コネクトと剣聖シウス(2)
ゲートキーパー10体を倒した後、コネクトとシウスはその先に有った巨大なフロアーに到達する。
円形状のドーム型で、リアルに例えるなら某ドーム球場並の大きさだ。
フロアー自体は大理石造りで、とても美しく見える。
だが中は何も無く殺風景だ。
有るのは来た通路の入り口と、フロアーの左右に鉄格子の扉が1つずつだけだ。
訝しげに辺りを見渡すシウス。
コネクトは、何も無い事を残念そうにしながらフロアーの中央に進んで行く。
シウスは眉をひそめながら考える。
『何かギミックが有るのは分かる』
『が、以前攻略で来た時とは全く違う、、』
そして何気なくドーム状の高い天井をシウスは見上げる。
『突入ごとにボスフロアーがランダム生成されると言う訳か』
シウスは何かに気付き目を見張る。
フロアーの中央まで進んでいたコネクトにシウスは叫ぶ。
「戻れ! 初見殺しだ!!」
シウスの声に驚いて振り返るコネクト。
「え!?」
天井には巨大なミスリルゴーレムが大量の鎖で繋ぎ止められていた。
その鎖がブチブチと音を立てて切れてゆく。
ようやく事態に気付いたコネクトは、慌てて入り口に向かって走り出す。
だが時は既に遅く、巨大なミスリルゴーレムはフロアーの中央に落下を果たす。
巨体が落下した事に衝撃波が発生し、目前にいたコネクトを飲み込もうとする。
その瞬間コネクトは、
『うわ、、これ当たっちゃう、、死ねそう』
と、他人事のように呟く。
シウスが言う通り、正に初見殺しだ。
本来なら斥候役がトラップやギミックの類を体を張って確認しに行くものなのだ。
それを迂闊に飛び込んだコネクトは愚か者だ。
そう自身を叱責し諦めた時、衝撃波がコネクトの前方で二つ割れる。
まるでコネクトを避けるように。
慌てて正面を見やるコネクト。
そこには"絶掌"を発動させ、衝撃波を防ぐシウスが立っていた。
安堵したコネクトはシウスを見て顔が綻ぶ。
「お兄ちゃん、、、」
シウスはコネクトに振り返ると、
「一旦下がって立て直す」
衝撃波は収まりミスリルゴーレムが立ち上がろうとしていた。
さらにフロアーの左右に有った鉄格子の扉が開き、ぞろぞろと小型のアイアンゴーレムが雪崩れ込む。
急ぎフロアーの入り口までシウスとコネクトは戻り、通路に逃げ込んだ。
そして入り口からフロアーを覗き混むシウス。
入り口を見据えるように、明らかにボスっぽい巨大なミスリルゴーレムが中央で仁王立ちしている。
小型のアイアンゴーレムは、50体はいるだろうか、ミスリルゴーレムを中心にして半円状に整列していた。
コネクトも恐る恐るフロアーを覗き込み、
「ここまでは追いかけて来ないみたいだね、、」
「でも雑魚が凄く一杯いるよぅ、、」
シウスは頷き、困った様子で、
「これは手間がかかるな、、、」
「これって普通に攻略したら、どれくらいの戦力がいるの?」
と、不安そうにコネクトはシウスに問う。
シウスはあっさりと答える。
「そうだなぁ、、50階層エネミーのLvが85相当」
「取り巻きの雑魚を処理してボスにダメージを与えるとなると、」
「最低でもLv85のプレイヤーが24人と言ったところかな」
コネクトは嫌そうな顔で、
「うへ、、そんなに戦力が必要なのか、、」
シウスはそんなコネクトを苦笑して見つつ、
「フフ、、まぁ一応レイド仕様のエンドコンテンツだからな」
ショボくれた様子でコネクトは、
「折角お兄ちゃんを利用して、楽に進めると思ったのに〜」
呆れ顔でシウスは、
「お前、このコンテンツの趣旨分かってないだろ、、」
「それにAO内では、お兄ちゃんと呼ぶな!」
コネクトは、シウスにしがみ付いて上目遣いをする。
「ここまで来て撤収とか時間の無駄だよぅ」
「それでも最強の剣聖なのぅ〜?」
シウスはニヤリとして、
「誰も攻略出来ないとは言ってないだろ」
「え?!」と、固まるコネクト。
シウスは通路にコネクトを残し、一人でフロアーの中心に向かって歩き出す。
「今から使うスキルを誰にも口外しないでくれよ」
困惑してシウスを見送るコネクト。
そしてフロアーに溢れる雑魚がシウスに反応する。
階層ボスのミスリルゴーレムも同じく反応して、シウスに向かってその巨大を軋ませる。
シウスは刀を悠然と抜き放つ。
その時、そのスキルは発動した。
驚愕の表情で固まるコネクト。
コネクトの眼前に広がるフロアーには、50体以上いたであろうアイアンゴーレムが瓦礫と化していた。
そしてミスリルゴーレムは上半身を失い、無残に倒れ伏せており、その少し前にシウスは佇んでいる。
時間にして1分も経過してはいなかった。
コネクトはシウスに駆け寄ると、
「何?! 今の?」
シウスはエネミー達の瓦礫を背に
「2つ目のWOSだよ」
少し引き気味でコネクトはシウスに、
「2つ目って、、この間の第2回世界最強決定戦優勝特典?」
頷くシウスは、
「あぁ、人前で使うのは、これが初めてだがね」
呆れた様子でコネクトは溜息をつく。
「これは流石にチートレベルのスキルだね、、」
「人前では使えないよ、、」
シウスもつられるように溜息をつくと、
「世間に知れたら炎上するだろうな、、」
階層ボスを倒した事により、フロアーの中央の床が左右に開いて下へ降りる隠し階段が現れる。
シウスとコネクトは階段を降りる。
その先に有るであろう報酬部屋に向かうためだ。
そしてそこを越えれば、次は51階層だ。
階段を降りつつコネクトは、
「それにしても運営は何を考えてるんだろうね」
「すでに無敵のお兄ちゃんに、あんなスキル持たせて」
「鬼に金棒持たすって、マジでこの事だよ!」
苦笑するシウス。
続けてコネクトは、
「で、あのスキル、PvPでは今後も使わないつもり?」
シウスは少し考える様子で、
「使わないと言うより、使える相手がいない、、だな」
「少なくとも互角以上のキャラクター性能とプレイヤースキルの持ち主でないとな」
2人は、大きな宝箱がある小さな部屋に着く。
コネクトは残念そうに、
「そっか、じゃあ公式戦では見れそうにないね」
「めちゃめちゃ格好いいのに、、、」
シウスは宝箱の前まできて
「それは分からんよ」
「この先、突然無名の最強が現れるかも知れんしな」
コネクトは苦笑して片手を左右に振ると
「いやいや、それは無いでしょ!」
宝箱の中身か、はたまた未だ見ぬ最強の敵を期待するような表情でシウスは、
「何言ってる」
「私も元は無名のプレイヤーだったんだからな」




