表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/16

02

もし良ければ、感想や評価をおまちしてます!

ここまで、読んで頂きありがとうございます!

『あなた達の好きにはさせないわ!! 食らいなさい! ファイアーボール!!』


 疾走感溢れる音楽と共に、使命感に満ちた声音が響く。


「お、おお……すげぇ。今の時代は、火や氷を大気中に生成できるのか。──この、桜色の服を着た女……やりおるな」


 今日、新しい発見をした。秋葉原を歩いていると聞こえた、助けを求める声。街の喧騒に掻き消される事なく、大きい声で皆に届くようにと発していた。早歩きで向かうと、テレビの向う側で、いま正に悪者と女が戦っていたのだ。この時代にも、しっかり呪術的な何かを使う者がいる。

 この女は、その力を『マホウ』と呼んでいた。


「類は類を呼ぶとは、言ったが……。まさか、惹かれてしまうとは……!! って、おい! ばか! 後ろに、まだ居るではないか! 何を油断している! 早く気が付かぬか!!」


 くっそ、見てられねぇ。俺が、画面の中に入る事が出来れば手助けは出来ると言うのに!

 久々に感じた高揚感。有りと有らゆる妖怪を相手していた時の様に血液に滾る正義心。俺は、やはり悪を許せそうにはない。

 日の本に蔓延る陰、即ち混沌を俺は──。


『きゃぁぁ!!』

『ぐへへへ、油断大敵とはこの事よな? 魔法少女、ナナリ』

「ば、馬鹿者!! だから言ったではないか!! くそ、こーなったら、誰か! 誰か居らぬか? 画面の向こうに行ける力を持ったものよ!!」


「──おいおい、あのコスプレの男、画面に張り付いて叫びまくってんだが……」

「これ、リツイート稼げんじゃね?? ぷぷぷ」


 俺は、苦しむ少女を見逃せるほど鬼畜にはなり下がれない。だが、なぜ街を行き交う、こヤツらは助けに耳をかた向けないんだ?非情極まりないだろ。


「ヘイ! ジャバニーズミコサーン」


 な、なんだ、この大柄な男性達は。数は三人、背後にはテレビの中で戦う少女。ああ、任せておけ。お前は目の前の敵に専念していればいい。コイツらは、俺が──引き受けた!


「な、何者だ!!」


 反応的に、袖から護符を取り出し構える。


「ワーオ!! アメイジーング! ビューティフル!! ジャバニーズ、オミョージ!!」

「あ、飴? オミョ? イジング? な、なんだそれわ!!」


 コイツら、さては心理を錯乱させる呪詛を……。

 だが、俺は陰陽師。そう、易々と洗脳されねぇぜ。


「スナップ、オーケイ?」

「お、おーけい。──とは、なん……」

「オーライ!!」

「うわ、ちょ! な、なんだ! 肩を組むな! な、何なんだ貴様達は!!」


 眩い光が、目をくらまし、甲高い音が時間を裂くようにパシャリパシャリと鼓膜に響く。


「センキュー! オミョージ!! HAHAHA」

「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ」


 あ、あいつら一体何者だったんだ……。日本語とはまた違う言葉を発していたが、呪術的な力は垣間見れ無かった。

 ちくしょう、無駄に疲れちまった……。


『へへん! ナナリの大勝利ッッ! どんなもんだい!!』


 腰に両手をあてがい、立ち誇る少女の背後は盛大に爆発をしていた。だが、無事で良かった。お前は、強いんだな。

 逆に俺は、満身創痍だよ。膝がガクガクと笑いやがる。

 両膝に手を付き、息を整えていると聞き覚えのある声が真正面で聞こえた。呼吸を正しいつつユックリと体を持ち上げると、そこに居たのは土御門。


「土御門、何故ここにいる? 俺が迎えに行く手はずだろ」

「別に私は頼んでないですよ。母さんが、勝手に頼んでるだけじゃないですか」

「いや、そうだが……。母上は、土御門を心配してだな……」

「それよりも、なんで疲れきっているんですか?顔色が物凄い悪いんですけど」


 またもや、土御門は俺の状況を瞬時に気がついた。やはり只者ではない。ならば、彼奴等きゃつらの正体も見抜けるやもしれん。


「土御門、聞きたいことがある」


 両肩を掴み、真剣な眼差しで土御門の瞳を捉えた。


「な、何ですか……。こ、こんな公衆の面前でッ。離してください」

「お前は、こんな言葉を発する動物をしらないか」

「なんです?」


 きゃつらに言われた言葉を思い出しながら、俺は息を大きく吸い込んだ。


「ワーオ!! オミョージ! 飴ィイジングゥグゥ!! ミコサーン!ワーオ!!」

「えっと、真顔で何を言ってるんですか」


 あれ、まったく温度差が違う。なんで俺、蔑視されてるの。怖いんだけど。


「何って、今さっき言われた事を……」

「はい?」

「──え」


 それから、暫く沈黙が生まれた。しかしめげずに身振り手振りで説明をしていると、次に土御門から零れたのは控えめな笑い声。


「プププ……。何ですか、それは……。クスクス。説明が、下手過ぎますよ」


 笑いを堪えていたせいか、流れた涙を拭いながら土御門はそう言った。


「実際、そのまんまだったのだから仕方あるまいて」

「そりゃー、そんなコスプレをしてればそーなりますよ。此処には観光客も良く来るんですし──ホラ」と、黒い衣装を身にまとった少女に群がる人間を指さした。


「か、彼女は無事なのか? この俺でさえ体力を著しく消耗させられたんだぞ」

「大丈夫ですよ。良くあることですし。それに、服装を変えればいいじゃないですか」

「な、ならぬ!! これは、我が正装。陰陽師である以上──」

「駄目ですよ。何日も着ていたら汚れますし、夏なんか特に臭くなります。あ、そうだ! なゆたさん」


 土御門は、家に向かい歩きながら、閃いたのか両手を叩き明るい声を出した。


「今日は、金曜日です」

「そうだが?」

「明日は土曜日で、私休みなんですよ。丁度、バイトも無いですし、るとちゃんと、なゆたさんの服を買いに行きましょう!!」

「いや、まて、俺は知っているぞ」


 土御門は、首を傾げた。


「何をです?」

「服を買うにも、金銭が必要だろ」

「そこは、私に任せてください!!」

「いや、しかしだな……」

「いいんです、いいんです!気にしないでください。毎日、家事を手伝ってくれてるお礼ですよ」


 それは、違う。御礼をすべきは俺達なんだ。家事を手伝うのだって、それ以外にする事が無いから。出来ることが無いからなんだ。履き違えちゃいけない。特に俺達は優しさに甘えるべきじゃないんだよ。

 土御門、お前は見返りを求める様子も無く笑顔で言ってのける。きっと、裏表がない優しさ女なのだろうな。ならば、今は母上に命、授かった事だけはシッカリと完遂しよう。

 あの。小さくとも強いマホウ少女ナナリの様に。


「あの、なゆたさん。両手を前に翳して何をしてるんですか?」

「え? ファイアーボールと言うマホウをだな」

「馬鹿なんですか?」

「馬鹿とか言うな!! 俺だって絶対にマホウを使えるようになるんだ!! ふぁぁぁぁぁあ!!」

「やめて下さい」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ