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Dark in love  作者: あおあん


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第32話 1月21日 水曜日

 仕事終わりに会社を出ようとしたら美波が待っていた。


「ネネロン、引き取りに行くよ」

「え」

「良平君に頼まれたから、ネネロンは私が預かる」


 カチンときた。


「そんなの嘘でしょ。良平は私に頼んだんだもん。私には連絡来てないし、美波にネネロンは渡さない」

「なに言ってんの?!どうしたの百花、おかしいよ。祥太君と別れて、私に紹介してくれた良平君に手だしてさ。私、良平君と付き合ってるって言ったよね?恋人傷つけて楽しい?友達裏切って喜んでるの?信じられないんだけど!」


 他の会社も入っているオフィスビルのロビーで、私は美波の言葉もだけど、同時に誰かに見られてないかが気になって仕方がなかった。


「ねえ、聞いてる?百花さ、自分がなにやってるか分かってんの?!」

「分かってるよ……」

「だったらさ、私の彼氏の猫は私が預かる。ネネロン、返して」

「ごめん、それは出来ない」


 美波の真横を突っ切って歩いた。もしかしたら肩がちょっとぶつかったかも知れない。


「待ってよ、待ってってば!」


 追いかけて来る美波を振り切ろうと急ぎ足で歩いていると、黒い影とすれ違い、それが私の後ろで美波を捕まえた。


「ちょっと、ケン君、邪魔しないでよ」


 小走りで去る私には美波の声は小さくなって、それ以上、言葉は聞き取れなかった。


「美波だって……」


 良平という彼氏がいながら、ケン君との関係を立ち切れないでいるんじゃん。

 腹立たしい思いでスーパーに寄った。

 私の缶詰、ネネロンの缶詰、缶ビールとお弁当。


「おも……」


 怒っていて丁度良かった。

 平常心なら、とっくに半分投げ捨てていたかもしれない。


「ネネロンただいま」

「ニャア」

「ねえ。あんたの缶詰の方が私のより数倍美味しそうなんですけど、どういう事?」

「ニャア」

「そう言えば、ネネロンって食べれないものとかあるの?好き嫌いとかじゃなくて、アレルギーみたいなの。分かる?」

「ニャア」


 手あたり次第、買ってきてしまった猫用の缶詰で、ネネロンの体調が悪くなったら良平に顔向け出来ない。聞いてみたいけど、今、電話をしていいタイミングか分からない。


「ちょっと、先にごめんね」


 私だけビールを開けて飲みつつ、良平にメッセージを送った。


『ネネロンにこれあげてもいい?』


 買ってきた缶詰の写真を送る。

 既読がついたと思った瞬間、電話が鳴った。


「あ、やっぱりダメな感じ?」

「いや、大丈夫。喜ぶと思うからあげて」

「そっか」


 スピーカーにして、スマホを床に置き、隣で開けた缶詰を皿に盛る。


「お母さん、大丈夫だった?」


 そうじゃない時の事を考えると怖いけど、聞かないのは不自然に思えた。


「心配かけてごめん。ただの過労だって」

「そっか」

「点滴してる。明日、退院したら連れて帰って……あ、ちょっ……やめろって」


 なんだかすごく騒がしい。


「大丈夫?今、どこ?」

「あ、ごめ。家なんだけど……こらっ!」

「誰かいるの?」

「実は、俺んち、猫カフェやっててさ。普段は母が世話してんだけど、俺じゃダメっぽくて……いって……やめろって」


 良平の慌てふためいてる様子が目に浮かび笑ってしまった。


「今日、美波がネネロンを引き取るって言ってきたんだけど」

「……は?まじかよ。頼んでねえし」

「だよね。聞いてないって断わっちゃった」

「はは。まじかよ。ネネロンも元はここの猫カフェ出身なんだけど」

「そうなんだ」

「人見知りが激しくてクビになって、俺が連れて来たんだよ」

「へえ」


 こんなに大人しいのに意外だな。と思いながら、ネネロンを撫でたら気持ちよさそうに目を瞑った。可愛いやつ。


「美波ちゃんが来たときも、洗濯機と壁の間に挟まったまま出てこなくてさ」

「……」

「美波ちゃんが帰ったらさ……そいつすんげぇホコリまみれで、モップかよ!って。掃除が大変だったんだよ」

「そうなんだ」

「まじで、百花以外預かってもらえない、問題児なんだって」


 そんな風にはまるで見えない。


「ホコリまみれになったの?」


 ネネロンに話し掛けたら、良平が返事した。


「そうなんだよ。風呂嫌がるし、掃除機は怖がってダメだし、きれいにするのマジで大変」

「どうやったの?」

「ブラッシングだよ。優しく、丁寧に、な?ネネロン」

「ニャア」


 スピーカーからご主人様に呼びかけられたのが分かったらしい。


「飛行機のチケットは取れたから、明日の夜、遅くなるけどネネロン迎えに行くよ」

「まだ大丈夫だよ。ネネロンが喜びそうなものいっぱい買ったから、もうちょっとお母さんの側に居てあげなよ」

「まあ……それも考えたけど、仕事あるし。百花とネネロンにも会いたいから」


 嬉しくなって顔がにやけた。


「気を付けて帰ってきてね」

「ああ。おやすみ」

「おやすみ」


 電話が切れた途端、ネネロンに抱き付こうとしたら逃げられた。


「ねえ!今の聞いた?良平は私たちに会いたいんだって」

「ニャア」

「同じ扱い?って思ったんだけど、違うね。『百花とネネロン』って言ったよね。『ネネロンと百花』じゃないよ。私の方が先だから!」

「ニャア」


 ネネロンにマウントを取っても意味がないことくらい分かってる。だけど、何を考えてるかよく分からない良平の心の内が垣間見えた気がして嬉しかった。


 明日の夜、良平が帰って来る。

 ネネロンを迎えにここに来る。




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