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高校生活と遅れて来た春(5)

水樹弥生は、項垂れていた。

「私はあの時から相川くんに惹かれていて、、自分勝手な想いだけど、」

「でも、相手がフワっとしか記憶にないなんて、、、」



だが仕方ないか、、と諦めて

「君はそういう人だよね、、」

「やり逃げして覚えてないんだから」


コウは苦笑しながらつっこむように

「いやらしい言い方するな!」




そしてコウは不思議そうに

「でも、、何だ、、、」

「二年生の今になって水樹さんが俺にアプローチしてくるって、、」

「えらい時間差だよな」



弥生はモジモジしながら

「うん、、高校入学してすぐに相川くんを見つけて、」

「同じ高校に入ってた事が凄く嬉しかったんだけど」

「助けられた時と随分雰囲気が変わっていて」

「別人だったら恥ずかしいから、声をかけられなくって、、、」



俯いた顔を弥生はあげると、にっこりして

「だから割と頻繁に君の事を観察してたの」

「確信出来るまで!」



コウはびっくりした表情で

「マジかよ、、全然気づかんかった、、」

『ちょっと怖いよ、、』と内心で苦笑して呟くコウ。



そして思い出すように弥生は、

「実際に君が私の恩人って確信を持ち始めたのは、二年生で同じクラスになってからだね」



「ほほう」とコウが訝し気に首を傾げると、弥生が説明しだす。


「授業後の黒板を消すときに、日直で背の低い女子のときは、さり気なく上の方を消すのを手伝ってあげたり」


「男子でも女子でも関係なく、授業に使う教材やノートを沢山持ってたら半分もってあげたり」


「他にも色々あるんだけど、、、」


「まあ要するに、」

「いつも仏頂面で人を寄せ付けないオーラ出してるけど」

「ちょっとした気遣いや優しさが似てるなって思ったの」


そう一気に言い切ると弥生は恥ずかしそうに

「そんな君を見ていたら、いつの間にか以前の事なんて関係なく愛おしくなっちゃって、、、、」



それを聞いたコウは、耳まで赤くして硬直してしまう。



弥生は、まるで生徒に注意や指導を施す教師のような態度で

「どうせ相川くんは、誰かに何かしてあげたりした自分の行動をいちいち覚えてないんでしょう?」

「人を助けたり、気遣う事に見返りを求めない所は称賛に値するけど、」

「された方の気持ちは全然わかってないし!」



コウは困った様子で、

「う、、、」

「そんな事、自己分析しないだろ、、困るわぁ」



そして少しコウは考えて

「まあ、あれだ、出来るのに行動を起こさないのは卑怯な気もするしな」

「行動を起こさないことの”罪”みたいな?」



そんなコウを見下すような視線を送って弥生は、

「ふ~ん、、何だか回りくどい言い方ね」

「恰好つけて照れなくてもいいのに」



すると弥生は、コウの目の前に近づいてきて

「で、、どうなの?」

だじろぐコウ、「え?!」



弥生は照れながら、それを隠すように怒る素振りをして

「私は君の事が好きだと告白した」

「愛しいとまでいっちゃった」

「理由も経緯も説明した」

「次は君の番だよ!!」



コウは赤い顔で照れて固まってしまう。


だがすぐに慌てた様子で

「は、はい、光栄です!」

「校内3大美少女の水樹さんに好きと言われて、嫌がる男子がいましょうか?!」


弥生は上目遣いでコウを見つめると

「では、私と付き合ってくれますか?」

「恋人同士として、、、」



緊張したコウは、ぎこちない笑顔で

「うん、こんな俺で良ければ、、、」



それを聞いた弥生は胸を撫でおろした様子で安堵する。



そして感極まったのか、突然コウに抱き着く弥生。


弥生は小さく呟く。

「もう離さないから、、、」


コウは弥生に抱き着かれて慌てながら

「え? 何?」


弥生は小悪魔的な笑みを浮かべて

「ううん、何でもないよ」



弥生がコウに抱き着いた為、弥生の胸がコウに密着する。

しかも体のラインがでるラフな服装で、しかも少し露出度が高い。

『そっちが何でもなくても、こっちは有るんだよ、、』

『胸があたって、、、』



コウは必死に我慢した様子で

「すまん、そんなに抱き着かれたら、」

「色んな所が当たって刺激が強すぎる!」


弥生は我に返ってコウから身を少し離す。

だが抱き着いた時の勢いか、コウの胡坐(あぐら)の上に馬乗りになっていた。

「あ、、ごめんなさい、、」



弥生は申し訳なさそうな表情で、頭を掻く仕草で

「嬉しくってついつい舞い上がっちゃって、、」


そんな弥生を見つつコウは、

『意外と大胆な娘だなぁ、、』

『その上、俺の脚からは降りないつもりなのか、、?』と内心で苦笑する。



弥生はそのままの体勢で、

「あ、そうだ!」

「付き合うにあたって何かして欲しい事や、前もって守って欲しい事が有ったら言ってね」



じゃあ、と前置いて困った様子でコウは、

「差し当たって、脚の上からおりてくれない?」

「いきなりこの距離は恥ずかしいし」

「それに、脚が痛いよ、、」



弥生は、うっかりしたと言った表情でコウから離れて床に座ると

「ちょっとがっつき過ぎっちゃったね、、ごめんね」

「で、、他には?」



コウは真面目な顔で

「学校では付き合ってる事を伏せていて欲しいんだ」

「お互いの距離間も、ただのクラスメイトのままで接して欲しい」



弥生は不安そうな表情になって

「それって、恋人同士って事が知られるの、、嫌って事だよね?」

「私と付き合うの、、本当は嫌、、とか?」



コウはすごく慌てて、弥生の言葉を否定するように両手を胸の前で振ると

「違う違う!! そうじゃなくて、、」

「水樹さんて、学校じゃめちゃめちゃ男子に人気あるんだよ」

「だから、そんな水樹さんに男が出来たって知れたらどうなるよ!!」



天然ぽく弥生は首を傾げて不思議そうに

「え? どうなるの?」


コウは深く溜息をついて、やり切れないと言う表情で

「鈍いな!!」

「俺が妬みに晒されるだろう!!」


そう、弥生との関係が知れたらまずい。

コウが黒瀬ヒカリとして、AOで晒される妬み嫉みの比ではないからだ。


なにせ、いざとなればヒカリならほとぼりが冷めるまでAOにログインしなければ良いのだ。


コウだと不登校という選択になるが、、それは出来ない。

親が悲しむし、水樹弥生も責任を感じてしまうだろう。



弥生は納得したのか笑顔で

「うん、わかったよ」

ふぅ、と胸を撫でおろすコウ。



この時、弥生は全く別の事を考えていた。

コウに抱きついたときに、コウの体の感触を”確認”したのだ。


弥生が以前から思ってた通りに、見た目より着やせしていて華奢なコウの体躯。

弥生が力いっぱい抱きしめたら、壊れてしまうんじゃないかと思った程だ。


そんな感覚に弥生は、ゾクリとする。

自分の性癖を実感して確認した弥生は、コウに聞こえない程の声で呟く。

『駄目だ駄目だ、、焦っちゃいけない、、』




そして弥生は、コウとの今後の展望に思いを馳せて、ニンマリとする。



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