巨大回廊の激闘(1)
剣聖の目の前に巨大な鋼鉄の扉がそびえ立っていた。
この扉の先には巨大な回廊が存在すると言われている。
何故"言われている"なのか、、?
殆どのプレイヤーがここに到達出来ていないからだ。
ここに至る前に、最終階層ボスと言われている99階層の神龍を倒さなければならない。
それが大きな理由の1つでもあった。
皆、強すぎるボスで足踏みをして"巨大回廊"を目にした事がないのだ。
ならば"巨大回廊"の情報の出所は?
それは唯一の例外、天位雨音その人である。
天位の率いるクランがいち早く99階層を突破し、この"巨大回廊"の存在を公表したのだった。
そしてシウスは以前に、天位のクランと協力して神龍を討伐した為、99階層自体は踏破していた。
故に巨大回廊を目前にする事が出来たのだ。
しかし流石の剣聖もこの先の全貌は把握していない。
全くの初見。
苦戦を強いられるのは明らかだろう。
しかもウロボロスの技術で改造されたコンテンツなのだ。
天位が公開している巨大回廊の情報は当てに出来ない。
険しいシウスの表情が、状況の悪さを物語っていた。
シウスが鋼鉄の扉に触れると、巨獣が咆哮するような軋む音と共に開き始める。
シウスは扉の先に広がる光景に目を見張った。
まるで吹き抜けのような天井は、高すぎて光が届かず存在する事さえ怪しい。
さらに回廊と言うには巨大過ぎる横幅と回廊の長さだ。
先が見えない程に長い。
まさに巨大回廊であった。
そしてシウスを最も驚愕させたのは、ボス級エネミーの数だ。
そもそも回廊内を区切るゲートなど存在しない。
だからこそゲートを守る筈のボスが混在し、ひしめき合っていた。
本来ならば順に、ゲートとボスがセットでこの巨大回廊に配置されているのだ。
都合99のゲートと99体のボス。
しかしシウスの目に把握できるだけでも、その3倍はボス級エネミーが居る。
シウスは舌打ちをした。
メイリンは、本当にシウスを屈服させるつもりだ。
シウスは漆黒の刃を抜き放つ。
「逆に好都合だ」
「時間をかけずに一気に始末出来るのだからな」
1番近い位置に居る、しかも孤立して佇んでいるエネミーにシウスの目が止まる。
31〜33階層にランダムで出現する階層ボス、オークロードだ。
プレイヤーの倍はある体躯と巨大な肉切り包丁を持つ、通称"ブッチャー"と呼ばれている。
シウスはブッチャーに狙いを定める。
『解析情報ではLv80相当のボス、、』
『ならこれで一撃のはず』
「Lv99 一の太刀 閃 」
シウスの鋭い斬撃が閃光を生み出し、ブッチャーに高速で飛来する。
そして閃は、シウスを認識していない只佇んでいたブッチャーの肩口に直撃した。
響き渡る耳障りなオークの悲鳴。
だがブッチャーの体力ゲージは半分しか減少していなかった。
シウスは再び舌打ちをする。
一撃で倒せるはずのエネミーが倒せない。
詰まりこれは、エネミーのLvを操作していると言う事だ。
何から何まで1人だけで戦うシウスには、不利な状況であるのは明白だった。
ブッチャーに敵対行為をした為、近くに居た他のボスが一斉にシウスを認識する。
デーモン型のボスエネミーが魔法を詠唱し出した。
[デーモンロードがメギドフレアを詠唱]
極大魔法メギドフレアは、魔導師も使える強力な火属性の魔法だ。
しかし強力が故に、詠唱から発動までの時間がかなり長い欠点がある。
それが分かっているシウスは、近接で襲いかかって来る他のボスエネミーにターゲットを切り替える。
だが、やはりその思惑も裏切られた。
[デーモンロードのメギドフレアが発動]
シウスの予想より遥かに早くデーモンロードからメギドフレアが放たれたのだ。




