178/288
第178話 兼継十三歳、初めて断る
夜。
越後。
城。
灯が揺れている。
兼継。
十三歳。
帳面を見ていた。
家臣。
四十七歳。
少し困った顔をしている。
橋市の有力商人。
店を広げたい。
特別な土地が欲しい。
そんな願いだった。
普通なら。
力のある者へ与える。
それで話は早い。
だが。
兼継は首を横に振った。
「駄目だ」
短い声。
家臣が黙る。
兼継は地図を見る。
橋市。
まだ小さい。
だからこそ。
最初が大事だった。
一人だけ特別にする。
その前例は残る。
兼継は静かに言う。
「決まりは同じだ」
短い言葉。
だが。
家臣は理解した。
橋市は。
誰か一人の町ではない。
これから住む者たちの町でもある。
灯が揺れる。
十三歳の少年は。
初めて利益より秩序を選んだ。
(次話へ)




