERROR』を告げるあの言葉が……
それも先程より遥かに大きく、ウザったい。
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!」
叫びながら、進んでいた私の視界には今度は扉。
この先に待っているのが誰だかはわからない。だが、私の怒りの矛先はその扉の先に向けられた。
「……っぐ……!!!!」
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