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『8/6 ノベルstory07 発売』私は悪役王妃様  作者:


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イベント続行中?




美しい銀の髪を高く結い上げ真っ赤な口紅に青いドレス。どれもキツめの顔立ちの彼女にはとても良く似合う。


「ごきげんよう。セリーヌ王妃様」


意地の悪そうな笑みを浮かべフランをぶっ叩こうとしていた扇子を広げ口元を隠す令嬢。

彼女の背後にいる取り巻き達からも「ごきげんよう、セリーヌ王妃様」とせせら笑いながら声をかけられた。


凄いわ、これぞまさに悪役令嬢な彼女は一体誰だ?


記憶を探るが出てこない。だとしたら初対面なのだろう。

スペックの高いセリーヌが一度会った人物を忘れる訳がない。

この国の古狸共も結婚式で挨拶を受けたメンバーは顔を覚えた。それ以外は名前を聞けばわかるが、この令嬢の名前を私は知らない。


「あら、王妃様は私を知らないのかしら?それとも、ご挨拶もまともに出来ない方なのかしら。ねぇ?」


私に対して真っ向から喧嘩を売ってくるような人間なのだから余程良い家柄なのだろう。

けれど、甘やかされて育てられた温室育ちの令嬢が喧嘩を売るには相手が悪い。

相手は傷付き易い、繊細なセリーヌではないのだから。


「聞こえなかったのかしら、邪魔よ、退きなさい」


面倒なことは基本スルーよ私は。ほら、さっさと退散しなさい。扉の前でゴチャゴチャやられたら入れないでしょうに。


「なんですって!誰に向かって言っているのかわかっているの!」

「アメリア様!?」

「落ち着いてください!」


まったくだわ、落ち着けアメリア嬢。

此処は城の中で、廊下で、宰相の執務室の前だ。何をハッチャケてるのかは知らないけれど駄目でしょ。

アメリアと取り巻き達の側にいるであろうフランには敢えて目を向けずため息を零すと、アネリが私の耳に口を寄せこっそりと教えてくれた。

真っ赤な顔で睨みながら喚いているのはアメリア・ベディング。彼女は侯爵家の娘で父親は前王の側近だったが現在はアーチボルトについているらしい……。

まあ、確かに身分的には高いのだろう。

公、侯、伯、子、男爵の順だし?でもさ、そのピラミッドの天辺にいるのが王族よね?

私、産まれも育ちも、嫁ぎ先も王族だけど。

なんでこの子こんなに偉そうなんだ。

スルー……出来ないだろうなぁ。

これからのことを考えれば、面倒だが今迄みたいに舐められるわけにはいかないか。


「貴方こそ、誰に向かって何を言っているのかわかっていて?」

「なによ!お父様から聞いたのよ、貴方捨てられた王女のくせに!」


捨てられたって……それつい昨日お馬鹿王の口からも出てきたけど、ソースはお前の父親か!?てか、それも言ったら駄目だろうに。

捨てられようが要らなかろうが現ヴィアンの王妃だから私。本来なら物理的に首が飛ぶから。


「捨てられたのかどうか、聞いてみましょうか?ちょうど宰相の執務室の前にいるのだから」

「は?」

「ジレスに聞いてみなさい。私はラバンに捨てられたのか、と」

「ジレス様に聞いても変わらないわ!捨てられた貴方を仕方無くアーチボルト様は受け入れてくださったのよ。勘違いしないで!」

「勘違いかどうかは私の口から聞くよりジレスに聞けば納得するでしょう?貴方のようにこのような場で見苦しい姿を晒し喚き立てるより余程有意義だわ」

「なんですって!」

「学習しない人ね……視界に入れるのも不快だわ。喚くだけなら去りなさい」


実際ジレスに聞いたら後悔することになるだろうがな。

微笑みながら、さあ、どうすんの?と待っていると、「覚えてらっしゃい!!」と握り締めていた扇子を何故かフランに叩きつけて逃げるように立ち去っていった……。

アメリア、まじで悪役令嬢の鏡だわ。


「あの、セリーヌ様……」


私も悪役王妃様なのだからアレするの?

いやいや、本来のセリーヌはナイフ片手にお茶会に乗り込んだのだから扇子なんて可愛いものだろう。


「……セリーヌ様」


その矛先をフランではなくお馬鹿三人組に向けているだけで、私の方が悪役レベルは上なはず。うむ、素質は断然上だわ。

よし、ジレスに会いに行こう。うん、そうしょう。


「セリーヌ様!助けていただき有難うございます!」

「…………」


私の前に立ちはだかるように現れたフラン。

ニコニコと笑顔で「やっと気づいてもらえました!」とか言ってるけど、さっきから呼ばれてたの知っていたから。態と無視してたって気づいてくれ。

アーチボルトを筆頭に空気の読めない奴が多過ぎる。


仕方無しにフランに視線を向け無表情を心がける。遠目からなら何度も見かけたが、間近で見て話すのは初めてだろう。

アーチボルトに寵愛され、ジレスに贔屓され、クライヴに可愛がられ、国のトップ達から愛されている主人公。

その裏には悲しみ傷付き人格すら失うほど壊れた人間がいると知っているのだろうか。

私はゲームの世界だからと割り切れない、だって此処でこの世界で生きている。

失敗したからといってリセット出来るゲームなんかじゃないのだ。

会いたくなかった……彼に下手に関われば何が起きるか分からない。今の私では大切な者を守りきれないから。


ちらっと執務室の扉を確認し、用があるなら早くしろと無言で促す私の視線に気づいたのかフランが口を開いた。


「第三騎士団所属のフランです。一度、帰還式でお会いしました。あのとき、お美しい方だと見惚れてしまって、あ、第三騎士団じゃなく近衛隊に配属先が変わったんだった!すみません、改めまして、近衛隊所属のフランです」


面倒くさい……なんか、イラッとくるのは気のせいだろうか?

第三騎士団だろうが近衛隊だろうが、私にはどうでも良いことだし。そもそも、一騎士が気軽に話しかけても良いものなのだろうか私って……。

関わりたく無いと避けていた者が自らやって来た場合、どうすれば良いのだろう。

しかも、若干面倒くさそうな人の場合。

もう良いかと執務室に入ろうにも扉の前に陣取られてはそれも出来ない。

さて、どうするかと困っていると私を庇うようにテディが前に出た。


「フラン、感謝の気持ちはわかったから。セリーヌ様はジレス様に用があって此処にいらっしゃるんだ、下がって」

「テディ?何してるの、第三騎士団の先輩達が探してたよ急いで戻らないと!僕も一緒に行くから、早くしないとまた面倒だよ」

「え、いや、僕はもう第三騎士団じゃないから。フラン、手を離して」

「テディも近衛隊に入ったの!良かった、僕クライヴ様にいっぱい頼んだんだよ!」


……頼んだからといって近衛隊には入れないし、何故フランは上から目線で話しをするのだろうか。

テディは出来る子なのよ、くだらない任務の所為で実力以下に見られているだけよ。

テディの腕を掴み今にも引っ張って走り出そうとしているフランに話しを聞けと言ってやりたい。


「テディ、知り合いなのでしょ?説明してあげなさい」

「すみませんセリーヌ様」


フランはどう思っているのかは知らないけれど、テディが彼を友達だと思っているのならちゃんと説明をさせてあげたい。

そして、子供のお守りはもう終わりなのだとハッキリと言ってやりなさい!


まあ、説明して理解出来るかどうかはフラン次第だけれど。


「フラン、僕はセリーヌ様の専属騎士になったから第三騎士団では無いんだ」

「専属騎士……?どうして、テディが?」

「何故僕なんかと思われるかも知れないけれど、自身で決めて、それをセリーヌ様が許してくださった。だから精一杯お仕えしようと思う。フランも近衛隊に入ったんだからこれからは何かあればクライヴ様に助けてもらうんだよ」

「……なら、僕も一緒にセリーヌ様の専属騎士になる」

「…………」


テディが口を開けたまま固まる気持ちも分かるわ。

突然、何を言い出したフラン?


「お願いします、セリーヌ様!」

「フラン!」

「テディ、お願い、セリーヌ様に一緒に頼んで」


フランが私に近付こうとし、それにハッと意識を戻したテディが止めた。

流石テディ!と脳内で拍手を送ると、テディの隊服の裾を掴み縋るように大きな瞳を潤ませ上目遣いで懇願するフラン。凄い技を使うわね、あざとさ全開だわ。

でもね、ソレが通じるのはお花畑脳達だけだし。ここは私からもハッキリと言ってあげよう。


「嫌よ」

「セリーヌ様……」

「嫌、絶対に嫌よ。話しは終わったわね、テディ」

「あ、はい。フラン退いて」

「待って、まだっ」


退かそうとするテディにしがみつき離れようとしないフラン。何故そんなに私の騎士になりたいのか意味が分からない。

近衛隊で大好きなアーチボルトの護衛をしてれば良いのに。


引き摺られるように扉から退かされたフランを見て溜息をつく。

無表情で腕を組みフランを見る私、その背後で険しい顔をし偶にボソッと「そのままへし折りなさい」「生まれてきたことを後悔させてやる」など物騒なことを呟くアネリ。


「テディ離してっ」

「落ち着いてフラン」


不敬を働くフランを取り押さえ穏便に済まそうとしてるだけなのだが。

これ、第三者から見たらさっきのアメリア嬢達と変わらないのでは……。


嫌な予感ほど当たってしまうのは何故なのだろうか?


「何をしているのですか!?」


扉が開き、中から麗しき宰相様が顔を出し私達を見て眉をひそめ、拘束されているフランに気づいて駆け出した。

そして、第一声が何をしているのですかだ。


「テディ、もう良いわ。ありがとう」


ジレスが離すよう言ってもフランを離さないテディに声をかけ頷き微笑む。流石私の優秀な護衛だわ。


蹌踉めくフランを抱きとめ、気遣わしげに声をかけているジレスを一瞥し執務室へと足を踏み入れた。






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