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巨大回廊の激闘(3)

シウスは迫り来るボスエネミー群を眼前に舌打ちした。

『まずい、、』

『このままではスキルのリキャストが、間に合わない可能性がある、、』



回廊の入り口に向かって後退するシウス。

兎に角、今は時間を稼ぎたい。



高Lvのボス級エネミーを、一度に何体も相手する事自体非常に危険極まりない。

しかもそれが間断なく続くのだ。


スキルの再使用(リキャスト)の問題もあるが、それ以上に連戦による些細なミスが危惧された。



人間は不完全な生き物だ。

それはAOで最強を誇る剣聖も同じ。

只、他のプレイヤーより格段に精度が高く、正確な判断が早いと言うだけである。

完全ではない故、いつかミスをする可能性が存在した。


それに連戦による疲れが蓄積した時、精度が落ち判断も鈍るかもしれない。


PvPのような短時間による戦いでは無いのだから。




シウスは回廊の入り口であるゲートを確認する。

鋼鉄の巨大な扉は、入って来た時と同じように開いていた。


一旦回廊から出て状況を整理する。

そして最良最速の攻略を模索するのだ。



しかし無情にも不可視の壁によって、シウスはゲートを抜ける事が出来なかった。

『アルティメットシール?!』



まさかこの状況で魔王のユニーク魔法を展開させていたとは、、。

シウスは内心でボヤく。


詰まりそれは、このボス級エネミーの中に、魔王クラスの魔法を駆使出来る個体が居ると言う事だ。



回廊から出られないなら動き続けるしかない。

留まれば包囲され、攻撃の集中を招く。

動き続けてボス級エネミー群の攻撃を散らす他無い。


ウロボロスが手を加えた未曾有の改造コンテンツを前に、シウスは冷静に洞察する。



その刹那、一定の距離を保っていた一部のボス級エネミー等が、一斉に魔法を詠唱し出す。



それを視認していたシウスは、エネミーが居ない回廊の壁付近に向けて走り出した。


すると詠唱の速い火炎弾(ファイアボール)魔法弾(マジックミサイル)が、シウスが居た筈の空間に次々と着弾する。



そして再び詠唱を始める魔導師タイプのボス級エネミー達。


シウスは、その間隙を見逃さなかった。

「Lv99 伍の太刀 次元断 」


振り上げられた漆黒の刃が、地を切り裂く様に振り下ろされた。

その切っ先は地を這う光の一閃となり、高速で回廊を横断する。



モニタリングしていたメイリンが驚愕する。

存在する事は知っていた伍の太刀を初めて目にしたからだ。


一般的に弱いクラスとされていた侍。

故にLv91を超えるプレイヤーが黒瀬ヒカリしかおらず、しかもLv90でも伍の太刀が発現したとの公表がプレイヤーから無かったからである。



だがそれ以上に伍の太刀・次元断の効果と威力に驚愕する事になった。



回廊を横断する程の効果距離。

そして絶妙に放たれた次元断は、エネミー群の目前を並行に走り、行く手を阻んだのだ。



さらに次元断は発動は遅いものの、一旦発動してしまえばその一閃上に一定時間の高威力な斬撃が発生した。

まるで設置型の魔法の様に。



反応が遅れたエネミー群の前衛は、一斉に次元断に巻き込まれ斬撃に切り裂かれて消失してゆく。



メイリンは驚きと共に剣聖の底の深さに感嘆した。

そして思う。

『さらに黒瀬ヒカリが欲しくなった』と、、。




シウスの放った次元断により、一時的にエネミー群の進軍が停滞する事となった。


このまま巧みな剣聖の立ち回りに、ボス級エネミー等が翻弄され続けるのではないかと思えた矢先、流れが変わる。



剣聖の足が止まったのだ。



理由は大型エネミーの影に隠れていた魔法使いタイプのエネミー、リッチの仕業だった。

リッチは高位の魔導師がアンデット化したボス級エネミーで、多種に渡る魔法を操る。



中でも数多くのプレイヤーを苦しめたのが捕縛型の魔法だ。

プレイヤーの自由を奪い、トドメに強力な攻撃魔法を連携してくる。



そして今、シウスが受けた魔法は捕縛型の氷結回廊(アイスコリドー)だった。

広範囲に渡る氷結した地面に足を踏み入れれば、たちまち足下から氷結し身動きが取れなくなってしまう。



迂闊だった。

未曾有のボス級エネミーの多さに、戦闘ログが一斉に表示されてしまった。

故に戦闘ログが一瞬で流れ、リッチの挙動を確認出来なかったのだ。



チャンスとばかりに剣聖へ追撃の一手が迫ろうとしていた。


それは危険度が最も高いとされる"イビルアイ"の登場によるものだった。





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