表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/127

剣聖と至高

司会のマイケルが高らかに宣言する

「それでは決勝ステージ、サドンデス開始いぃでーす!!」



湧き上がる観客たちの歓声。



そしてサドンデスステージ上空に表示されたカウントが0を記す。



漆黒の刀を抜く剣聖シウス。

そのプレイヤー黒瀬ヒカリは、静かにパソコンモニターを見つめる。



同じく黄金の剣を抜き構える至高のノヴァ。

こちらも無言でモニターを見つめているが警戒しているのかカイエンは、目を細める。





椅子に座ったまま深い溜息をはく脇村。

「ここからは高見の見物だね」

と、脇村の背後から女性の声がかかる。



脇村が背後を見ると、そこには少しくせ毛の長い黒髪の女性が立っていた。


身長は160cmに満たないくらいで、愛くるしい大きな瞳が脇村を見つめている。



名前はキヨミ。


ナインピラーの一人で、プレイヤーキャラクター名は自身の名前を(もじ)ってキヨミン。

クラスはプリーストでタイトル称号は法王。

ランキングは4位だ。



脇村は少し嫌そうに、

「キヨミさん、、」

「高みの見物って、、6対1でヒカリさんに負けて言うセリフではないですよね」



キヨミは苦笑しつつ

「いやぁ、カイエンの口車に乗って失敗だったわ」



そしてキヨミは頭を掻きながら

「去年みたいに剣聖にいいところ取られても面白くなかったしなぁ」

「でも結局、皆あの二人の引き立て役になっちゃったか」



脇村はパソコンモニターの方へ向き直ると、すました顔で

「僕はカイエンさんと馬が合わないですから」

「剣聖包囲網の話、持ち掛けられましたけど即蹴りましたよ」



ニヤついた表情でキヨミは、

「それで剣聖の味方して、カイエンの足止めしてたのか」



脇村は心配そうな顔で

「足止めはしたものの、、今回の剣聖シウスは分が悪そうですが、、」




金色の鋭い一閃が(はし)る。

それに呼応するかのように漆黒の一閃が宙を舞う。



刃が衝突しあい、互いの視線を間近に捉える。



どちらとともなく滑らせた刃が互いの刀身を弾き、その反動で2体のキャラクターの距離が離れた。



ノヴァが剣を振りかぶり迫りながら

「どうした?」

「何故、得意の絶掌を出さない?」



シウスは、ノヴァの斬撃を寸分違わず相殺するように刀で打ち返す。

「、、、、、、」



再び離れる互いの距離。



ノヴァの動きが止まり不気味な笑みを浮かべる

「フフフ、、」

「絶掌を出さないのではなく、出せないのだろう?」



尚も無言のシウス。



「貴女がこの一年で絶掌を使用したのは、公式戦でほんの数回」

「だが、それで解析するのは十分だったよ」



そしてノヴァは、シウスを指し示すように剣を掲げると、

「絶掌は完璧な防御スキルだが、発動後に1秒の技硬直がある」

「つまりそれ以下の隙の無いスキルや通常攻撃で押し切れば、絶掌はただの飾りと言う訳だ」



一貫して冷静で無表情だった黒瀬ヒカリの目が細められる。



カイエンはニヤリと口角の片方を吊り上げて

「さらに駄目押しだ、、」



ノヴァは剣を構えると静かに、

「Lv99、バーサーカーソウル」

その瞬間、赤い炎の様なエフェクトがノヴァを一瞬だけ包み込み消える。



驚いた様子で身構えるシウス。



黒瀬ヒカリの目がノヴァの踏み込む様子を捉えた。



だが次の瞬間、黒瀬ヒカリの目が驚愕に見開かれる。


シウスの背後に剣を振り上げて立つノヴァの姿がそこにあった。



凄まじい速度で後方に薙ぐ漆黒の一閃が、背後からの黄金の一閃を受け止める。



つば競り合いの状態で、互いの動きがそこで止まった。



ノヴァが不敵な笑みを浮かべて

「速いだろう、今まで公式戦で使っていたバーサーカーソウルはLV90だったからな」



バーサーカーソウル。


それは戦士のクラススキルの一つ。

一般的に発表されているスキル性能はLv90で移動と攻撃速度が1.5倍になると言うものである。



こう見ると破格のスキル性能ではあるが、おいそれと連発できる物では無く、どちらかと言えば奥の手に分類されるスキルだ。


因みにスキルの発現と既存スキルのLVアップは、キャラクターのLVが5上昇毎に依存する。


しかもLV91以上の戦士クラスのプレイヤーはカイエン以外存在せず、Lv95以上のバーサーカーソウルは存在しないとまで言われていた。



故に黒瀬ヒカリは驚いたのである。

Lv99バーサーカーソウルと、その攻撃と移動の速度に。



ノヴァは仕切りなおす為、シウスから疾風の如く後退する。



それを追うシウス。



だが捉えるのは困難を極めた。


2倍はあろうかと思われるノヴァの速力に攻撃が、移動が追い付かないのだ。



やがてノヴァの圧倒的な速力による斬撃がシウスを襲い始める。

鋭く間断なく続くノヴァの攻撃に、防戦一方になるシウス。



AOでは、近接戦闘時の待ち戦法や防戦が非常に不利にできている。



ガード耐久値なるものが存在していて、ガードし続けるとガード値が0になって、ガード不能状態(ガードクラッシュ)に陥ってしまうのである。


何故このようなシステムなのかは、PvPの展開を速くするためでもあるが、流動的でテンポの良い戦闘を体感して欲しいという運営側の方針(エゴ)だ。



そしてとうとう、捌ききれなくなったノヴァの攻撃をガードし続けてしまい、ガードクラッシュしてしまうシウス。



体勢を崩し五分以下で、不利な状態のシウスにノヴァの斬撃が迫る。



だがシウスは静かに、、

「LV99、、、弐の太刀・烈風」



咄嗟に危険を察知し判断したノヴァは、舌打ちをする。



凄まじい速度で青白い大きな斬撃がシウスから放たれる。

そしてそれは、ノヴァがいた場所で大きな衝突音と共に爆発に変わる。



爆煙が少し晴れる。

そこには、防御態勢で立っているノヴァの姿があった。

「くっ」



対するシウスは、何事も無かったように静かに淡々と、

「LV99、、参の太刀・疾風」



ノヴァの表情から余裕が消える。



次の瞬間、ノヴァの背後に空中から漆黒の刃を振り下ろさんとするシウスの姿が現れる。



ノヴァは咄嗟に左足を軸に、右半身を左方向へ逆時計回りに翻る。


ノヴァの右半身があったその空間を、シウスの放った疾風の一閃が空を切った。



空を切った疾風に目を見開くシウス。

それを見下ろすようにシウスの背後に立つノヴァは

「終わりだ」



ノヴァは黄金の剣を振り上げて呟く

「Lv99、断空烈破」



ノヴァの必殺の一閃が、技硬直中で隙だらけのシウスを襲う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ