第45話 4月14日 火曜日
ふわっと風が抜けるような感触がして目を覚ました。
「あ、ごめん」
良平がすまなそうに見ている。
「先っちょしか触ってないのに、分かるの?」
「分かるよ」
直接頭を触られなくても、髪の毛で触られた感覚は伝わってくる。
「夢じゃないよね」
確認したくて、良平に抱き付く。
「夢でたまるか」
良平も抱きしめ返してくれる。
少し強い激しいキスに夢中になる。
良平はやみつきになる『何か』を持ってる。
「朝からだけど……いい?」
「うん」
『待ってました』とは、さすがに恥ずかしくて言えない。
朝ご飯は、お母さんの猫カフェで食べるというので付いて行った。
「ネネロンも一緒に行こう」
嫌がってるように見えたけど、良平が強引に抱っこした。
「あ、百花ちゃん、良平、おはよう。よう眠れた?」
「はい」
「そんな恥ずかしかこと、よう息子に聞けるよなぁ」
「普通の挨拶やろ? そげんいやらしか受け取り方せんでよ。ね? 百花ちゃん」
「はい……」
家とは違う明け透けな会話に照れてしまう。
「もうプロポーズはしたと?」
「は? 何言いよーと? マジで、やめれって!百花、こっち」
猫カフェの一角にある、キッチンスペースに良平と立たされた。
「何度やっても上手くいかないから、これ、百花がやって」
ベーグル、レーズン、クリームチーズ。
「刻んで挟むだけだよ?」
笑いながら包丁を持ってレーズンを刻む。
「分かってんだけど、なんか違うんだよな」
腕を組んで難しい顔して……なんか可愛い。
「俺、コーヒー淹れるわ」
「うん」
クリームチーズと刻んだレーズンを練り合わせて、焼いたベーグルに挟む。
「私の為にベーグル買って来てくれたの?」
「いや。頑張って作った」
「へ?」
半分に切った、手元のベーグルをまじまじと見る。
「良平が?」
「そ」
「やるじゃん」
「俺だって、百花に気に入られたいもん」
「なにそれ。ふふ」
超かわいい。
「百花、俺のこと好き?」
「うん。好き」
「たぶんじゃなくて、ちゃんと好き?」
「うん。すごく好き」
なんだか疑われてるみたいだから、ベーグルを置いて良平に近付く。
「本当に好き。大好き。一緒に居たいから、東京での生活全部捨ててもいいって思った。仕事辞めた。バイク売った。引っ越してきた。良平が居ればそれでいい。超好き」
さすがに伝わったか?
「ありがとう!」
良平が抱きしめてくる。苦しいくらいに。
「もう一つお願いがある」
「いいよ」
ずっと変化が嫌いだった。
現状維持が何よりも大事って思ってた。
でも、勘違いしてたみたい。
変わりたくないんじゃないじゃなかった。
変わりたいって思える人と出会えてなかっただけだった。
良平の為なら、変われるし、変わりたいって思う。
「どうして欲しいの?」
「轟になって欲しい」
「もちろんいいよ」
こうして、私は如月の姓すらも変えることになった。
☆☆☆ピロートーク☆☆☆
「俺たち体の相性いいと思わない?」
「思う」
「正直に言って欲しいんだけどさ、祥太と俺、違う?」
「それ聞いちゃう?答えていいの?」
「あ、いや……ま、でも、ここまで言って、答え聞かないのもあれか。でも、もしかしてそんな違わないとか?俺ともいいけど、祥太とはもっといいとか?やっぱ聞くんじゃなかった……って、笑ってんじゃねーよ」
「きゃ、やめてよ。くすぐんないでってば。私だって、なんて言っていいか分かんないよ。恥ずかしいし……でも、間違いなく良平の方がいいよ」
「マジで?」
「うん」
「どの辺が?」
「だから……そんなのうまく言えないよ……きゃー!やめてってば、もうっ」
「いいじゃんかよ。言えよ」
「そんな気になる?」
「ちょっと気になる」
「んー、強引なところ?」
「え!俺って強引なの?」
「ちょっとね。でもなんかそこがいいの」
「百花、Mなの?」
「そういう事なのかな?大事に扱われるより、俺のモノみたいにされるとぐっとくる」
「へえ」
「なんかイヤらしい顔してる」
「イヤらしい目で見てるんだから、当たり前だろ」
「良平とエッチしちゃってから、私も良平の事そういう目で見てたよ」
「マジで?」
「気付かなかった?」
「全然」
「美波に嫉妬した」
「やった!」
「やったってなに?」
「百花に嫉妬させるためにオーケーした」
「ひどくない?」
「大丈夫だよ。美波ちゃんにはケン君がいるんだし」
「あの人、かっこ良かったよね」
「あ、俺のこと嫉妬させようとしてる?」
「してないし。こんなんで焼き餅焼くの?」
「焼くだろ。俺以外の人、かっこいいって言うの禁止」
「はい?ウケるんだけど」
「なに笑ってんだよ。百花は俺のモノなんだろ?好きにしていいんだろ?」
「え……なんか怖い♡」
「遠慮なく好きにさせてもらう」
「きゃっ」
♡完♡




