至高と拳王
なんとか一日一話投稿できました。
休みなので、さらに数話投稿出来たらと思っています。
再び武道館が観客の歓声で揺れる。
剣聖シウスと6名のナインピラーが戦っていた位置から、幾ばくか離れた場所。
互いの戦場が干渉しない程のその位置に、残りのナインピラーの戦場が有った。
一人は濃い紫を基調にしたレザー系の全身鎧を身に纏っている。
全身鎧といっても動きを阻害するような防御力重視ではなく、素早さと最低限の防御力、そして魔法に対する耐性を持った装備であるのが窺い知れる高級感と神秘性を放っていた。
ナインピラーが身に着ける程の防具、恐らく非常にレアで伝説級の装備に違いない。
そして右手に持つ得物は、黄金のロングソード。
美しい装飾がされた魔法の武器であった。
彼は、世界ランキング2位でクラスは戦士。
至高のタイトル称号を持つ、そのキャラクターの名は、ノヴァ。
ノヴァを操るプレイヤーは、不敵な笑みを浮かべていた。
男にしては少し華奢な体躯、しかし身長は高いようでパソコンの前で足を組んで座しているその姿は、まるでモデルのようだ。
そして整いすぎた顔は、少し冷たい印象を他人に与える。
その人物の名は、カイエン。
実名や偽名でもなく、このAOでのハンドルネームと言う事になる。
そして相対するもう一方のキャラクターは、、、地面に倒れ伏していた。
まるでプロレスラーのような体形をした巨躯は、HPゲージを0にして無残にも身動き一つしない。
こちらのキャラクターも伝説級の装備であろう、美しい刺繍が施された灰色の道着を身に纏っている。
このキャラクターの名は、ヒゲモジャ。
クラスは拳闘士で、世界ランキング3位。
拳王のタイトル称号を持つ最強の近接アタッカーであった。
残念そうな表情で溜息ををつき、椅子の背もたれに身を預けると、椅子が壊れそうなくらいに悲鳴を上げる。
この人物はヒゲモジャのプレイヤー、脇村である。
恐らくキャラクターは、自分をモデルにしたのであろう身長190cmのプロレスラー体形。
キャラクターと違うところは、キャラクターがモッサリな髭面にたいして髭剃り跡が青々としている所くらいであろうか、。
そして30歳にも関わらず、見た目は45歳の3人の子持ち、、と言わんばかりの老け顔。もちろん未婚なので子供なんていない。
だが強面と言う訳ではなく、どちらかというと人懐っこい感のある顔である。
司会のマイケルが、至高のノヴァと拳王ヒゲモジャの戦場が映し出される巨大モニターを指して、
「おおっと! こちらも決着がついた模様!!」
「こちらはランキング2位と3位のタイマン対決でしたが」
ヒゲモジャを見下ろしているノヴァの姿がモニターに映し出され、
「勝利したのは、至高のノヴァことカイエン氏です!」
マイケルの宣言に会場の歓声が一層に増す。
脇村が手元のキーボードで、DMを剣聖シウスに指定して、ヘッドセットでそっと呼びかける。
「シウスさん申し訳ない、、、」
「足止めくらいしか出来ませんでした」
黒瀬ヒカリは、ほんの少し柔らかい表情を浮かべて
「いえ、十分です、、ありがとう」
中継用のカメラがマイケルと水春がいる解説特設スペースを向く。
マイケルは、手元のタブレットに映る資料を確認しつつ
「さて、決勝ステージの現時点で残ったのが2名となりましたので、特別ルールにより、サドンデスステージに移行されます!」
「制限時間は10分」
「勝利条件は、時間内に相手のHPゲージを0にするか、、」
「タイムアップ時に、HPゲージが多い方が勝利とします」
サドンデスステージに転送されるシウスとノヴァ。
マイケルが水春に向いて
「昨年と同じ決勝カードとなりましたね!」
「これはやはり唯一Lv100に達し、昨年の優勝特典であるWOS・絶掌を有する剣聖に分があると思うのですが」
水春は人差し指を立てて否定するように小さく振ると
「確かにWOSの絶掌は、絶対防御のスキルですが万能ではありません」
「それにノヴァはHPが全快ですが、シウスはレッドゾーンのままです」
水春は、巨大モニターに映るサドンデステージを見つめ
「純粋な近接戦闘では互角と言われている両者です」
「時間切れまで粘るだけで良いノヴァに分があるのは、火を見るより明らかですね」
「なるほど、、」と唸るマイケル。
そして剣聖と至高が互いに向かい合う、サドンデスステージの上空に表示された開始までのカウントダウンが10秒を切る。




