決戦・最強の翼賛(1)
クロノスの時間制御が発動してしまった。
シウスの身体が全く動かない。
天位の時間制御は"限りなく遅くなる"のであって、完全には止まらなかったのにだ。
剣聖コピーが放った烈風さえも停止していた。
シウスはこの危機を打開する方法を模索する。
時間はもう殆ど残されていない。
冷静かつ速やかに、シウスはスキルのリキャストを確認した。
その結果は最悪な物だった。
全てのスキルが、リキャストのカウントを停止させていたのだ。
恐らく時間制御の効果だ。
キャラクターの動きやスキルの動作が停止するだけでは無い。
使用したスキルや魔法の再使用時間カウントまで停止させてしまう。
さらに推測だが、剣聖コピーが放った烈風までもが停止した事から、スキルが発動しない可能性も考えられた。
いや、発動はするかもしれない。
だが発動した瞬間、そのスキルが停止する。
つまりそれは発動しないと同義なのだ。
全ての打開策は封じられてしまった。
打つ手が無い。
モニターを見つめるヒカリの目が細められた。
『私は愚か者だ』
そして痛みに耐えるかのようにヒカリは瞳を閉じた。
『最強だとおだてられ、自身の力を過信して出た結果がこれだ、、、』
ヒカリの脳裏に2年前の光景が蘇った。
それはコウを庇って腕に傷を負った結の姿だった。
『結局私はあの時から何も成長していなかった、、』
胸に締め付けられたような痛みが走った。
『また守れないのか、、、?』
ヒカリの口元が苦痛で歪む。
『また繰り返すのか、、、?』
弥生の姿が瞼に浮かんだ。
自身の愚かさと無力さにヒカリは泣き出しそうになった。
もうこの身を差し出す他、方法は無いのだから、。
最強の牙城が崩れかけた時、ここにある全てが急転した。
「強化 Lv99 コールライトニング 」
それは聞いた事のある声だった。
突如発動した落雷魔法が、クロノスの頭頂に直撃する。
そしてクロノスはその身を感電させた様に硬直させ、
完成直前だった2つの極大魔法が消失してしまった。
淡く光を放つ刀身が掲げられた。
「Lv99 フォーススラッシュ 」
地を這う高速の衝撃波が、シウスに向かって放たれた様に見えた。
しかしそれは目前に迫っていた烈風に直撃すると、輝くエフェクトを放って両方とも消失した。
相殺したのだ。
驚愕するヒカリ。
メイリンも驚きのあまり呆然とする。
VIPルームでモニタリングしていた前原は焦りつつも笑みを浮かべた。
「これは驚いた、、、」
「まさかこんな展開になるとは!」
拘束された弥生も驚いた表情でモニターを凝視する。
「、、、、」
クロノスの時間制御で神座は蹂躙され時間が停止した筈だった。
だがその空間を悠然と歩む者がいる。
それは天上のモノに語り掛けるように言葉を紡ぐ。
「その経験と洞察力は全ての者の思惑を凌駕し、」
「その技術と戦術は相対した者全てを斬り伏せる」
それは淡く青い光を放つ刀身を持ち、悠然と歩み続ける。
そして語り続けた。
「それこそが最強であり、」
「剣聖こそが最強の代名詞」
それはシウスの元へ来て不敵な笑みを浮かべた。
「その剣聖がたかだかチーターやハッカー相手に、屈するものでは無いよ」
シウスはその者を目にして再び驚愕する。
ナインピラー最強と目され、理論上最強と称される。
それは"天位 雨音"その人だった。




